※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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朝潮型の地獄の始まり

「あらぁ、捕まっちゃったわ~」

 

「このっ!放しなさいよっ!」

 

「お~お~、この満潮は活きがいいのう!こういうのもっと早く見せて欲しかったわい!」

 

正蔵がそんな事を言いながら、先程捕まえた2人を小脇に抱えて朝潮達のところに戻って来る

 

満潮の方は正蔵から逃れようとその腕の中で必死にもがくのだが、正蔵は満潮の抵抗を意に介さず満潮の身体をその腕でガッチリとホールドする

 

対して荒潮は観念したのか、それとも今の状況を楽しんでいるのか、正蔵の腕の中で微笑みを浮かべながら暢気な事を言うのであった

 

「正蔵さん、一体何やってるんだよ……?」

 

「いや~、ここの入口で何かコソコソしておったからのう、取り敢えず捕まえてみたんじゃよ」

 

木曾が呆れながら正蔵に質問すると、正蔵はいけしゃあしゃあとそんな事をほざき朝潮の目の前まで来たところで2人を解放するのであった

 

「朝潮っ!大丈夫っ?!あいつに変な事されてないわよねっ!?」

 

「この満潮は、儂の事を何だと思っとるんじゃ……?」

 

「変な深海棲艦ってところじゃねぇか?いきなりあんな事されりゃそんな風に思われるのも仕方ねぇだろ」

 

正蔵の腕から解放された途端、満潮は朝潮に駆け寄り叫ぶように彼女の無事を確認するのであった

 

そしてそんな満潮の言葉を聞いた正蔵がついそんな事をポロリと零すのだが、その発言を聞いた摩耶が正蔵に対してそんなツッコミを入れる

 

「んで、何であんなとこでコソコソと盗み聞きしとったんじゃ?」

 

「盗み聞き?」

 

「そうじゃ、この2人は儂がテーブルと椅子を作ってる時には、既にあの場所におったんじゃよ」

 

正蔵が2人に質問するのだが、その質問の中に気になる単語があったようで天津風が話の流れを切って正蔵に尋ね、それに対して正蔵があっけらかんとそんな事を言うのであった

 

「それってさっきの話の殆どをこの娘達に聞かれてたって事?」

 

「そう言う事になるのう、まあまたさっきの説明をせんで済むから儂としては助かるんじゃがな」

 

陽炎の問いに対して正蔵が涼しい顔でそんな事を言う

 

「そんな早い段階で気付いていたなら、招き入れてあげてもよかったんじゃないかしら……?」

 

「だって出ていけって言ったばかりだったじゃろ?それなのに今度はまた入ってこいとか流石に虫が良過ぎるし、何よりカッコ悪いじゃろ?」

 

雲龍の疑問に対してはばつが悪そうな顔をしながら答える正蔵であった

 

「っと、話が脱線してしまっとるのう、話を戻すぞい。それで満潮と荒潮はどうしてあの場所にいたんじゃ?まさかお前達も朝潮同様力を欲しておるんか?」

 

「別にそう言う訳じゃないわ」

 

正蔵が2人の目をしっかりと見ながらそう問い掛ける、すると満潮は視線を逸らしながらそう答え……

 

「私達は単に朝潮姉さんを探していただけよ~?今回の事を提督に何て説明したらいいかを皆で話し合おうとしたところで、朝潮姉さんがいない事に気付いて探していたのよ~」

 

荒潮が事情を説明するのであった

 

「なんじゃ、そう言う事じゃったか……。儂はてっきりお前さん達も朝潮同様やる気があるクチだと思っておったんじゃが……、残念じゃのう……」

 

「それなりに実力も向上心もある朝潮だったら、あの戦いを見たら折れるどころか奮起するでしょうね。でも私達はそうじゃないのよ、いつも遠征ばかりやっている何処にでもいる平凡な駆逐艦なのよ……」

 

荒潮の話を聞いて残念がる正蔵に満潮が自虐的に答える、そんな満潮の表情は見る者に物悲しさを覚えさせるのであった

 

「満潮姉さんが言う通り、私達は前線に立たせてもらえない遠征要員なのよね~。確かに前線には立ってみたいとは思うのよぉ?でも今回の戦いを見て、遠征要員でよかったかもなんて思っていたりもするのよね~」

 

