※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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DOG FIGHT(猫)

「無理に当てようとしなくていいからっ!兎に角撃って撃って撃ちまくってっ!」

 

川内がそう叫びながら、天に向かって幾度となく砲撃を繰り返す。彼女が見据える先には尋常ではない数の艦載機が爆撃する機会を今か今かと待ち侘びながら彼女達を嘲笑うかのように空を舞っていた

 

空達がヌ級を引き付けている間に、彼女達は多くの艦娘を引き連れて何とか泊地を脱出してブインに向かって航行していたのだが、彼女達の視界にブイン基地が見えホッと胸を撫で下ろしたところで、突如この艦載機達が姿を現し彼女達に向けて爆撃を開始したのである

 

「ここは球磨達が何とか抑えるクマッ!だから負傷した奴は先にブイン基地に行って入渠させてもらうクマッ!その時は必ず誰か曳航するクマッ!今の状況で単独で動くのは危険クマッ!」

 

球磨が対空射撃の手を止める事無く、負傷した艦娘達に向かって矢継ぎ早に指示を飛ばす。そう、最初の爆撃は完全な不意打ちであった為、少なからず泊地の艦娘達に被害を及ぼしたのである……

 

「正蔵さんの修行の時も、これくらいの数を相手にしていたけど……っ!」

 

「動きが全っ然違い過ぎるだろっ!?あの艦載機は野生動物か何かかよっ?!」

 

時雨が顔を顰めながらそう呟き、その隣にいる江風は苛立ちのあまりに声を荒げながら、上空で爆撃の機会を窺う艦載機達に向かって何度も何度も砲撃を繰り返す

 

「空母及び軽空母の皆……、何とか持ち堪えて……っ!」

 

泊地に所属する空母系艦娘達をまとめ上げ、この艦載機の群れに対して航空戦を仕掛ける雲龍が、辛うじてと言った様子で声を上げる。今の彼女は艦載機の群れを迎え撃つ為に手持ちの艦載機を全て発艦させ同時に制御している為、精神が激しく消耗しているので、今の彼女にとってはこれが精一杯の大声なのだろう……

 

「全く……、こンな時に……、夕立の姉貴は何処行ったンだよおおおぉぉぉーーーっ!!?」

 

「江風、今は夕立の事よりも……」

 

「江風っ!時雨っ!お喋りしてる暇があったらガンガン弾幕張ってっ!!!」

 

「「はいっ!!!すみませんっ!!!」」

 

遂に苛立ちがピークに達した江風が、いつの間にか姿をくらませてしまった夕立に対して文句を言い始め、それを時雨が宥めようとしたところで川内に2人まとめて叱責される

 

それからしばらくすると異変に気付いたブインの艦娘達が救援に駆け付けるのだが、ヌ級の艦載機達の変態機動に翻弄されてしまうだけで、状況は大して変わる事は無かった……

 

それからまたしばらくすると遂に艦娘達に疲労の色が見え始め、艦載機達に爆撃するチャンスを与えてしまう事となり、負傷者を続出させてしまう事態に陥ってしまうのであった……

 

万事休す……、残った艦娘達がそう思ったその時である

 

ゴオオオォォォーーーッ!!!

 

突如として聞き慣れない音が辺りに響き渡り、それを耳にした艦娘達はついつい辺りを見回し、その音の出処を探してしまうのであった。その際対空射撃の手を緩めていなかったのは、あの地獄の遠征を乗り越えた川内と球磨の指導の賜物と言ったところであろうか……

 

「あれは……っ!?」

 

「まさか空さンの艦載機かっ!?でもあンな奴いたっけか……?」

 

そうして遂に雲龍がその音の出処と思わしき艦載機を発見、その視線を追った江風が思わず疑問を口にする。他の艦娘達もそれを視認したところで一斉にあれは一体何だと言った具合にざわつき始める……。そんな中ただ一人……、時雨だけが驚愕の表情を浮かべたまま、その艦載機の名を口にする……

 

「まさか……、トム……っ!?」

 

時雨のこの発言を聞いた者達が、一斉に時雨に視線を向けたその直後

 

「これでも喰らうナーッ!!!」

 

凄まじいスピードで飛翔するトムが、その叫びと共に自身に取り付けられた空対空ミサイル、AIM-54フェニックスとAIM-9 サイドワインダーをヌ級の艦載機目掛けてこれでもかと言うくらいに発射、ミサイルの追跡から逃れられなかったヌ級の艦載機は次々とフェニックスとサイドワインダーの直撃を受けて爆砕し墜落していくのであった

