トラック泊地防衛戦から2日後……
ショートランド泊地の上空では、熾烈なドッグファイトが繰り広げられていた……
「ニャニャニャニャニャ~ニャニャニャ~ニャニャニャ~ニャ♪ニャニャニャニャニャ~ニャニャニャ~ニャニャニャ~ニャ♪」
「ワイルド~、流石に余裕かまし過ぎだミー……、つか何でロデムくんなんだミー?」
「昔ご主人とDVD観た時から、このフレーズが耳から離れないんだニャー」
などと飛行しながら暢気に会話を交わすのは、空の艦載機であり現在の長門屋海賊団の制空権争いの要であるワイルドとベアの艦戦爆戦コンビである
そんな彼らの後を追うのは……
「あいつらなんつー機動力してやがんだよっ!?攻撃が当たる気がしねぇぞっ!!」
ディープストライカーを駆る燎と
「あの艦載機達が凄いのか、母艦である空さんが凄いのか……、まあどちらにしても恐ろしいものだな……」
ズーイストライカーを装着した日向、そして……
「皆さん!何とかあの子達に振り切られない様に頑張って下さいっ!!!」
このドッグファイトを始める切っ掛けとなった翔鶴が放った航空隊であった
何故この様な事になっているのか……、それはトラック泊地防衛戦からの帰り道での出来事だった
道中で翔鶴が落ち込んでいる事に気付いた空が、何事かと思い翔鶴に落ち込んでいる理由を尋ねたところ、どうやら輸送護衛任務に就いていた雲龍の艦載機操作技術が飛躍的に上昇しているところをまざまざと見せつけられてしまい、自信を無くしてしまったようなのだ
恐らく正蔵が任務中に雲龍達に
そんな翔鶴を見ているのが辛くなってきた空が彼女に1つだけ、この様な提案をするのであった
「ならば翔鶴が自信を取り戻せる様俺が翔鶴の事を鍛えよう、それも雲龍以上の腕前になるまでだ」
空の言葉を聞いた翔鶴はピクリと反応し、顔を上げ空の顔をしっかりとその両目で見つめ……
「本当に……、私もあれほどの技術を身に付ける事が出来るのでしょうか……?」
「お前ならきっと出来るさ、それに俺も傍に付いているからな」
この会話の後、翔鶴は空の提案を受け2日後から修行を開始する事にしたのであった。何故明日からすぐに開始しないのか、それは今身体に蓄積している疲労がたった一晩寝ただけで回復するとは思えなかった為、今回の戦いに参加したメンバー全員に向かって明日を休みにすると燎が宣言したのである
そして翔鶴の修行に燎と日向が参加したいと申し出て来た、理由はそれぞれの新装備を早く身体に馴染ませたいからと言うものであった。それを聞いた空は内心では翔鶴と2人っきりになれなくなるのを残念がりながらも、2人の参加を認め一緒に修行する事にしたのであった
そういう訳で現在、翔鶴達は修行の一環としてワイルド達と模擬戦を行っているのであった
因みにちょっと視線を動かすとそこでは夕立と江風が、ヘルとタイガーを相手に対空射撃の訓練を行っていた。こちらがこうなっている理由は、いつもの朝練の後すぐに翔鶴達の修行を開始したところ、最初こそこの模擬戦を大人しく観戦していた夕立がソワソワしだし、遂には自分も何かやりたいと言い出したので空は手が空いていたヘルとタイガーを発艦させ、夕立に対空射撃の訓練を言い渡したのである。それを聞いた夕立は偶々隣で模擬戦を観戦していた江風の腕を掴んで海に飛び出し、江風を巻き込んで対空射撃の訓練を開始したのである。江風、完全にとばっちりである……
「死ぬミャ~?ミャーを見た奴は皆死んじまうミャ~?」
「うおぉっ!?あっぶねぇっ!!!ンなろぉ……っ!こいつはお返しだっ!」
そんな江風は現在ヘルが発射した魚雷を間一髪のところで回避、すぐさま態勢を立て直してお返しとばかりに江風から遠ざかって行くヘルに向かって砲撃を開始するのだが、ヘルはそれを難なく回避し、飛びながら自分の中に予め格納しておいた魚雷を再装填するのであった
「今回の訓練は魚雷も来るっぽいから、本当に油断出来ないっぽい!」
