佐渡達が戦治郎達に保護されてから数日後……
『佐渡達は悟達の尽力のおかげで何とか回復したんでな、そろそろトラックに帰してやろうと思ってるんだわ』
『んで、その佐渡達をトラックに連れて行く役を俺達にお願いしたいと……』
戦治郎とショートランド泊地の提督が通信でそんなやり取りを交わしていた
今提督が使用している通信機は、テキサスを作り上げた件とバーナー妖精さんを鍛え上げた件、そして終業後毎日欠かさず工廠の設備の点検と修理を行っていた件で妖精さん達に認められ、今ではショートランド泊地の工廠妖精さん達のまとめ役となった空が重役だらけの通信会議の後に新たに作り上げたものである
この通信機は提督だけでなく、翔鶴は当然として日向、雲龍、川内、時雨、夕立、江風、そして元ラバウル基地所属の球磨、菊月、三日月にも渡してある。球磨達は提督と話し合いラバウル基地にいた仲間達の仇討ちを理由に、正式にショートランド泊地に異動、着任する事にしたのである
そしてショートランド泊地所属の艦娘達は、穏健派深海棲艦と提携してゼッペーやヌ級から事情を知らない艦娘達を守る為に光太郎達同様巡回任務を行っているのである。その関係で事情を知っている艦娘達全員に通信機を渡しているのだ
『ああ、本当は俺達が連れて行くのが筋なんだが……』
『それをやったら、トラックの面々に集中砲火されるのが目に見えてるからな……。しかも佐渡達も裏切者扱いで一緒に処分しようとするだろうしなぁ……』
2人がその光景を想像したのか同時に溜息をつく
今のトラック泊地の提督は所属している艦娘6人をヌ級に殺害されて復讐鬼と化し、その復讐を果たす為に協定を結んだラバウルが消滅した事で怒り狂い、海防艦達が行方不明になった事で完全に修羅へと豹変してしまったのである
最早正義や平和、戦果など知った事ではなく、只只管全ての深海棲艦を根絶やしにする為だけに戦っているトラック提督の前に、戦治郎達が佐渡達を連れてノコノコと現れたらどうなるかなど火を見るよりも明らかなのである……
戦治郎達が駄目なら海賊団の艦娘ならどうか?となるところだが、海賊団の艦娘は日本海軍のデータベースに存在しない存在なのでもし怪しまれて調べられたらアウト、五十鈴達や吹雪達に関しては、向こうにも都合があると言う理由で無理だろうと判断したのである。そうして白羽の矢が立ったのがショートランド泊地なのだ
『まあそう言う訳で、佐渡達の事お願いしたいんだわ』
『分かった、そう言う事ならその件はウチが引き受けよう。……それで例の件の進捗は……?』
提督が佐渡達の件を承諾したところで、戦治郎にそう尋ねる
『技術班に聞いてみたんだが、原寸大は無理なんだと……』
『やはり駄目か……』
『いや諦めんなって、原寸大は流石に今は無理だけど、リチャードさんのメタルウルフみたいにパワードスーツみたいな感じにしていいなら出来るって言ってたぜ』
『何ぃっ!?OKOKOK!それでもいいからお願いしますっ!!!』
2人がそんなやり取りを交わし、提督がそう言いながらそれはそれは美しい角度45度のお辞儀を、通信機の先にいる戦治郎に向けて披露する
そう、提督は自分用ガンダムの事を諦め切れず、その事を戦治郎にお願いしていたりするのである。それを聞いた戦治郎は面白そうだと言う事でリチャードの許可を取り、技術班にこの話を持ち掛けたのである。因みに許可を出したリチャードは……
「彼の気持ちは痛いくらい分かるよ、僕だって最初はメタルウルフではなくてACのホワイト・グリントをお願いしたクチだからね☆」
との事だった、それが何故メタルウルフになったのかについては、技術班がその話を聞いた途端大統領だったらコレッ!と言った具合に技術班全員がリチャードに猛抗議したせいである
こうして、佐渡達は後日ガダルカナル島からショートランド泊地に向かい、空達と合流後アンベル島にある巨大要塞『海戦ちゃんぽん要塞』(命名者:翔、海鮮ではなく海戦との事)で休憩と補給を済ませた後トラック泊地に向かう事になったのである
