戦治郎達の目の前にアリーが現れる前の話である
戦治郎達の奮闘の末ゼッペーの数がようやく減り、長かった戦いもそろそろ幕引きかと戦治郎が思ったその時だった……
前方に見えていたカロリン諸島が黒い何かに飲み込まれ、完全に見えなくなってしまったのである
その出来事を不審に思った戦治郎達が目を凝らして、黒い何かをしっかりと見てみると……
「あれは……、あれが全てゼッペーの増援とでも言うのか……っ?!」
「いくら何でも冗談きついぜ……」
トラック泊地の艦娘達が自分達だけを残してシゲ達を捕まえる為に泊地に戻って行った事を確認したところで、戦治郎達に加勢しに来た那智と隼鷹が驚愕しながらこんな事を言った
「巡回組が普段から散発的に駆除してたはずなのにな……、あいつらどんだけ戦力溜め込んでたんだよ……」
そのとんでもない数の増援を認識したところで、戦治郎が頭を抱えながら頭を振る
「絶望的な戦力差ではありますが……」
「私達がやらないと、トラック泊地がラバウル基地の様になってしまいます……」
増援の方を見据えながら通と神通がそう呟く
「んだな、ここで俺達がやらねぇと待ってるのは地獄だからな……、って事で皆気合い入れてやんぞっ!!!」
「俺のエネルギーが回復し次第、オリオールロードを撃つから出来たら接近戦は控えて欲しいんだけど……、いいかな?」
戦治郎が皆を鼓舞する様に声を上げたところで、光太郎が皆に1つお願いするのであった
「そう言う事なら……、行って来やがれっ!」
「ヴォ"エ"ッ!ヴェ"ォ"ロロロロロッ!!!」
光太郎のお願いを聞いた輝が自身の艤装の背中にあたる部分を勢いよく叩くと、輝の艤装は不快な声を上げながらその口から大量に艦載機を吐き出し始めるのであった
そして戦治郎達の第二ラウンドが始まった直後、剛と燎から強硬派殲滅完了とこちらと合流する為に移動を開始したと言う知らせが届き、それから間もなくして戦治郎達は北マリアナ方面からの増援を相手していた剛達と合流したのであった
それからしばらく戦闘しているとシゲからの通信が入り、トラック提督の秘書艦を務めていた愛宕を仲間に引き込む事に成功し、それからほんの少し経ったところで空達が合流、その直後に今度は燎から占守がトラック提督に撃たれたとの報を受けて、悟が何処からかピポヘルを取り出して装着、占守の治療の為に戦線を離脱して燎達がいる方角へと泳いでいくのであった
「もう少しでエネルギーが満タンになりそうだっ!皆もう少しだけ頑張ってっ!」
光太郎がそう言い放った直後である
「また貴様らかっ!何度も何度も我々の邪魔ばかりしおってっ!!!」
戦治郎達からしたら二度と聞きたくなかった声がゼッペーの群れの中から聞こえて来るのであった、そんな中その声の持ち主について全く知らない那智と隼鷹は、その声が聞こえた途端戦治郎達の間に殺伐をした空気が流れ始めた事に困惑する事しか出来なかった……
「全くっ!穏健派と名乗っているにも関わらずっ!関わっているのが海賊やら軍人やら戦争などの争い事ばかりやっている連中ばかりではないかっ!!!一体何が穏健派だっ!!!聞いて呆れるとは正にこの事ではないかっ!!!ふざけるのもいい加減にしろっ!!!」
その声が聞こえ始めたところで戦治郎達は手際よく耳栓と遮音性が高いヘッドホンを装着し始め、護に至っては艤装から大きなスピーカーを取り出して大音量で流し始めるのであった。そんな戦治郎達の事などお構いなしにこの声の持ち主である七瀬はいつも通りにがなり立て、その双方の様子を見ていた那智達は更に困惑する