「だからと言って魚雷を警戒し過ぎて足元ばっか見てると、頭上の爆撃に足元掬われちゃうニー」
「ぽいぃっ!?」
夕立がこんな発言をした直後、タイガーが情け容赦無く頭上から夕立に爆撃を開始する。それに気付いた夕立は驚きの声を上げながらも、すぐにタイガーから放たれた爆弾に砲弾を直撃させて事なきを得るのであった
「まさか艦載機からの爆撃さえも迎撃してみせるか……」
「そうでもしないとあの修行は乗り越えられそうになかったのよ……」
今の夕立の動きを見た空が思わず感心しながらそう呟くと、その呟きに誰かが返事をするのであった
不意に聞こえた声に驚いた空が、声が聞こえた方へ視線を向けるとそこにはたった今目覚めたばかりなのだろうか、眠そうな目をした雲龍が立っていたのであった
「おはよう雲龍、その様子だと寝起きか?」
「おはよう空さん……、そうね……、昨日の夜ちょっと準備してたら寝るのが遅くなっちゃって……」
そんな雲龍に挨拶したところ、彼女はそう言いながら寝ぼけ眼をゴシゴシと擦る
「準備……?」
空は先程の彼女の発言を聞いた時、何か引っかかりを覚えた『準備』と言う単語を口にする。すると……
「これよ……」
雲龍はそう言って空にある物を手渡した、少々困惑しながら空が雲龍から手渡された物に目を向けると、そこにはデカデカと『挑戦状』と書かれていたのであった
空はそれをしばらく眺めた後、再び雲龍に無言無表情で視線を送る。すると彼女はパァン!と言う音を辺りに鳴り響かせるほど強く、己の両頬を叩いて気合いを入れ先程の眠たそうな表情から一変、凛とした表情で空の事を見据えながら話し始める
「正蔵さんから修行をつけてもらってから、自分がどれだけ強くなったのか……、貴方達転生個体にどれだけ喰らい付けるのか……、ちょっと試してみたくなったの……。どう……?お相手してもらえるかしら……?」
彼女のその表情から、その声から彼女がどれだけ本気かを察した空は彼女の挑戦を受ける事を決意、キリのいいところで翔鶴達と夕立達の修行を切り上げ、ワイルド達を呼び戻すと海上に立ち……
「来い雲龍、お前の挑戦……、受けて立とう……っ!」
そう言って彼女を挑発する様に、手のひらを上に向けながら彼女に手招きするのであった
空のこの言葉を聞いた雲龍はすぐに海上に、空と対峙する様に立つと……
「手加減は要らないわ……、お互い全力でいきましょう……?」
そう言うなりすぐに艦載機の発艦準備に入るのであった
そして……
「それじゃあ……、よ~い……、ぽいっ!」
特に頼んだわけでもないのだが、夕立がそう言って戦闘開始の合図としてその手に持った連装砲を天に向け空砲を発砲、その直後に空と雲龍は同時に動き出すのであった……
「こうなるのは分かってたけど……、やっぱり悔しいわね……」
海上で大の字になって寝転がる雲龍がそう呟く……、やはりと言うべきかこの戦いは空の勝利と言う形で幕を閉じるのであった
「こればかりは相手が悪かったとしか言えんな……、もしこれがそこらの……、カルメンあたりか?まあその辺りの転生個体が相手だったら十分渡り合える……、いや、もしかしたら勝てるかもしれんな」
空はそう言いながら、模擬戦用のペイント弾のせいで塗料まみれになった雲龍に手を差し伸べ、彼女を立ちあがらせる
「そう……、でももしかしたら貴方達クラスの相手と戦う可能性も考えると……、やっぱりこのままじゃ駄目ね……。空さん……、良かったら私も修行に参加してもいいかしら……?」
彼女の言葉を聞いた空は、声を出さず頷いて彼女の申し出を承諾する。とその時空はある事を思い出して時計を見て時間を確認する、そしてその直後……
「いかんっ!この後時雨達の改二改修をする予定だったのを忘れていたっ!予定時間も大幅に過ぎている……っ!夕立っ!江風っ!今すぐ工廠に向かうぞっ!!!」
空はそう叫び、夕立と江風を連れて大慌てで工廠に向かうのであった……