「ふんっ!!!」
空が気合いの掛け声と共にその手に掴んだヌ級を勢いよく地面に叩きつけ、バウンドして戻って来たヌ級の頭部に右の拳を叩き込み、更にバウンドして来たところを踏みつけるなり今度は左の拳を突き刺し、その直後にヌ級の頭部を右手で掴んで振り回すようにして幾度となく地面に叩きつける
空が【どつきまわす】を放った地点のコンクリートは陥没し、尋常ではない数のヒビが入り、その威力がどれほど凄まじいものであるかを物語っていた。だが……
『シャァッ!!!』
ヌ級は【どつきまわす】を喰らいながらも、空に対して反撃とばかりにその顔目掛けて貫手を放ってくるのであった
「くっ!?」
寸でのところでヌ級の貫手を回避した空は、すぐさまヌ級に【キック】を放って蹴り飛ばしてヌ級と間合いをとる
『てめぇ、こんなラフファイトも出来たんだなおい……。俺の頭がcoolじゃなかったら大打撃喰らうところだったぜ……』
『こっちとしては前の様にhotな戦いをしてくれた方が楽だったのだがな……』
空に蹴り飛ばされたヌ級が空中で姿勢を整え、見事な着地を見せたところで放った言葉を聞いた空は、内心で舌打ちしながら相手を煽る様な言葉を吐き出す
先程空が放った【どつきまわす】で繰り出した攻撃の数々は、寸でのところで悉くヌ級に捌かれてしまい思った以上のダメージを与えることが出来なかったのだ
それ以前にも空は何度かヌ級に龍気を込めた小技を放っているのだが、ヌ級はそれらを冷静に見極め時には避け、時には受け流し、隙を見てはすぐさま反撃を繰り出したりして上手い具合に捌き、空に有効打を与えさせなかったのである
冷静なヌ級がどれほど厄介であるかを思い知らされた空は、ここに来てようやく少し改良を加えたライトニングⅡとテキサスを呼び出し、その腕に装着する。と、その刹那……
『だったらお望みどおりにしてやん……よぉっ!!!』
ヌ級が空に飛び掛かり、回し蹴りを放ってくる。その様子を見ていた空は1度その蹴りを右腕のライトニングⅡで受けた後、すかさず新たにマニピュレーターを取り付けた左腕のテキサスで掴み、【ドラゴンスクリュー】をお見舞いしてやろうとするのだが……
『シャァラァッ!!!』
ヌ級はその声と共に今にも空の右腕に当たりそうな左足を1度畳み、身体を傾け股関節を捻じって蹴りの軌道を強引に変え、そこで今一度左足を伸ばして回し蹴りを縦蹴りに切り替え空の顔面に叩き込もうとしてきたのである。空がそれに気付いた時には既に遅く……
「ぐがっ!?」
「空さんっ!!?」
ヌ級の左足は見事に空の顔面に叩き込まれ、空にダメージを与える。そんな空の姿を見た翔鶴が思わず悲鳴染みた声を上げ、ヌ級がニヤリと不気味な笑みを浮かべる。だがその直後
『んぐぅっ!??』
ヌ級の腹に衝撃が走ったかと思った途端、激痛が全身を駆け巡りヌ級は思わず苦悶の声を上げてしまう。何事かと思って自身の腹部を見てみると、そこには大きく開かれた空の左手が当てられていたのであった
空がヌ級の蹴りを喰らった瞬間、その衝撃で仰け反りながらも根性で【参式活殺破邪法】を発動させ、ヌ級の腹部に叩き込んだのである
『おおぉ……ごおぉっ!!!』
『こいつも喰らっておけ……っ!!!』
余りの激痛に悶絶するヌ級に、追撃とばかりに空がそう言って今度は右手を大きく開いて先程と同じ様にヌ級の腹に勢いよく、掌底を叩き込む様に押し付ける。すると……
『があああぁぁぁーーーっ!!!』
空から追撃の【金剛神掌】を喰らったヌ級は、遂に耐えきれなくなったのか叫び声を上げコンクリートで舗装された埠頭の上を転げまわるのであった
『喧しいっ!!そして臭いっ!!!』
そんなヌ級にこの様な言葉をぶつけながら、空はヌ級の身体を持ち上げると天高く放り投げ、落下してきたヌ級の身体が地面に叩きつけられそうになった瞬間、その腹に思いっきり飛び蹴りを、【流星蹴り】を叩き込む
空の【流星蹴り】の直撃を受けたヌ級は、勢いよく吹き飛んだ後凄まじい速さで地面を滑走、そのせいで以前戦治郎に付けられた傷が開いたのか、埠頭のコンクリートにヌ級の血液と肉片がこびりついてしまうのであった……
「空の奴……、ヌ級を圧倒してないか……?」
「油断するな提督、あのヌ級はまだ死んだ訳ではないからな……、あいつが何をしてくるか分からんから警戒だけは怠るな……」
空とヌ級の戦いを見ていた燎と日向がこの様な会話をした直後、ヌ級は頭部の傷を押さえながらヨロヨロと立ち上がるのであった
『今のはスゲェ効いたぞクソッタレ……、ったくやっぱ真正面からは分が悪ぃな……』
ヌ級はそう言いながら態勢を立て直し、その言葉に引っかかりを覚えた空が警戒しながらヌ級の様子を窺っていると……
