「……これがお前達が来るまでの間に、泊地で起こった出来事の全てだ」
「成程……、あの龍が纏ってた肉片はヌ級の奴だったんだな~……」
空が泊地に駆け付けた戦治郎にヌ級との戦いの顛末を報告すると、戦治郎はポツリと呟いてヌ級の遺体の方をチラリと見る
ヌ級の遺体の頭部は空が打ち出したらしいあの銀の龍に吹き飛ばされてしまったのか、その部分だけ綺麗に消失してしまっていた
(いくら頑丈でタフなヌ級でも、脳を頭部ごと吹き飛ばされてしまえば流石に助からんか……)
戦治郎が遺体を見ながらそう考えていると
「ねえねえ、あの龍ものすっごく遠くまで飛んで行ったみたいだけど、戦治郎さん達は何か知らないっぽい?」
「あ~……、何処まで行ったかは分からんが、ブイン基地の敷地を掠って行ったのは見てたわ……」
「戦治郎……、それによる人的被害は……「それは今ブインの提督が調べてるから、報告来るまで待っとけ」ぬぅ……、分かった……」
不意に夕立が戦治郎に対して銀の龍の行方を尋ねてくる、戦治郎が頭をバリバリと掻きながら夕立の質問にこの様に返すと、今度は空が震えながら銀の龍での被害がどのくらいになったのかを聞こうとして来た。それに対して戦治郎は空が言葉を言い終える前に現在調査中である事を伝えると、空はこう呟いて申し訳なさそうに俯くのであった
空が銀の龍の存在に気付いたのは、空がヌ級討伐の余韻に浸っているところで夕立が龍の事を尋ねて来たからである。空がヌ級に対して最後の一撃を放った際、その腕から銀の巨龍が射出された事を夕立が身振り手振りで空に伝え、その龍の正体について空が思考を巡らせ、その龍は己が放った技である【龍神烈火拳】のエフェクトだろうと思い至るのであった
この時空はその龍はただのエフェクトで、特に周囲に被害を出すようなものではないだろうと思っていたのだが、件の龍が地図を書き換える必要があるほどの被害を出したと言う現実を戦治郎達から突きつけられて、空は顔面蒼白になりその身を震わせたのだった
「空さん、きっと大丈夫ですよ。ヌ級接近の知らせを聞いたブインの提督さんがきっと住民の皆さんにすぐに避難勧告を出したはずですから、恐らく人的被害は無いと思いますから」
しょげる空を元気づけようと、空に寄り添った翔鶴がこの様な事を口にする。翔鶴が言う様にブインの提督は出撃準備をしていた燎からヌ級接近の報を受けると、すぐさま地域住民に避難勧告を出して戦場になりそうな地域の住民を避難させてヌ級との戦いに備えたのである
だが万が一と言うのも有り得る、もしかしたら逃げ遅れた者がいたかもしれない……、その時はどうしたらいいのだろうか……?戦治郎がこんな事を考えていると、不意に通信機から呼び出し音が聞こえて来る。戦治郎がその通信に出ると、通信機からはブインの提督の声が聞こえて来る。どうやら銀の龍の被害調査が終わったようだ……、戦治郎は固唾を呑んでブインの提督から調査報告を聞くのであった……
結論を言えば、銀の龍での被害は建物と地形だけで、人的被害はなかったそうだ。それを戦治郎から伝えられた空は胸を撫で下ろし、無表情で喜びオーラを辺りに漂わせ、そんな空の様子を見ていた翔鶴も思わず笑みを零すのであった。と、その直後である
「戦治郎ー!そっち終わったならこっち手伝ってくれー!」
光太郎が声を張り上げて戦治郎を呼ぶのであった、呼ばれた戦治郎が光太郎の方を向くと、光太郎は双腕重機アームを使って、燎の身体からガンダムスーツを引き剝がそうとしていたのであった
戦治郎達は泊地の消火活動を終えた後、戦治郎は空と夕立から事の顛末を聞き出す為に事情聴取を、光太郎はヌ級の策略で背中に資源保存庫の扉が突き刺さった燎の救助を、リチャードは光太郎のリヴァイアサンを借りてブインにいる悟をこちらに連れて来る役を担当し、それぞれ行動を起こしたのである
さて、今光太郎に救助されている燎だが、扉が背中に突き刺さると言う非常に痛ましい姿をしているが、実際のところ日向よりも軽傷である事が判明したのだ
言うのも、ディープストライカーの背面にあるバックパックはプロペラントタンクやブースターユニットなどでごった返している為、それらがクッションとなり燎本体にまで扉が突き刺さらなかったのである
とは言え、扉が身体に激突した時の衝撃は凄まじく、燎自身はその衝撃で腰の骨が砕け、ガンダムスーツはフレームが歪んでしまい脱げなくなってしまっている。つまり今の燎はガンダムスーツの中に閉じ込められた状態なのである
「分かった!すぐ行く!」
戦治郎は叫ぶ光太郎に対してそう答え、光太郎の下へと駆け寄って行き燎の救助を手伝い始めるのであった
