次の章は戦治郎達がこっちの世界で目覚めてからリコリスに宣戦布告するあたりまで触れていきたいところです
そろそろ南方海域攻略しないとだな~……
食事の後戦治郎達と別れた漣は入渠ドックへ来ていた
ウサちゃんの事で太郎丸から呼び出しを受けたからである
とはいうものの、何か深刻な問題があったわけでもなく血液検査の結果も問題なく健康そのもの、どんな名前を付けたか聞かれて飼育方法のレクチャーなどが主な理由だった
入渠ドックに呼び出されたのは、牧場方面にある動物小屋と呼ばれる建物には血液検査などに使う設備がなかったからとの事、機会があれば動物小屋に動物用の医療設備を導入したいらしく、太郎丸は戦治郎にその申請書を既に提出しているそうだ
要件が終わり医療設備を出たところで、もののついでという事で司の店に行きウサちゃんの替えの着ぐるみを注文しておいた、その時口説かれたがあまりにも鬱陶しいので鼻っ柱に一発お見舞いしておいた、……直撃させた際「ありがとうございます!」と司に言われたが気にしないでおこう
さて、これからどうするかと思いながら歩いていると今は『居酒屋 鳳翔』の暖簾がかかった食堂から一升瓶を数本抱えた中間棲姫が出てくる、その後ろには軽巡ト級と料理を担いだ大量の妖精さんが続いている
「おーぅおめぇらー! 今日もお疲れさん! 今日は特別手当って事でいいモン仕入れてもらったみてぇだからこいつかっ喰らって明日の英気を養おうじゃねぇの!!!」
中間棲姫が叫ぶと妖精さん達から喝采を浴びる、ト級はと言うと苦笑いを浮かべその光景を眺めている感じだったが、こちらの視線に気付いたのかこちらを向き漣の姿を捉えるなり
「ひぃっ……!」
と言って中間棲姫の陰に隠れてしまった
「あん? どうした藤吉、何か変なモンでも見たか……? って、誰だおめぇさん」
急に怯えだし自分の陰に隠れる藤吉と呼ばれたト級を見て、中間棲姫が周囲を見回したところ漣を見つけ声をかけてる
「あ、どうもこんばんは~、今日この鎮守府に着任した漣っていいます、今後ともよろしくお願いしますね~、それとこの子は友達のウサちゃんです」
「イィー!」
中間棲姫に名前を聞かれ自己紹介とウサちゃんの紹介をする漣、それを聞いた中間棲姫の眉間の皺が深くなる
「漣? 漣……、どっかで聞いたような……」
「ひ、輝さん、せ、戦治郎さんがい、言ってた子って……、こ、この子……、です……」
どうやらこの2人は戦治郎から名前を聞いていたようだ、しかし、藤吉と呼ばれたト級が何かに怯えたような震える声でその事を輝と呼ばれた中間棲姫に伝えると、中間棲姫の目がみるみるうちに鋭くなっていく
「思い出した! あれか、執務室で戦治郎撃ったとか言う馬鹿はおめぇかっ!!!」
いきなり馬鹿とか言われた、まあ撃ったのはその通りだが流石に馬鹿は失礼じゃないだろうか?
