※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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動き出す影

時刻はマルナナサンマル、翔鶴が空からの伝言を燎に伝えた後食堂で自身の朝食を済ませ、空達の朝食を準備してから工廠に戻った時には、空達はカタパルトの量産とネ式エンジンの組み立てを終わらせ次のステップである試製景雲(艦偵型)、噴式景雲改、橘花改の開発を開始していたのであった

 

空達はカタパルトの調整に成功した後、カタパルトを取り敢えず4つほど形にしたところで時刻がマルヒトマルマルを過ぎてしまった為皆揃って工廠で仲良く雑魚寝、マルロクマルマルの総員起こしで起床したところで翔鶴に伝言を頼んでから作業を再開したのである

 

その日最初に取り掛かった形だけ作っておいたカタパルトの調整と、ネ式エンジンの組み立ては架空の兵器を再現すると言う伊吹の能力が大いに役立ち、最初のカタパルトの開発の時とは打って変わって滞りなく作業が進んだのである

 

「皆さんお疲れ様です、朝食をお持ちしましたので良かったらどうぞ食べて下さい」

 

工廠組の作業がひと段落したところで、翔鶴がそう言って工廠組の朝食として作って来たおにぎりを彼らの前に差し出すと、余程空腹だったのか彼らはすぐに翔鶴が作ったおにぎりに群がり、すぐさま美味い美味いと言いながら食べ尽くしてしまうのであった

 

それから食休みを挟んだ後作業を再開しようとしたところで、翔鶴が訓練が始まるまで作業風景を見ていてもいいかと尋ねて来る。それを聞いた空は安全なところから大人しく見ている事を条件に翔鶴のお願いを了承し、作業を再開するのであった

 

「しかし、翔鶴も物好きだな……、俺達の作業風景など見てても特に面白みなどないはずなのにな……」

 

作業中、不意に空がこの様な事を呟いていたのだが……

 

「のう、空さんのこれはマジで言いよるんか?」

 

「残念ながら……」

 

「こりゃ翔鶴さんが本当に見たいのは、自分達の作業風景じゃないって事に気付いてないッスね~……」

 

その呟きを聞いた20代ズが小声で口々にこの様な事を言い、その後翔鶴の方へと視線を向けると、真剣な表情で作業に取り組み、時に額の汗を拭う空の姿を少々ウットリした眼差しで見守る翔鶴の姿があった

 

それからしばらくすると戦治郎が会議に参加する為に離脱、翔鶴も訓練の時間となりキラが付いた翔鶴はワイルド達と共に工廠を出て訓練を開始、それと入れ違いになる様にして今度は時雨が工廠に入って来るのであった

 

「時雨?工廠に何か用か?」

 

「おはよう空さん、翔鶴さんがワイルド達と訓練を始めたのを見かけたから、もしかしたらと思ってね……」

 

特に予定のない時雨が工廠にやって来た事を不思議に思った空が時雨にそう尋ねたところ、時雨はこの様に返して工廠の隅にある空の居住スペースに視線を向けるのであった。その様子を見た工廠組が揃って小首を傾げていると……

 

「ナー!時雨ー!また来てくれたのかナー!」

 

「うん、いくら狭いとは言えその身体であそこの掃除を1匹だけでやるのは大変だと思ってね」

 

ワイルド達と共に表に出て、空の居住スペースの掃除をやっていたトムが居住スペースから飛び出して来て、時雨とこの様なやり取りを交わすのであった

 

その後時雨はトムと共に空の居住スペースの掃除を開始、その様子を見ていた20代ズは……

 

「おや?天使かな?」

 

「大天使シグエル……、まさか実在しとったとはのう……」

 

「あ^~浄化されてしまいそうッスな~」

 

作業の手を止めて思わずそう呟き、空から注意を受けるのであった

 

そうこうしている間にも作業は進み、遂に試製景雲(艦偵型)、噴式景雲改、橘花改の3機が完成、それとほぼ同じタイミングで翔鶴が工廠へと戻り

 

「遂に完成したんですね!おめでとうございます!これが空さんの新しい艦載機ですか……」

 

翔鶴はそう言いながら噴式3種をまじまじと見つめるのであった、そんな翔鶴の様子を見た4人は翔鶴から少し離れた位置に集まり……

 

「空さん……、あの噴式は翔鶴さんのだって……」

 

