※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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監視員増員

桂島の提督の話題で大いに脱線してしまった話を戻し、戦治郎達は映像データの代わりをどうするかについて話し合い……

 

「まあ……、そうなるな……」

 

「大本営か……、行きたくねぇ……」

 

決定した方針を聞いた日向と燎が、それぞれこの様に呟くのであった

 

あの映像が使えない以上この戦いの表面上の英雄を捏造する羽目になり、話し合いの結果燎がその役を演じる事になったのである。尤も、元帥と長門が信用に値すると思った穏健派に所属する者達に対しては映像データを送って、真の英雄が誰であるかを伝える手筈になってはいるのである

 

「話の流れとしては、燎がヌ級と戦って主砲砲身ユニットでヌ級の頭吹っ飛ばしたって感じだな」

 

「それはいいんだが……、銀龍の事はどうするんだ?」

 

戦治郎が大雑把な偽のシナリオを口にしたところで、問題の龍を射出した張本人である空が戦治郎に質問をする

 

「それについてだが、幸いにもあの龍を見たのがブインの連中だけだったから、ブインの連中に頼んで銀の龍は見ていない事にしてもらって、被害については全部ヌ級のせいにする事にするつもりだが……、それでいいよな?」

 

「死人に口無しか……、まあそう言う事なら分かった」

 

戦治郎に自身の疑問をぶつけた空は、戦治郎の返答を聞くとその内容を了承するのであった

 

その後、粗方話が終わったところで戦治郎が今の内に話しておきたい事を話していいと言うと、龍鳳がおずおずと挙手をするのであった

 

「あの、話しておきたいと言うか……、長門さんにお願いなんですけど……」

 

『私にか?一体どうした?』

 

恐る恐ると言った様子で龍鳳が話し始めると、名指しされた長門が不思議そうな顔をして龍鳳に続きを話す様に促す

 

「その……、今私は海賊団の監視役をやっているんですが……、出来たら監視要員を増やして欲しいと思いまして……」

 

『監視要員の増員……?』

 

龍鳳の言葉を聞いた長門と、海賊団の面々が一斉に首を傾げる。その様子を見た龍鳳は、1度深呼吸をしてから一気にまくし立てる

 

「皆さんホント自由過ぎますよっ!!!監視役は私しかいないのに皆さんはあっちこっち好き勝手に、バラバラに行動したりしてっ!!!特に遠征に参加した人達っ!!!ヨーロッパって……、一体何処まで行ってるんですかっ!!?そんなところ私の目が届きませんよっ!!!私は皆さんの事を監視して、細かいところまで全部記録して、その情報を全部大本営に提出しなくちゃいけないんですよっ!?!一応映像データとかもらってますけど……、そこから記録を書き上げるの本当に大変なんですからっ!!!」

 

言いたい事を言い切った龍鳳が、ハァハァと肩で息をし始める。その様子を見ていた長門は……

 

『そ、そうか……、ならちょっと元帥に掛け合ってくるから席を外すぞ……』

 

その勢いにやや気圧され、引きつった表情を浮かべながらそう言って席を立ち、海賊団の面々は流石に申し訳なく思ったのか、龍鳳に向かって一斉に頭を下げて謝罪するのであった

 

 

 

『元帥から許可を取って来たが……』

 

戻って来た長門は、大会議室の様子を見るなり、つい言葉を詰まらせてしまう……。そう、今の大会議室の空気がまるでお通夜でもやっているかの様に重く暗いのである……

 

何故この様な事態になってしまったのか……、それは恐らく翔鶴が原因なのではないかと長門は予想するのであった

 

実際、今の翔鶴の表情は尋常ではないくらいに暗いものになっていた

 

翔鶴がこうなってしまっている原因、それは偏に翔鶴も燎達と一緒に大本営に向かわなければいけなくなっているからである

 

翔鶴が大本営に向かわなければいけない理由についてだが、翔鶴は燎の件の証人の1人であると同時に、現在唯一噴式艦載機を保有、運用出来る装甲空母の艦娘である事が挙げられる

 

一応明確にヌ級のターゲットになった事から、ヌ級の犯行動機関連について調べる為に色々と話を聞きたいと言う話もあるが、恐らくそれは建前であり本命はやはり艦載機の研究解析の為だろうとこの場にいる誰もが思うのであった

 

とまあそう言う理由があって、どう足掻いても監視役として空達に同行出来ない翔鶴ががっつり沈んで場の空気が重くなり、監視役に立候補したい艦娘も空気を読んで黙り込んでしまったのである

 

と、そんな中……

 

「空っ!雲龍っ!チェンジッ!!!」

 

突如戦治郎が席から立ち上がり、腕を交差させるジェスチャーを何度も繰り返しながらそう叫ぶ

 

「空さん……、お願いします……」

 

「任せろ」

 

その直後、空と雲龍は立ち上がり移動を開始、そして2人はすれ違った際この様なやり取りを交わして、空と雲龍は座っていた席を交換する。そして空は雲龍が座っていた席、翔鶴の隣の席に腰を下ろすとすぐに翔鶴を慰め始めるのであった

 

「ねぇ……」

 

2人の席替えが完了して間もなく、川内が声を上げる

 

「その監視役ってさ、私がやってもいい?」

 

「川内か……、理由聞いてもいいか?」

 

川内はそう言って監視役に立候補し、その理由を戦治郎が尋ねる

 

「通さんの闇寄せだっけ?何時でも何処でも好きな時に夜戦出来る様になる奴。それが気になるって言うのと……」

 

