空の温泉発掘から数日後、遂に佐渡達をトラック泊地へ送り届ける日がやって来た
その日佐渡と占守は穏健派の護衛艦隊と、翔鶴達の代わりにショートランド泊地近海の警護を担当する事になった光太郎と共にショートランド泊地へと向かうのであった
その道中で強硬派との戦闘となったのだが、光太郎の活躍により強硬派は無残にも蹂躙されるだけの存在と成り果てるのであった
その際、光太郎は泊地に着き次第補給を受ける事になっていた為、佐渡達の前で遠慮無しにレーザー砲と化した放水砲の一斉射撃、『オリオールロード』を横薙ぎにぶっ放すのだった
その巨大な光の奔流に飲み込まれ、次々に消滅していく強硬派の姿を見た佐渡と占守はこの日初めての驚きを体験するのだが、この時彼女達はまだ知らなかったのである……、この先にまだまだ多くの驚くべき事実が存在する事に……
その後、彼女達はショートランド泊地に到着するのだが、そこですぐに2回目の驚きを体験するのだった。何とショートランド泊地全体から温泉特有の匂いが漂っていたのである、佐渡達がこれは一体どういう事なのかと考えていると、今回佐渡達をトラック泊地に送り届ける役を引き受けた日向、翔鶴、雲龍、川内、時雨、江風の6人が彼女達の前に姿を現すのだった
そこで佐渡達はこの匂いの原因を日向達に尋ねると、驚くべき事につい先日この泊地の工廠裏で温泉が発掘されたと言うではないか。佐渡達はここで3度目の驚きを体験したのであった
その辺りの話を詳しく聞こうとしたところで今度は空が姿を現す、そこで日向が透かさず佐渡達に空の事を紹介し、空が単独で温泉を掘り当てた事を佐渡達に伝えるのであった。佐渡達はここで4度目の驚きでそろそろお腹一杯かもしれないだろうが、この先にもまだ驚きポイントは存在するので我慢して驚いてもらおう
こうして佐渡達は無事に空達と合流し、光太郎達に別れを告げて今度は海戦ちゃんぽん要塞へと向かうのであった。尚、この際穏健派の護衛艦隊は泊地近海の護衛を担当していた者達と交代して、佐渡達の警護を続行するのであった
その道中で佐渡達は5度目となる驚きに遭遇する、言わずもがな空の飛行する艤装ライトニングⅡを目の当たりにしたからである。その後空から乗ってみるかと尋ねられた2人は、人生初の艤装での飛行を体験するのであった。尚、その際時雨と江風も便乗した為、ライトニングⅡ初の5人乗りを達成するのであった
それからしばらく航行したところで、一行は無事に海戦ちゃんぽん要塞へ到着するのであった。
「ここが海戦ちゃんぽん要塞……、すっげぇでけぇな……」
「とても大きな要塞っすね~……、でもそれよりも……」
2人が本日6度目の驚きを体験しながら口々にその巨大要塞を見た感想を述べるのだが、その途中で不意に占守の腹の虫が鳴ったのである
「名前を聞いてたらお腹が空いてきたっしゅ!誰っすかこの要塞にこんな名前を付けたのは~っす!!!」
「その……、何かごめんね……?」
占守が声を張り上げると、唐突に申し訳なさそうな声が聞こえて来たのである。占守達が慌ててその声が聞こえた方角を見ると、そこにはしょんぼりした泊地水鬼が立っていたのである
「君は……?」
「初めまして、僕は出雲丸 翔です。南方海域の問題が解決するまでの間、ここの管理人と料理人を任されています」
日向が名前を尋ねると、泊地水鬼は素直に自分の名前を名乗るのだった
「管理人と料理人か……、屋台はもうやらないのか?」
「ええ、こっちの方が設備が整っていますからね。シゲ達もここの工廠で作業する事にしたみたいです」
空がふと翔にそんな事を尋ねると、翔は苦笑いを浮かべながらそう答えるのであった
「この人が噂の翔さンか~……、確かここで飯食ってからトラックに向かう予定だったっけか?翔さンが噂通りの人ならここの飯はすっげぇ期待出来そうだなっ!」
「夕立が凄く悔しがっていたね……、翔さんのご飯を食べてみたかったって……」
「噂って……、空さん、僕の事ショートランドの皆になんて言ったんですか……?」
江風と時雨のやり取りを聞いた翔が、空の事をジト目で見ながらそう尋ねる
「長門屋一の料理人である給糧泊地水鬼、そのレシピのレパートリーはもしかしたら間宮を超えるのではないか、と言っただけだが……?」
相変わらず無表情でそう答える空、翔はその言葉を聞いた途端……
「空さん……、僕の与り知らないところで僕のハードル上げるの止めてもらえませんか……?」
