※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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南の島でお茶会を

戦治郎達がちゃんぽん要塞で今後の方針などについて話している頃、フランス領南方南極地域にあるウエスト島では、2人の転生個体がお茶会を実施していた

 

「でねっ!でねっ!私が転んじゃいそうになったその時なのっ!剛が私の事呼びながら凄い速さで私のところに来てくれてねっ!!繊細なガラス細工でも扱う様に私の事を優しく抱き止めてくれたのよ~っ!!!」

 

そう言いながらほんのりと赤く染めたその両頬に手を当て、嬉しそうにイヤンイヤンと頭を振るのは、トラック防衛戦の時突如姿を現しゼッペーの増援の殆どを単独でいとも容易く蹴散らしてしまった『エデン』の指導者で、剛の妻であったアレクサンドラ・稲田その人である

 

「それだけでもう昇天しそうだったのに……、私の事を心配そうに見つめながら名前を呼んでくれてね~……、もう……、もう……っ!我慢出来なくなっちゃってついついこう……、むちゅ~~~ってっ!!!キャ~~~ッ!!!」

 

彼女は恍惚とした表情でこの様な事を言った後、クネクネしながら自身を抱きしめる様な仕種をし、彼女の頭の中に存在する愛しい愛しい剛と抱き合いながらキスでもしているかのように目を閉じ唇を尖らせる。その直後、彼女は恥ずかしそうに自分の顔を片手で覆い、もう片方の腕を照れ隠しでもするかの様にブンブンと振り始めるのであった

 

「ふ~ん……」

 

そんな彼女の様子を対面の席で呆れた様子で眺めながら、興味なさげに適当な相槌を打つ者がいた

 

(ったく……、この話これで何度目だよ……。つかもう3時間くらい同じ事喋ってるだろこのババア……)

 

彼女は苛立ちながら内心でそう呟いて舌打ちし、止めどなく溢れる剛への愛を語り続けるアリーの話を適当に聞き流すのであった

 

「ちょっと可奈子!私の話聞いてる?」

 

不意にアリーが自分の対面に座る港湾水鬼に対して、自分の話を聞いていたかを尋ねる

 

「ああ、聞いてる聞いてる、愛しの旦那様が自分の事を未だに愛してくれてて嬉しい嬉しいだろ?」

 

「そう!そうなのっ!もうホントねっ!私それg「お"い"……っ!」……、もう……、そんなに怒らなくてもいいじゃない……」

 

可奈子と呼ばれた港湾水鬼が返事をすると、アリーはまたも剛について話し始めようとするのだが、流石にこれ以上は勘弁して欲しいと思った可奈子が、アリーを睨みつけながらドスの利いた声を出すと、アリーは頬を膨らませながらも大人しく着席するのであった

 

水門 可奈子、それがこの港湾水鬼の名前であり、彼女こそが転生個体の暴力を以て全生物を支配しようと企む『カルメン』の親玉、そしてシゲの元カノなのである

 

「あんたはお茶しながら自分の旦那の話する為だけにここに来たわけじゃねぇんだろ?だったら早く用件言いやがれ、このクソババア」

 

「相変わらず口が悪いわね~……、まあいいわ、それで今日来たのはそっちの進捗状況がどうなってるか聞きに来たのと、ウィルちゃんの腕のメンテナンスしに来たってところね」

 

可奈子はテーブルに肘をついて紅茶を啜りながらそう言うと、アリーは少々呆れた様子で今回尋ねて来た理由を話すのであった

 

「ふ~ん……、取り敢えず野郎共はあんたに言われた通り大人しく訓練させてるぞ、まあ偶に馬鹿がイキってマダガスカル行って帰って来なくなるがな」

 

アリーの用件を聞いた可奈子は、相槌を打った後アリーが提案した戦力増強計画の進行状況をアリーに伝える

 

「あら?この間ヤマグチ水産の輸送船を襲撃して返り討ちにされたって話を聞いたんだけど?」

 

「ああ……、それもあったな……。ったくあの馬鹿共……、ヤマグチ水産には手ぇ出すなってあれほど言っただろうが……」

 

話を聞いたアリーが不思議そうに尋ねると、可奈子は不機嫌そうな顔をしながら返事をし、ぶつくさと愚痴を零すのであった

 

「教育不足みたいね~」

 

可奈子の愚痴を聞いたアリーが、ついついこの様な呟きを零すと……

 

「生憎ウチの連中はあたし含めて馬鹿しかいないからね、言葉で言っても全く理解出来やがらねぇ奴ばっかなんだわ」

 

アリーの呟きが耳に入ったのか、可奈子はそう言って指をバキバキと鳴らしながら席を立ち、何処かへ向かおうとする

 

「また肉体言語での教育?正直あんまりオススメしないわよ?」

 

「さっきも言ったろ、あたしも馬鹿だって。あたしはこの方法しか知らねぇし、この方法が一番手っ取り早いからこれしかやるつもりねぇんだよ。って訳で行って来るわ、ウィルのメンテは好きな時に行ってくれ」

 

アリーの忠告に対してこの様に返した可奈子は、部下達の躾の為に部屋を出て行ってしまうのであった

 

