「いってぇ……、あ~……、能力が無かったら俺の身体もVOBごと爆発四散してるところだったわ……」
VOBと共にトラック泊地の建物に激突したシゲが、全身を駆け巡る痛みに耐えながらこの様な事を呟きその身体を無理矢理起こす。もしシゲに迦具土がなかったら本人が言う通りその身体はVOB諸共爆散していたと思われ、シゲは心の底から自身の能力に感謝するのであった
「シゲ~、無事か~?」
丁度シゲが立ち上がったところで、今の相棒である伊吹がヨロヨロしながらシゲの下に歩み寄って来る。そんな伊吹の身体は全身が擦り傷まみれとなっていた
「応、迦具土が無かったら爆散してたところがな……」
「それについてはホンマすまん、ワレに聞かれた時素直にVOBを切り離す方法教えときゃ良かったわ……」
シゲが伊吹にそう答えたところ、伊吹がシゲに対して自分のミスについて謝罪を入れるのであった
何故2人がこの様な事になったのか、それは燎のディープストライカーが完成したところまで話は遡る
空達がちゃんぽん要塞でディープストライカーを完成させ、ようやくとばかりに休憩しているところで、通信機からウェーク島から増援が来ている旨の話が聞こえて来たのである
「ウェーク島か……、今戦治郎達が戦っている場所からかなり離れたところだな……」
「それってつまり……、そちら側の守りが薄いって事ですか……っ!?」
「まあ……、そうなるな……」
通信を聞いた空がそう呟き、その呟きを聞いた翔鶴が愕然とし日向が目を閉じてお決まりのセリフを口にするのだった
「でしたら急いで向かわないとっ!」
翔鶴が声を張り上げて救援に向かうべきだと主張するのだが……
「私達もそうしたいのですが……」
「私達は空さんの様に高速で空を飛ぶなんて事は出来ませんから……」
「瑞穂達が保有しているケートスでは、あの速度には追い付けませんし……」
休憩と言う事で空達にお茶と茶菓子を持って来ていた扶桑、龍鳳、瑞穂がそう言ってしょんぼりとする。そんな彼女達は自分達が力になれないのが心底悔しいのかその表情からその悔しさが滲み出ていた
「ふっふっふ……」
そんな彼女達の言葉を聞いた伊吹が、不意に不気味な笑い声を上げる
「どうした伊吹、変な物でも食べたのか?」
「変な物って……、ここの食堂には翔さんがいるからそんな変な物なんて出るはずがないのですが……?」
そんな伊吹を見た空が不思議そうに尋ね、空の言葉を聞いた龍鳳が訝しみながらそう答える
「いや、別にワシは変なモン食った訳じゃないんじゃが……、っとそうじゃなくて!こんな事も有ろうかと作っておいたモンがあるんじゃっ!」
伊吹はそう言った後シゲを引き連れて工廠の奥に1度姿を消すと、大きめのコンテナを2つ持って戻って来るのだった
「さぁ、目ん玉真ん丸くしてとくと見るとええっ!!!」
そう言って伊吹がコンテナを開けると、中にはそれぞれGP01フルバーニアンのユニバーサル・ブースター・ポッドとエールストライクガンダムのエールストライカーのような物が入っていた
「これは一体……?」
それらを見た日向が伊吹に疑問をぶつけると、伊吹はニヤニヤしながらこれが何なのかについて話し始めるのであった
これらはディープストライカーパーツを作っていた際、余ってしまったパーツを使って作られた飛行ユニットなのだと言うのだ
「こいつこんな事もあろうかととか言ってたけど、ぶっちゃけ余剰パーツが勿体ないからって理由で何となく作ったのがコレなんだけどな……」
「シゲェッ!余計な事は言わんでええじゃろぉっ!!!」
こうしてシゲと伊吹の漫才を艦娘達が引き攣った表情で見届けた後、これらのパーツを扶桑と日向に取り付ける事になった。何故この2人なのかと言えば、装甲と艤装の出力の関係と言ったところである
艤装の出力で言えば翔鶴の艤装がこの中では最高なのだが……