 

「ちょ……っ!?今の何っ?!」

 

「あのミサイル……、何か取り付けられてた数より明らかに多く発射されてた気がするクマ……」

 

その様子を見ていた川内が驚嘆の声を上げ、球磨が呆然としながらそう呟く中、トムは急旋回してヌ級の艦載機の後ろにつくなりM61バルカンを発砲、瞬時にヌ級の艦載機を蜂の巣にして撃墜する

 

こうしてトムは無事時雨達の下に到着し、彼女達に牙を向くヌ級の艦載機達をその圧倒的な力でねじ伏せ、蹂躙し始めるのであった……

 

艦載機の背後を取ればバルカンが火を噴き

 

距離が開けばフェニックスとサイドワインダーが猛追を開始

 

トムの下をくぐろうとしようものならすかさずMk.84が投下され

 

トムの横を通り過ぎようとしたならば両サイドに取り付けられた可変翼型ブレードが展開されて見事相手を真っ二つにする

 

トムはこれらの行動を幾度となく繰り返し、目に映るヌ級の艦載機を次々と撃墜してその数を凄まじい勢いで減らしていくのであった

 

「これ以上お前らに好き勝手させたりはしないのナーッ!!!」

 

尚も蹂躙を続けるトムが、昂る感情を抑える事もせずに叫ぶ

 

「負けていられない……っ!私達も続きましょう……っ!」

 

そんなトムの姿を目の当たりにし、叫びを聞いた雲龍の闘志が真っ赤な炎となり、彼女の心の中で暴れ出す。彼女はその感情に従って他の空母系艦娘達を激励鼓舞し、トムに続いてヌ級の艦載機を撃ち落とし始めるのであった

 

「皆っ!トムの援護をするよっ!!!」

 

雲龍に続いて時雨が声を上げ、今まで以上の勢いで対空射撃を開始する。トムの姿に勇気づけられた艦娘達は、すぐに時雨に続いて対空射撃を開始。時にヌ級の艦載機を攪乱し、時にトムの下へ誘導する様に砲撃し、全力でトムのフォローに入るのであった

 

トムの登場により形勢は完全に逆転し、ヌ級の艦載機は時が経つに連れてその姿を次々と消していき、遂には完全にいなくなってしまうのであった

 

「……艦載機がいなくなった……?」

 

「はは……っ!見たかこンにゃろおおおぉぉぉーーーっ!!!」

 

\やったー!/\勝った!私達勝ったんだー!/\ざまぁみろー!/

 

ヌ級の艦載機が見当たらなくなった事に気付いた川内が呟いたところで、その呟きを聞いた江風が勝利の雄叫びを上げる。それが合図となったのか艦娘達が次々と歓声を上げ、あの絶望的な状況から生還した喜びを分かち合い始める。と、その時である

 

「もう大丈夫なのかナー……?時雨に酷い事する奴はいなくなったのかナー……?」

 

空中で滞空していたトムがそう呟くと、突然落下し始めるのであった

 

「トムッ!??」

 

それに気付いた時雨が声を上げるなり大急ぎでトムの下に駆け寄り、落下してきたトムをその両手で優しく包み込むようにして抱き止める

 

「トムッ!?大丈夫かいっ?!しっかりするんだっ!!」

 

時雨が涙目になりながら、慌てた様子でトムに話し掛ける。すると……

 

「時雨かナー……?ナーは慣れない事して疲れただけだナー……、だから心配しなくていいんだナー……」

 

トムは時雨の腕の中で力なくそう答える

 

「心配するなって……、そんな姿見せられたら……、無理に決まってるだろう……。何でそんな無茶をしたんだい……?」

 

「時雨が危ないって聞いたら……、居ても経ってもいられなくなったんだナー……。あ~……、時雨が無事で本当に良かったナー……」

 

時雨の問いにそう答えると、疲労の限界が来たのかトムは瞼を閉じて静かに寝息を立て始めるのであった……

 

時雨はそんなトムの寝顔をしばらく眺めた後

 

「ありがとう、トム」

 

涙を拭い、静かにトムにお礼を言うとその小さな額に軽くキスをするのであった

 

その後、時雨達は予定通りにブイン基地に辿り着き、時雨、江風、川内、球磨、雲龍の5人は泊地の艦娘達をブインの提督に預けると補給を済ませ、空達の援護の為に泊地に向かう準備を始めるのであった

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