川内はここまで言ったところで1度言葉を区切った後、その表情を真剣な物に切り替えてから続きを話し始める

 

「折角死んだと思っていた妹と再会出来たのに、またすぐ離れなくちゃいけないってのが嫌だから……、かな」

 

川内がそう言うと、その様子を見守っていた神通が沈痛な表情を浮かべて俯いてしまう

 

そう、この川内と神通は球磨と木曾同様血の繋がった姉妹だったのである。川内達はトラック防衛戦の時にようやく再会し、神通の事情を聞いた川内は最初こそ戸惑いはしたものの、最終的には現実を受け止め神通を優しく包みながら、彼女の耳元でおかえりと呟いたのである。その言葉を聞いた神通は堪えきれなくなったのか、形振り構わず泣きじゃくりながら川内に抱き着き、川内はそんな妹を優しい笑みで見つめながら、神通が泣き止むまでずっと優しく抱きしめていたのであった

 

「また離れ離れになって、私の知らないところで神通が危険な目にあって、また沈んじゃうなんて事になったら……、私もう立ち直れそうにない……。そんな事にならない様に、神通の傍で、姉として、妹の事を守ってあげたい……、それじゃ駄目かな……?」

 

川内が握り拳を作りながら、監視役に立候補した理由を言い終えたところで……

 

「はい採用っ!!!文句ある奴いるかぁっ!?いるなら出てこいやぁっ!!!」

 

戦治郎が叫びながら辺りを見回す、その視線の先には異論を挟もうとするものはおらず、川内は目出度く監視役の任に着くのであった

 

『川内だな、分かった、後で元帥にそう伝えておこう。他にはいるか?龍鳳の話を聞いた限りだと、もう少し数が必要なようだが……』

 

長門がそう言って龍鳳の方をチラ見すると、龍鳳は勢いよく何度も首を縦に振り、長門の言葉を肯定するのであった

 

と、その直後である

 

「ぽいっ!!!」

 

いきなり夕立が大きな声で返事をしながら立ち上がり、元気いっぱいにその手を天高く伸ばす

 

「夕立もその監視役……?やるっぽい!そしたら夕立も空さん達と一緒に旅が出来るっぽい!」

 

『夕立は空達に付いて行きたいだけなのか?』

 

長門がそう尋ねると、夕立は首を横に振って長門の質問を否定する

 

「夕立は強くなりたいぽい!時雨や江風、泊地の皆、ううん、日本の、世界中の人を守れるくらい強くなりたいっぽい!その近道は空さん達との旅の中にあるって、空さんがヌ級をやっつけるところを見た時、夕立の中の夕立が言ってたっぽいっ!!!それに……」

 

夕立はここまで話したところで、急にその表情を暗いものに変えて話を続ける。その際夕立改二の特徴の1つとも言えそうな犬耳のようなハネッ毛も、力なく垂れ下がってしまっていた

 

「桂島の提督の話を聞いた時、夕立の中の夕立が言ったっぽい……、今日本に戻っちゃ駄目だって……、今の日本に戻っても夕立の夢は叶わないって……」

 

夕立の言葉を聞いた誰もが、夕立が言いたい事がよく分からず首を傾げるのだが……

 

「今の海軍内部の状況で夕立が帰還したら、夕立の中にある可能性が潰える可能性が高く、何より都合よく使い潰されて捨てられてしまう危険性がある……、と言ったところか?」

 

不意に空がこの様な事を口にした、それを聞いた夕立は急に元気になると空の方へと駆け寄って、飛びつくようにして抱き着いた

 

「多分そんな感じっぽい!空さんなら分かってくれると思ってたっぽい!」

 

夕立は抱き着いたまま見えない尻尾をブンブンと振りながら、嬉しそうにそう言うのであった

 

「長門、俺からも頼みたい。夕立の可能性とやらを引き出してみたいんだ」

 

「夕立の可能性か……、具体的に聞いてもいいか?」

 

夕立の頭を撫でながらそんな事を言う空に対して、現在剣術家として木曾を育てている戦治郎が尋ねる

 

「ヌ級との戦闘中、夕立が【カポエラキック】を使ったのを覚えているか?」

 

「ああ、あの腕の上で逆立ちして、俺達が付けた傷痕蹴っ飛ばしたあれか……」

 

「俺は夕立の前であの技を使った事はあるが、実際にあの技の使い方を教えた覚えがないんだ」

 

「はぁっ!?って事はあれか?ありゃお前が使ったのを見様見真似でやったって事かっ?!」

 

戦治郎と空はこの様なやり取りを交わし、戦治郎は空に突きつけられた現実に驚愕する事しか出来なかった

 

「ぽいっ!」

 

戦治郎の驚きの声を聞いた夕立が、戦治郎の言葉を肯定する様に返事をしたところで、戦治郎は驚愕の色をより一層濃くするのであった

 

その後、皆に確認を取って夕立の加入を認めたところで

 

「夕立だけだとちょっと心配だ……、よかったら僕も監視要員に加えてもらえないかな?」

 

「夕立の姉貴は抜けてるところあるからなっ!つかサラッと江風を置いていこうとすンなよ、時雨の姉貴っ!!!」

 

続くようにして、時雨と江風が監視役に立候補するとすぐに2人の加入も認められ、龍鳳が待ち望んだ監視員の増員は成され、海賊団には合計5人の監視が付く事になるのであった

 

因みに、空の艤装の中でこの話を聞いたトムが大はしゃぎし、ワイルド達によって鎮圧されたのは空の艤装の中だけの話である

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