「艦載機なんかは航空力学に則った、飛ぶ為の形しとるから装甲が薄くてもええんじゃが、これはそんなのを一切合切無視して強引に物体を飛ばすモンじゃからな、そうなるとどうしても装甲や耐久性が気になって来るところなんじゃ」
伊吹がそう言って翔鶴がこの装備を使うのは避けるべきだと言うのだった、事実彼女の艤装は空母艤装であるが故装甲が薄い為どうしても耐久性に難があるのである。それを聞いた翔鶴は納得した様な、ちょっと嬉しそうな表情を浮かべてその事を承諾するのであった
そしてこれらのパーツをまずは日向に取り付けようとした時だった
「ちょっといいか?私にそれを取り付ける前に頼みたい事があるんだが……」
日向がそう言って取り付け作業に待ったをかける、伊吹達が何事かと思いながら日向の話を聞くと、どうやらエールストライカーの配色を変えて欲しいという事だった
こうして伊吹達が彼女のリクエストを聞き入れ、エールストライカーに彼女が指示する通りに塗装を施す。そうして……
「空を飛ぶとなれば、やはりこの配色でなくてはな……。ならばそうだな……、確かこいつはエールストライカーと言ったか……、よし!こいつは今日から『ズーイストライカー』だっ!!!」
瑞雲カラーとなったエールストライカー改めズーイストライカーを見ながら日向が声を上げる、その後塗装が乾いたところですぐさま日向にズーイストライカーを取り付けたところ……
「ああ……、遂に私は瑞雲と一体化したのだな……」
日向が訳の分からない事を言いながら恍惚とした表情を浮かべるのであった、伊吹達はそんな日向を無視して続いて扶桑の艤装、形代にユニバーサル・ブースター・ポッドを取り付けようとしたのだが……
「うおぉっ!?」
「何じゃこりゃぁっ?!」
形代にユニバーサル・ブースター・ポッドを近付けた瞬間、形代から突然触手の様な物が伸びて来てユニバーサル・ブースター・ポッドを捕らえると、すぐさま触手の様な物を引き戻しユニバーサル・ブースター・ポッドをその身体に取り込んでしまうのだった
「えぇっとぉ……、形代?」
扶桑が困惑しながら形代に話し掛けたところ、形代の身体から突如ユニバーサル・ブースター・ポッドが飛び出すのであった
「取り付け作業は自分でやるってか……」
「いきなり過ぎてビビったわっ!ああ……、まだ心臓がバクバクゆうとる……」
「そのぉ……、お二人共、形代が驚かせてしまってすみません……」
取り付け作業をしようとしていたシゲと伊吹が呆然とする中、形代の持ち主である扶桑が申し訳なさそうに2人に謝罪するのであった……
こうして扶桑と日向に飛行ユニットを取り付ける作業が完了したところで、燎がディープストライカーを装着しようとする
「待て提督、まさか提督も一緒に来るつもりなのか?」
「当たり前だっ!こんな状況であいつらが頑張っているのに、戦う力を持っていながら指咥えて見てるだけなんて俺には出来ねぇからなっ!ダメだと言っても俺は行くからなっ!!!」
我に返った日向が燎を制止しようとするのだが、燎にこの様な事を言われた為日向は燎を止める事を諦め……
「分かった、だが無理だけはしてくれるなよ?私も最大限に援護するが、これ以上は無理だと判断したら君を引っ張ってでも撤退するからな?」
そう言ってすぐに出撃準備に取り掛かる、燎はそんな日向の背中に短く感謝の言葉を述べて完成したばかりのディープストライカーを装着するのであった
「では俺達は行ってくる、シゲ達はここの防衛を頼んだぞ」
全員の出撃準備が整い、空がそう言ってライトニングⅡに翔鶴を乗せて発進しようとしたところ……
「いや、俺達も食堂にいる連中に指示出ししたら後追いますよ」
「む……、しかし……」
「大丈夫じゃいや、ちゃんとその為の準備もしとるんでのう!」
シゲがこの様に返してきた為空は困惑する、その直後に伊吹がこの様な事を言った為空はその言葉を信じ、ライトニングⅡを発進させるのであった
