※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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トラック泊地防衛戦 中の下

「くっそ……、厄介な事になりやがった……」

 

物陰に隠れながら辺りを見回すシゲが、思わず悪態をつく

 

あの後シゲ達と対峙した愛宕は一切の躊躇いも無くシゲ達に砲撃を仕掛けたのだが、シゲ達はそれを散開して回避、そのまま2手に分かれて佐渡達を探す為に泊地内を走り回る事になるのであった

 

それからしばらくの間、2人は愛宕と鬼ごっこをしていたのだが時間が経つに連れて騒ぎを聞きつけ駆け付けたトラック泊地の艦娘達が次々に愛宕に加勢していき、遂には那智、隼鷹、佐渡、占守を除いた全員がシゲ達を追い回し始めるのであった

 

それ以降、シゲ達は鬼ごっこからかくれんぼにシフトチェンジして、艦娘達の目を盗みながらトラックの提督に連れて行かれた佐渡達を懸命に探すのだった

 

『今度はメタルギアか……、ホンマたいぎいのう……』

 

「攻撃して蹴散らせりゃ楽なんだろうがよぉ……』

 

『そないな事したら、間違いなく怒られるじゃろうな……』

 

2人が言う通り、今回の戦いはトラック泊地の艦娘達をゼッペーや強硬派から守る事が目的である為、2人は艦娘を攻撃して傷つける訳にはいかないのである。故に2人はこうして艦娘達に見つからない様に、その身を隠しながら佐渡達を救助しようとしているのである

 

そのせいで佐渡達の捜索はかなり難航してしまう、なんせ相手の数がシゲ達より遥かに多い為、シゲ達は彼女達に見つからない様にする為に何度も同じ道を行ったり来たりする羽目になってしまっているのである

 

そんな事を何度も繰り返している内に、2人は徐々に苛立ちと焦りを募らせ注意力が散漫になって来るのであった。そして……

 

『いかん!見つかってしもうた!……こうなったら……っ!、シゲ!ワシがあいつらを引き付けるけぇワレはその隙に先に進めっ!!!ええなっ!!?』

 

遂に伊吹が見つかってしまったのである、すると伊吹はシゲに向かって一方的にそう告げると今隠れている場所から飛び出し、多くの艦娘達を引き付けながら泊地内を駆け巡り始める

 

「伊吹……、無茶だけはすんなよ……っ!」

 

そんな伊吹に対して、シゲがその無事を祈る様に一言呟いたところで……

 

「こんなところに隠れていたのね~、本当に頑張っていたみたいだけどそれもこれで終わり……。さぁ、覚悟しなさ~いっ!」

 

シゲが隠れていた部屋の入口に愛宕が立っており、この様な事を言ってシゲに主砲を向けるのであった。その様子を見たシゲは何とか部屋から脱出しようと辺りを見回し他の出入口を探すのだが、この部屋の出入口が今愛宕が立っている場所しかない事に気付くと、シゲはほんの少しだけ覚悟を決めるのであった

 

「こうなったらやるしかねぇな……、だがその前に聞かせてくれ、何であんたはそこまで深海棲艦を憎むんだ?ここの提督が深海棲艦を憎悪している事情はまあ知ってるが……、あんたがそんな夜叉みたいになる理由がサッパリ分からねぇ。どうだ?ここは1つ冥途の土産として俺にあんたの事情って奴を教えてくんねぇか?」

 

シゲは動き出す前に愛宕にそう尋ねてみるのだが……

 

「深海棲艦の貴方にそんな事する義理があると思う?」

 

愛宕がそう返して来た直後、愛宕の艤装の主砲から砲弾が放たれる、それを見たシゲは仕方ないとばかりに頭を振ってから、迦具土を発動させて自身の方へと飛来する砲弾を30cmほど手前の位置で瞬時にプラズマへと昇華してしまうのであった

 

「え……っ!?嘘……っ?!何なのよそれ……っ?!?」

 

「俺がそれに答える義理があると思うか?」

 

突然の出来事に驚愕、動揺しながらこの様な事を呟く愛宕に対して、シゲはニヤリと笑みを浮かべながら、意趣返しだとばかりにそう返事するのであった

 

「そんじゃあいくぜ……っ!!!」

 

そう言ってシゲが自身の顔の前に掲げた右手の指先1本1本に大きな火の玉を形成し……

 

「いけやぁっ!フィンガー・フレア・ボムズッ!!!」

 

そう叫びながらシゲの右側にある壁にフィンガー・フレア・ボムズを放ち、次々と部屋の壁を破壊して大穴を開けていく。その光景を目の当たりにした愛宕はほんの少しだけ呆然としてしまう、そうして生まれたチャンスをシゲは逃す事なくしっかりと掴み取る