「特に軍人と関わり合いになるとはどういうつもりだっ!!?あいつらは戦争を食い物にする害獣そのものだろうがっ!!!平和の為に戦っているなどと口では耳障りの良い事を言うが!やっている事は全くの正反対!戦う事しか能が無いが故にただただ戦争を繰り返して!!延々と戦争の連鎖を重ねていくだけではないかっ!!!お互いに話し合いのテーブルに着く!それだけで戦争など!人類が武器を手に取る必要などないはずなのにっ!!!軍人と言う生物はそれが出来ない!分からないとでも言うつもりなのかっ!?!それでは本当に本能だけで生きているただの獣ではないかっ!!!そんな野蛮な獣を自分達と対等に扱うなど貴様らは本物の馬鹿なのかっ!!!」
その途中、七瀬がこの様なセリフを吐いたところで剛が苦い表情を浮かべながら、その身体をほんの僅かではあるが震えさせていた
「軍人だけではないっ!軍事産業関係者もそうだっ!!!あいつらもまた戦争を食い物にしているゴミの様な存在だっ!!!日夜大量の命を奪う兵器を開発し!挙句の果てには敵味方関係なく兵器を販売しているっ!!!自分達の利益の為だけに他者の命などどうでもいいとでも言うつもりなのかっ!??貴様らが生み出した兵器のせいでどれだけの命が散って逝ったか知らん訳ではなかろうっ!!!それを知っていて何故兵器の開発を止めようとしないのだっ!!!兵器があるからこそ人類は戦う事を止めようとしないのだろうが!!!兵器がなければ戦争など起こり得ない!!!だから我々には兵器などと言うものは必要ないはずだっ!!!なのに何故兵器を生み出し続けるのだっ!?!貴様らはそんなに金が必要なのかっ??!馬鹿も休み休み言えっ!!!」
七瀬が独りで演説している最中、那智と隼鷹の身体が突如フラフラと左右に揺れ始める。それを見た戦治郎は急いで2人に駆け寄ると、自身が持っていた予備の耳栓とヘッドホンを装着させ、その頬を景気よく引っ叩く!
「いってぇっ!いきなり何すんだよっ!!?」
「戦治郎さん、これは一体どういうつもりだっ!??」
突然の出来事に驚き、抗議の声を上げる那智と隼鷹
「間に合ったか……っ!いいかよく聞け、お前ら2人はな……、今あそこで喚き散らしているナ級に洗脳されそうになってたんだよ……」
抗議の声を上げる2人を見た戦治郎は胸を撫で下ろした後、2人に七瀬の事について通信機を使って説明し始めるのであった。その後戦治郎の話を聞き終えた2人は、顔を真っ青にしながら戦治郎に向かって謝罪と感謝の言葉を述べるのであった
「音楽であいつの声を遮る方法はダメみたいッスね~……」
「いや、そうでもないみたいだぜ?あれだけあいつが騒いでたにも関わらず、那智達の洗脳が始まったのはついさっきだ。多分もうちょっち手ぇ加えたらもしかしたらいけるかもしんねぇぞ?」
戦治郎が那智と隼鷹の謝罪と感謝を受ける姿を見ていた護が、考えてた作戦の1つがそこまで効果的ではなかった事に軽くショックを受けて思わずそう呟いたところで、戦治郎が励ますようにこの様な事を話していた。2人はこの様なやり取りを交わしながらもゼッペーの支持者達に果敢に攻撃を仕掛けていくのだが、その数は殆ど減る事無く、数の暴力を有効活用しながらジワジワと戦治郎達の方へと近づいて来るのであった
「こりゃ不味いな……、このままじゃあいつらに組み付かれかねねぇ……。仕方ねぇ、ちょっち戦線下げるか……っ!」
今の戦況を見て戦治郎が戦線を下げる事を決断し、皆にその旨を伝えて一斉に行動を開始したところで……
