遂に輸送護衛任務が開始され、木曾達がパースを発ち第1休憩ポイントであるマダガスカルを目指してインド洋を突っ切るように航行している時だった
9時方向にあの忌まわしきアムステルダム泊地跡地が見える辺りで、案の定『カルメン』に所属する転生個体と遭遇、戦闘になってしまったのである
相手の数は12人、以前戦った時はケートスに2人乗りしていたらしいのだが、今回は全員がそれぞれケートスに乗った状態で姿を現したのだった。……お馴染みの世紀末的な雄叫びを上げながら……
「あんだけ護衛を付けてんだ、きっととんでもねぇシロモンがあの船の中にあるはずだっ!」
「船ごと売っ払っちまえば相当な金になるだろうからなぁ!てめぇら船に傷つけんじゃねぇぞっ?!」
奴らはどうやら護衛の数で船の中身の価値を予想し、奪い取る為に襲い掛かって来たようだ……。カルメンの連中のやり取りを聞いた海賊団のメンバーは、まさかこのような形で護衛の数がマイナスに働くとは思いもせず、内心舌打ちするのであった
「やっぱり来やがったな……、皆、準備はいいかっ?!」
こちらに向かってくるカルメンの連中をしっかりと見据えながら、摩耶が皆に向かってそう尋ねると……
\応っ!/
海賊団のメンバーが気合いの入った返事を返す、それを聞いた摩耶は1度だけ小さく頷くと
「それじゃあ各自手筈通りに……、いくぞっ!!!」
そう言い放って木曾と阿武隈と共に敵陣に突撃し、残った不知火達もそれぞれの役目を果たすべく行動を開始するのであった
「私達も負けていられないわね……、皆、準備はいい……?」
「これが夜戦だったら良かったんだけど……、まあ修行の成果が試せるならいっかっ!」
「雲龍さん、夕立達はまだお預けっぽい?」
「江風達ならいつでもいけるぜっ!」
海賊団が敵に向かって行く様子を見た雲龍が、負けてられないとばかりに艦隊のメンバーに確認を取ったところ、川内と夕立、そして江風が待ちきれないと言った様子でそう返事するのであった
「そう……、なら……」
3人の言葉を聞いた雲龍は、そう呟くなり艦載機の形をした
「第一次攻撃隊、発艦始め。さあ、私達も始めましょう……っ!」
\了解!/
雲龍が艦載機を発艦させると同時に戦闘開始を宣言、ショートランドの艦娘達が一斉に返事を返し、正蔵の修行を受けた3人が待ってましたとばかりに即座に敵陣に突っ込んでいくのであった
さて、転生個体について知っているメンバーはこのように勇猛果敢に挑みに行った訳なのだが、事情を知らない艦娘達はと言うと……
「え……、何あれ……?」
「変な声上げてたけど……、あいつら一体何なの……?」
「てか、何で水上バイクなんかに乗ってるの?マジ意味不明……」
やはりと言うか奴らを見た途端混乱し、碌に動けなくなってしまっていた……
「お?おおっ?あいつら全然動いてねぇじゃん!あいつら狙い撃ちすりゃ撃墜スコア稼げそうだなおい!」
「っしゃ!一番手頂きだぁっ!!!」
当然の如く、奴らはそれに目を付け攻撃を開始してくる。奴らはその手に持った無反動砲を構え、事情を知らない艦娘達へと狙いを定めて発射する
無反動砲の発射音に気付いた艦娘達が、我に返って回避行動を起こそうとするのだが、そうしている間にも見る見るうちに無反動砲の弾は彼女達の方へと迫って来る……
もうダメだ!ターゲットにされた艦娘はそう思って自分の顔を腕で庇い、両目を閉じてその時を待つ……
ズドォォォンッ!!!と言うただの無反動砲の弾が爆発しただけとは思えないような爆音が辺りに響き渡り、爆煙が周囲を覆い尽くしターゲットにされた艦娘の姿を隠してしまう……。彼女の仲間達が心配そうにそちらに視線を送っていると、段々煙が晴れていく……
