ヌ級との戦いの後、空の下に駆け寄って来た日向達が空に対して一斉に質問攻めを開始する
空がヌ級に対して行った攻撃についてやそれで何故ヌ級が盛大に吹き飛んで行ったのか、何時の間にそんな攻撃方法を習得したのか、どうやったらその技を使えるようになるのかと言った内容の質問を、濁流の如く空に尋ねる日向達
対して空は答えられる範疇のものはしっかりと答え、自身も分かっていない事は分からないとハッキリと皆に伝えその場を何とか収めようと努めるのだったが……
「空さんがあの大きな光の玉をヌ級に向かって投げつける時、腕のキラキラした奴が光の玉に纏わりついてたんだけどあれって何だったの?」
川内が少々気になる事を尋ねてきたのである、空はそのキラキラしたものと言う単語が妙に頭に引っかかるのだったが、その場を収める為にそれについては分からないと川内に告げ、少々強引に話を終わらせて泊地に戻る事にしたのであった
その後空達は泊地に戻り提督に今回の任務の報告をするのだが、その時も空は提督に質問攻めされるのであった。空はこれも日向達の時と同じように対応し、報告を無理矢理終わらせてすぐに工廠の隅にある自分の居住スペースに戻って今回の出来事に関して思考を巡らせるのであった
それから空は数時間ほど1人で考えてはみたものの碌に成果を上げられず、頭を抱えてしまうのであった。結局、自分が把握しているのは
①自身に閃きシステムが実装された事
②それで覚えた技はヌ級に対して決定打となり得るが、しっかりと頭の中でモーションをイメージしながらやらないと不発に終わる事
③見た目が体術のような技だったら派生や技の分類など関係なしに覚えられる事
この3つだけだったのである、閃きシステム実装に関しては恐らく能力が関わっているのだと見当をつける事が出来たのだが、何故ヌ級に対してあれほどの威力を叩き出せたのか、そして川内が言っていたキラキラとは何なのか……、それらについては全く以て見当が付けられなかったのである
このまま考えてても埒が明かない、そう思った空は気晴らしでもするかと思い立って顔を上げるのだが、その時不意に視界に映った時計を見て……
「いかん!夕方の鍛錬の時間ではないかっ!」
そんな声を上げて、慌てて工廠から出て埠頭の方へと向かうのであった
空は寝たきりから回復した後、朝と夕方に鍛錬をする事にしたのである。元々は寝たきりで鈍った身体の感覚と筋力を取り戻す為だったのだが、今では習慣化しやらないと身体が落ち着かなくなってしまったのである
空が急いで埠頭に向かうとそこには夕立がおり、夕立は空の姿を見つけるなり
「空さん遅いっぽい!夕立はもうアップも終わらせて準備万端っぽい!」
頬を膨らませながら空に向かってそう言ってきたのであった
何故ここに夕立がいるのかについてだが、夕立は空が鍛錬を開始してから数日経ったある日、空が鍛錬開始前に自身の調子を確認する為の演武をやっている最中に、空の隣に並び立ち見様見真似で演武を始めたのだ
空が演武を中断して夕立に何をしているかを尋ねたところ、夕立は以前空の戦闘を見た時に格闘術に興味を示し、自分も格闘術を覚えたいと言ってきたのであった
空がその理由を尋ねてみたところ、どうやら夕立は戦闘に不慣れな頃に出撃した際、戦闘中に過度の緊張が原因で動けなくなってしまい、そんな夕立を同じ艦隊のメンバーが庇って大怪我を負ってしまい、その艦娘はその怪我が原因で艦娘として戦い続ける事が出来なくなってしまったのだとか……
「夕立、あの時はいっぱいいっぱい泣いたっぽい、何度も何度もその人にごめんなさいって言ったっぽい……。その人はそんな夕立を笑って許してくれたけど、夕立はその人をこんな目に遭わせた夕立の事が許せなかったっぽい、だから夕立は強くなってもう二度とそんな事が起こらないようにしたいっぽい!」
夕立は最初こそ力なく発言するのだが、最後のあたりには気を持ち直し、真剣な眼差しで空の事を見つめながら力強くそう言ったのである
ただの興味本位ではなく、しっかりとした理由を持って格闘術を学びたいと言う夕立の気持ちを無下には出来ないと思った空は、その日から夕立に格闘術を教えながら一緒に鍛錬をするようになったのである
「済まない、ちょっと考え事をしていてな……。っと、もたもたしていると夕食の時間になってしまうから、すぐに始めるぞ」
「ぽいっ!」
こうして2人は日課となっている鍛錬を開始するのであった……
そしていつも通りに鍛錬を終わらせ、汗を流してから食堂に向かおうとした時だった、空の頭の中にヌ級との戦闘後に川内が言った言葉が蘇り、空は思わず立ち止まってしまうのであった
