※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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札束ビンタ

大広間に戻って来た正蔵のトンデモ発言を聞いた木曾達は、驚き戸惑い我が耳を疑った

 

「いや借りて来たって……、正蔵さんがここを出てからまだ数分くらいしか経ってないのに、どうやって朝潮達の提督と話を付けたんだよ……?」

 

正蔵はこの大広間から出て、ものの数分でリンガの提督と話を付けてしまったのである。これはどう考えてもおかしい、そう思った木曾が正蔵にどんな手品を使ったのか尋ねてみると……

 

「そりゃ勿論、儂が長年培ってきた交渉スキルでd「よくもまあ、そんな嘘を平然とつけるわね……」あらやだ、ミッチー辛辣ぅ」

 

「満潮、正蔵さんはどんな手段を用いてこんな短い時間で話を付けたのですか?」

 

正蔵が胸を張って話をしようとしたその時、満潮がこめかみに手を当てながら正蔵の話に割って入り溜息をつくのであった。そんな満潮の様子を見た不知火が、満潮に正蔵が何をやったのかを尋ねる。すると……

 

「こいつ、通信機越しに私達の司令官を札束と物資満載のコンテナでぶん殴ったのよ……」

 

「金と物資で釣ったのかよ……」

 

満潮がそう答え、それを聞いた摩耶もまた、満潮の様にこめかみに指を立てるのであった……

 

そう、正蔵は朝潮達の艦隊の旗艦が持っている通信機を使って提督と会話をし、その際正蔵は朝潮達の提督に対して、朝潮達を貸してくれれば今回の報酬を弾む、具体的には結果に関係なく金銭を倍額、各資源も10万ずつ払う事を約束し、もしいい結果が出れば追加でネジも500個ほど渡すと言ったのである

 

最初は正蔵のお願いに難色を示していた提督も、報酬の話が出た途端手のひらギガドリルブレイクして正蔵のお願いを快諾し、朝潮達にエールを送って通信を切ってしまったのである

 

満潮から詳細を聞いた皆がドン引きする、何故ならこれは見方を変えれば正蔵が提督から朝潮達を金で買った様に見えるのである

 

「何じゃお前ら儂の事そんな目で見おって……、儂は朝潮達を買った覚えはないわい、やる事やったらちゃ~んとリンガに返すつもりじゃ!」

 

艦娘達の軽蔑の眼差しの集中砲火を受ける正蔵がそう言った

 

「その辺りは信じてるんだけど……、でももう少しいい方法があったんじゃないかしら……?」

 

「こういうのは可能であるならば金で解決するのが確実なんじゃよ、ここで真面目に交渉してたら朝潮達を鍛える時間が減ってしまうからのう。もしまだ何か抵抗があるならこう考えるんじゃ、南方海域と南西諸島海域の安全を金で買ったとな!金というものはこういう時にこそ使うもんじゃからなっ!!!」

 

正蔵のやり方に雲龍が渋い表情をしながら意見するのだが、正蔵は事も無げにそう返しカッカッカッと笑うでのあった

 

実際のところ正蔵がこの様な手段に出たのは、正蔵が言う通り時間が惜しいからに他ならないのである。朝潮達3人をこの遠征任務中に木曾達と同じくらい戦えるように鍛え上げる、それはつまりこのマダガスカルを発って欧州で用事を済ませ、オーストラリアに戻るまでの短い間しか朝潮達に修行をつけられないという事になるのだ

 

修行をつけられる時間が短くなれば短くなるほど、その修行の内容は濃くなっていってしまい、本当に辛く、苦しく、厳しいものになってしまうのである。そうなると朝潮達が投げ出したり壊れたりしてしまう可能性が出てしまう、正蔵はそれを危惧して札束ビンタからの物資コンテナ叩きつけという手段を使って交渉をとっとと済ませ、修行する時間を作ったのである

 

「っと、交渉云々についてはこの辺りにして、時間が惜しいから今から早速修行を始めるとするかのう。と言っても今日は朝潮達の実力を調べるのがメインじゃから、そこまでハードな奴はやるつもりはないぞい。って事で全員表に出ろぉっ!!!」

 

突然カッカッカ笑いを止めて正蔵が声を張り上げる、それを聞いて

 

「はいっ!よろしくお願いしますっ!」

 

朝潮は正蔵に敬礼しながらそう返し

 

「今からって……、どんだけ時間が惜しいのよ……」

 

満潮が呆れたように、溜息交じりにそう返し

 

「正蔵さんの修行、一体どんなものなのかしら~?」

 

荒潮がにこやかに笑いながらそんな事を言うのであった

 

そんな3人とは対照的に、修行の過酷さを知っているメンバーは正蔵の言葉を聞くなりビクリと震え、その表情を引き攣らせてしまうのであった……

 

