リチャードのやかましく暑苦しい艤装のおかげで、何とか吹雪達の修理が完了し戦治郎が前線に復帰、戦治郎が戦闘を開始して今に至るのであった
戦治郎が戦線に復帰した事でゼッペーはその数をかなり減らす事となったのだが、戦治郎は焦りを抑える事が出来ずにいた
佐渡の通信によって北マリアナから強硬派の深海棲艦がこちらに向かっている事が明らかになり、それをどうにかしなければトラックもラバウルの二の舞になってしまう、そう思った戦治郎はどうしても焦りを感じずにはいられなかったのである
「早くこいつらを片付けねぇと……っ!」
「そう焦るな戦治郎……、と言いたいところだが……」
戦治郎の呟きを聞いたリチャードが戦治郎を落ち着かせようと言葉を掛けた直後、リチャードの視界にとても小さいが動く影が映ってしまう。それを認識したリチャードは思わずため息をつき、このように言葉を続けるのであった
動く影が見つかった方角は、リチャード達から見て2時の方角……。つまりこの小さな動く影こそが北マリアナから来た強硬派の艦隊なのである
「うげっ!もう視認出来るとこまで来てんのかよっ!?」
リチャードの態度を不審に思った戦治郎が、リチャードが視線を向ける方角を見た瞬間顔を歪めながら声を上げる
「さて……、この状況をどう打破したらいいものか……」
『くっそ……っ!こうなったら今から俺達があっちに向かって……』
「光太郎っ!俺は戦闘前に無理すんなって言っただろっ!?」
『ですが先輩、このままでは……っ!』
リチャードが呟き、光太郎がその疲れ切った身体に鞭打ってまで強硬派を迎え撃とうとして戦治郎に止められる。それに対して通が反論しようとしたところで……
『だったらこっちはあたし達に任せなっ!』
通信機からこの場にはいないが聞き慣れた艦娘の声が聞こえて来る、そしてその直後水平線の向こうで大きな水柱が上がるのであった
『戦ちゃん達、おまたせ~☆遠征部隊、輸送護衛任務を完了させたった今戻ったわ~』
『待たせっちまったな戦治郎さん、ここからは俺達も参戦するぜっ!』
『遅れて来た分、しっかり頑張らないとねっ!ね?皆っ!』
『不知火!天津風!張り切って行くわよっ!』
『言われるまでもないわっ!』
『徹底的に追い詰めてやるわ……っ!』
水柱がその姿を消したと同時に、通信機から遠征に参加していた艦娘達のやる気に満ちた声が次々と聞こえて来る
「いやちょっち待って?確か通信機から占守の悲鳴が聞こえた時、剛さん達ってジャカルタ辺りにいるって言ってたよね?いくら何でも来るの早過ぎな~い?」
思わず戦治郎が剛達遠征部隊に疑問をぶつける、まあ戦治郎が疑問に思うのは仕方が無い事だろうとは思う。何せジャカルタからここまでの距離は、下手したらガダルカナルからトラック泊地までの距離の約2倍くらいあるのである。普通だったらもっと時間が掛かるはずなのに、どうやってこんな短時間でジャカルタからここまで来たのだろうか?戦治郎は不思議で不思議で仕方なかったのである
『走って来たんだクマ』
「はいぃ?」
『球磨の言う通り、私達はあの距離を全力で走って来たの……』
『いや~、最初剛さんが提案してきた時は無理だと思ったけど、やってみると出来るもんだね~』
球磨の返事を聞いた戦治郎は思わず裏返った声を上げる、そして先程球磨が言った内容を雲龍が復唱し川内があっけらかんとそう告げるのであった
これには流石に戦治郎も耳を疑う、走って来た?ジャカルタから?ここまで?約5230kmと言う距離を?またまた御冗談を……
『きっとあの修行のおかげっぽい!』
『艤装のアシストがあるとは言え、ここまで息切れせずに来れたのは間違いなく正蔵さンの修行のおかげなンだろうな~……』
『正直僕は今でも信じられないんだけどね……』
白露型の3人のやり取りを聞いた戦治郎が思わず頭を抱える、どうやらあの遠征に参加した娘達は祖父さんにナニカサレタヨウダ……。でもそのおかげでこうやって急いで救援に来てくれた訳なのだから……、そう考えると戦治郎は複雑な気分になるのであった
その後戦治郎はこの件について深く考えるのを止めて戦闘に集中、剛達が強硬派の相手をしてくれているおかげで精神的に余裕が出来た戦治郎達は、先程よりも早いペースで次々とゼッペーを始末していくのであった