「転生個体と言うのが恐ろしい存在だと言うのは、さっきあんたがしっかりと示してくれたわ。だからこそ私達みたいな平凡な艦娘は足手まといにしかならない、私はそう思ってこの件から退く事にしたのよ」

 

2人が揃って後ろ向きな発言をする、それを静かに聞いていた正蔵が口を開こうとしたところで……

 

「気は済みましたか?」

 

唐突に不知火がそんな事を言ったのだ、これにはこの場にいる全員が驚き不知火に視線を集中させるのであった

 

「……何?」

 

「気が済んだかと聞いているのです、貴方達の中にある不満や不安は吐き出し終えましたか?」

 

「それはどう言う事かしら~?」

 

不知火の発言に対して、満潮は怪訝そうな表情を、荒潮は不思議そうな表情を浮かべながら反応するのであった

 

「貴方達の気持ちはよく分かります、不知火も昔はそうでしたから……」

 

「はぁっ!?あんたがっ?!何それ、意味分かんないっ!?あんな狙撃スキル持っておきながらあんたが平凡?ふざけてるのっ?!」

 

不知火の言葉を聞いた満潮が不知火に食って掛かる、だが不知火はそれに一切動じる事無く昔自身にあった事を満潮達に語り始める

 

囚われた天津風を助けに行った時の事や、剛達との演習で自分の弱さに気付いた事など、不知火は当時の事を思い出しながら満潮達に言い聞かせるのであった

 

「皆のお荷物にはなりたくない、もう惨めな思いをしたくない……、だから不知火は剛さんの指導を受ける事にしたんです。剛さんの指導は厳しく、不知火は何度も投げ出そうとしました……。しかしその度にあの時の事を思い出して自分を奮い立たせ、歯を食いしばって頑張ってきました、その結果が今の不知火なんです。だからそんなに卑屈にならず、平凡なら平凡なりに頑張ればいいのです。そうやって頑張っていればいつの日かきっと平凡な自分から脱却出来るはずなのですから」

 

不知火が話し終える頃には満潮も大人しくなり、荒潮共々黙り込んでしまうのであった

 

「俺も動機は違うが不知火と似たようなもんだな、つか摩耶以外の海賊団の艦娘は大体不知火と似たり寄ったりな感じなんだよな」

 

「待て木曾、何であたしを除外した?」

 

「お前はドロップ艦になる前から、色々な大会で賞取るくらいの腕前あっただろうが」

 

「うぎぎ……」

 

不知火の話を聞いた木曾がそんな事を言い、それに摩耶が噛み付くのだがすぐに木曾に論破され、言い返すことが出来ず思わず歯噛みするのであった

 

「私達のエースもこう言っていますが、これでも心変わりはしませんか?」

 

木曾の言葉を聞いた不知火が満潮達にそう尋ねる、すると……

 

「あんた達が努力して実力を手に入れたのは分かったわ、でもどうしろって言うのよ……?今更私達が頑張ったところで、すぐにどうにか出来るようになるわけじゃないんでしょう……?」

 

「確か朝潮姉さんを訓練するみたいな事言ってたけど~、私達ってそろそろ泊地に帰る事になるのよ~?そんな短い時間で海賊団の皆みたいに強くなれるのかしら~?」

 

満潮と荒潮がそれぞれ意見するのであった、だが……

 

「それなら儂に任せておけぇっ!!!」

 

いつの間にか頭巾を被った豪快老人(ゴーカイシルバー)が声を上げる

 

「親分、今度は一体何する気なんだ……?」

 

「気にするでない!それよりもお前さん達の旗艦は何処じゃ?ちょっち案内してくれんか?」

 

摩耶が怪訝そうな顔で正蔵に尋ねるのだが、正蔵はそれを一蹴し満潮達に旗艦の居場所まで案内を頼むのだった。満潮達はそんな正蔵の様子を見て困惑しながらも、頼まれた通り自分達の旗艦のところまで正蔵を連れて行くのであった

 

それから数分後、大広間に戻って来た正蔵の口からとんでもない発言が飛び出すのであった

 

「リンガ泊地からこの3人を借りて来たぞっ!!!そんでこの3人を欧州に辿り着くまで徹底的に鍛えて提督の奴を驚かせてやろうではないかっ!!!」

 

こうして朝潮、満潮、荒潮の3人の地獄が始まるのであった……

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