「おめぇのせいで今日はゆっくり出来ると思ってたのに執務室の掃除やら修繕に駆り出される羽目になったっつぅんだよクソッタレ!!!」
「え、あ……、それはすみませんでした……、はい……」
この人達が執務室の修繕やってくれたのか、だったら馬鹿云々は甘んじて受けます、今思えば自分でもやらかしたって思ってますから……
謝罪後しょんぼりし始めた漣を見て中間棲姫の怒りは収まったようだ
「次からは気を付けろよ? まあ、その関係で特別手当としてこんないい酒呑めるわけだし、これで手打ちにしとくか、っとそういやまだ名乗ってなかったな、俺は赤城 輝(あかぎ ひかる)だ、建築や建築物の修繕と改装、他には家具作ったりそれの修理なんかが担当だ、この鎮守府だっけか? ここの建物と家具は全部俺らの手作りなんだぜ?すっげぇだろ?」
何それ凄い、建物どころか家具までハンドメイドとかやっぱりこの人も戦治郎の仲間なんだなぁと思い知らされる
「そんで、こいつが……、ダメか、まあ今日初めて会う奴だからこんなもんか……、こいつは戸部 藤吉(とべ とうきち)って言って俺の手伝いやってんだ、今はこんな調子だが慣れてくるとどもりながらにはなるだろうが話は出来るようになるはずだから、それまでちっと我慢してくれ」
輝が藤吉の様子を見てから、代わりに紹介してくれた、しかしこの怯え様は一体何なのだろうか
「こいつはこのどもりが原因で中学で結構派手にいじめられて不登校になっちまったらしくてな、高校進学してくれるならって親御さんもそれまでは引き籠りを許してたが、こいつにその気がないってのが分かったら豹変して寮のある職場に無理矢理叩き込んで働かせたみたいなんだわ、まあ俺が大工として下請けやってた会社だったんだがそこでも殴る蹴るとひでぇいじめされててな、頭来てそこの人事の連中に掛け合って連れ出したんだわ、そんで戦治郎のとこに俺ごと世話になったって流れだ」
そういう理由か、それなら人間不信になっても仕方がないだろう
「とまあ、こんな奴だが仲良くしてやってくれ、俺らよりおめぇらの方が歳もちけぇだろうからな、確か17だったっけか?」
輝の問いに「は、はい……」と短く返す藤吉、ここまで酷いとなると本当に酷い目にあったのだろうと想像するのも難しくない
「悟にも相談乗ってもらってるんだが、これが中々上手くいってなくてなぁ……、まあ、無理しねぇ範囲で気長に克服すりゃあいいか、ここには藤吉の敵になる奴はいねぇだろうし、そんな奴がいりゃあ俺がぶっ飛ばすしなっ!」
だっはっはと大声で笑いながら藤吉の背中をバンバン叩く輝、困ったような顔こそしているが口元が緩んでいるあたり藤吉も輝の言葉を嬉しく思っているようだ
「っと、俺らはここらで呑み始めっけど漣も呑むか?」
「いえいえ、漣は未成年ですから遠慮しておきますよ~」
輝が漣を呑みに誘うが、明日も仕事がある都合ここで呑んだりして明日に響いたら問題になるので断る事にした
「と言うか、何で外で呑むんです? 鳳翔さん達が居酒屋やってるって聞いてますからそこで呑んだらいいんじゃないですか?」
ふと思った事を聞いてみた、居酒屋があるならそっちで呑んだ方がいいにも関わらず外で呑む理由が気になったのだ
「この人数だぞ?」
この一言で納得してしまった、輝と藤吉だけならまだしも妖精さんも大量にいるのだ、こんな大勢で店内で呑んでいたら他の客に迷惑がかかるだろうから外で呑むわけか、だったら仕方ない
「追加のつまみは食いたい奴が自分で注文しに行けってこった、ここまで持ってこさせるわけにはいかねぇからな」
そう言いながら酒の封を切り呑みの参加者のグラスに注いで回る輝、妖精さん達も担いでいた料理を配膳している
「さて、全員に酒は回ったな~? んじゃ今日は急な仕事だったにも関わらず手伝ってくれてありがとうな! 乾杯!」
料理の配膳と参加者全員のグラスに酒を注ぎ終わり乾杯の音頭をとる輝、そのままぐいっとグラスを傾け酒をあおり息を吐く
「くは~! うっめぇなこれ! 思ってたより絶対いい酒だわ! 女将さんに感謝しねぇとな!」
どうやら呑んでいる酒が余程お気に召したのか呑むペースを上げていく
「あ~、こんなうめぇ酒をあの餃子の姉ちゃんがお酌してくれたら最高だっただろうな~……」
餃子の姉ちゃんって誰だよ、まだ知らない仲間がいるとでも言うのか? 漣が困惑していると
「あ、あの……、ひ、輝さんがその……、い、言ってる餃子のお、お姉さんっていうのは……あ、えと……、あ、赤城さんの、こ、事……、です……、く、空母の……、その……」
藤吉が教えてくれた、何故赤城が餃子のお姉さんなのかは分からないが……、それはそうと藤吉のどもりは本当に酷いものだ、これは予め説明がされてなかったら聞いててイライラしてくるだろう、怯えた態度がそれに更に拍車をかけてしまっている。これはいじめの対象になったのも頷けてしまう
「この鎮守府に赤城さんはいなかったはず……、って事は藤吉さんも漣達が出てたって言うゲームか漫画を知ってるんですか?」
「う、うん……、か、『艦隊これくしょん』……、つ、通称『艦これ』って……、い、言うゲーム……、ぼ、僕もその……、や、やって……、ま、ました……」
『艦隊これくしょん』、『艦これ』と言うのか……、何かそのまんまな名前だな……
「第二次大戦のときに存在又は設計された艦艇を擬人化したキャラを集め自分好みの艦隊を作り運用する、と言う内容のゲームだ」
唐突に聞こえた声の方を見てみれば空と翔鶴がいた、いつの間に来たのだろうか?
