至らぬ点が多いと思いますがよろしくお願いします
初期艦着任
とある鎮守府に向かうトラックの中、漣は混乱していた
大本営管轄の軍学校を今年卒業し、新設されたとある鎮守府の初期艦として着任するように命じられたわけなのだが……
「難しい顔してどしたの漣~? もしかして酔った?」
と、声をかけてくるのは最上型重巡の3番艦の鈴谷である
「気分悪いなら横になったら? ハルルンの膝貸してもらってさ~」
「いや、それは榛名さんが迷惑……「そういう事なら榛名は大丈夫です!」えぇ……」
鈴谷とのやり取りに反応した自分の隣に座る金剛型戦艦の3番艦の榛名が答える
「大本営を発ってからかなり時間が経ってますからね、疲れも溜まっている事でしょうし車酔いしてしまう事もあるでしょう。それなら榛名の膝でよければお貸ししょう!」
「酔ったときは横になるとかなり楽になるからね~、それとも鈴谷の甲板ニーソの膝枕のがよかったとか?」
「いえ~、漣は別に酔ったわけじゃないんですよぉ、ちょ~っとばっかし考え事してただけなので~」
そう言いながら漣は軽く周囲を見渡す、その先には鈴谷や榛名以外にも2人の艦娘の姿が映る
ときどきスマホをいじっては幸せそうに微笑んでいるのは翔鶴型空母の1番艦の翔鶴
今は携帯ゲーム機で遊んでいるのは同じく翔鶴型空母の2番艦の瑞鶴
出発直後は4人で談笑していたものの、翔鶴のスマホに通知が来てからはおもいおもいに行動している
そう、これこそが漣が混乱している原因なのである
初期艦とは新設された鎮守府に一番最初に着任し運用される艦娘であり、初期艦がいなければ建造や開発なども出来ないはずなのだがどういう事か彼女達は全員漣が向かっている鎮守府に着任する事になっているそうだ
初期艦として着任するにあたって、提督がどのような人物なのかという期待とその鎮守府でうまくやっていけるかという不安が入り混じった感情を胸にトラックに乗り込んだ際、先に乗り込んでいた鈴谷にとてもフランクに挨拶されて呆気にとられたりしたものである
特に混乱を加速させたのは翔鶴の存在である
彼女はなんと練度99、装甲空母への改修も完了させている大本営の主力クラスの実力の持ち主なのである
そんな彼女が何故新設されたばかり鎮守府に行く事になったのかを聞いてみれば、翔鶴本人がその鎮守府に着任したいと元帥に直談判したらしいのだ
本人曰く、その鎮守府にいる人物に大きな恩がありその恩に報いたいとの事だったが、頬を薄っすらと紅く染めながら語るその姿からもっと別の思惑もあるだろうとその話を聞いていた者全員が思っていた
話の流れで鈴谷、榛名、瑞鶴の事も聞いてみたがどうやらこの3人は漣と同じく今年軍学校を卒業したばかりの新人で同じ軍学校にいたらしく(漣が在籍してるときに顔を見た覚えが無いので違う軍学校のようだ)、そこで知り合った候補生の1人が漣が着任する鎮守府の提督になると聞いて鈴谷と榛名がこれまた元帥に直談判、翔鶴がそこに着任すると知った瑞鶴も加わり何度も交渉した結果元帥が折れ着任出来るようになったそうだ
3人は軍学校時代に訓練中に大きな事故を起こしてしまい、酷い目にあったらしいのだがその候補生が影ながら何かしらの行動を起こした結果最悪の結末を迎える事もなく救助されたとのこと
「あのときばかりは本当にもうダメかと思いました……」
「鈴谷とハルルンなんか大破しちゃってたからね~、マジで死ぬかと思ったね……」
「いくらあたしに幸運の女神が付いてるって言っても、あの状況だったらね……」
当時を振り返りながら語る3人の表情はとても暗いものであった
「まぁ、鈴谷達がこうやって生きてるのも彼……、あぁ今日から鈴谷達の提督になるんだっけ、提督のおかげだからね、こりゃあ頑張って恩返ししないと女が廃るってねぇ!」
「はい!榛名、全力で参ります!」
「あたしは恩はあるけど2人ほどじゃないからあれなんだけど、それよりも……」
そう言いながら翔鶴を見る瑞鶴、その視線に気付いていない翔鶴はスマホをとても愛おしそうに両手で抱き、少女漫画に出てくる毛玉の様なものを漂わせながら幸せオーラを全方位に振りまいていた
