「さぁ、残ったのは貴方だけね」
アリーが七瀬を踏みつけ、ケルベロスの銃口を突きつけながらそう言った
「き、きs……っ!」
七瀬がアリーの事を睨みつけながら叫ぼうとした瞬間、アリーが瞬時にケルベロスのセレクターを操作してバーストモードからセミオートモードに切り替え、七瀬の左目を撃ち抜いたのである
「私は耳が腐れ落ちるから喋らないでって言ったと思うんだけど?まさか聞こえなかったのかしら?」
アリーは七瀬を踏みつける足に力を籠めて七瀬が口を容易に開けない様にしながら、そう言って未だに煙を吐き出すケルベロスの銃口を再度七瀬に突きつける
「っと、そう言えば自己紹介がまだだったわね、初めまして七瀬 直忠さん、私は貴方の事を暗殺した組織であるエデンの指導者をやっているアレクサンドラ・稲田と言う者よ。以後お見知りおきを♪」
アリーの自己紹介を聞き、七瀬だけでなく剛を除く全てのメンバーが驚愕を露わにする
「あの人が剛さんの……」
「でも確かアリーさんって兵器開発関係の研究者だったって剛さん言ってたわよね?そんな人が何であんなアクロバティックな戦闘してるのよ?転生個体である事を抜きにしてもおかしくない?」
不知火の呟きを耳にした陽炎が、ふと思った事を口にする。すると……
「陽炎ちゃんだったかしら?それについては簡単な事よ、私はエデンを立ち上げた後、軍人も真っ青になるくらいの戦闘訓練を自身に課していたの♪そのおかげで最後は剛と二人っきりで長い時間語り合う事が出来たのよ~♪」
恍惚とした表情を浮かべながら、アリーが陽炎の疑問に答える
「ちょっと待て、それってつまり……」
「今度は摩耶ちゃんね~、それについては貴女が思っている通り、私は剛と長い時間互角に撃ち合いをしていたの♪」
その表情を崩す事無く、今度は摩耶の疑問に答えるアリーであった。そんなアリーの言葉を聞いたこの場にいる殆どの者がその表情を青ざめさせる、もし彼女が言っている事が本当だったならば、アリーは生前から剛と同じレベルの射撃スキルを持っていると言う事になるのだから……、剛の射撃スキルを知っている者からしたら、これほど恐ろしい事実は存在しないと思うところであろう……
「つか、今サラッとこいつ殺したとか言ってた気がするんッスけど……?」
「それについては部下から事後報告があったのよ~、私達の思想を真っ向から否定する政治家がいたから勝手ながら始末したって。まああの時は資料を読んでもふ~ん……くらいにしか思っていなかったわね~、こいつのその政治理念が余りにも狂い過ぎてて支持者が誰もいないって分かったら、相手にするだけ無駄なすっごくどうでもいい奴くらいに思ってたんだけど~……」
七瀬を指差しながら護がアリーにそう尋ねたところ、アリーは困ったような表情をしながらそう言った後……
「でもそれはたった今撤回するわ、こいつは剛を貶め苦しめる存在であり私にとって最優先で抹殺すべき最大級の敵、この世界に存在する事が許されない存在、そう思う事にしたわ」
全身を凍てつかせ、凍傷を負わせてしまうのではないかと錯覚してしまうほど冷え切った視線を七瀬にぶつけながら、アリーは淡々とそう告げるのであった。そんな彼女の瞳を見た護は後にこう語った、あの瞳は……、ハイライトさんが銀河の彼方へと旅立っているあの瞳はあまりにも危険過ぎるッス……、と……
「最大級の敵ね……、だったら僕はどうなるのかな?」
「あらあらこれはこれは……、私の究極の敵、リチャード・マーティン大統領……、あら私ったら……、ごめんなさ~い、元大統領でしたね~♪」
アリーの言葉を聞いたリチャードが彼女に話し掛けたところ、彼女はリチャードの事を煽る様に返事をするのであった
「君は何故僕の事をそんなに嫌っているんだい?僕は君の気に障る様な事をしたのかい?全く心当たりがないんだが……。もし僕が無意識の内に君に不快な思いをさせていたと言うならこの場で謝罪するんだけど……?」
「あらあらどの口がそんな事を言うのかしら~?私達から戦場を、存在意義を奪おうとするだけでなく、私から剛を奪おうとした貴方のそのお口かしら~?」
アリーはそう言いながら、もう片方の手に握ったケルベロスをリチャードへと向けるのであった
因みに、戦治郎と空はアリーのこの発言を聞いた瞬間、高校時代に漫画研究部の女子生徒達が自分達を題材にした薔薇満開の薄い本を作成、配布していた事で一時期自分達に薔薇疑惑がかかっていた事を思い出し、思わず2人揃って頭を抱えながら苦しそうに呻き声を上げてしまうのであった……。尚、その薄い本の殆どが空×戦治郎だったとかなんとか……
