※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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龍と怨敵

それは本当に一瞬の出来事であった

 

空達がアンベル島を発ち、トラック泊地を目指して北上しヌクオロ環礁近海を通過した辺りで、空が海中から爆発的に増幅する殺気を察知したのである

 

そして次の瞬間、海中からヌ級が翔鶴を狙ってその歪で巨大な口を大きく開いて飛び出して来たのである

 

「やらせんっ!!!」

 

空が叫びライトニングⅡの底部に4本のアームで固定しているテキサスの大型クローアームを瞬時に動かし、そのアームでヌ級の足を捕らえるなり海面に勢いよく叩きつけたのだ

 

『ぐぇっ!』

 

海面に叩きつけられたヌ級が潰れた蛙のような声を上げると、その声を聞いた翔鶴達が一斉に動き出し戦闘態勢に入る。だが……

 

「お前達はこいつらを連れて先に行けっ!」

 

空がそう叫び、ヌ級の姿を見た途端顔を青くした佐渡と占守を日向と翔鶴に投げ渡すと、すぐにライトニングⅡとテキサスを変形装着し、戦闘態勢に入るのだった

 

「空さんっ!?」

 

佐渡を何とか受け止めた翔鶴が、驚愕を露わにして叫び声を上げる

 

「今回の任務はそいつらを無事に泊地に送り届ける事だろうっ!俺がこいつを引き付けるその間にお前達は先に行くんだっ!!!」

 

「でもっ!」

 

「安心しろ翔鶴、俺はこの間のような真似はするつもりはないからな。だから頼む、そいつらを無事に泊地に送り届けてやってくれ」

 

空の叫びを聞いた翔鶴が食い下がるのだが、空は今度は翔鶴に微笑みかけながら、優しくそう頼むのであった

 

「しk「翔鶴、ここは空さんの言う通りにするぞ。加勢はこの娘達を送った後にやればいい」……分かりました……。空さん、どうかご無事で……っ!」

 

尚も食い下がろうとする翔鶴を日向が止め、翔鶴達は佐渡達を連れてトラック泊地へと向かうのだった

 

「お前達も翔鶴達の方に付いて行ってやってくれ」

 

この場に残り空の援護をしようとしていた護衛艦隊に向かって空がそう言い放つと、護衛艦隊の面々は渋々と言った様子で翔鶴達の後を追い、この場に残ったのは空とヌ級だけとなった

 

「さて、これで俺達だけになったな……」

 

「んなこたぁどうでもいいんだよおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

空がそう呟いた瞬間、ヌ級が怒りを露わにしながら空に向かって襲い掛かって来た

 

「全く……、戦治郎達にやられたのがよっぽど気に食わなかったようだな」

 

「うるせえええぇぇぇーーーっ!!!うるせぇうるせぇっ!!!うるせぇんだよおおおぉぉぉーーっ!!!」

 

ヌ級の攻撃を捌きながら空がそんな事を言うのだが、肝心のヌ級は怒りのあまり語彙力が低下しているのか会話もまともに出来なくなっているようだった

 

こうして空とヌ級の激闘の第二幕が幕を開けるのだった

 

ヌ級は最初、戦治郎達と戦った時の様にその機動力で空を翻弄しようとしたのだが、空がその動きを完全に捉え、ヌ級にピッタリと張り付き要所要所でライトニングⅡとテキサスに搭載された杭打機を作動させて、ヌ級に的確にダメージを与えていくのだった

 

空が的確にヌ級に攻撃を当てられているのは、偏に戦治郎達がヌ級の左目を潰してくれたからに他ならない。そのおかげでヌ級に死角が生じるようになり、空はその死角を利用して攻撃を仕掛けているのである。これについては本当に戦治郎達に感謝せねばと思う空であった

 

この状況、一見すると空が優勢の様に見えるのだが、実際のところは空の方が焦りを感じていたのだった

 

確かに攻撃は当たっている、だがどの攻撃もヌ級に対して決定打にはなり得ないような軽いダメージしか与えられていなかったのである

 

1度チャンスが巡って来たので、試しにエンジェル伝説の北野君の双掌打のような感じで杭打機を2つ同時にヌ級の腹に叩き込んでみたのだが、それなりにヌ級を吹き飛ばす事は出来たものの、すぐにヌ級は立ち上がり態勢を整え襲い掛かって来たのである