だが、それも長くは続かなかった……
『これ、どうやったら通信出来る様になるのかねぇ?』
通信機から突然聞き覚えこそあれど、聞こえる筈が無い声が聞こえて来たのである
「その声は……、隼鷹か……?」
『うぉっ!?これで合ってるのか……、ここだ、このボタンで通信出来るようになるみたいだよ!』
訝しむ戦治郎がその声の持ち主である隼鷹の名を呼んだところ、相手は驚きの声を上げたかと思うと近くにいるであろう誰かに話し掛けていた
『これで通信出来る様になったのか……?あー……、誰か私の声が聞こえているか?』
「今度は那智か……、通信は聞こえている……、が、先にこちらの質問に答えてもらおうかねぇ?」
すると今度は那智の声が聞こえて来る、それに対して戦治郎が困惑しながらも応答し那智に質問を投げかけようとしたのだが……
『おおっ!聞こえているんだなっ!今返事をしたのは佐渡達を、姉さんや羽黒を助けてくれた長門屋海賊団とか言う深海棲艦の集団の内の誰かと考えていいんだな?!』
「お、応……、あ~……、その~……、長門屋海賊団のリーダーやってます、長門 戦治郎って言うモンですが……」
戦治郎が質問する前に那智が勢いよく捲し立てて来た為、戦治郎は質問するタイミングの逃すだけでなく那智の勢いに思わず気圧されてしまい、ついこの様な感じで自己紹介するのであった
『戦治郎だとっ!?佐渡達を助けた張本人かっ!だったら都合がいいっ!済まないが私の話を聞いてもらえないかっ?!』
「えっ?あっはい……、どうしました……?」
戦治郎の名前を聞いた途端、那智の勢いが更に増し遂に戦治郎はその勢いに圧倒されて弱弱しく返事をし用件を聞く事にしたのであった……
『単刀直入に言うぞ!佐渡と占守がお前達と繋がっている事がバレて、提督に連れて行かれてしまったんだっ!!!』
「ウゾダドンドコドーン!!!」
『いや、日本語で返事しとくれよ……』
那智の言葉を聞いた戦治郎が驚きのあまり思わずオンドゥル語で返事したところ、隼鷹に引き気味に突っ込まれるのであった……
落ち着きを取り戻した戦治郎が2人の話を聞いたところによると、どうやらトラックの提督の方針を支持する艦娘が佐渡達の様子を不審に思い、会話内容を盗み聞きした事で佐渡達が戦治郎達と繋がっている事が発覚、すぐさま佐渡達は提督のところに連れて行かれてしまったのである
『その際佐渡達は抵抗する振りをして、私達にこの通信機を投げ渡したんだ……』
『那智はあの子達がショートランドの艦娘連れて戻って来た後、事情聴取やらで事情を知ってあの子達の協力者になったクチなんだよ。そんであたしはあの子達が襲撃される前からあの子達をからかって遊んでたら妙に懐かれちまってね……、んであんた達との繋がり関係であの子達や那智から相談されて協力する事にしたのさ』
「成程、お前達が通信機を持ってる理由はそう言う事か……。しかし参ったなおい……、今こっちはゼッペーの相手で手一杯だってのに……」
那智達が通信機を持っている理由について納得した戦治郎は、最初の1/3ほどにまで数を減らしたゼッペーにヨイチさんで砲弾を更にプレゼントしながら、佐渡達の件をどうするかで悩むのだった
『無理は承知……、っ!何だとっ!??』
那智が何かを言おうとしたところで、急に驚愕の声を上げる
『やべぇ!今度はウェーク島の方から武装したのが来やがったっ!!!』
「んもおおおぉぉぉーーーっ!!!大概にしろよおおおぉぉぉーーーっ!!!」
隼鷹の言葉を聞いた戦治郎が耐え切れなくなって絶叫する、今度の増援は北東の方角からやって来ている、つまりそいつらを倒すには大きく移動しなければいけないのだ。こちらが片付いていない、佐渡達の事もどうにかしなければいけない、そんな中でここから遠い位置に増援、こうなると戦治郎だけでなく他の者達にも動揺が広がるのであった
「どうするんだい戦治郎!?」
これには流石のリチャードも焦りの色を表情に出す、聞かれた戦治郎は必死になって思考を巡らせるのだがいい案が出ない。本当にどうしたものかと悩んでいると……
「「(`0言0́*)<ヴェアアアアアアアア!!!」」
凄まじい叫び声と共に、何かが2つほどとんでもない速度で飛んで来てトラック泊地の建物に激突、大爆発するのであった……