「久し振りの出撃か……」
戦治郎達の通信の一部始終を聞いていた空が、作業の手を止めてそう呟く
話によると戦治郎が奴に深手を負わせたとの事だったが、正直に言えばそれがちょっとした不安材料になっていたのだ
手負いの獣は生き延びる為に必死になり、何をしでかすか分かったものではないからである……。もしかしたら佐渡達をトラック泊地に送る道中で奴と遭遇するかもしれない……、そうなった時自分は奴を倒せるのだろうか……?空の頭の中にそんな不安が過る
しかし空はすぐに頭を振り不安を頭の中から追い出そうとする、自分はその時の為に己を1から鍛え直し、対抗する為の装備まで準備したのである、それに戦治郎が出来た事が自分に出来ない筈が無い、今度こそ奴を倒し翔鶴を守り抜く!空はそんな思いを胸に秘めながら、自身の頬を両手で叩き気合いを入れるのだった
その直後、空の懐で何かが震える。空はそれに気付くと懐に手を伸ばし、青と黒のツートンカラーのスマホを取り出して操作して画面を表示させる
このスマホだが、空が寝たきりだった時色々と世話をしてくれた翔鶴に、そのお礼として作ったお揃いスマホの片割れなのである。因みに翔鶴用の物は赤と白のツートンカラーとなっている
このスマホは護の衛星回線を使う事で、何時、何処にいても空と翔鶴限定ではあるが通話やSNS機能を使えるようになっている。更に手持ちのスマホのSIMカードを差し込めば、普通のスマホとしても使用出来るようになっているのである
更に更に、GPS機能もあるのでお互いがどんなに離れた場所にいても正確にその位置を知る事が出来るようになっており、翔鶴の身に何かあった際すぐに空が文字通りすっ飛んで行けるようになっているのである
そこにはメッセージを受信したとの通知が入っており、空はそれを開いて内容を確認する。そこには……
【先程の提督達の通信はお聞きになりましたか?】
このようなメッセージが書かれていた、差出人は翔鶴となっていた
空はそのメッセージを黙読すると……
【ああ、最初から最後までな。恐らくその道中で再び奴と対峙する事になりそうだ、俺の勘がそう言っている】
すぐさまこのようなメッセージを入力し、送信するのであった。すると対して間を置く事も無く翔鶴から返事が届き
【やはり……、私も提督達の通信を聞いてから妙に胸騒ぎがして……】
その内容から、空は翔鶴が不安を抱えている事を察し……
【安心しろ、翔鶴の事は俺が絶対に守り徹してみせる。前回のような醜態を晒すつもりも更々無い、その為の準備もして来た、だから翔鶴もそんなに不安になるな】
このような返事を返すのであった、するとまたメッセージが届き
【分かりました、ありがとうございます空さん。でも本当に無茶だけはしないで下さいね?あの時は私だけでなく、皆が空さんの事を心配していたんですから!】
翔鶴からこのようなメッセージが届き、それを読んだ空が何とか翔鶴の不安を取り除けたかと安心していると……
【それはそうと……、空さんの怨敵との戦いはどうですか?】
このようなメッセージが届いた、それを見た空は
【問題ない、そろそろ決着を付けてやろうと思っていたところだ】
【そうですか……、その、頑張って下さいね?】
こんなメッセージを返信すると、翔鶴から応援メッセージ(?)が届き、身体中に力が漲るのを感じるのであった
その後空は短く【ああっ!!!】と返信して、作業……、いや、空にとっての決戦を再開すべくショベルを手に持ち、深く深く穴を掘り始めるのであった……
そう、これは空と工廠裏に巣を作った蟻との戦いなのである、空が設備の点検ついでに施設の点検を行っていた際、たまたま工廠の裏に蟻の巣があるのを発見し、空は前日の終業時間からずっとこんな調子で穴を掘り巣を壊滅させていたのである
そして先程翔鶴からの声援(?)を受けた空は、決着を付ける為に掘るペースを上げどんどんその穴を深く掘り下げていくのであった……
それから数時間後、提督の下に空が工廠裏で温泉を掘り当てたと言う連絡が届くのであった……