 

このままダメージを蓄積させ続ければ、ヌ級を何とか倒す事が出来るかもしれないが、恐らくそれまで自身の身体が持たないだろう……、空はヌ級の貫手を回避しながらそう考える

 

今回の空は前回の様にフルパワーで戦っている訳ではない、だがそれでもかなりの出力を出しながらヌ級と戦っているのである。これが長時間続くようならばいつか身体が悲鳴を上げて、激痛が全身を駆け巡る事になるかもしれないのである……

 

空としては翔鶴との約束がある為、そんな事態だけはどうしても避けたいところなのである。だがこのまま悠長に戦っていればそれすら叶わなくなってしまう……

 

「とっとと俺に食われやがれっ!この腐れ同類があああぁぁぁーーーっ!!!」

 

空がそんな事を考えながら、ヌ級の攻撃を捌いていると不意にヌ級がそんな事を叫んできた

 

「生憎俺はお前に食われるつもりはないし、翔鶴を食わせてやるつもりもない。それと俺の事を同類と呼ぶのを直ちに止めろ」

 

翔鶴に泣かれたのがよほど堪えたのだろう、今回は冷静にヌ級の言葉を受け流す空。もしその件がなかったらきっと空はさっきのヌ級の言葉を聞いた途端、また怒り狂ってフルパワーを出していたところだろう……

 

「黙れえええぇぇぇーーーっ!!!俺はさっさとおめぇとあの銀髪食ってハラキリ野郎とその仲間達をぶっ殺すんだよおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

ヌ級の叫びを聞いた空は、一瞬ハラキリ野郎とは一体誰の事なのだろうかと疑問に思うのだったが、ヌ級が怒り狂っている原因が戦治郎とペット衆に深手を負わされた事だったのを思い出し、ヌ級の言うハラキリ野郎は戦治郎の事なのだろうと思い至る空なのであった

 

「ならば尚の事、お前の思い通りにさせる訳にはいかんな。翔鶴と……、俺の大切な親友を守る為にもここでお前を打ち倒さなければならんな」

 

空はヌ級に対してそう言い放つのだったが、内心で更に焦りを募らせるのであった。こうは言ったものの状況の打開策が全く思い浮かばないのである……

 

そんな事を考えていると、ヌ級がまた雄叫びを上げながらこちらに向かって突進してくる。さてどうしたものか……、そう考えながらまたヌ級に杭打機を叩き込もうとしたその時だった

 

 

 

 

 

                 \ピコーン!/

 

 

 

 

 

空の頭の中に聞き覚えのある音が響き渡ると同時に、ある映像が頭の中に映し出されるのであった。その映像はこれまで空が幾度となく繰り返した事を細かく解説し、その実用例などが映し出されていたのである

 

空が内心困惑していると身体が勝手に動き出し、『ソレ』をヌ級に向かって叩き込むのであった。空は自身の身体が勝手に動いた事で更に困惑する、何故あの映像が頭の中に浮かんだ途端ヌ級に『アレ』を叩き込んだのか……、フルパワー状態で『アレ』をヌ級に叩き込んでも全く効いていなかったのに……。そしてあの音が何故頭の中に響いたのだろうか……?あの音、間違いなく『アレ』の音だったのだが……

 

空がそんな事を考えながら『アレ』を叩き込んだヌ級に視線を向けると、そこにはとても信じられないものが映ったのだった

 

「ぐがぁっ……、あが……っ」

 

フルパワー時には全く効いていなかった『ソレ』を喰らったヌ級が、その痛みに耐えるように喘いでいたのである……っ!

 

これは一体どう言う事なのだっ!?何故『アレ』を喰らったヌ級がこれほど苦しんでいるんだっ?!空は困惑を超えて混乱し始めていた……

 

「てめぇ……っ!一体何しやがった……っ!?」

 

ようやく呼吸が整って来たヌ級が空に向かってそう問い掛けるのだが、肝心な空も絶賛混乱中でその質問に答えられなくなっていた……

 

空がヌ級にこれほどのダメージを与えたもの、それは何の変哲もないただの【キック】だったのである……

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