「え~……、皆さん今日は本当にお疲れ様でした」
マダガスカルの東部に位置する都市トゥアマシナのとあるホテルの大広間にて、正蔵がマイク片手にそう告げる
現在沢山のテーブルが並んだこの大広間には今回の輸送船護衛任務に参加した艦娘達が集まり、今回の任務の依頼主である正蔵の話を静かに聞いていた
「皆さんの活躍のおかげで、何とか今回の航海の一番の難所を乗り越える事が出来ました。皆さんのご協力、本当にありがとうございます」
このように正蔵が艦娘達に感謝の言葉を述べると同時に感謝の意を込めて頭を下げるのだが、肝心の艦娘達の多くは正蔵の言葉を聞くなりその表情を暗くし俯いてしまうのであった。恐らく自分達が何もしていない事を自覚しているのだろう
「皆さんもこの長い海の旅と激しい戦闘できっと疲れているだろうと思い、私は皆さんがゆっくりと休めるようにとこのホテルを借り切って、難所を乗り越えた記念としてちょっとしたパーティーを開催しようと思っております」
正蔵がそう言ったところで大広間に大量の料理が運び込まれ、次々と艦娘達の目の前にあるテーブルに手際よく配膳されていくのであった
その料理群は普段早々お目にかかれないような高級そうで、とても美味しそうな料理ばかりだったのだが、一部を除く艦娘達はその料理を見ても碌に反応を示さなかったのである……
「わぁ~……、すっごく美味しそうっぽいっ!ねぇねぇ!これってもう食べてもいいっぽい?」
「ダメだよ夕立……、まだ正蔵さんが話してる最中なんだから……、正蔵さんがいいって言うまで我慢して……」
「こンなスゲェ料理初めて見たぞ……、マジでコレ江風達が食っていいのか……?」
「こんなに沢山……、本当に食べきれるのかしら……?」
「あ~……、雲龍さん食が細いもんね……。もし食べきれそうになかったら私達が代わりに食べるから、その時はちゃんと言ってね?私達前衛組はホント動いたからお腹減っちゃっててね~」
「そりゃあんだけ動いてたらお腹も空くクマね……、つか球磨としては妹が修羅の如く相手をバッサバッサと斬り捨ててた姿に驚きを隠せないクマ……」
「球磨姉……、あんなので驚いてたら海賊団の戦い見たら失神するぞ?」
「旦那とか空さんとか輝さんとか、すっげぇ豪快な戦い方するからな……。最近の光太郎さんやシゲもかなり派手に暴れ回るよな~……」
「って言うか基本的にちっちゃい子供に見せられないような戦い方するわよね……、ル級をル級が手に持ってる艤装で挟んで潰したり、蹴飛ばした頭で他の個体のお腹に風穴開けたり……」
「陽炎、それは食事前に話す事ではないと思うのですが……?」
「……陽炎がこんな話しても、周りの艦娘は全然反応しないのね……」
「皆さ~ん!ちょっと静かにして下さいぃっ!正蔵さんが困ってますよ~!」
一部を除いて……
「ん"ん"っ!え~……、では皆さん、杯は持ちましたでしょうか?では今日の成功を祝し、明日の無事を願って……乾杯っ!!!」
\カンパーイ!/
正蔵が乾杯の音頭を取るのだが、やはり反応したのは海賊団とショートランドの艦娘だけで、他の艦娘達はただただ暗い表情で俯いたまま杯を持つ事もしなかったのである
こうしてどんよりとした空気の中でパーティーは開始されるのだが、やはりと言うべきか出された料理を楽しんでいるのは海賊団とショートランドの艦娘ばかりで、他の艦娘は目の前にある料理にすら全く手を付けなかったのである……
(こりゃ木曾達に圧倒されて完全に自信をなくしておるのう……)
そんな艦娘達の様子を見た正蔵が内心で独り言ちる、正蔵が思った通り彼女達は木曾達の次元が違うと思わせるほどの実力を目の当たりにし、これより先はこれほどの実力を要求されるのかと思い込んだ事で心が完全に折れてしまったのである
他にも自分達は戦場で突っ立ったままで何もしていないのに、こんなに高そうな食事を頂いていいものかと、こんな素晴らしい持て成しを受けてもいいのかと迷っていたもするのである
そんな中、話題となっている木曾達はこの高級料理群を殲滅せんとばかりに食べ、行儀がいいとは言えないが料理の感想や思い出話などをしながら食事を楽しんでいた
(さって、どうしたもんかのう……、このまま付いてこられても正直足手まといにしかならんし……ん?)
