これこの調子で話を進めていたら、現代編に時間軸戻すまでに500話近くになりそうです……
五十鈴達は光太郎の案内で辿り着いたババス島にて、五十鈴達にとってはとても信じられない光景を目の当たりにするのであった
そこには祭でよく見かける物よりやや大きめの屋台が1つだけポツンと存在し、その周囲には屋台の料理を食べる為に設置されたテーブルや椅子が並び、多くの深海棲艦が屋台の料理に舌鼓を打っていたのである
それだけならここが深海棲艦の拠点だと言う事にしてそこまで驚かずに済んだのだが、その中にほんの一撮み程度ではあるが艦娘が混ざっており、深海棲艦と談笑しながら屋台の料理を一緒に楽しんでいたのである
「ここは一体……?」
その光景を目にして驚愕する千歳がそう呟いたところ
「ここは主にゼッペーのせいで消滅してしまったラバウル基地の代わりに、出撃や遠征で南方海域にやって来た艦娘達の休憩ポイントとして使えるようにと、俺達の仲間である出雲丸 翔が提案し設置した場所なんだ」
千歳の呟きを聞いた光太郎がそう答える、ここは艦娘の為に作られた場所だったのか……、しかしその割には深海棲艦の数の方が多いような気がするのだが……?光太郎の言葉を聞いた五十鈴が内心そう思っていると……
「本来はそのつもりで設置したんだけど、今はこの場所が長門さん達以外の艦娘さんに全く認知されてなくて、偶然訪れた吹雪ちゃん達以外の艦娘が来た事が無いんだよね……」
台拭きを片手に握った泊地水鬼が、そう言いながら五十鈴達の前に姿を現した。その正体を知らない五十鈴、千歳、千代田の3人はすぐにその泊地水鬼の事を警戒するのだが……
「翔、屋台の方にいなくていいのか?」
「ここにいる方々の注文は全て捌きましたからね、今は龍驤さんだけでも何とかなると思います。それで余裕ある内に食べ終わった方々のところを片付けようと思って出て来たところで光太郎さんが長月ちゃん達を連れて来ているのを見かけたので、挨拶しようとこっちに来たんですよ」
光太郎と泊地水鬼のやり取りを見てこの泊地水鬼が光太郎の仲間である事を察し、警戒心を解いてお互い自己紹介をするのだった
「五十鈴さん達が長門さんが言っていた佐世保の遠征部隊なんだね、本当に協力感謝するよ」
自己紹介が終わったところで翔がそのような事を言い、それを聞いた五十鈴達が頭上に疑問符を浮かべていると、その様子を見ていた長月が何かを思い出したかのようにあっと言う声を上げる。何事かと思い話を聞いてみると、どうやら長月が長門から頼まれていた話を五十鈴達に説明していなかったのを今思い出したのだとか……
「なるほど……、私達が今やっている水上機基地建設任務には、そんな隠し任務があったのね……」
「本来の任務である水上機基地建設も戦闘禁止を違反する艦娘達を取り締まる為だけでなく、私達を襲った連中や凄く危険なヌ級を警戒する為なのね……」
「その上でここの知名度を上げる事も任務の中に含まれているのね……、これって思った以上に責任重大なんじゃ……?」
長月から説明を受けた五十鈴、千歳、千代田がそれぞれの感想を口にする
「穏健派深海棲艦や俺達の事は長門さんの報告書で多分知れ渡ってると思うけど、まさか長門さん達がここまで穏健派や俺達と深い関係にあるとは誰も思わないだろうな~……」
「その関係を今表沙汰にしちゃうと、日本海軍の強硬派に燃料を与えかねないから長門さんはこういう形でお願いしたんだと思います。そしてこれを長月ちゃんがいる佐世保にお願いしたのは、事情を知っている長月ちゃん達なら任せられると思ったからでしょうね」
3人の言葉を聞いた光太郎と翔が、それぞれ思った事を口にする
実際のところこの関係を表沙汰に出来るのならば翔達の店があり、常に翔と龍驤の艦載機が飛び交うババス島の隣にあるアンベル島に、わざわざ水上機基地を建設する必要が無いのである
だが長門達と穏健派や海賊団との関係は現状表沙汰に出来るものではない為、このような事になっているのである。もしこの事が強硬派にバレてしまえば、現元帥は強硬派にその地位を引きずり降ろされ強硬派主体の大本営が誕生し、この戦争が長引く可能性が高まってしまうのである
「そのあたりの事情を考えると、可能な限り穏健派に所属する鎮守府や泊地に所属している艦娘を中心に、この屋台の事を伝えていくべきね……」