「って剛さんっ!後ろ下がりますよっ!」
何故か一向に動こうとしない剛を発見した戦治郎が、慌てて剛に呼びかけるのだがそれでも剛は動き出そうとはしなかったのである
「剛さんっ!!!」
「っ!!?って戦ちゃん?ごめんなさい、ちょっとボーっとしちゃってたわ……」
戦治郎が今度は剛の肩を掴みながら呼び掛けたところ、そこでようやく剛は我に返るのであった
「それは後でいいですからっ!今はそれより……」
気落ちしている剛に対して、戦治郎が後退するよう指示を出そうとしたその時だった
「「「「「「七瀬 直忠万歳っ!!!」」」」」」
ゼッペーの支持者が6人ほど、七瀬の事を称えながら戦治郎達に飛び掛かって来たのである。それに気付いた戦治郎と剛はすぐさま彼らを迎え撃とうとするのだが……
突如海中から巨大な腕が6本ほど飛び出して来て、支持者達をまとめて天高く殴り飛ばしてしまったのである
何が起こったのかさっぱり分からず、2人が呆然をしていると海中からその腕の持ち主が姿を現し、それを見た2人は更に混乱し……
「……なんだありゃ……?」
戦治郎は思わずそう呟くのだった……
その後、アリーが姿を現し『ハデス』と呼ばれる大型人型艤装の様な物を引き連れて、七瀬率いるゼッペーの集団に突撃を仕掛けた訳だが……
「おいおい……、あの人マジかよ……」
彼女の戦い方を見た摩耶が、思わずそう呟く
アリーは水上バイク『クリュサオル』でゼッペーの群れに急接近したところで、クリュサオルのシートを蹴って天高く跳び上がるなりその両手に握ったケルベロスのトリガーを引き1匹の支持者に瞬時に12発もの銃弾を浴びせる
そしてその銃弾を浴びた支持者をクリュサオルが豪快に撥ね飛ばすと、撥ね飛ばされた支持者を空中で踏み台にして、アリーが更に天高く跳躍する
支持者達がそんな彼女に気を取られていると、突如発生した海上を水平に飛ぶ大きな光の渦に飲み込まれて次々と消滅していくのであった。渦が飛んで来た方角を見ると、そこにはハデスが鎮座しており両肩に取り付けられた巨大な砲を支持者達がいた方角へと向けていたのであった
こうしてアリーによる蹂躙が始まるのであった
アリーはその後も相手の頭や肩、ハデスが発射したミサイルなどを勢いよく蹴って跳躍、時にはムーンサルトや4回転ジャンプ、トリプルアクセルやらを混ぜながら次々と支持者達に鉛玉を浴びせて沈めていく。時々支持者の足元で手榴弾も炸裂していたが、恐らく彼女がこっそりと仕掛けた物だと思われる
一方ハデスは近寄って来た支持者にはその鋼鉄の腕を叩き込んだり、腕に内蔵されたスパイクドリルや大型チェーンソーなどの武装をお見舞いしたり、護の巡航ミサイルほどの大きさのミサイルを大量に発射したり、先程使用した波動砲(命名:戦治郎)を横薙ぎにぶっ放したりして、凄まじい勢いで支持者達をいとも容易く葬っていたのであった
そしてそんな2人(?)の猛攻を掻い潜りながら、遠隔操作で動くクリュサオルがこの戦場を縦横無尽に駆け回って片っ端から支持者達を撥ね飛ばして回りながら、内蔵された機関銃とミサイルポッドを乱射するのであった
「k「ちょっと喋らないで下さる?耳が腐れ落ちてしまいますから~」」
怒りのあまりに何かを叫ぼうとした七瀬の言葉を遮って、アリーは支持者達を沈めながら七瀬に向かってこの様な言葉をぶつけるのであった
その後、我に返った戦治郎達もアリーに加勢する形で戦闘を再開、1000匹以上いたゼッペーの群れは瞬く間に七瀬のみ残して壊滅してしまうのであった……