『って訳でこんなのはどうだっ!!!』
ヌ級が急にそう叫んだ直後ヌ級の口から艦載機が飛び出し、空目掛けて突っ込んで来るのであった。空はそれを紙一重で回避するが、ヌ級の艦載機はすぐさま空の後方で旋回し再び空に向かって突撃して来る
『しばらくそいつらと戯れてやがれ同胞っ!!!』
ヌ級は空に向かってそう言い放つと、翔鶴がいる方向へと走り出す。それに気付いた空がしまったとばかりに顔を歪め、翔鶴の下に駆け寄ろうとするのだが、行く手をヌ級の艦載機に阻まれてしまう
『最初はてめぇからだぁ!!銀髪女ぁっ!!!』
「させるかっつってんだろうがよぉっ!!!」
「貴様をこの先には行かせんっ!!!」
ヌ級がそう叫び翔鶴のところへ真っ直ぐ突っ込んで行くのだが、それを妨げる様に燎と日向が立ち塞がる
『邪魔だ雑魚がぁっ!!!』
ヌ級はそう叫ぶと、今度は燎と日向目掛けて艦載機を発艦させる
「いけおらぁっ!!!」
その直後今度は燎が腰に付けたスモールパッケージを発射して、ヌ級の艦載機を次々に撃ち落としていく。だがそれでも全ての艦載機を撃ち落とすことは出来ず……
「がっはぁっ!!?」
「ぐぅっ!?!」
燎と日向はヌ級の艦載機をモロに喰らい、2人同時に吹き飛ばされてしまうのであった。そんな2人の様子を見たヌ級がニヤリと笑い、翔鶴の方へと視線を向け直す。この時恐らくヌ級は翔鶴が迫りくる自分の姿を見て恐怖に顔を歪め、怯えているだろうと思っていたのだろう。ニヤニヤしたまま翔鶴の姿を自分の視界に収めた時、ヌ級は思いもしなかった翔鶴の表情を見て、つい驚愕してしまうのであった
翔鶴は自身の下に迫りくるヌ級の姿を見ても怯える事無く、希望を捨てていないのか、将又この状況がどうにかなると信じているのか、凛とした表情でヌ級の事を見据えていたのである。自分の獲物になった人間が今まで見せた事が無かった表情を見て、ヌ級が一瞬困惑したその刹那……
「ニャラッシャーッ!!!」「ミャミャミャミャミャーッ!!!」「タイガー、アパカッ!!!」「ドリルミーッ!!!」
空が隙を見て発艦した猫艦載機達が雄叫びを上げながら、意趣返しとばかりにヌ級の頭に、顎に、肋骨に、脇腹に激突し、豪快にヌ級を吹き飛ばしたのである
「空さん、今助けますっ!」
ヌ級が吹き飛ぶ姿を見た後、すぐさま翔鶴がそう言って艦載機を発艦させ、猫艦載機達と共に空を追い回すヌ級の艦載機を撃ち落とす。ヌ級の艦載機から解放された空はすかさず翔鶴のところに駆け寄り、今しがた吹き飛ばされたヌ級を見逃さない様にとしっかりと見据える
『まさか俺が使った手をそっくりそのまま使ってくるとはなぁ……』
「ざまぁみるニャーッ!!!」「ミャー達はお前のとこの艦載機みたいにヤワじゃないミャーッ!!!」「うげぇっ!さっき顎に一撃お見舞いした時あいつの涎が身体に付いたニー……」「うぎゃー!くっさいミー!タイガーの奴めっちゃ臭いミーッ!!!」
ゆっくりと起き上がって来るヌ級がそう言うと、ワイルド達がヌ級に対してすかさず馬鹿にする様に言いたい放題言い始めるのであった。ヌ級がそんなワイルド達を睨みつけると、ワイルド達はすぐに空の後ろに隠れる。その際空の服にタイガーに付着したヌ級の涎が付いてしまった事は、猫艦載機達の秘密となるのであった
『だったら……、これでどうだっ!!!』
その直後、今度はヌ級の口から大量の艦載機が発艦され、空を覆い尽くし始めるんであった……
「なんて数……っ!?」
『貴様……、一体どうやってこんな数の艦載機を……っ?!』
翔鶴と空が驚愕する中、ヌ級はゲラゲラ笑いながら話し始める
『難しい事じゃねぇよ、俺が今まで喰って来た奴が持ってた艦載機を使ってるだけだ。っとそういやおめぇ、どうやって俺が銀髪女の居場所を突き止めたか知りたがってたなぁ……。まあこれが答えなんだけどなっ!アッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!!』
そう、ヌ級はこの大量の艦載機を至る所に飛ばし、翔鶴の居場所を突き止めたのである。本来ならば深海棲艦の艦載機が泊地の近くを飛んでいれば、すぐさま撃ち落とされてしまいそうなものなのだが、ここ最近泊地近海の哨戒をしていたのが穏健派の深海棲艦であった為、味方の艦載機と勘違いされて見逃されてしまっていたのである
『さて……、おふざけはこのあたりにして……、行けっ!!!そこら辺一帯全部破壊し尽くせっ!!!』
「え……っ?!」
「いかんっ!!!」
ヌ級の号令と共にこの大量の艦載機が一斉に動き出し、泊地に凄まじい数の爆弾を集中的に投下し始め、ショートランド泊地は瞬く間に火の海に飲み込まれて、付近の海面を炎の色で染め上げてしまうのであった……