雲龍との一騎討ちの後、空は夕立と江風を連れて大急ぎで工廠へと向かう。一騎討ちについ夢中になってしまい、気付けば改修作業の開始予定時間を大幅に過ぎてしまっていたのである
もしかしたら既に誰かが先に来て、自分の事を待っているのではないだろうか?そんな事を考えながら空は辿り着いた工廠の扉を開き、中にいた妖精さん達に話を聞いてみたところ案の定時雨が来ていて空の居住スペースで待っていると伝えられるのであった
やってしまった……、空は内心でそう思い申し訳なさそうな表情を浮かべながら、自身が普段寝泊りしている工廠の隅にある居住スペースへ向かい、辿り着くなり中に入り……
「済まない時雨、急に予定g……」
空がそこまで言ったところで、時雨が自身の唇の前に人差し指を立てて静かにするようにと促してきた。空はそんな時雨の事を不思議そうに見ていると、時雨は今度は先程立てた人差し指で自分の膝のあたりを指す、その指が示す先には……
「スピョ~……、スピョ~……」
時雨の膝の上で寝息を立てるトムの姿があった
「空さんを待っている間、この子とここの掃除をやっていたんだ。それで掃除が終わったところで疲れちゃったのか眠っちゃってね……」
「そうか……、待たせてしまっただけでなく掃除まで手伝ってくれたとは……。ありがとう、そして本当に済まなかったな……」
囁く様な小声で経緯を説明する時雨に対して、空もまた小声で感謝と謝罪の言葉を述べるのだが、時雨は気にしていないとばかりに首を小さく横に振るのであった
その後、空は時雨の膝の上で眠るトムを持ち上げ、部屋の隅にあるクッションのところまで行くとその上にトムを乗せ、自由になった時雨を連れて作業場へと向かうのであった
空達が作業場に到着したところで、工廠の扉が開き息を荒げた川内が中に入って来る。曰く今の今まで寝ていたらしく、起床後時計を見た直後に改修作業の事を思い出し大急ぎでこちらに来たのだとか……
川内が遅れて来た理由を聞いた空は、自身も一騎討ちに没頭して作業開始時刻が遅くなってしまった事も有った為川内の遅刻に関してはお咎め無し、特に強く注意したりはしないでおく事にしたのだった
こうして時雨、夕立、江風、川内の計4人の改修作業が始まり、空は改修作業に興味を持ち手伝いを申し出て来た妖精さん達と共に彼女達の艤装を次々と改修していく。改修が終わった者には順次事前に司に頼んで作っておいてもらった改二の衣装を手渡し、空の居住スペースで着替えてもらう事となっていた
予定時刻より大幅に遅れて始まった改修作業だったが、空の手腕と妖精さん達のサポートもあって当初の終了予定時刻ピッタリに終了するのであった。これには艦娘達も、そして改修作業を行った空自身も大いに驚くのだった
「凄い……、力が漲って来る……っ!」
「ンっ!これなら転生個体の連中相手でも、早々に負ける気がしねぇなっ!」
着替えを済ませ改修された艤装を背負った時雨と江風が、驚きと喜びの感情が混ざった様な声でこの様な事を言う
「確かにお前達は艤装の改修によって強くなったが、転生個体連中の中には俺達やヌ級の様なお前達の想像の遥か上をいく輩もいる。いくら強くなったからと言って慢心だけはするなよ?」
そんな2人に対して空が釘を刺すようにこの様な事を言うと、2人は表情を引き締め力強く返事を返すのであった
「しっかしこの服、採寸とかしてなかったはずなのにサイズピッタリだね~……。これ作ったのって司さんだよね?どうやって私達のサイズを知ったのかな……?」
その直後、川内が自分が今身に付けている衣装を改めて観察しながらそう言った
「それはあいつが生前から持っているスキルのおかげだろうな、あいつは見た相手の身長と3サイズ、手足の長さに腕回りと脚回りの太さを服越しでも驚くほど正確に目測出来るんだ。比較対象さえあれば相当距離が離れていても、かなりの精度でサイズを言い当てる事が出来るぞ」