「翔鶴姉をあんな風にした人が気になるのと、あの状態の翔鶴姉が心配で仕方ないってところかな……」
そう言った後、目的地に着くまでゲームでもやってるから着いたら教えてと言い残し瑞鶴はゲームを始めたのだった
話を聞けば聞くほど余計に混乱していく漣、自分はとんでもないところに着任する事になったのでは?と不安な気持ちが大きくなるばかりであった
そんな彼女の気持ちなど知らぬと思わせるかの如く、トラックは目的地へと進んでいく
「ようやく着いたーーーーー!!!」
鈴谷の声で目を覚ます漣、どうやら途中で眠ってしまったらしく榛名に膝枕をしてもらっていたようだ
その榛名も膝枕したまま眠っていたようで、驚いた表情でキョロキョロと辺りを見回していた
「あ、やっと着いたの? えらく時間かかったわね?」
そう言いながらゲーム機を仕舞う瑞鶴、どうやら本当にずっとゲームをしていたようだが車酔いしてはいないようだ
「トラックの中からじゃ風景も見えなかったから、ここが何処か分からないわねっと、翔鶴姉いつまでもスマホいじってないでさっさと降りるよ~」
「ふえ? って瑞鶴? もう到着したの?」
どうやら時間を忘れるほどやり取りが楽しかったらしい
鎮守府の正門に止められたトラックから降りて自分達の荷物を降ろしここまで運んでくれたトラックを見送った後、鎮守府の方へと向き直った時に鎮守府の中からこちらに向かって歩いてくる人物がいた
「本日着任する予定になっている方々ですね?」
自分達の近くまで来てそう尋ねてきた人物を見て漣は驚愕し、翔鶴は微笑みを返す、鈴谷、榛名、瑞鶴の3人は久方振りに会った友人にでも話しかけるように彼女の名を呼ぶ
「「「大和教官!」」」
「3人共元気にしていたようですね、と言っても貴方達が軍学校を卒業してからまだ一ヶ月も経ってないと思いますけど……」
苦笑しながら大和は3人に対応する大和を見て、漣は混乱はとんでもない領域に達していた
何故あの超有名な大和さんが此処にいるのか、翔鶴さんと同じケースなのか? つかここの鎮守府は出来たばっからしいのに翔鶴さんと大和さんを運用出来るの? それにあの3人はなんであんなに大和さんと親しげなの? 教官とか呼んじゃってるんだからそういう関係じゃないの?教官と訓練生でしょ?上下関係どうなってんの?そして今更だけど何で大和さんが秘書艦みたいに振舞ってるの?それ漣のポジションじゃないの?
大和を見てからピクリとも動かなくなった漣を見て
「どうしました漣さん、大丈夫ですか?」
と心配になって声をかける翔鶴、そういえばこの人も大和さんの事見ても殆ど動じてなかったけどこの事を知っていたのだろうか、そう思って尋ねようとしたところ
「さて、提督を待たせているので思い出話もこのあたりにしてそろそろ部屋に荷物を置いた後提督のところへ向かいましょう、案内しますので付いてきて下さい」
そう言って歩き出す大和、それに付いて行く4人、翔鶴に質問しようとしたところでの移動だったので質問については後でいいかと思い直していたら少々遅れてしまった為慌てて付いて行く事になった漣であった
コンコンコン
「提督、本日着任する予定になっている艦娘の皆さんを連れてきました」
「あいよ~、入ってどんぞ~」
今提督がいるという執務室の扉を大和がノックして要件を伝えた後に返ってきた返事がコレである
えらく気の抜けた返事なのだが、本当にこれでいいのだろうか礼式にうるさいはずの軍として大丈夫なのだろうか、漣はそんな事を考えながら入室、提督の気配が近づくに連れて緊張し動悸が激しくなってくる、艦娘の制服の一部という事で装備している艤装も重く感じる、それでも一歩また一歩と提督の元へ歩みを進める
提督が座る執務机の前に今日着任する事になっている5名が並び、初期艦という事で皆の代表で挨拶をする事になっている漣は1歩前に出て、軍学校で教えてもらった通りの敬礼をし挨拶を始めようとした
「綾波型駆逐艦さざ……な……?……?!!?!」