「方法については遠征中に会った時や、演習の時にこっそりと伝える感じになると思うけど……、問題は私達じゃその娘達が所属しているところが穏健派か強硬派か判断し辛い事ね……」
五十鈴と千歳が隠し任務について頭を悩ませていると……
「だったらそれを知っている人に、そこらの事情を直接聞けばいいんじゃないッスか?」
不意に誰かがこの話に割って入って来たのである、五十鈴達がその声が聞こえた方に視線を向けると、そこには焼きうどんを頬張る防空棲姫、関西風お好み焼きを食べる重巡棲姫、広島風お好み焼きを食する重巡棲姫(?)の姿があったのである。その3人の中で防空棲姫が五十鈴達に向けて手を振っているところを見ると、どうやら先程の発言はあの防空棲姫が発したものだと分かった
「誰よあんた?」
千代田が不審がりながらその防空棲姫に声をかける
「自分は今臨時で穏健派の技術班の班長やらせてもらってる、秋月 護って言うモンッス」
「本来なら俺の隣で広島風お好み焼き食ってる重巡夏姫、熊野 伊吹って言うんだがこいつが穏健派の技術班の班長なんだが、人工衛星打ち上げ以降技術班の人達に妙に気に入られたマモが技術班の人達にお願いされて、ガダルカナルにいる間臨時で班長する事になったんだわ……。っと俺は愛宕山 重雄ってモンだ、皆シゲって呼んでるから俺の事呼ぶ時はシゲで頼む」
「むお?
すると防空棲姫と重巡棲姫が自己紹介をし、シゲの発言により重巡夏姫だと判明した伊吹が、広島風お好み焼きを口いっぱいに頬張りながら喋り出す。行儀が悪いので、口の中の物を飲み込んでから会話に参加して欲しいものだ……
「それで護だったかしら?日本海軍の穏健派と強硬派の事情を知っていて、私達が直接話が出来る人と言うのは一体誰の事?そして私達はその人とどうやって連絡を取ればいいのかしら?」
五十鈴が護に対してそう問い詰める、日本海軍の穏健派と強硬派の事情を知っている人物なんて早々いる訳がないし、もしいたとしても簡単に会う事が出来る訳も無く、そこらの事情を直接聞くなんて到底出来るものではない、五十鈴はそう思っていたのである
「そんなの簡単ッスよ、こいつを使えばッスけどね」
護はそう言いながら腰に付けたポーチから何かを取り出しテーブルの上に置く
「これって……、長月が装着している通信機……?」
「その通りッス、話は前もって聞いてたッスから長月以外のメンバー用のを準備しておいたッス。これを使えば長門さんから日本海軍のハト派とタカ派の事情を聞けると思うッスからね」
護が取り出した物を見た皐月がそう呟き、その呟きを聞いた護が五十鈴の質問にこのような形で答えるのだった
「ねえねえ、これって文月も貰ってもいいの~?」
「その為に準備したモンだからな、大事に使えよ?」
「あ~……、それで光太郎さんといつでも通信出来るようになった訳ッスけど、頻繁に通信するのはしばらく待って欲しいッス。光太郎さんも南方海域の巡回とかあって忙しいッスからね」
文月の問いにシゲが答え、護が通信頻度について注意したところ、文月はそれを了承し通信機を受け取る
「もしかして護さん達は、これを僕達に渡す為にここに来たの?」
皐月は通信機を受け取り、装着しながら護に尋ねたところ……
「いや、マモ達はお前達の水上機基地建設の手伝いとしてこっちに来てるんだわ、んで今は丁度飯の時間だったから皆揃って翔のとこで楽しく食事中って訳よ」
護の代わりにシゲがその質問に答えるのだが、その言葉を聞いた直後に皐月の腹の虫が鳴る……
「グアムあたりからここまで、ずっと走りっぱなしだったみたいだからそりゃお腹も空くだろうね……。そういう訳で佐世保の皆、メニューの中から食べたい物を言ってくれたらすぐに作るよ。今回はお近付きの印って事で無料で提供させてもらうよ」
「佐世保勢はしっかり食っておけよ~?これから俺達と一緒に水上機基地建設やるんだからな~?建設中に腹減って力出ませんとか言わずに済むようにしとけよ~?」
皐月の腹の虫を聞いた翔がそう言って屋台の方へ向かい、シゲが食後の予定を五十鈴達に伝えたところで、五十鈴達は翔の後を追い料理を注文、料理を受け取り席に付いたところで綾波の代わりに神風を加えた吹雪達と挨拶を交わし、翔の料理を堪能しながら吹雪達と歓談し交流を深めるのであった