その日の午前中に行った演武によって得た情報を元に、俺は午後から長い間寝たきりだったが故に鈍り切ってしまった己の身体を徹底的に鍛え直す為にトレーニングを開始するのだが、翔鶴の頼みでその内容を当初の予定から大幅に減らす事になってしまった……
トレーニング開始前、翔鶴に俺の今回のトレーニング内容を教えて欲しいと頼まれた為、俺は何気なくその内容を話したところ、病み上がりなのに無茶をしないでくれと翔鶴に烈火の如く怒られてしまったのである……
当初の予定では倒立片手腕立て伏せを左右それぞれ250回ずつ、ライトニングⅡで自身を宙吊りにした状態での腹筋250回、ライトニングⅡのアームに掴まった状態での懸垂250回、ライトニングⅡを担いだ状態でのスクワット250回、ライトニングⅡをバーベル代わりにしてのベンチプレス250回などを4セット行う予定だったのだが、25回ずつ3セットにまで減らされてしまったのである……、解せぬ……
その結果、午後の殆どの時間をトレーニングに使う予定が大幅に狂い、かなりの空き時間が出来てしまったのである……。さっきまで俺の傍にいた翔鶴も、これから訓練があるという事で今はここにはいない。いつもならこの時間をぼんやりと過ごすのも悪くはないとは思うところなのだが、ヌ級やゼッペーとやらのせいで混沌としている南方海域をどうにかしなければならない都合、そういう訳にはいかないのである
さてどうしたものか……、俺がそんな事を考えている時に、ふと視界の隅にここの工廠が映る。そう言えばヌ級対策の装備を考えないといけなかったな……。そう思った時には、既に俺の足は提督がいるであろう執務室の方へと向かっている最中であった。俺の新装備を作る為の許可を提督からもらう必要があったからである
俺の新装備の開発の際消費される資源関係で話が多少難航していたが、ヌ級の件が終わり次第消費した分を返す事を条件に、俺の新装備開発の許可が下りる。俺は許可をもらったところですぐさま工廠へと向かい、その扉を豪快に開け放ちながら中にいた妖精さん達に向かって大きな声でこう言い放つのだった
「これより俺の新装備を開発するのだが、サポート要員として1人作業員を借りていく!そうだな……、そこのバーナーを持っている妖精さん!悪いが俺の作業を手伝ってもらうぞ!」
俺に指名されたバーナー妖精さん、そう、昨日爆発事故を起こしたあの見習い妖精さんは俺に指名された時は自分が指名されている事に気付いていなかったのか、辺りをキョロキョロと見回していたのだが、指名されたのが自分である事に気付いた瞬間驚いた様にアタフタし始めるのであった
俺はそんな見習い妖精さんを問答無用でつまみ上げ、他の妖精さん達の邪魔にならないようにと工廠の隅の方へと移動を開始する。その際ここの工廠長と思わしき妖精さんに勝手な事をするなと抗議され思わず足を止めてしまったのだが、俺はこの事も含めて提督から許可を取っていると言ってこれ以上工廠長に構う事無く目的の場所まで移動するのであった
こうして俺は見習い妖精さんと共に、自分の新装備を作る事になった
作業中、俺は見習い妖精さんの事を気にかけながら作業を進め、妖精さんが困っている様子だったらすぐに話を聞きに行くようにした
分からない事は人に聞く、これは当たり前のような事だが実際にやろうと思ったら、それなにり勇気がいる事であると俺は思っている。故にその1歩を踏み出せず分からない事を分からないままにしてしまう者も中にはいるからな……
そんな時俺はすぐに声をかけて話によく耳を傾け、分からなかったところを丁寧に説明しながら手本を見せ、その後実際にやらせてみて上手く出来た時にはしっかりと褒め、しばらく作業を見守り安定して作業が出来るようになるところを見届けてから、自分の作業に戻る。その際、分からない事があったらすぐに聞くようにと釘を刺すのを忘れずにやるのであった
そんな調子で作業を進めていると、見習い妖精さんは俺が教えた事をスポンジが水を吸うような勢いで吸収していき、俺が作業方法を教える頻度は時間が経つに連れて段々と減っていくのであった
俺はこの妖精さんの笑顔を一目見た時に感じたのだ、この妖精さんは勇気を振り絞り人に聞くと言う大きな1歩を踏み出し、適切な作業方法を教えてもらう事が出来ればその技術をしっかりとモノに出来る、腕の良い技術者になるだろうと……
俺がそんな事を考えながら作業をしていると、見習い妖精さん……、いや、この妖精さんはもう既に立派な一人前だ、ならば……これからはバーナー妖精さんと呼ぶとしよう。バーナー妖精さんが駆け寄って来て、俺が頼んでいた作業が全て完了した事を報告してくるのであった
それからしばらくしたところで、俺の方の作業も完了し俺の新装備が完成する
その姿はガ〇ダム0083 スターダストメモリーに登場するヴァル・ヴァロそのものである。見た目の違いは強いて言えば色が青い事と後部スラスターの間にスクリューが付いているくらいだろう。大きさは俺の艤装であるライトニングⅡと同等である
こいつの正体は対潜水艦用無人潜水艇、その名を『テキサス』と言う。名前の由来はアメリカの原子力潜水艦である
普段はライトニングⅡに付いている4本のアームを使い、ライトニングⅡの底に固定する形で格納し、使用する際はそれらを外して海に投下、その後はライトニングⅡや艦載機と同じ感覚で遠隔操作出来るようになっている
そしてこの機体に使われている塗料は、戦治郎のところの妖精さん……、バーナー妖精さんと区別する為にハンマー妖精さんと名付けておくか……、ハンマー妖精さんが開発した物で、何と潜水時の深度が深くなれば深くなるほど色が暗くなっていき、周囲に溶け込め易くなる不思議な塗料なのである。この機体に使った塗料はハンマー妖精さんがこれを開発した際にサンプルとして譲ってもらった時の物だが、まさかこんな形で使う日が来るとは思いもしなかったな……
主武装は大型クローアーム2本と4連装対潜魚雷発射管2基、そして機首に内蔵されているオベロニウム製の杭を撃ち出す杭打機である
そう、こいつもライトニングⅡ同様変形し腕に装着出来るようになっているのである
その結果俺は両腕に杭打機を装着出来るようになったのである、いくらヌ級が杭打機を警戒していたとしても、繰り出す回数が増えれば対処しにくくなるだろうと言う考えからこのような形になったのである。後は純粋に対潜装備が欲しかったと言ったところだろうか?
これのおかげで向上したのは何も火力だけではない、前回の戦いでライトニングⅡを装着していた右腕の被害が比較的少なかった事から、腕の負荷の軽減とある程度の装甲強化も実現、防御性能も多少ではあるが向上したのである
また、こいつを腕に装着する際に機体を浮かせる為に使う後部スラスターを、ライトニングⅡに格納した状態で使えばライトニングⅡの最高速度が上昇し、腕に装着した状態でライトニングⅡのスラスターと併せて使えばアーマ〇ド・コアのクイックブーストのような芸当も出来るようになるのである
俺が完成したテキサスを眺めていると、今しがた出来上がったばかりのテキサスの周りには、バーナー妖精さんだけでなく工廠中の妖精さんが集まり、大歓声を上げているではないか
中にはバーナー妖精さんを称えている妖精さんの姿も見受けられる、どうやらバーナー妖精さんは他の妖精さんにも認めてもらえたようだな……
こうして、俺の新たなる力が誕生し、これからの戦いで猛威を振るい多くの敵に恐れられる事になるのであった