「もう……、剛も可奈子もホントせっかちさんよね~……」

 

アリーはそう呟くと、スッカリぬるくなってしまった紅茶を啜って一瞬顔を顰めるが、勿体ないからと残り全てを一気に飲み干し、また新しく紅茶を淹れ直すのであった

 

「ふぅ……」

 

新しい紅茶を啜って一息つくと、アリーはまたも剛の事を考え出す

 

生前、軍事関係者の楽園を築く為に、剛との対立を覚悟してまでも起ち上げたテロ組織『エデン』の最後の時、致命傷の弾丸を5発も受けながら尚も自身を止める為に戦う最愛の人の姿を……、渾身の弾丸で仕留めた世界最高峰の反逆者をその腕に抱きながら、荘厳な顔をクシャクシャにして子供の様にボロボロと涙を流し、それはそれは愛おしそうにその名を呼ぶ愛する夫の姿を……、目尻に涙を浮かべながら思い浮かべるのであった

 

「私は貴方を裏切ったのに……、何で貴方は涙を流してくれたの……?どうしてそんなに愛おしそうに名前を呼んでくれたの……?そんな事されたら……、貴方の事以外どうでもよくなっちゃうじゃない……」

 

涙で頬を濡らしながら、彼女はそう呟く……。そして……

 

「貴方と私の為だけの世界……、貴方と私の存在が必要不可欠な世界……、貴方が王として戦場を駆け巡り、私がそんな貴方を支える……、ああ、なんて素敵なの……?」

 

虚空を見つめながら、うっとりとした様子でアリーはそう呟く……

 

「……そう……、そうね……、その為にはどうしても戦場が必要よね……、絶え間なく人と人……、いいえ、この際人じゃなくてもいいわ……。常に誰かが争い続ける、永遠に途切れない戦争が必要よね……」

 

彼女はそう言うとニヤリと笑い、自身の計画について考え始める

 

世界各地で戦争を引き起こし、必要ならば武力介入してそれらを全て自分が管理する……、それが彼女が考えている計画である

 

兵や物資が減れば戦争の規模を小さくし兵となる子供と物資を増やせる環境を整え、十分な数を確保出来れば規模を戻して再度争わせる

 

戦力差があり過ぎる場合は、自分達が劣勢の方に協力し相手の戦力を削りに削って戦力差を無くし拮抗させる

 

新兵器の開発で戦況が大きく変わりそうになった時は、すぐに技術提供や対抗策を施して新兵器の有利性を迅速に潰す

 

こう言った事を延々と繰り返し、戦争を繰り返し続ける世界を作る。これが今の彼女の計画なのである

 

「以前は軍事関係者全員の面倒を見てたせいで足を引っ張られたけど……、今回はその心配もない……、本当に私と貴方の為だけの戦場を作るの……。だから待ってて貴方……、私が今度こそ本当の楽園を作ってあげるから……、完成したらすぐに迎えに行くから……、もうしばらく我慢しててね……?ふふふ……、うふふふふ……」

 

つい堪えられなくなった彼女は、不気味な笑い声を室内に響かせながら、自分にとっての理想郷を夢想するのであった……

 

 

 

 

 

「……いつまで経っても帰って来んと思ったら……、こんなとこで妄想にふけっておったか……。全くあの馬鹿女は……、何が楽園だ……、戦争はビジネスの場であってお前のおままごとの舞台じゃないと儂はいつも言っておっただろうが……」

 

部屋の入口にて、不気味な笑みを浮かべるアリーの姿を眺めながら、白衣を纏った泊地棲姫がつい愚痴を零すのであった

 

「なんだ、プロフェッサーのジジイか」

 

「可奈子か……、ってまたお前は部下を〆ておったのか……」

 

そんな事をしていると不意に誰かから話しかけられ、プロフェッサーと呼ばれた泊地棲姫はすぐに後ろを振り向き、返り血に濡れた可奈子の姿を見るなり不快そうな表情を浮かべて可奈子にこの様に尋ねる

 

「んなこたぁどうでもいいんだよ、それより早くあいつ連れて帰れ。あいつああなったらホント気持ち悪くて仕方ねぇからな」

 

「言われんでもそうするつもりじゃ、っとそう言えば可奈子、儂の薬の件はどうするつもりじゃ?」

 

可奈子にアリーを連れて帰る様に言われたプロフェッサーが、室内に入ってアリーの首根っこを掴んで引っ張りながら部屋から出たところで、ふと思い出した様に可奈子に尋ねる

 

「お前の?笑わせんな、お前が殺した弟子から奪ったガキが作ったヤクだろ?」

 

「あいつに薬学の知識を教えたのは儂じゃ、だからあいつが作ったものは儂が作ったのと同じ、っと、それはそうとどうするんじゃ?使うなら安く売るぞ?」

 

「いらねぇ、つかとっとと帰れ」

 

可奈子とプロフェッサーはこの様なやり取りを交わした後、可奈子はプロフェッサー達に向かってその巨大な手でしっしっと追い払う様なジェスチャーをし、プロフェッサーはやれやれといった様子で頭を振ってから、アリーを引き摺りながら『カルメン』の拠点を後にするのであった

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