因みに、正蔵達が修行の為にホテルを出ているその間に、朝潮達の艦隊の旗艦だった艦娘も含めた正蔵に帰れと言われてしまった艦娘達は、荷物をまとめて自分達の拠点へ帰ってしまったのである

 

尤も、正蔵はその事を予見しており、ガダルカナルからワンコのところに物資を輸送する為に来ていた穏健派の艦隊に彼女達の護衛をする様に頼んでいたのであった

 

 

 

 

 

 

さて、他の艦娘達が自分達の拠点に戻っている中、正蔵達はホテルを出るなりここに来る途中に正蔵が見つけたと言う浜辺へ走って向かうのであった。その距離大体2.7km

 

「なんじゃ?もうへばったんか?」

 

「だ、大丈夫です……、まだやれます……」

 

「いや、無理しなくていいからな……?」

 

肩で息をする朝潮に向かって、皆を置いていきそうな勢いで全力ダッシュで先頭を突っ走っていた正蔵がケロリとした顔で尋ねる。それに対して朝潮は大丈夫だと返すのだが、傍から見るととても大丈夫そうには見えなかったので、同じ距離を走っていながらピンピンしている木曾が心配そうにそう言うのであった

 

「あらあら……、あのお爺ちゃん……、本当に……、凄いのね~……」

 

「何で……、あの距離を……、あんな陸上短距離……、みたいな速さで走って……、ピンピンしてる……、のよ……?」

 

その様子を見た荒潮と満潮は、朝潮同様ゼェゼェと荒い息をしながら呟く

 

「あたし達は普段からこれくらいやってっかんな~……」

 

「慣れって怖いですよね……」

 

満潮の呟きを聞いた摩耶と阿武隈が、苦笑混じりにこんなやり取りを交わしていた

 

「海賊団が平然としてるのは……、まあ分かるクマ……。けど夕立も……、何事も無かったかのように……、してるのは……、納得いかねぇクマ……」

 

「夕立は空さんと一緒に鍛錬してるっぽい!だからこのくらいなら全然平気っぽい!」

 

そんな摩耶達を見ていた球磨が呟くようにそう言うと、夕立がえっへん!とばかりに胸を張ってそんな事を言うのであった。実際、空の鍛錬は正蔵の修行ほどではないが、艦娘からしたらかなりハードな内容になっているので、空と共に鍛錬をこなす夕立もまた、海賊団レベルに鍛え上げられているのである

 

「ウォームアップでこれか……、これは鍛え甲斐がありそうじゃのう!」

 

「だからと言って、無理させ過ぎるのも考え物だと思いますけどね~……」

 

正蔵が言葉を発したその時、海の方から唐突に声が聞こえて来るのであった。その声を聞いた途端ショートランドの艦娘と朝潮達が警戒心を高めるのだが、海賊団が全く警戒しない様子を見て皆揃って不思議そうな顔をするのであった

 

そんな事をしていると、海の中から何かが姿を現し朝潮達の方へと近付いて来る。そしてある程度距離が縮まったところで……

 

「あれは……、水母棲姫……っ!」

 

朝潮が近寄って来る存在が何者であるかを確認し、敵意丸出しの視線を向けながらそう言ったその時だった

 

「何じゃ剛、お前さんも修行に参加するんか?」

 

「ええ、でもどちらかと言えば教官の方で参加したいな~って思ってるんですけど~……、それでもいいですか?」

 

正蔵が水母棲姫に話しかけ、水母棲姫も平然と正蔵のその問いに答える。その様子を見た海賊団以外の艦娘が混乱し始めたところで

 

「あの方は稲田 剛さん、不知火達が所属している海賊団の相談役を務めている方です」

 

「あたしと不知火の射撃の師匠でもあるな、あたし達の射撃テクがスゲェ事になってるのはあの人のおかげなんだぜ。もし射撃関係で伸び悩んだ時は相談してみな、きっと親身になって聞いてくれるはずだからな!」

 

空気を察した不知火が剛の事を紹介し、それに続く様に摩耶がこんな事を言うのであった

 

「ふむ……、そうじゃのう……、摩耶達もこう言っとるし何より儂は射撃に関してはサッパリじゃからな……。相分かった!剛、こいつらの射撃関係の教官をしてやってくれ」

 

「ありがとうございます♪そういう訳だから、しばらくの間よろしくね~☆」

 

摩耶達の話を聞いていた正蔵が、剛のお願いを聞き入れて剛を射撃の教官に任命し、剛は正蔵に感謝の言葉を述べ、それから摩耶達の話を聞いて未だに驚いている艦娘達の方へと向き直り、ウインクしながらそんな事を言うのであった

 

こうして朝潮達の修行に鬼教官が加わり、修行は更に過酷なものになるのであった

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