「すまん、カタパルトの事以外は殆ど伝えていなかった……」

 

「つか、形状から自分のじゃと分かるもんじゃ思っとったんじゃが……」

 

「伊吹、この世界はカタパルトが企画段階だったんッスよ?だから噴式が翔鶴さん専用だなんて分からないと思うッス」

 

頭を突きつけ合ってこの様な事を話すのであった、その後その様子を不思議そうに眺めていた翔鶴に対して、空が代表としてその艦載機が翔鶴の物である事を伝えると、翔鶴は両手を口に当て大層驚いていた

 

「それを使えるようにする為に、今から翔鶴の改修を行おうと思っているのだが……」

 

翔鶴の驚きの表情が消えない内に、空が続けるようにしてそう言ったところで

 

「あ、俺達この辺で帰りますわ~」

 

「ワシがハンマー妖精さんと協力して書き上げた設計図、空さんに渡しときますわ」

 

「そいじゃ空さん、グッドラックッス!」

 

「掃除も終わった事だし、僕もこの辺りで戻るよ」

 

「時雨~、ありがとうだナー。ナーはちょっと疲れたからここらで一休みしておくナー」

 

空の言葉を聞いた20代ズと時雨がそう言って工廠から出て行き、トムは居住スペースの中へと引っ込み昼寝を開始する。その様子を見た空は……

 

「気を遣わせたか……」

 

後頭部をバリバリと掻きながら、そう呟くのであった

 

その後、空は改めて翔鶴に改修するかどうかを尋ねたところ……

 

「それで空さんのお役に立てると言うのであれば、是非っ!」

 

真剣な眼差しで空を見つめながら翔鶴は力強くそう答え、それを聞いた空は了承したと言う意思を翔鶴に伝える様に1度だけ大きく頷くと、カタパルトと伊吹から渡された設計図を手にすぐさま改修作業に入るのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空が翔鶴の改修を行っている頃、ヌクマヌ環礁にある小島の1つでは……

 

「足りねぇ……、食っても食っても……、食い足りねぇ……っ!!!」

 

そう言いながら手足が引き千切られた戦艦棲姫の亡骸を、骨ごとバリバリと貪り食うヌ級の姿があった。そんな彼の周りには、ヌ級の犠牲となった夥しい数の強硬派深海棲艦の艤装の金属部分が散乱し、その中には今彼が食べている戦艦棲姫の艤装のパーツや空母棲姫の艤装も多数含まれていた

 

「ゲヴォッ!!!……やっぱこんなクソ不味いモン食っても食った気にはなんねぇなぁ……」

 

豪快にゲップをした後、彼は口の周りに付いた青い血を舌で舐めとりながらそう呟くのであった……

 

彼は空に撃退された後、それはそれはひもじい思いをする事になったのである。南方海域にいる艦娘達には悉く穏健派の転生個体が大量に護衛に付き、光太郎や輝などが巡回しているせいで下手に襲撃する事が出来なくなってしまったのである

 

こうなっては仕方ないという事で、彼は今いるヌクマヌ環礁の小島に居を構え、まずはその近隣にある島の住人達を襲撃して島民全てを喰らい尽くしてしまったのである。しばらくの間はそれで空腹を満たす事は出来たのだが、島民が全滅した後も時間が経てば空腹がまた彼に襲い掛かって来る……。そう言う訳で彼は今度は近くを通りかかった強硬派深海棲艦を襲撃してその肉を喰らい、彼は飢えを凌いで来たのである

 

だがそれも限界が訪れた……、純正の深海棲艦の肉は彼の味覚には合わない上に、最近の彼の1日の食事量は日に日に増え、いくら食べても空腹感が紛れなくなってしまっているのである

 

自身の空腹を満たすには艦娘や人間の肉が必要なのだが、今の南方海域ではそれを入手する事も叶わない……、そう思った彼は南方海域を離れ、別の海域で活動しようと考えるのだった

 

「だが、その前に……」

 

彼はそう呟いて南西の方を右目で睨みながら言葉を続ける……

 

「あの銀髪の女、それと俺にふざけた真似してくれやがった同胞とハラキリ野郎……、あいつらを腹の中に入れてからだな……。でねぇと俺の腹の虫が収まらねぇ……」

 

彼はそう言って南西の方角、ショートランド泊地を見据えながら舌なめずりをするのであった……

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