翔はそう言いながらその瞳を血の様に真っ赤にするのだった、それを見た全員が思わず短い悲鳴を上げてしまう
「ハァ……、取り敢えず付いて来て下さい。皆さんの期待に添えられるような物が作れるか分かりませんけど、精一杯皆さんを楽しませる事が出来る物を作りますね」
翔は溜息を吐いた後そう言って要塞の中へと入っていく、その後我に返った面々は慌てて翔の後を追い、要塞の食堂へと辿り着くのであった
「凄い……、こんなに沢山の深海棲艦と艦娘が同じ空間で食事している……」
食堂の中に広がる光景を目の当たりにした雲龍が、思わず感嘆の声を漏らすのであった
「皆さん、楽しそうに談笑しながら食事を楽しんでいますね……」
雲龍に釣られるように翔鶴が呟く、その会話内容に耳を傾けてみると何処のポイントが資源を集め易いかについて話している者や、この個体はどうしてもこの部分に難があるなど自身の弱点を教えてしまっている者までいるのである
「吹雪ちゃん達と五十鈴ちゃん達が頑張ってくれたおかげで、こんなに沢山の穏健派派閥の艦娘ちゃん達が来てくれるようになったんだよ」
不意に声を掛けられた面々は驚きながらそちらに視線を向ける、その視線の先には1人の戦艦仏棲姫が立っていたのである
「皆さん初めまして、リチャードさんから翔君達の手伝いをするようにと頼まれて来た
そう言って璃栖瑠は空達に向かってお辞儀をしてくるのであった
「璃栖瑠とは珍しい苗字だな……」
「でしょう?僕、フランスのクォーターなんですよ。祖父がフランス人だったんですけど、日本の事をとても気に入って帰化したんです。今の苗字も
空の質問に対して、璃栖瑠はそう返してニッコリとほほ笑むのであった
「璃栖瑠さ~ん、皆さんを席に案内したら手伝ってもらえますか~?!」
「ごめんごめん!ちょっと待っててねっ!っという事で今から皆さんを席に案内するね」
厨房の方から翔の声が響き渡ると、璃栖瑠は翔に軽く謝罪をしてから空達を席の方へと案内し始めるのであった
「今日は翔君が皆さんに食べて欲しい物があるって事で張り切っていたよ、かなりの気合いの入れようだったから期待してもいいかもね。っとそうそう、僕は普段はカフェのマスターをやってるからコーヒーには自信があってね、もしよかったら食後のコーヒーをご馳走するよ」
空達を席に案内した璃栖瑠はそんな事を言い残し、翔の手伝いの為に厨房の方へと姿を消すのであった。それからしばらくすると……
「皆お待たせ、璃栖瑠さんから聞いていたと思うけど、ちょっと皆に食べて欲しいものがあってね。申し訳ないと思ってるけどメニューをこっちで勝手に決めさせてもらったよ」
そう言って翔が空達の前に差し出して来たのはちゃんぽんだった
「うわぁ!すっごく美味しそうっ!」
「なぁ!これもう食ってもいいのかっ?!」
「占守、もうお腹と背中がくっつきそうっしゅ!」
翔が作ったちゃんぽんを見た川内が思わず声を上げ、佐渡と占守が我慢出来ないのかそれぞれそんな事を口にしていた
「あはは、我慢出来ないみたいだね。どうぞ召し上がれ」
\頂きます!/
翔の言葉を聞いた面々がそう言って一斉にちゃんぽんを食べ始める、翔のちゃんぽんの味はそれはそれは素晴らしいもので、皆の期待に十分沿うものだったそうな
そうして幸福感に包まれながらの楽しい食事の最中に、ふと時雨が疑問の声を上げるのであった
「そういえば、何でこの要塞の名前は海戦ちゃんぽん要塞なんだい?」
「ああ、その事?それについてなんだけど……」
そう言って翔がこの要塞の名前について話し始める
この要塞は輝の暴走で出来上がったものではあるが、艦娘と穏健派の純正の深海棲艦、そして転生個体が力を合わせて完成させたものである事と、ここを利用する者達が種族など関係なしに食事などを楽しめるようにと言う願いを込めて、混ぜたものを意味するちゃんぽんを名前に入れたとの事だった
「本当は海戦じゃなくて海鮮にするつもりだったんだけど、それじゃあ要塞っぽくないって事で海戦になったんだよね。それで要塞の名前がちゃんぽんだから、ここの名物料理もちゃんぽんにしちゃおうって思って、龍鳳さん達と話し合ってレシピ考えて作ったのがこのちゃんぽんなんだよね」
翔の言葉を聞き終えた面々は、翔の考えに賛同しこのちゃんぽんは以降この要塞の名物料理となるのであった
その後、ちゃんぽんを食べ終えて璃栖瑠のコーヒーを堪能した面々は休憩した後要塞を発ち、トラック泊地へと向かうのであった
……その後を追ってくる影に誰も気付く事も無く……