※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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桂島泊地の提督

「送った映像データが使えないだって?」

 

『ああ……、折角送ってもらったのだが……』

 

ちゃんぽん要塞の大会議室に戦治郎と長門の声が響き渡る

 

ショートランド泊地での救助作業を終えた戦治郎達は、燎達を連れて1度ブイン基地に戻ったのだが……

 

「ショートランドの子達を預かれるほどの余裕がウチにはないの……、ホントごめん!」

 

顔の前で両手を合わせて謝罪するブインの提督のこの言葉を聞いた戦治郎達は、ショートランド泊地の艦娘達の当面の寝床を提供する為に、ブイン基地に預けていた彼女達を引き取って、すぐにちゃんぽん要塞へと向かったのである

 

そうしてちゃんぽん要塞に辿り着いた戦治郎達は、艦娘達には自由行動を許可した後に海賊団の面々と事情を知る艦娘達をちゃんぽん要塞の大会議室に集めて、今後について話し合う事にしたのだ

 

その際、戦治郎が大本営の長門をオンラインで呼び出して、ヌ級の討伐成功の報とそれによる周囲の被害を伝えると共に、燎と翔鶴が撮影した映像データを送ったところ、長門からその映像が使えない事を伝えられたのである

 

「理由を聞いても?」

 

真剣な顔つきをしたリチャードが長門にそう尋ねると、長門は申し訳なさそうな表情を浮かべて現在の日本海軍の派閥問題について話し始める。そして長門の言葉を聞くなり大会議室にいる者達全員が、愕然とした表情を浮かべるのであった

 

何と今の日本の世論は、強硬派を支持する意見が多数派であると言うのである

 

何故その様な事態になっているのかを長門に尋ねたところ、恐るべき事に強硬派の代表とも言える桂島泊地の提督が、多くのマスメディアを買収して自分達が有利になる様に情報操作を行い、国民を扇動して味方につけたのである

 

もしこの状況で先程送った映像を公開しようものならば、大本営の穏健派は売国奴として強硬派に弾圧、一掃され大本営が強硬派に乗っ取られてしまう可能性があると長門は言うのであった

 

『そうなっては戦争は泥沼と化し、艦娘は使い捨てられ、国の財政は圧迫され……、日本は……、崩壊するだろう……』

 

「うっおーーーっ!!くっあーーーっ!!ざっけんなーーーっ!!!」

 

沈痛な面持ちで語る長門の言葉を聞いた戦治郎が、怒りに震えながら叫び、勢いよく机を殴りつける

 

「強硬派はエデンの構成員かなんかかよっ!?自分の国が滅びようがお構いなしに戦争してぇのかよっ?!!マジでふざけんなよクソがあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

「戦治郎……、気持ちは分かるが少し落ち着け……」

 

「ねえ長門ちゃん、その桂島の提督って一体何者なの?マスメディアを買収するってそんな簡単に出来る物じゃないと思うんだけど……?」

 

尚も吼える戦治郎を空が宥め、その間に剛が桂島の提督の事を長門に尋ねる。その時の剛の口調こそいつも通りだが、その表情はリチャード同様真剣そのものであった。恐らく戦治郎がエデンの名を出した事で、この提督がアリーと繋がっているのではないかと思ったからだろう

 

剛の質問に対して、長門は渋い表情を浮かべながら答える

 

桂島泊地の提督は20代後半と言う若さでありながら、現在の日本海軍でトップの戦果を上げ続けている男で、今の日本海軍の若き提督達の憧れとも言われる人物なのだとか……

 

また、彼は元帥を差し置いて海軍内にあった様々な派閥をそのカリスマ性でしっかりとまとめ上げ、強硬派と言う巨大な派閥を作り上げたのである

 

多くの提督達のカリスマとも言える彼だが、その異様過ぎる戦果と普通では考えられない金払いの良さから、彼に纏わる黒い噂が絶えず付きまとっている様で、長門も何度かその噂を耳にした事があるそうだ

 

ある者は資源の横流しを疑い、ある者は人身売買を疑い、またある者は深海棲艦との内通を疑ったのである……

 

『大本営も何度か桂島泊地の監査を行ったのだが……、全く尻尾を掴む事が出来なくてな……』

 

「悪知恵働かせるのが得意ってか……、けっ!俺が1番大っ嫌いなタイプの野郎だぜ……」

 