 

「そんじゃああばよっ!」

 

シゲは愛宕に向かってそう言い放ち、今しがた開けた壁の大穴を潜ってこの部屋を脱出するのであった。そう、シゲがほんの少しだけ決めた覚悟とは、部屋の壁を破壊する覚悟だったのである

 

「……はっ!?ちょっとっ!!待ちなさ~いっ!!!」

 

我に返った愛宕はそう言いながら、先程シゲが潜って行った穴を同じ様に潜ってシゲを追跡し始めるのであった

 

伊吹が他の艦娘達を引き付けてくれているおかげで、シゲはしばらくの間愛宕と1対1で追いかけっこをする事になるのであった

 

「待ちなさいって言ってるでしょー!」

 

「待てって言われて待つ奴がいるかってぇのっ!!!」

 

愛宕がそう叫びながらシゲに向けて砲撃するのだが、その砲弾は悉くシゲの迦具土に焼き払われ、光の粒子となって消えていくのであった

 

「もうっ!ホント何なのよそれっ!?」

 

「教えて欲しけりゃあんたが深海棲艦を恨む理由を教えやがれってんだっ!丁度いい交換条件だろぉっ!?」

 

いい加減砲撃が無駄であると思った愛宕が、シゲの背中に向かってうんざりしたようにそう叫ぶと、シゲはそう返して高笑いをし始めるのであった

 

そんなやり取りを幾度となく繰り返していると、やがて観念したのか愛宕が深海棲艦を恨むようになった経緯を走りながら話し始めるのであった

 

彼女には妹がいたのだが、その妹が競技用の艤装を持ち出して行方不明になったそうなのだ。彼女はその頃には軍に所属しており、行方不明になった妹の捜索をしたいと上に何度も掛け合ったのだが、それらは全て却下され途方に暮れていたらしい

 

それから月日が流れるも妹からは何の連絡も無かった為、彼女の妹はドロップ艦として海に飛び出し轟沈したと軍から断定されたそうだ。それを聞いた彼女は妹を失った悲しみで三日三晩泣き徹し、遂に彼女は深海棲艦への復讐を心に誓うのであった……

 

愛宕の話を無言で聞いていたシゲは、心の何処かに引っかかりを感じずにはいられなかったのである

 

「……その妹さんの名前は?」

 

「それも答えないといけないのかしら?」

 

シゲがその引っかかりを解消しようと、愛宕に妹の名前を尋ねたところこの様に返された為、当然だと言い返して何としてでも愛宕の妹の名前を聞き出そうとするのであった

 

「……摩耶、愛宕 摩耶よ」

 

愛宕のその言葉を聞いた瞬間、シゲは迦具土を解除すると同時に急停止、その直後シゲの後を追っていた愛宕がシゲのその背中に盛大にぶつかるのであった

 

「ちょ……、いきなり止まるなんて……」

 

「あ~……北マリアナの方の皆様方~、忙しい中すみません~」

 

ぶつかった拍子に鼻をシゲの背骨にぶつけたのか、鼻を押さえて痛がりながらシゲに抗議する愛宕を無視して、シゲは北マリアナからの増援部隊を相手にしている艦隊に通信を入れるのであった

 

『なんだよこのクソ忙しい時にっ!?』

 

いの一番で返事をしてくれたのは、この通信の内容の主役と言える人物であった

 

「あ、すみませんね~、愛宕 摩耶さ~ん」

 

『ちょっ!?何でシゲがあたしの苗字知ってんだよっ?!あたし確かお前にだけは苗字教えてなかったはずだぞっ!??』

 

凄まじく焦った様子でそう返事する摩耶、そして摩耶と言う言葉を聞いた愛宕が驚いたせいなのかその身体を大きくビクリと震わせるのであった

 

「ちょっと変わりますね~」

 

『おい待てシゲッ!話は……っ!』

 

シゲは通信機の向こうでがなり立てる摩耶を無視して、自身の耳から通信機を外して愛宕に手渡す。愛宕はそれを震える手で受け取った後、己の耳に装着し……

 

「摩耶……?摩耶なの……?」

 

『うぇっ!?ちょっ……っ!その声……、姉ちゃんか……っ?!』

 

愛宕は摩耶のその言葉を聞いた途端、通路にへたり込んで泣き出してしまうのであった




今回もロックマンX2のフレイムスタッガーステージのアレンジ曲を垂れ流しながら書いてました……

もうこれシゲのテーマ曲でいいような気がして来た……
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