急に立ち止まった空を不思議そうに見つめる夕立が空に向かって声をかける
「空さん急に立ち止まってどうしたの?何かあったっぽい?」
「ああ、済まない。少々気になる事があってな……、夕立は先に行って待っててくれ」
空がそう言ったにも関わらず、夕立はその場に残り空の動向を窺うのであった。どうやら夕立はこれから空が何かをやると察し、それが気になり様子を見る事にしたのだろう
空としてはこれが成功した場合、夕立から質問攻めされると分かり切っている為、出来れば夕立にはご退場願いたかったのだが、その様子を見るとテコでも動きそうになかったので、諦めてある事を試すのであった
空は頭の中で【キック】のイメージを思い浮かべ、架空のヌ級目掛けて【キック】を放つ。その際空は蹴り足をじっくりと観察し、川内が言っていた事の真偽を確かめるのであった
「えぇっ!?空さん、これは一体どういう事っぽいっ?!空さんの足がキラキラしてるっぽいっ!!?」
そう、夕立が今言った通り、今しがた【キック】を放った空の足がキラキラと銀色に光っていたのである
その輝きは光太郎がエネルギー消費系の攻撃を行った時のような激しいものではないが、悟のようにぼんやりとした発光でもない、例えるなら星の瞬きのような輝き方だったのである
念の為、川内が見たと言う【弐式活殺破邪法】使用時の腕の輝きを再現する為に今度は海に向かって【弐式活殺破邪法】を放つ。光の玉を海面に叩きつけた直後にすぐに自身の両腕を観察すると、先程の【キック】の時と同様に空の両腕はキラキラと瞬いていた
川内が言っていたのはこれの事だったのか……、しかしこれは一体何なのだろうか……?空がそんな事を考えていると……
「なんじゃ空坊、おまえさん腕に電飾なぞ付けおって……、っておりょ~?よく見たら電球もコードも見当たらん……。……何じゃその腕はぁっ?!?」
唐突に空でも夕立でもない声が埠頭に響き渡る、空は何事かと思い夕立と共にそちらに視線を向けてみると、そこには紋付羽織袴を着たリコリス棲姫が驚愕の表情を浮かべ、こちらにやたら太い杖を向けながら立っていたのだ
「御大、何故ここにいるのですか?」
「御大?空さん、空さんはこの人の事知ってるっぽい?」
「おお、夕立は儂の事知らんようじゃな。ならば名乗っt「この人は戦治郎のお祖父ちゃんだ」あぁん空坊のケチィ……」
戦治郎から事前に情報を聞いていた空は、このリコリスが正蔵である事を知っており、何故正蔵がここにいるのか尋ねてみたところ、どうやら正蔵はここの提督に用があったようで、空が工廠で考え事をしている間に来て用事を済ませて戻ろうとしたところで空達を発見したと言うのだ
その後、空は同じ転生個体である正蔵にヌ級との戦いの最中に自身に起こった出来事や、先程の現象について話してみたところ……
「ふむ~……、十中八九そりゃ空坊の能力じゃろうのぅ……。じゃがその能力がどんなものなのかスッカリサッパリ分からんちんと……、相分かったっ!取り敢えずお前達は飯食って来いっ!そんで食い終わったら必ずここに戻って来いっ!いいなっ!?」
自身の太ももを叩いて軽快な音を響かせながら、正蔵がそんな事を言う。空達は正蔵が何を企んでいるか分からないが、取り敢えず言う事を聞いておく事にしたのだった
空と夕立は夕食を済ませるとすぐに正蔵に言われた通り埠頭へと戻って来たのだが、肝心の正蔵の姿が見えない……、一体何処に行ったのか……、そう思いながら辺りを見回していると……
「お~い!こっちじゃこっち~!」
声の方を向いてみると、そこには海上に立つ正蔵の姿があった
「分からん事があるならしっかり試してじっくり調べるっ!そう言う訳で儂が空坊に修行をつけるついでに空坊の能力を徹底解明するぞっ!って事で何処からでもかかってこいっ!!!」
「ぽいぃっ!?お祖父ちゃん、空さんと戦うっぽいっ?!……ホントに大丈夫っぽい?」
「戦治郎から聞いたが、御大は現在穏健派の最大戦力らしいぞ……」
正蔵の言葉を聞いた夕立がやる気満々な正蔵の心配をするのだが、空の言葉を聞いた直後に驚愕の表情を浮かべる
「夕立ぃっ!お前にその気があるなら空坊諸共儂が鍛えてやるぞぉっ!!!」
正蔵がそう叫んだ瞬間、夕立がピクリと反応し直後に工廠へ向かってダッシュし始める。どうやら夕立の鍛錬スイッチがONになったようである
こうしてショートランド泊地の埠頭にて、空&夕立&騒ぎを聞きつけて乱入して来た川内&江風対正蔵の戦いが始まり、その激しい戦いは日が昇るまで続くのだった……
尚、泊地にいる者全てがその戦いによって発生した騒音のせいで安眠出来なかったそうだ……