「何それ凄い……、あの人女の子を口説く事しか能が無い人だと思ってたんだけど、意外な特技を持ってる人だったんだね……」
川内の疑問に空が答えると、川内だけでなく他の3人も驚愕の表情を浮かべ固まってしまうのであった……
その後、司のそのスキルが戦闘でも使えるのではないか、そのスキルはどうやったら身に付くのかと言う話題でしばらくの間話が盛り上がり、その話が収束したところで一同は艤装の試運転の為に工廠を出て海へと向かうのであった
「それにしても何か皆に悪いなー、江風達だけが改二になって」
「それについては仕方ない部分があるな、俺達が知っている限りで改二に出来るのが翔鶴を除けばお前達しかいなかったのだからな」
その道中で何気なしに江風が言った言葉に、空が反応してそう答える
「ぽい?翔鶴さんも改二になれるっぽい?」
「ああ、それどころか翔鶴には装甲空母化する改二甲などと言うものもあるぞ。しかもそれは資源と開発資材を使えばいつでも正規空母に切り替えられる、所謂コンバート改造が出来る様になっているんだ」
「何だそれっ!?スゲェじゃンっ!!なぁなぁ空さん、江風達にもそのコンバートとか言うのは……「無い」無いのかよ……」
先程の空の発言を聞いた夕立が小首を傾げながら空に尋ねると、空はその返答として翔鶴のコンバート改造の事を話す。すると江風がこの様な反応をするも、空に即刻バッサリと切り捨てられガックリと肩を落とすのであった
「じゃあ何で翔鶴さんの改修作業を今日やらなかったっぽい?」
「だね~、どうせなら皆まとめてやっちゃえば良かったのに」
「それがそう言う訳にはいかないのだ……」
空の言葉を聞いた夕立が不思議そうにそう尋ね、夕立の発言を肯定する様に川内がそう言うと、空は渋い顔をして話し始めるのであった……
「翔鶴の改二改修には、『試製甲板カタパルト』と言う物が必要でな……」
「……っ!それって……っ!」
空の口から聞き慣れない単語が飛び出して来たところで夕立達は頭の上にいくつも疑問符を浮かべるのだが、その中で時雨だけがその単語に反応して驚きの表情を見せるのであった
「時雨の姉貴、何か知ってるのか?」
「さっきトムから聞いたんだ、トムを空さんの艤装から安全に発艦させる為にはそれが必要だって……」
「成程、だから俺の言葉に反応した訳か……」
1人だけ違う反応を示した時雨に皆の視線が集中する中時雨はそう答え、それを聞いた空は納得したと言った感じに1度頷くと、話を再開するのであった
「さて、そのカタパルトについてだが……、時雨は既に知っているだろうがそれは今、この世界には存在していないんだ。妖精さん達に聞いたが、現状ではまだ企画段階だと言っていた……」
空の発言に驚きを隠せない夕立達だったがそれも束の間、何かを思い出したのか今度は不思議そうな顔をし始めるのであった。そんな皆の表情を見た時雨は、トムの話を聞いた時の自分もこうだったのだろうかと思い、苦笑いを浮かべるのであった
「その表情を見る限り勘付いてるな……、そう、お前達が思っている通り俺はお前達の艤装の試運転が終了し次第、妖精さん達と共に試製甲板カタパルトの開発を開始するつもりなんだ」
「無いなら作ってしまおうって事か~……、何か空さんらしいね」
「自分の艤装を空飛ぶ艤装に改造したり、提督のガンダムスーツや日向さんのズーイストライカーの開発に関わった空さんならきっと出来る、僕はそう信じてるよ」
空のこの言葉を聞いた川内がこの様な事を言い、時雨は空にエールを送る。それを聞いた空は2人の方を向きながら力強く頷いて見せ
その後空は時雨達の艤装の試運転を滞りなく済ませると、すぐに工廠へと引き返し妖精さん達を集めミーティングを行い試製甲板カタパルトの開発に着手するのであった