空と翔鶴がデートを満喫し泊地に戻っている頃、マダガスカルにいる輸送船護衛部隊がどうしているかと言うと……
「よぅし、今日はここまでじゃっ!!!」
正蔵のこの声を以て、その日の修行が終了する
「よ、ようやく終わった……」
「死ぬかと思ったクマ……」
砂浜に大の字になって寝転がる江風と球磨がそう呟くのであった
剛の登場後、彼女達は早速修行を開始するのだったが、その修行の内容は本当に苛烈極まりないものとなるのであった
ウォームアップについてはホテルからのダッシュで済ませたものとして、最初に行われたのは剛主導による射撃訓練であった
射撃訓練の具体的な内容についてだが、剛の指示で護達が設置した的に砲撃を叩き込むと言うとてもシンプルな内容なのだが……
「そこっ!撃ったらすぐに次弾を装填するっ!モタモタするなっ!!私だったらその間にお前を10回は沈める事が出来るぞっ!!!そうなりたくなかったらきりきりと動けっ!!!相手に隙を与えてやるなっ!!!いいなっ!!?」
ここで鬼教官と化した剛が猛威を振るう、海賊団以外の艦娘達が先程までのオネエ口調の時とのギャップに驚き呆然としていると、すぐさま叱責が飛んで来て今度はその迫力に気圧されてしまい立ち尽くしてしまう。そうなると今度は罰が課せられ、連帯責任として海賊団含む皆で仲良く筋トレ地獄である
「ちょっと!さっき親身になって相談に乗ってくれるって言ってたわよね?!全然そんな事ないじゃないっ!!!何よこの鬼教官振りはっ!??」
「そりゃお前、親身になって相談に乗ってくれるのは訓練以外の時の話だぞ?剛さんは訓練の時は大体こんな感じなんだぜ?」
「そこぉっ!!!無駄口を叩くなぁっ!!!」
「は、はいぃっ!!!」「はいっ!!!」
話が違うとばかりに満潮が喚き、それに対して普段から剛の指導を受けている摩耶がこの様に答え、2人のやり取りが耳に入ったのかすぐに剛のお叱りの言葉が飛んで来て、2人は同時に返事をするのであった
そして射撃訓練が終わったところで、今度は正蔵との鬼ごっこである
これもルールは簡単で、とにかく制限時間まで只管正蔵から逃げると言うものである
この修行の狙いは相手の位置と距離感を正確に把握する能力と、瞬時の判断力、それをすぐさま実行に移す行動力と瞬発力を鍛えようと言うものだ
ただまあ、正蔵に捕まってしまうと当然ペナルティーがある訳で……
「ほぉれ!護、確保ー!」
「ギャアアアァァァーーーッス!!!捕まったあああぁぁぁーーーッス!!!誰かっ!誰かヘルプミーッスうううぅぅぅーーーっ!!!」
正蔵に捕まってしまった護が、つい先程周囲の警護を司と交代したところで修行に巻き込まれてしまった護が必死の形相で助けを求める。だが現実は無情で誰も護の事を助けようとせず、それどころかチャンスとばかりに正蔵達から距離を取るのであった
「そぉらいくぞ~!」
「ちょっ!!!待って待って待って欲s……、ウギャアアアァァァーーーッスッ!!!」
正蔵がそう言うと護を掴んだまま勢いよく横方向に回転し始める、そしてそれはどんどん加速していき仕舞いには砂浜の砂を巻き上げ小さな砂嵐のようなものを形成し始めるのであった。そのリトル砂嵐の中からは、護の悲痛の叫びが聞こえ……
「高いたか~い!」
「ノオオオォォォーーーッ!!!」
正蔵の高い高いの声を同時に、絶叫する護が天高く射出されるのであった。その高さ、実に50mである
そう、この鬼ごっこのペナルティーとは、正蔵に捕まってしまうともれなく正蔵から高い高いと言う名のゲッター的大雪山おろしをお見舞いされるのである
一応、艦娘が捕まった場合寸でのところで正蔵がその身体を掴んで地面に激突しないようにはしているのだが、そのタイミングはいつも本当に際どいもので、大体が鼻の頭と地面との間が5mmあるかないかと言ったところで止めるのである