「いや~、一時はどうなるかと思ったが……助かったぜ2人共っ!」
「思ったより元気そうだな……」
「良かった、燎が無事で何よりだよ」
戦治郎が協力したおかげでガンダムスーツから燎を助け出す事に成功し、燎からお礼を言われた2人がこの様に返す
「……悪ぃ、ちょっとだけ強がった……。正直なとこちょっと凹んでるんだわ……」
2人の返事を聞いた燎はそう言ってボロボロになったディープストライカーを見て、次に自分の足を見てその表情を暗くするのであった
「命は助かったが、どうも軍人としての生命線はブチ切られちまったみたいなんだわ……、さっきから足動かそうとしても動かねぇ……。それにお前達が折角くれたこいつもこんなにボロボロにしちまって……、本当に済まねぇ……」
項垂れながらそう言う燎を見た戦治郎と光太郎は、1度顔を見合わせてから燎に話しかける
「ディープストライカーについてはそういうもんなんだから気にすんなって、後でこっちの技術屋総動員してすぐ直してやるよ」
戦治郎は壊れたディープストライカーに目を向けながらそう言い放ち
「その足なんだけど、ほぼ間違いなく治ると思うから安心して。俺達のところには……「戦治郎達ー!悟を連れて来たよー!」「おらぁ~、怪我人はいねぇがぁ~」ほら来た!」
光太郎が言葉を発している最中に、リチャードがブイン基地から悟を連れて泊地に戻って来るのであった
悟は泊地に到着するなりすぐに日向と燎の治療を開始する、翠緑の力を使って日向の両足の傷を見る見るうちに塞いでいき、燎の腰の骨もたちまち元の状態へと戻っていく
「転生個体の能力と言うのは、本当に凄いものだな……」
痛みも傷痕も残っていない自分の両足を見た日向が、その驚きを隠そうともせずこの様な言葉を口にする。その一方で……
「うおおおぉぉぉっ!!!マジかっ!?めっちゃ軽快に動くぞ俺の足っ!!!」
燎が再び動くようになったその足で、反復横跳びをしながら歓喜の雄叫びを上げる。そして……
「くっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!いくら何でも喜び過ぎだろうよぉ!!!喜びの反復横跳びとか今まで見た事ねぇぞっ!!!かっしゃっしゃっしゃっしゃっ!!!」
そんな燎を見た悟が、燎の事を指を指しながら爆笑するのであった。その様子を他の皆も笑顔で見守っていたのだが、戦治郎だけが少しばかり渋い顔をしていた
「どうした戦治郎、お前も燎と一緒に反復横跳びしたいのか?今なら俺も付き合うぞ?今の俺はヌ級討伐成功の喜びで昂っているからな」
「ばっかおめぇちげぇよ、ちょっち考え事してただけだ」
「考え事?」
不審に思った空が戦治郎にこの様に尋ねると、戦治郎はそれを断り自分がこんな表情をしている理由について話すのだった
「いやな、ヌ級を討伐した事を大本営に伝える際、今回の件の説明しなきゃいけないだろ?んでそれに使えそうな映像データとか誰か持ってないかって思ったんだわ。けどこんだけ激しい戦闘だったら誰も撮影とかする余裕ねぇだろうって思い直してな~……」
戦治郎は俯いて頭をバリバリ掻きながらそう言う、それを聞いた空は納得した様に頷いた後、戦治郎同様難しい顔をして思考を巡らせようとする。と、その時だった
「空の戦闘の映像データなら、俺のディープストライカーのカメラで撮影してるぞ?」
「あ、それなら私もあります。確認しますか?」
戦治郎の言葉が聞こえたのか、燎と翔鶴が名乗り出て来たのだ
燎の方は足が動かない関係でディープストライカーのブースターなどの操作が出来なくなってしまった為、翔鶴の方は負傷した日向を放置する事が出来なかった為、戦闘に参加が出来なかった訳だが、2人はこのまま見てるだけと言うのに耐えられなかったらしく、何か自分に出来ないかを模索した結果、燎はディープストライカーのカメラで、翔鶴は空から貰ったスマホのカメラで空達の戦いを撮影し、映像データを残そうと思い至ったのである
2人の話を聞いた後、戦治郎は燎のディープストライカーのカメラと自身が持っているタブレットを接続して、空は翔鶴のスマホを貸してもらってから映像データを確認し、そのデータが使えそうだと判断すると、戦治郎はタブレットに、空は自身のスマホに映像データを転送するのであった
尚、空が映像を見ていた時、自身が生み出したはずの件の龍を見たところでその大きさに驚愕するのであった。後に空はこう語る……
「【龍神烈火拳】の出力調整を考えなければな……」
どうやら空は【龍神烈火拳】を封印する気は更々無く、今後も使い続けるつもりの様である……