※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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鬼と海防艦と食人鬼

「あ~、風が気持ちいいな~」

 

「ホントだね、ご主人様!」

 

輝の代わりに午後から巡回任務に就いた戦治郎が、巡回中自身の肌で感じる風の心地良さに思わずそう呟くと、大五郎に乗った太郎丸が戦治郎の呟きに同意するように声を上げる

 

本来戦治郎は今日1日ずっとリチャードの手伝いをやる予定だったのだが、午前中の巡回を済ませその内容を報告しに来た輝の前で、リチャードがつい口を滑らせてシゲ達が午後から水上機基地を建設する事を話してしまったのである

 

それを聞いた輝が、自分も水上機基地建設に参加したいと駄々をこねるのだった。最初はしっかりとダメだと言うつもりだった戦治郎だが、輝が単独で強硬派の拠点建設計画を粉々に破壊した事を知ってからは、そのご褒美という事で仕方なく参加を認めて代わりに戦治郎が午後からの巡回任務に就く事になったのである

 

「最近のご主人はリチャードさんの手伝いばかりで、部屋に籠りっきりで中々外に出てなかったはずだから、余計そう感じるんだと思うんだぁよ~」

 

「つか、ご主人を外で見るのマジで久しぶりじゃね?あんま俺達の事放置してっといつか反乱起こしちまうぞ~?それが嫌だったらもっと俺達に構え~」

 

2人の会話を聞いていた大五郎も自身が思っている事を口にし、その横から戦治郎と並走する弥七が可愛らしい脅しをしてくるのだった

 

そう、戦治郎はこの巡回任務をやる事になった際、丁度いいとばかりに最近構ってあげられなかった長門ペット衆全員を連れて巡回任務をこなす事にしたのである

 

太郎丸達以外のペット衆だが、金次郎は友達のハンマー妖精さんと一緒に戦治郎の肩に腰掛けており、甲三郎は大五郎の首の間に座る太郎丸の膝の上にライドオン、鷲四郎は先行して偵察を行い、六助は直掩機の代わりとして戦治郎の頭上を飛び回っている

 

「悪い悪い、俺ももっとお前達と遊んでやりたいんだがな~……、ほら俺達この世界に来てからずっとバタバタしてるだろ?今回も本来は巡回任務な訳だし……」

 

「弥七、気持ちは分かるけどご主人様にあんまり無理言っちゃダメだよ?」

 

弥七の言葉を聞いた戦治郎がそう言うと、ペット衆筆頭の太郎丸が弥七に対して諭すように注意する

 

「わ~ってるよそのくらい、さっきのは俺達ペット衆がこう思ってるっての知って欲しいって事で言っただけなんだって。俺だって今のご主人の背中に、どれだけの命が乗っかってるのか分かんねぇ訳じゃねぇんだし」

 

太郎丸に注意された弥七は、唇を尖らせながらそう返す。今の戦治郎は自分達や長門屋の面々だけでなく、海賊団に所属する全ての艦娘達の命も背負って立っているのである。その事実を最も近い位置から戦治郎の事を見続けているペット衆が、気付かない訳がないのである

 

「あ~……、お前達にまで気を遣わせてすまんな……」

 

弥七の言葉を聞いた戦治郎が、つい申し訳なくなってそう言うと……

 

「気にしないでご主人様、僕達は大丈夫だから。それよりもご主人様が辛くなった時はちゃんと教えてね?その時は僕達がご主人様の事支えてあげるから!」

 

「ご主人の事は今度こそオラがお守りするだぁよ~!」

 

「もしご主人の邪魔する奴がいたら、俺がぶっ飛ばしてやんよっ!」

 

「キィー!キキィーッ!」

 

ペット衆が思い思いの言葉を口にする、言葉を喋れない金次郎や甲三郎も太郎丸達に呼応するようにはしゃいだり、砲身を上下にピコピコさせて自分達も太郎丸達と同じ気持ちである事を表現する

 

そんな時だった……

 

『旦那っ!小さい女の子達があのヌ級に……、ああっ!!?』

 

先行して偵察していた鷲四郎から、今までの空気を粉砕するような通信が入る

 

「ヌ級だとっ!?鷲四郎、今何処にいるっ?!女の子達は無事なのかっ!??」

 

『……すまねぇ旦那、1人食われた……。場所はモートロック諸島付近だ……』

 

鷲四郎から場所を聞いた戦治郎達は、自身が出せる最高速度で現場に急行するのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたっ!ってありゃ海防艦じゃねぇかっ!!?」

 

ヌ級に襲われている少女達の姿を確認した戦治郎が、思わず驚愕の声を上げる

 