そうして煙が完全に晴れたところで、彼女達は信じられない光景を目の当たりにするのであった
「あいつらの目の前で棒立ちしているからこんな目に遭うのよ、さあ、すぐに立ち上がりなさい。そしてあいつらの事をしっかり見据えて、今自分がどうしなきゃいけないかを考えながら動きなさい。いいわね?」
ターゲットにされた艦娘の前に、海賊団の天津風が【不撓不屈】と書かれた大きな盾を構えながら立っていたのである。そして天津風は狙われた艦娘に対してそう言うと、手を差し伸べて彼女を立たせる。そして……
「さあ連装砲くん!この娘の代わりにお返ししてやるわよっ!」
天津風がそう叫ぶと連装砲くんが艤装から飛び降りて、先程無反動砲を発射した奴の方へと突撃し、相手の攻撃を上手い具合に躱しながら砲撃を至近距離から叩き込み始めるのであった
「よし……、そのまま……、いきなさいっ!」
そして連装砲くんが奴を引き付けている間に、天津風は盾の裏に取り付けられた魚雷発射管から魚雷を発射、魚雷は天津風の狙い通りに前に進み……
「うごぉっ!!?」
連装砲くんが相手をしていた奴のケートスに直撃、それによりケートスは爆発四散しそれに乗っていた奴は爆風で吹き飛ばされた後、海面に勢いよくその身体を叩きつけられるのであった。因みに連装砲くんは天津風の魚雷が直撃する直前に離脱、天津風の艤装へ帰還していたのだった
「痛ぇ……!てっんめぇ!よくもやr」
天津風の攻撃を受けて逆上した相手が、怒りのままに叫ぼうとするのだがその叫びは最後まで紡がれる事は無く、奴は額に風穴を開けられて静かに沈んでいくのであった……
「正蔵さんから強くなっていると聞いていたのですが……、思っていたほどではないようですね……」
銃口から煙を立ち昇らせるスナイパーライフルを構えた不知火が、沈みゆく相手の姿をスコープ越しに眺めながら思わずそう呟く
そんな不知火の姿を見た艦娘達は、驚きのあまり絶句していた。何せこの不知火は戦艦主砲の射程より更に先にいる相手の額に、正確にその弾丸を撃ち込んだのである。駆逐艦が何でそんな真似が出来るの?そう思うと艦娘達は絶句せざるを得なかったのである
「あんたのそれは殆ど不意打ちみたいなもんだからでしょ、真正面からやり合ったらこうはいかないんじゃない?」
不知火の傍に立つ陽炎が呆れ気味に言う
彼女達は現在、カルメンを見て動揺し動けなくなった艦娘達をフォローするように立ち回っているのである。陽炎を天津風は主に向かって来た相手の迎撃を担当し、それを不知火が狙撃で援護する形である
「さてと、私はそろそろ天津風の手伝いに入るから、悪いけど不知火の事頼んでもいい?この娘の狙撃が私達の生命線だからね、そう言う訳でお願いねっ!」
陽炎はそう言い残して行動を開始し、天津風同様木曾達が取りこぼしたり、木曾達を無視したりしてこちらに向かって来た奴らを迎え撃つ為に、輸送船の周囲を忙しなく動き回るのであった
そんな陽炎達の姿を見た艦娘達は……
「依頼主の私兵の娘達……、強過ぎじゃない……?」
「私達、もしかしたらいない方がよかったのかも……?」
口々にこのような感想を述べる、その表情は皆そろってどんよりとしたもので、明らかに自信を喪失している感じなのであった……
だがその中にたった1人だけ、他とは違う表情を浮かべる艦娘がいた
「凄い……あの人達は本当に強い……、どうしたら私もあのようになれるのでしょう……?」
リンガ泊地から派遣された朝潮型駆逐艦1番艦の朝潮は、海賊団の戦いぶりを見て思わずそう呟くのであった……。その瞳は周りの者達とは違い、静かに、ただ静かに燃え上がっていた……