「あたしも輝さんと同じだな……、こいつ絶対裏で何かやってるだろ……。そっちの憲兵は一体何やってんだよクソがっ!」

 

依然として沈痛な面持ちの長門が語る中、話を聞いていた輝と摩耶が顔を歪めながら悪態をつく

 

「摩耶、流石にそれは言い過ぎだろ……」

 

その直後、木曾が摩耶を諫めるのだが……

 

『いや、摩耶にそう言われても仕方が無いかもしれないな……』

 

その表情を更に暗くしながら、長門がそう呟いたのである

 

「あの……、それは一体どういう事でしょうか……?」

 

長門の態度を不審に思った不知火が尋ねると、長門は重い口を開き、先程の呟きの理由を話す

 

『噂の中には、不正で手にした金を使って憲兵を買収して、自身の罪を無かった事にしているのではないかと言うものもあるのだ……』

 

「憲兵までグルの可能性があるんか……、もしそれが事実やったらホンマえらいこっちゃやで……」

 

「火が無いところに煙は立たないって言うし……、私は多分憲兵もクロだと思うわ……」

 

長門の言葉を聞いた龍驤と陽炎が、苦い表情をしながらそれぞれ呟く

 

長門の話を聞けば聞くほど、室内の空気は重いものとなっていき、遂には誰も発言しなくなってしまう……。と、そんな中……

 

「よし分かったっ!俺が日本海軍で提督になる前にやらなきゃなんねぇ事がよ~ぉく分かったっ!!!」

 

『戦治郎……?……まさかっ?!』

 

戦治郎が叫びながら立ち上がり、その様子を見た長門が最初は訝しむようにして、そして途中から戦治郎が何をしようとしているのかに勘付いたところで今度は驚きの表情を浮かべながら戦治郎に話し掛ける

 

「俺達は南方海域を去った後、日本に直行して桂島を叩く!そんでこいつの悪事を白日の下に晒してその地位を奈落のズンドコまで叩き落す!!そうすりゃ海軍の強硬派もちょっちは大人しくなるだろうよっ!!!」

 

「アニキのその言葉、待ってましたぜっ!!!」

 

「その時は自分張り切ってその提督の事丸裸にしてやるッスよ~!」

 

戦治郎がそう宣言すると、シゲと護が沸き立つ様に賛同する。だが……

 

『戦治郎……、張り切っているところで悪いんだが……、それは少し待ってはもらえないか……?』

 

長門のこの発言が飛び出すと、戦治郎は思わずズッコケそうになる

 

「何で何でぇ?こう言うのはちゃっちゃとサックリ片付けた方がいいだるぉ~?」

 

『今それをやられると、私達の方も困るんだ……』

 

戦治郎がそう言って、長門から事情を聞き出す

 

どうやら日本海軍は近日中にミッドウェーに攻撃を仕掛ける様で、その際桂島の艦隊が主力に据えられており、今桂島の戦力が欠けてしまうと作戦どころではなくなってしまうと言うのである

 

「桂島の代わりに俺ら据えりゃいいじゃん」

 

『確かに戦力的には爆発的に強くなるが……、それをやってしまうと日本海軍全体が無能の烙印を押され、最悪軍縮の危険性があるんだ……。そうなるとお前達の居場所を与えられなくなってしまうかもしれん……』

 

「延期ー!桂島へのカチコミは延期でーす!!作戦終了まで延期しまーす!!!」

 

「見事な手のひらドリルだなぁおいぃ……」

 

「でもやるのは変わらないんですね……」

 

戦治郎が長門に代替案を提案するが却下、その理由を聞いた戦治郎がカチコミ延期宣言をすると、悟が呆れたた様子で呟き、望がそう言って苦笑いを浮かべるのであった……

 

「ってなると、それまでの間俺達はどうすっか……」

 

「どうせ暇なら、ラバウルとショートランドの復旧の手伝いでもするか?」

 

『それも待ってくれ……、それをやられるとまた強硬派が騒ぎ出してしまう……』

 

戦治郎が今後どうするかを考えてると、輝が今回の戦いで被害があったラバウルとショートランドの復旧の手伝いを提案するのだが、それも長門に却下されてしまう……

 

その後戦治郎達は今後の事を話し合い、取り敢えず日本海軍の作戦が終わるまでの間、北マリアナ諸島にあるであろう強硬派深海棲艦の拠点にトラック泊地防衛戦の時のお礼参りと称してカチコミを仕掛けて占拠、そこで時間を潰す事にしたのであった

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