それからシゲ達は食堂に向かい翔や燎の護衛として付いて来ていた菊月と三日月、そして偶々その場に居合わせた五十鈴達に要塞の防衛を頼み、翔達がその件を承諾した後自分達も出撃する為に再び工廠へと足を向けるのであった
「いや~、まさかホンマにコレ使う機会が出来るとは思いもせんかったわ!」
工廠に戻った後、ウキウキとした表情でそんな事を言いながら伊吹はVOBを装着する。このVOBは燎からEx-Sの製作依頼が来るまでの間、暇を持て余した2人が何となくで作った作品だったりするのである
「なあ伊吹、これ切り離しはどうやるんだ?」
「そないなん出撃してから教えちゃるわ!っとシゲの方も装着し終えたようじゃのう!」
伊吹と同じ様にVOBを装着したシゲがVOBの切り離し方について伊吹に尋ねるのだが、伊吹はVOBを使って空を飛ぶ事で頭が一杯のようで質問するシゲを軽くあしらってしまうのであった
この時、伊吹はこれが後に激突事故を起こす原因になるとは想像もしていなかったのである……。普段の彼ならば作業機械に巻き込まれると言う労働災害によって命を落とした関係でこの世界に来ている都合、危険予知については人一倍気を遣うところなのだが、この時ばかりはそれらがストンと頭から抜け落ちていたのである……
「よっしゃ!こっちも準備完了じゃ!そんじゃいくでぇ!!!」
「何か嫌な予感がするが……、今は気にしてる場合じゃねぇな……。っし!やってやるぜっ!!!」
そして伊吹とシゲは気合いと共にVOBを起動させ……
「ちょっ……!!!これ……っ!!!速……っ!!!」
「こんなん……っ!!!想定外……っ!!!」
正直なところ、この2人はこのVOBは見せかけだけのただの飛行ユニットのつもりで作っていたのだが、2人が知らぬ間に誰かが勝手に手を加えたらしく原作に登場したものを忠実に再現したものに生まれ変わっていたのである……
そんな事とは露知らず、自分達が想定していた速度より圧倒的に速い速度で2人は空中に射出され、その身体にかかるGに耐えるのがやっとと言った感じでまともにVOBを操作する事も、会話をする事も出来ないままトラック泊地に突っ込んでしまうのであった……
こうして2人は今に至るのである
「しっかし何であんな速度が出たんだ……?俺達そんな風に設計した覚えないんだけどな……?」
「恐らくじゃが、ウチのモンが遊びに来た時勝手に手を加えたのかもしれんのう……」
2人がそんな事を言っていると、戦治郎から通信が入って来る。内容は佐渡達の救助をシゲ達に頼みたいと言うものだった
『頼めるか?』
「OK、やってやりますよっ!」
「幸いワシらは丁度泊地の敷地内にいるわけじゃしのう、ちゃっちゃと片付けて空さん達と合流しますわっ!」
佐渡達の事を頼めるかと尋ねて来る戦治郎に対し、2人はそう言って佐渡達の救助依頼を快く引き受ける。と、その時だった……
「まさかあんな方法で泊地に侵入してくるなんて……、最近の深海棲艦は小賢しい真似をするのね~……」
そう言いながら誰かが2人のところに歩み寄って来る、その声を聞いた途端シゲ達はすぐに声が聞こえた方を向き、その声の持ち主をしっかりと見据えながら臨戦態勢に入るのであった
「見たところ2隻共重巡棲姫のようだけど……、そんな事関係ないわね。鬼だろうと姫だろうと深海棲艦は全て沈める、あの日私はそう誓ったのだから……。……っと、無駄話しちゃったわね、さぁ、今すぐにでも沈めてあげるから、2人まとめてかかってらっしゃい……っ!!!」
シゲ達の視線の先で、とてもぱんぱかぱーん♪などと言いそうにない雰囲気を漂わせる愛宕が、この様な事を言いながらシゲ達に装着した艤装の主砲を向けるのであった……
現在コラボしている鳴神 ソラさんの『憑依天龍が行く!』も6話目と着々と話が進んでおります!
出ている設定が時間軸の関係で若干こちらより先行していますが、それらは劇場版特撮ヒーロー物を見るくらいの気持ちで見て頂ければと思います……