提督の姿を見た瞬間硬直する漣、その表情は絶望と恐怖の色で完全に染まっていた
「チィ~ッス、久しぶりじゃ~ん?」
「トゥ~ッス鈴谷ぁ、お前も元気してたみたいだな!」
「お久しぶりです提督、また貴方と共に戦える日が来るなんて……、榛名、感激です!」
「そう言ってもらえると俺も嬉しい限りよ、またよろしくな、榛名!」
「提督さん久しぶり、見たところ相変わらずみたいね」
「オッス瑞鶴、俺もいい歳してんだから早々変わるわけねぇつぅの」
「お久しぶりですね、前に会ったのは軍学校の試験の為に大本営で泊まり込みで勉強なさっていた時でしたね、瑞鶴共々どうかよろしくお願いしますね」
「ホント久しぶりだな翔鶴、試験勉強のときは色々教えてくれてありがとうな~ホント助かったぜ、鶴姉妹の活躍には期待してんぜ! あ、それはそうとあいつは今工廠いるから後で皆で行くべ」
こんな調子で、漣以外の艦娘とのんびりと挨拶する提督
「あの……漣さん……? 大丈夫ですか?」
そんな和やかムードの中その雰囲気にまるで合っていない表情で固まっている漣を心配して、提督の隣に控えていた大和が声をかける、その直後
「うわあああああぁぁぁっ!!!!!」
漣が叫び、あろうことか提督へ向けて主砲を撃つ、撃つ、撃つ、主砲の弾薬が空になりカチンカチンという音が周囲に響くまでその時まで、漣は提督に対して執拗に砲撃を行ったのだ
硝煙の臭いが充満する執務室の中、漣の行動に驚き硬直する艦娘達、目に涙を浮かべ怯えた表情をしながらもふーっ!ふーっ!と興奮したように息を荒げる漣、爆煙によって姿が見えなくなっている提督
「何をしているんですか、漣さん!!!」
大和の反対側に控えていた大淀が声を張り上げ漣に問い詰めるも漣からの返事は返ってこない、今の漣にとってそれはとても些細な事なのである、漣にとって今最も重要なのは目の前にいた提督の生死、それだけなのだから
「たぁっはっはっはっはっは!!! こりゃまた活きのいい漣なこってぇ!」
薄れゆく煙の中から聞こえてくる笑い声、まだ生きているか!そう思った漣は魚雷発射管から魚雷を持てるだけ引き抜き提督へ向けて投げつけようとした
「ちょっ!漣!それはマズいって!」
「落ち着いて下さい漣さん!」
「やめなさいって!流石にここで魚雷使うのは危ないから!」
そういって漣を取り押さえる鈴谷、榛名、瑞鶴の3人
「止めないで下さい! ていうか何で皆さんは攻撃しないんですか! おかしいじゃないですか!」
「漣さん落ち着いて下さい、あの人は本当にこの鎮守府の提督なのです、元帥直々にスカウトされたにも関わらず律儀に軍学校に通って正式な手続きを済ませてから着任した正真正銘の新人提督なんです!」
「嘘だっ!!! 仮にそれが本当だとしても、何で……何で……っ!」
完全に興奮状態になった漣と大淀のやり取りを尻目に
「提督! 大丈夫ですか!?」
そう言って提督に駆け寄る翔鶴、突然の事過ぎて少々パニックになっているのかもしれない
「大丈夫大丈夫、練度1の駆逐艦の砲撃なんぞ屁でもないさ、いあ、流石に魚雷はまずいだろうけど」
などとのたまう提督
「やはりこうなってしまいましたか……」
そう言いながら自分のハンカチを使って提督の顔に大量に付いた煤を拭う大和
「うん、やっぱ着任挨拶に来る奴の艤装はメンテナンスするって事で工廠に置いてきてもらうようにすっか、重巡や戦艦にこれやられっと俺でも痛いし、っとサンキュー大和もう大丈夫だ残りは自分でやっから」
そう言ってところどころに煤が残っている顔を取り押さえられている漣に向ける、と同時に漣が叫ぶ
「深海棲艦の! それも上位中の上位である鬼姫クラスのが提督なんかやってんですか!!!」
「お、そうだな!」
そう、漣が言う通りここの提督の姿は人間ではなく人類が今敵対して戦争している真っ最中の深海棲艦の、それもかなり強力な鬼級や姫級等に分類されその中でも上位に存在する個体である『戦艦水鬼』のそれだったのだ
自分の妄想をいざ文章にしようとすると、結構大変なんですね……
それはそれで楽しいんですけどね