※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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ソロモンの悪夢

『おいおいおいおい……、俺と対峙しておきながら背を向けるなんて真似しておいて、やった事が艦載機1つ発艦させただけとか……、もしかして俺の事舐めてんのか?』

 

先程発艦したトムを見送る空の背中に、若干苛立ちを募らせたヌ級が声を掛ける

 

『何、今のはお前を殺す為の準備の様なものだ、人質があっては集中など出来そうもないからな』

 

『艦載機1つだけでどうにか出来ると思ってんのかよ……、思い上がんなあああぁぁぁーーーっ!!!』

 

トムならば絶対に何とか出来る、そんな自信を胸にヌ級の方へと向き直る空に対して、ヌ級はやれやれと言った感じのボディーランゲージを行った直後、そう叫びながら空に向かって殴りかかるのであった

 

「ぬんっ!」

 

空はそんなヌ級の行動を読んでいたかの如く、ヌ級が自身に向けて繰り出した腕を片手で掴むなりヌ級の身体を自身の方へ引き寄せると同時に反対の腕でヌ級の鳩尾に肘打ちを叩き込む。それから素早く肘打ちを放った腕でヌ級の肘を捕らえるなり、一本背負いの要領でヌ級を地面に叩きつけたのである

 

技の極意を習得し空なりのアレンジを加えた【当て身投げ】の直撃を受けたヌ級は、かなりのダメージを受けたのか、地面に叩きつけられた直後に肺から空気が強引に押し出された様な奇妙な声を上げる。だが……

 

「ぬっ!?」

 

ヌ級の腕を掴んでいた腕をヌ級に掴み返された事で空が動揺し、その直後ヌ級がニヤリと笑みを浮かべるのであった

 

『捕まえたぜ、同胞……』

 

ヌ級のその呟きを聞いた空がヌ級がまだ何かを企んでいる事に気付き、急いでヌ級から離れようと掴まれた腕を振り解こうとする。だが気付くのが遅かったがか、空は反対の腕もヌ級に捕まれ、その身体をヌ級の口の方へと引き寄せられてしまうのであった

 

「ぐうううぅぅぅっ!?ぬうううぅぅぅーーーんっ!!!」

 

ヌ級は自分を捕食しようとしている……、その事実を直感で察した空は必死になってヌ級の拘束から逃れようともがくのだが、空が暴れる度にヌ級は掴む力を強くしていき、簡単に拘束を解かれない様にしていたのであった

 

『おめぇも中々しぶといな……』

 

『生憎俺はお前に喰われる趣味はないのでな……っ!徹底的に抵抗させてもらうぞ……っ!!!』

 

『ほ~ん……、んじゃあこんなのは……どうだぁ?』

 

ヌ級の呟きに対して空がこの様に言い返した直後、ヌ級はそう言うなり空の顔を舌でベロリと舐めるのだった

 

「ぐうううぅぅぅおおおぉぉぉーーーっ!!!!!」

 

ヌ級に顔を舐められた空は、地面を軽く揺らしてしまう程の大声で叫ぶ。先ずヌ級の舌の悍ましい感触が脳に焼きついてしまい、その感触が神経を伝い全身を駆け巡り始めたのである。それが心底気持ち悪く、空の身体から見る見るうちに力が抜けていくのであった

 

それに続く様に今度は鼻の中で異常が発生する、空の鼻の中にヌ級の唾液が入り込んでしまったのである。尋常ではないくらいに臭いヌ級の唾液の臭いが鼻の中に充満し、その臭さは時間が経つに連れて……、唾液が乾燥すればするほど強烈になっていき、空の力を更に奪っていくのであった

 

そして遂に空が片膝を突き、ヌ級との距離がグンッと近付く。その様子を見たヌ級は、今からお前を喰ってやると言う意志を伝える為なのか、空を喰える事が単純に嬉しいのか、ガチガチと何度も歯を打ち鳴らし始めるのであった

 

鼻の中の臭いのせいで段々と意識が朦朧としてくる空に向かって翔鶴が何か叫んでいるようではあったが、今の空にはそれを聞き取る力も残っていなかった……

 

この状況をどうするか……、空が回らない頭を無理矢理回して何とか問題の解決方法を模索するのだが、中々良いアイディアは浮かんで来ることは無かった……

 

こんな形では死ねない、そう思った空が意地で抵抗を続けていると、不意に1つの影が2人のところに近付いて来るのであった……。こんな時に……っ!、一体誰だ……っ!?空がそう思っていると……

 

「ぽい?」

 