当然そんな恐ろしい目には遭いたくないと言う事で、使える物を全て駆使して皆必死になって正蔵から逃げるのである
因みに……
「ゴブフェッ!!!」
転生個体の者が捕まった場合、正蔵のサポートは適応されずそのまま地面に激突する事になるのであった。そういう訳で先程天に打ち上げられた護は見事顔面から砂浜に着地し、短い断末魔を上げて沈黙しぐったりするのであった
こうして恐怖の鬼ごっこが終わったところで、今度は防空射撃訓練となるのだが……
「さあっ!儂らの艦載機群を全て撃ち落としてみせぇいっ!!!」
「使っている物は演習弾だが、当たれば当然痛いからなっ!痛い思いをしたくなければ何としてでも撃ち落とす事だっ!!!」
「ごめ~んね、マジごめ~んね!でもこの2人の言う事聞かないと後で俺様が酷い目に遭う事になっちゃったりしちゃったりするから、ホントごめ~んね~!手加減も出来なくてガチごめ~んね~~~!!!」
今度は正蔵、剛、そして九尺と交代した司が艦載機を発艦させ、正蔵がこれらを全て撃ち落とせとほざくのであった……
「こ、この数をかい……?」
「すっごくいっぱいいるぽいぃっ!!!」
時雨と夕立が3人が発艦させた艦載機が飛び交う空を見上げながら、思わずそんな声を上げるのであった。現在時雨達の視界に映る艦載機と空の比率は7:3と言ったところだろうか……、凄まじい数の艦載機があちこち飛び回ったり、滞空していたりするのである。その殆ど、8割くらいは正蔵が発艦したものではある
「あら~……、これは骨が折れそうね~……」
「あんだけの数から攻撃されたらひとたまりもねぇぞっ!皆、気合い入れてやるぞっ!!!」
時雨達同様に空を見上げながら荒潮がそう呟き、木曾が全員に発破をかけたところで防空射撃訓練が開始され、参加した全員がかなりの数の演習弾をその身に受けるのであった……
尚、先程大雪山おろしを喰らってぐったりしていた護が尻に演習弾を数十発受けたところで我に返って復帰し、さっきのお返しとばかりに艦載機を叩き落しまくったおかげで想定より早くこの訓練は終了するのであった
「貴方達……、もしかしていつもこんな訓練をやってるの……?」
「そうね……、鬼ごっこ以外は大体いつもこんな感じね……」
「なるほど……、道理で海賊団の皆が桁違いに強いわけだ……」
砂浜に座り込み肩で息をする雲龍が、陽炎に海賊団の普段の訓練の事を尋ねたところこのような回答が返って来る。そしてそれを聞いた川内がその表情を引き攣らせながらこの様な言葉を口にするのであった
「私達の場合、敵の拠点を制圧するか何処かにお邪魔するかしないと拠点らしい拠点が持てないのよね……、だから野宿中の急な襲撃なんかに対応する為には、生き残る為にはどうしても強くならなくちゃいけないのよね……」
「剛さん達の指導は本当に厳しいものですが、それは不知火達に心から生き残って欲しいと言う思いがあるからだと不知火は思っています。だからこそ不知火達はそんな剛さん達の思いに応えるべく、歯を食いしばってこの厳しい訓練を乗り越えていくんです」
川内の言葉を聞いた天津風が、不知火が口々に己の意見を口にする。そして2人の話を聞いた朝潮は
「海賊団の皆さんが強い理由……、どうやら訓練だけではないようですね……」
思わずそう呟くのであった
「そいじゃ修行も終わった事じゃし、ホテルに戻るとするかのう。明日の朝にはここを発ちダカールまで行く予定じゃからな、しっかり身体を休めるんじゃぞ。ああ、ダカールに着いたらまた修行するから、そこんとこよろしくのう。っとそうじゃそうじゃ、どうせじゃし剛達もホテルに来るといい、ついさっき空き部屋がたっぷり出来たところじゃからなぁ!」
朝潮が呟いた直後、正蔵がそんな事を口にしてホテルの方に向かって歩き出し、それを聞いた海賊団以外の艦娘達はガックリと肩を落としてその後を追い、その後ろに変装を済ませた剛達が続くのであった