少女達の内の1人はヌ級に艤装を剥ぎ取られた状態で首を掴まれ、足先からジワリジワリと噛み千切られながら絶叫染みた悲鳴を上げていた。ヌ級はその姿を今残っている2人の海防艦に見せつけ、その光景に怯え切った少女達の表情を楽しみながら手に持った海防艦艦娘を食らっていたのである

 

「何でっ!?何で弾が出ないんだよっ?!引き金引いてるだろっ?!?何で出ないんだよっ??!」

 

そう叫びながら弾切れを起こしている主砲の引き金を何度も引いているのは佐渡、仲間を助けようとしているのだろうが、パニックを起こしているせいで主砲が弾切れを起こしている事に気付いていないようである

 

「あ……、あぁ……」

 

歯をガチガチと鳴らしながら海上に座り込んでしまっているのは占守、どうやらヌ級の凶行を目の当たりにしたせいで、完全に恐怖に飲まれて立ち上がる事すら出来なくなっているようである

 

その様子を見た戦治郎は何とかヌ級達の間に割って入ろうと更に速度を上げようとするのだが、これ以上速度を上げる事が出来なかった為内心舌打ちする

 

そうしている間にヌ級は遂に手に持っていた海防艦を食い尽くし、今度は佐渡の方へと手を伸ばす……

 

「何する気だてめぇっ!!!止めろっ!!!こっちにkガッ!!?この……っ!はな……っ!?」

 

佐渡の首を掴んで吊し上げ、佐渡の艤装を剥ぎ取ろうとするヌ級。このままでは佐渡もヌ級の餌食になってしまう!そう思った戦治郎は……

 

「大五郎っ!グスタフドーラッ!!!」

 

「あいさ~!!!」

 

戦治郎は大五郎に指示を飛ばし、ヌ級にグスタフドーラの砲口を向ける。そして先程の戦治郎の叫び声が聞こえたのか、ヌ級がこちらを向いたところで……

 

「撃てぇっ!!!」

 

戦治郎の声を合図に大五郎がグスタフドーラを発射する、ヌ級はこちらに視線を向けた直後は余裕の表情を見せていたのだが、グスタフドーラから放たれた砲弾を目の当たりにした途端、ほんの少し焦りを見せ手に掴んでいた佐渡を占守がいる方へと投げ捨て、両腕で自身の頭部を守ろうとする

 

そして砲弾がヌ級の両腕に着弾すると、凄まじい大爆発を起こして占守と佐渡をその衝撃波で吹き飛ばす。それによって2人は気絶してしまったが、ヌ級から距離をとる事に成功していたりする

 

それからすぐ、戦治郎がヌ級に接近し両者が対峙する事になったのだが……

 

『てめぇは……、あの時のハラキリ野郎か……っ!?』

 

戦治郎の姿を見たヌ級が、忌々し気にそんな事を言ってきた。どうやらヌ級はサムライとハラキリの違いが分からず、色々とごちゃ混ぜにして戦治郎の事をそう呼ぶのであった

 

『誰がハラキリ=セップク丸だ糞食らい、っつってもてめぇなんざに名乗ってやる名前は持ち合わせちゃいねぇがなぁ……』

 

戦治郎がそう言いながらヌ級をギロリと睨みつける、が、内心ではかなり焦っていたりするのである

 

前回は自分と光太郎と輝の3人で挑んでようやく撃退する事が出来たのだが、今回は自分1人……、正直自信がないのである……

 

取り敢えずヌ級を何とか引き付けて海防艦達が逃げる時間だけでも稼げればいいか……、戦治郎がそう思っていた時である……

 

「大丈夫だよご主人様、ご主人様には僕達がいるから」

 

まるで自分の不安を感じ取ったかのように、太郎丸が不意にそんな事を言ってきたのである

 

「てめぇがあの空をやった奴か……、上等だ!俺達がここでてめぇをぶっ倒して空の仇とってやんよっ!!!」

 

「おめぇがどんな事をしようとも、ご主人には指一本触れさせないだぁよぉっ!!!」

 

そして太郎丸の声を皮切りに、ペット衆が目の前の敵を打ち破らんと気合の籠った声を上げる

 

それを聞いた戦治郎は先程自分がどれ程馬鹿げた事を考えていたかを思い知り、悔い改めてヌ級を両の眼でしっかりと見据え、こう言い放つのであった

 

『覚悟しやがれ糞食らい野郎、これから俺達がてめぇがこれまでやって来た事……、いや……、この世に生まれて来た事を後悔させてやんよっ!!!』

 

こうして、トラック泊地近海にて戦治郎達とヌ級の戦いの火蓋が切られるのだった

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