2人の耳に影の持ち主の声が聞こえて来た、空にとっては聞き慣れたその声の持ち主……、それは……

 

「夕立……っ!?何故此処に……っ?!」

 

空は驚きを隠そうともせずに夕立に向かってそう尋ねるのだが、肝心な夕立はそれを無視してヌ級の方へとゆっくりと歩み寄るのであった……

 

『……あん?』

 

夕立の行動を不審に思ったヌ級が思わず声を上げるのだが、夕立はそれを聞くなりニコリと笑い……

 

「お腹が減ってるなら、空さんよりこれを食べた方がいいっぽい!」

 

夕立はそう言うとその手に大量の魚雷を持ち、まとめてヌ級の口の中へと放り込むのであった

 

『……っ!?!』

 

口の中に魚雷をたっぷりと突っ込まれたヌ級は、魚雷がキーとなり戦治郎達と戦った時の記憶がフラッシュバックしてしまい、思わず硬直してしまう。そのチャンスを夕立が逃す筈など無く……

 

「空さん、ちょっと我慢するっぽい!」

 

そう言って己の主砲に装填された榴弾をヌ級の口目掛けて発射、榴弾は見事に魚雷に直撃して誘爆の連鎖を引き起こす。そのショックでヌ級の腕の力が緩み、空はその隙を見計らって何とかヌ級の拘束から逃れる事に成功するのだった

 

その後、空は夕立から手渡されたハンカチで顔を拭い、鼻をかんでヌ級の唾液を鼻の中から排出し、汚れたハンカチを後で洗濯する為に懐に仕舞ってから夕立に改めてここにいる理由を尋ねる。すると

 

「空さん達の事が心配になって戻って来たっぽい、なんか提督から編成を聞いた時から嫌な感じがしてたから……。それがどうしても気になって、皆に黙ってこっそり戻って来たら案の定、大変な事になってたっぽい!」

 

夕立の言葉を聞いた空は、夕立の勘の良さに驚きつつも

 

「そうだったか……、心配かけて済まなかったな……、そして夕立のおかげであの窮地から脱することが出来た、本当に助かった、ありがとう、夕立」

 

そう言って、夕立の頭を撫で始めるのであった

 

その後空は【集気法】で体力を回復させると、ヨロヨロと起き上がって来るヌ級の方へ向き直って、その一挙手一投足を見逃すまいとばかりにヌ級をしっかりと見据えるのであった

 

『そこの小娘……、ハラキリ野郎みたいな真似しやがって……っ!上等だっ!お前も銀髪女と同胞と一緒に喰ってやるぁっ!!!』

 

「夕立、英語は全然分からないっぽい。夕立とお話したかったら日本語で話して欲しいっぽい!』

 

怒りで表情を歪めるヌ級が夕立に向かってこの様な言葉をぶつけ、対する夕立はそう言ってヌ級を切り捨て、気を引き締めてヌ級を睨みつける

 

「夕立……」

 

不意に空が何かを提案しようと、夕立に話しかけるのだが……

 

「翔鶴さん達の護衛ならお断りっぽい、誰かがすぐにフォローに入れるようにしておかないと、また空さんがピンチになっちゃうかもしれないっぽい」

 

夕立のこの言葉を聞いた空は、夕立に提案しようとする事を諦める。夕立に提案しようとしていたのが正にそれであった事と、夕立の言葉にも理があったからである

 

「分かった……、じゃあ俺の援護を頼む。だが無理だけはするなよ?分かったな?」

 

「ぽいっ!」

 

空が夕立にそうお願いすると、夕立は自分の意見を聞き入れてもらえた事が嬉しかったのか、笑顔で元気いっぱいに返事をする

 

『ごちゃごちゃうるせえええぇぇぇーーーっ!!!』

 

空と夕立のやり取りが癪に障ったのか、ヌ級はそう叫びながら空達の方へと突っ込んで来る。それを見た夕立は……

 

「夕立達の泊地を滅茶苦茶にしたお前を……、夕立は許さないっぽいっ!ソロモンの悪夢……、見せてあげるっ!!!』

 

そう叫びながらヌ級に飛び掛かる、その姿を見ていた空は

 

「後方からの援護と言ったつもりだったが……、まあいい、俺が夕立に合わせて連携を叩き込めばいい事だ……。っと言ってる場合ではないな、行くぞ!そろそろこの戦いを終わらせてくれるっ!!!」

 

ほんの少し呟いた後、気を取り直して叫び声を上げながらヌ級に突撃を仕掛けるのであった

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