この意気消沈してしまった艦娘達をどうしようかと頭を悩ませていた正蔵が、視界の隅で動く影を発見し思わずそちらに視線を向ける。そしてその先に見えたのは……
「あ、あのっ!」
ありったけの勇気を振り絞って木曾達に話しかける朝潮の姿であった、急に話しかけられた木曾が思わずビクリと身体を震わせて、危うく手に持った皿を落としそうになる
「っと……、あぶねぇ……。っとすまない、急に話しかけられてつい驚いちまった。んで俺達に何か用か?」
「あ……、驚かせてしまってすみません!その……、私はリンガ泊地所属の朝潮と言うのですが先程の戦闘での皆さんの活躍、本当に凄かったですっ!」
木曾が朝潮に返事をしたところで、朝潮は驚かせてしまった事を謝罪してからの自己紹介、そして目を輝かせながらそんな事を言うのであった
「へぇ……、あたし達以外にもまともな反応する奴がいるなんてなぁ……。他の奴らはまるでお通夜でもやってんのかってくらい沈んでるのにな」
「私的には多分摩耶さん達の戦いぶりにびっくりしてるんじゃないかと思うんですけどぉ……」
「ありゃそんなレベルじゃないクマ、恐らく心が折れてるクマ」
「ああ、自分達も木曾達レベルの実力を要求されてるって思っちゃったのか~……。ってこの話聞こえてるのかな?」
「ダメだ、俺達の会話も碌に聞こえてねぇみてぇだ……。全く反応がねぇ……」
巡洋艦ズがそれぞれこんな事を言うのだが、朝潮以外の艦娘達は相変わらず全く反応を示さなかったのである。その様子を見た海賊団とショートランドの艦娘達は、段々そんな艦娘達が怖くなってくるのであった
「あの……」
そんな中、朝潮が再度声を掛けて来た
「ああごめんね、それでどうして僕達に話しかけたのかな?」
時雨が朝潮に詫びを入れてから、彼女が自分達に話しかけて来た理由について尋ねる
「いえお気になさらずに、それでどうしたら皆さんのように強くなれるのかが気になったので聞いてみようと思ったんです」
「どうやったら、か……」
朝潮の質問を聞いた木曾が考え込む、いや、木曾だけでなく海賊団のメンバーが揃って考え込むような仕草をするのであった
「トレーニングに関しては別段普通なのよね、出された課題をただこなしていく感じだし……」
「木曾さん、摩耶さん、そして不知火あたりは確か普段のトレーニングとは別に朝練とかもやってるわよね?」
「そうね……、不知火と摩耶さんは剛さんの、木曾さんは戦治郎さんの指導を受けてるくらいですね……」
海賊団の駆逐艦達が思い思いの言葉を口にしたところで
「夕立も空さんと一緒に格闘術の練習してるっぽい!毎日朝と夕方に色々教えてもらってるっぽい!」
混ぜて混ぜてと言わんばかりに夕立が挙手しながらそんな事を言う
「私的には工廠組の皆さんが作った装備の性能もあると思います」
「ああ~、剛さん監修の銃とかヤベェよな……、あれ滅茶苦茶手に馴染むんだよ……」
「分かります、まるで私達の為に作られたのではないかと思うほど馴染みますね……」
「俺の鋼斬なんか正にそうなんだよな……、戦治郎さんが俺の為だけに打ってくれた1振り……、戦治郎さんが俺の事を一人前だと認めてくれた証でもあるから尚更思い入れが深い代物だな……」
阿武隈、摩耶、不知火、木曾が思い思いの言葉を口にする、木曾に至っては話をしている最中に鋼斬を抜き、朝潮の方へと掲げていたりする
そんな時だった
『お前達、この後残っておれ。ああ、朝潮ものう』
正蔵からそんな通信が入るのであった、それを聞いた木曾達が一斉に正蔵の方を向くと正蔵の身体から得体の知れない恐ろしい何かが立ち上っていたのである。それを見た木曾達は鳥肌を立てながら素直にその言葉に従う事を決意する
「なるほど、皆さんにはいい師匠がいr「朝潮、この後ちょっと残ってもらえるか?」え?この後っt」
朝潮の言葉を遮るようにして木曾がそう告げる、朝潮はその意味が分からず木曾に理由を尋ねようとしたのだが……
「貴様らいい加減にせんかあああぁぁぁーーーっ!!!」
正蔵が発する怒りの咆哮に言葉を遮られる、それを聞いた朝潮は驚きのあまり絶句し立ち尽くすのであった……