「あ……、そ、空さんにしょ、翔鶴さん……」
「初対面の相手によく頑張ったな、後は俺が引き継ぐ」
空がそう言うと藤吉はほんの少しだが安堵した表情をする、その様子から考えると勇気を出して話しかけてくれたようだがちょっと無理をしていたようだ
「この鎮守府で艦これをやっていたのは俺、戦治郎、悟、光太郎、シゲ、護、通、翔、司、藤吉の10人だな、剛さん、輝、望はやっていなかったから艦娘も深海棲艦も知らなかったはずだ、実際お前達を見てすぐ名前が言えなかったはずだ」
望はあまり話していなかったからよく分からないが、剛や輝、シゲや通に司などの反応からすると確かにその通りだった
「艦これの知識がない者でもこちらに転生してきている原因は不明だが、今は関係ない事だから何処かへ置いておけ、今は何故赤城が餃子の姉ちゃんなどと呼ばれているかだな」
転生個体の事は確かに気になるが、赤城が何故そう呼ばれているのかも同じレベルで気になっていたので空の話に耳を傾ける
「俺達の世界の新聞の全面広告を赤城が飾った事があってな、それを見た輝が赤城に惚れたがキャラの名前が分からなかった事から広告の内容、餃子のチェーン店の宣伝と合わせて餃子の姉ちゃんと呼ぶようになったのだ」
なんじゃそりゃ……、新聞の一面を飾った赤城すげぇと思う反面名前覚えてもらえなくて可哀想とも思う
「何度も名前を教えたが、自分の苗字と同じで分かり難いからと言って結局直っていないな……」
そう言えば輝の苗字も赤城だったな、何とも言えない理由だ……。そしてふと執務室で話していた羅針盤事故のとき戦治郎の正体を知ったメンバーの事を思い出す
「そういえば、この鎮守府の人以外でご主人様の正体を知っている人の中に赤城さんの名前があったような……?」
「戦治郎が軍学校に行ってたときの話か、確か空母担当の教官が赤城だったらしいな、それも佐世保所属だと聞いたぞ」
なんと佐世保所属の赤城だったのか、その気になれば会いに行けるかもしれないのか
「空ぁ、さっきから赤城赤城言ってるけど俺に何か用でもあんのか?」
輝が話に加わってくる、顔が赤くなっているから結構酔っていそうである
「お前の事ではない、お前の言う餃子の姉ちゃんの話だ、どうやら佐世保鎮守府に餃子の姉ちゃんがいるらしいと漣と話していただけだ」
「ちょい佐世保鎮守府行ってkゴブフッ!!!」
佐世保に赤城がいると聞くや否や佐世保に行くと言って海に飛び込もうとした輝に、一瞬で前に回り強烈なボディーブローを放ち輝の意識を瞬時に刈り取る空、空手すげぇ
「さて、輝も大人しくなった事だ、酒宴はこのあたりでお開きにしておけ、もう少しで消灯時間だからな」
気絶した輝を担いだ空が言う、時刻を見てみれば本当に消灯時間が迫って来ていた、もしかして空はこの事を伝えに出てきたのだろうか?
ともかく、呑みはお開きになったようなのでこのあたりで部屋に戻る事としよう、明日からは出撃もあるだろうし大和の手伝いもある、疲れた身体でやるわけにはいかないので部屋に着いたら早くベッドに入って寝てしまおう
そう考えた漣は一言挨拶した後、艦娘の寮へと戻るのであった