「前半は兎も角、後半の件についてははっきりと否定させてもらうよ」
戦治郎と空が譫言の様に「違う……、俺達はただの親友……、そう言うのじゃない……」と謎の否定の言葉を繰り返し呟く中、リチャードは真顔になってそう発言する
「どうかしら?軍人ってそう言う趣味の人がそれなりにいるって話をよく聞くわよ~?」
こうしてアリーとリチャードが、戦治郎達の呻き声とそんな戦治郎達を心配する艦娘達の声をBGMに下らない問答を繰り返していると……
「ふんっ!!!」
「きゃぁっ!?」
突如七瀬が気合いの声と共に暴れ出すと、七瀬を踏みつけていたアリーはバランスを崩し転倒しそうになるのであった
「アリーッ!?」
その刹那、剛さんがまるで何かに弾き飛ばされたかのような勢いで、アリーの名前を呼びながら彼女の下へ駆け寄り、転倒しそうになった彼女を抱き止めるのであった
「えぇい下らん茶番なんぞやりおってっ!!!っと言っている場合ではないなっ!!!」
その身が自由になった七瀬は、そう叫ぶなり身体を180度回転させ……
「覚えておけっ!我々こそが正義である事をっ!!我々の正義こそがこの世界に平穏を与えるという事をっ!!!」
七瀬はそう叫びながら、凄まじい速度で逃走を開始するのであった
「あっ!てめぇ待ちやがれっ!!!」
「放っておいたらまた増援を呼ぶかもしれないぞっ!!今から追撃戦を仕掛けるっ!いくぞ皆っ!!!」
\了解っ!/
そんな七瀬の背中に向かって摩耶が叫び、木曾が皆に追撃戦を提案、この場にいる者の殆どがその提案を受け入れ、一斉に七瀬の後を追って移動を開始するのであった
そんな中……
「あぁ……、剛……、剛がこんな近くにいる……。……はぁ……、剛の匂い……、とても落ち着くわぁ……♪」
剛に抱き止められたアリーが、そんな事を呟きながら恍惚とした表情を浮かべる……
「アリー……、君は……」
そんなアリーの事を見つめていた剛が、彼女に話し掛けようとしたところで……
「……っ!」
突然アリーが剛の首に腕を回し、剛の唇を覆う様にキスをしてくるのであった
「ん……、ちゅる……、んぅ……」
アリーは剛の唇に吸い付き、舌を巧みに使って剛の口を開かせ、何度も舌同士を絡ませたり、剛の上顎を自身の舌でなぞったりして剛を心行くまで堪能するのであった……。そして……
「ぷはぁ……」
彼女がその唇を剛から離すと、2人の間に銀色に輝く糸が伸びる。彼女はそれを舌で巻き取った後、己の唇の周りに残った剛の唾液をそれはそれは愛おしそうに舐めとるのであった……
「剛ったら本当にせっかちさんなんだから……、まだ私達の楽園が出来上がっていないのにこっちに来ちゃうんだもの……♪」
蕩け切った顔をしながらアリーがこんな事を口にする
「私達の楽園……、アリー……、君はこの世界でも……」
剛がアリーに話し掛けようとしたところで、アリーは剛の唇を己の人差し指で押さえて制し……
「大丈夫、今度は絶対成功させるから……、だからそれまで待ってて……?きっと迎えに来るから……、だから今はこれだけで我慢して……ね……?」
そう言ってアリーは剛から離れ始めるのであった
「待ってくれっ!アリーッ!!!」
「それじゃあ、またね……、愛してるわ、剛……」
自分から離れていくアリーを止めようと、彼女に向かって腕を伸ばしながら剛が声を張り上げるのだが、アリーはそれを無視して剛から更に距離を取る様に海上を歩き、しばらく歩いたところで剛の方へ向き直り、この様な言葉を口にした直後懐からスモークグレネードを取り出し、すぐさまそのピンを抜く。すると尋常ではない濃さの煙が辺りを覆い隠してしまい、剛はアリーを見失ってしまうのであった……
その後、彼女が乗っていたと思われる水上バイクの駆動音が聞こえるなりすぐに遠ざかって行き、剛はアリーがこの海域から離脱した事を悟ると悲し気な表情を浮かべて、伸ばした腕を下ろしながら静かに俯いてしまうのであった……
それからしばらく後、遅れて来たシゲ達が俯きながら立ち尽くす剛の姿を発見、何があったのかを尋ねても反応しない剛の事を心配していると、七瀬を追って行ったメンバーがこの場に帰還するのであった
こうして、いくつかの疑問を残しながらもゼッペーによるトラック泊地襲撃事件は泊地の防衛成功と言う形で幕を下ろすのであった