カルメンの拠点を出たところで我に返ったアリーが、思い出した様に慌てて拠点に戻ってウィルの腕のメンテを始めた頃、ちゃんぽん要塞の方では……
「このスーパークールでベリーホットでウルトラスタイリッシュでアルティメットハンサムな俺様が、空いた時間を使ってこんな超ウルトラグレートハイパースーパーハイセンスな逸品を仕上げちゃったりしちゃいましたよ~!」
「司、英語教えてもらったからって、無理に使う必要ないとおっちゃん思うの……」
話し合いがある程度終わったところで、急に司が立ち上がって持参して来た赤い布を皆に見える様に広げる。その際戦治郎が司にツッコみを入れるのだが、司はそのツッコミを無視してこの赤い布について話し始める
「前に穏健派深海棲艦は識別票としてお花の腕章とか鉢巻とか付ける様にってなっちゃったりしちゃったりしたじゃないですか~、それを真似て俺様達が長門屋海賊団だって一目で分かる様にと、長門屋海賊団の
「俺達が必死になってヌ級と戦っている間、お前はそんな事をしていたのか……」
未だに翔鶴の事を慰める様に頭を撫でる空が不愉快そうに司を睨みつけ、司はまぁまぁと空を宥めて話を続ける
「普通の海賊旗って黒地に白い髑髏と骨じゃないですか~、でもそれじゃそこら辺の連中と変わらないじゃないですか~、個性ってものがないじゃないですか~。って訳で!俺様達の海賊旗は赤地に黒の髑髏にしちゃったりしてみました~!」
そう言って司は海賊旗がより見易い様にと椅子の上に立ち、旗を掴む両手を更に上に伸ばす
司が作った海賊旗は司が言う通り普通のものとは違い、向かって右側に長い角が生えた髑髏が砲弾を口に銜え、交差した骨の代わりとして交差した日本刀とコンビネーションレンチが黒で描かれており、日本刀の刀身には『大和魂』の文字が白抜きで書かれていた
「コンビネーションレンチは長門屋が技術屋である事を示していて、角が生えた髑髏に口に銜えた砲弾と日本刀、それに『大和魂』の文字は我らがボスの事を示しちゃったりしてる訳ですよ~。戦艦って砲弾のイメージありますからね~」
海賊旗に描かれている絵の意味を得意げに説明する司、それに対して海賊旗のモデルとなった戦治郎は
「いくら何でも俺の事前面に出し過ぎじゃね?何か小っ恥ずかしいんですけどぉ~……?」
少々恥ずかしそうに頬を染めながら、この様な事を言う
「シャチョーの今のネームバリューは結構なもんになってると思うッスからね~、これはもう仕方ないんじゃないッスかね~?」
「そそそそ、ボスはもうスッカリ有名人ですからね~、下手したら名前出すだけで逃げる深海棲艦も出ちゃったりしちゃったりするんじゃないです?じゃけぇボスは腹括って諦めましょうね~」
それに対して護がこの様な事を言い、それを司が肯定、2人の言葉を聞いた戦治郎は不満そうに唇を尖らせて頬を膨らませるのであった
その後、全員に海賊旗のデザインはこれで良いかと尋ねると、モデルとなった戦治郎以外は特に不満は無いという事で意見が一致し、長門屋海賊団の海賊旗はこの血の様に赤い海賊旗に決定するのであった
と、その直後である
「皆さ~ん、祝勝会の準備が整いましたので、よろしかったら食堂の方へどうぞ~」
大会議室に食堂で行われる祝勝会の準備をしていた穏健派深海棲艦の声が響き渡る、それを合図に戦治郎は話し合いを〆、大会議室にいた面々は食堂の方へと移動を開始するのであった
因みに、今回の祝勝会の準備に翔は参加していない、普段食堂で翔達の手伝いをしている穏健派の者達が、今日ばかりは翔にもゆっくりと祝勝会を楽しんでもらいたいからと言って、翔を厨房から追い出したのである
戦治郎達が向かった食堂には既に多くの深海棲艦が入っており、祝勝会が始まるのを今か今かと待ち侘びていた
その中に見知った艦娘の姿がちらほらと見えた、彼女達を祝勝会に呼んだ覚えがなかった戦治郎が不思議に思って彼女達を捕まえここにいる理由を聞いてみると、大本営横須賀の吹雪達と佐世保の五十鈴達は、遠征任務の休憩がてらちゃんぽん要塞に立ち寄ったところ食堂で祝勝会の準備をしているところを目撃し、話し合いの結果祝勝会に参加する事を決定したのだとか……
そしてトラックの那智と隼鷹は、トラック泊地に着任したばかりの提督の面倒を見ている愛宕の代理として、新しい提督が着任した事で何とか泊地が落ち着きを取り戻した事を伝えると共に、改めてトラック泊地を守ってくれた事に対して礼を言いにガダルカナル島に訪れた際、祝勝会の話を聞いたんだそうな……
こうして戦治郎が見知った艦娘達から事情を聞き終えたところで、近寄って来た穏健派深海棲艦の娘が戦治郎にグラスを渡し、酒を注ぎ始めるのであった
酌をしてくれた娘に戦治郎が礼を述べたところで、スピーカーからリチャードの声が鳴り響く。戦治郎が音源の方へと向き直ると、いつの間にかリチャードが食堂内に設置されたステージの上に立っていた。その様子を見る限り、どうやらリチャードが乾杯の音頭を取る事になったようだ
『あ~あ~、マイクテスト、……ここから見てる限りだと、皆早くパーティーを始めたいようだね……、じゃあ乾杯の音頭も手短に済ませようか』
ステージの上でマイクを握ったリチャードがそう言うと、辺りからわぁっ!と歓声が上がる。それを笑顔で確認したリチャードは……
『それじゃあ……、絶対平和党の追放と、食人鬼ヌ級の討伐を祝して……、乾杯っ!!!』
\カンパーイッ!!!/
リチャードが乾杯の音頭を取ると、皆大きな声で復唱してグラスを呷り、すぐさま料理にてを伸ばしていくのであった
「やあ剛、祝勝会は楽しんでいるかい?」
「あらリチャード、おかげさまでね。アタシ達の南方海域での活動を支えてくれて助かったわ、本当にありがとう♪」
祝勝会が始まってそこそこ時間が経過したところで、リチャードはある物を手に剛の事を探し、ようやく見つけた剛とこの様なやり取りを交わすのであった
「こっちも今まで悩まされてたゼッペーの件と、新しく問題になりそうだったヌ級の件を片付けてくれたおかげで、色々と助かったよ」
お互いがお互いに感謝の言葉を述べると、2人は揃って笑顔を零す。と、その時、剛はリチャードが何かを持っている事に気付いてそちらに視線を注ぐ
「ああ、これかい?これは君へのプレゼントさ」
「あら、いいの?ちょっと中の物を拝見させてもらっても?」
それに気付いたリチャードはそう言って剛にその手の物を渡し、剛の問いに笑顔で頷く
「それじゃあ失礼して……、……これはまた……、本当にいいの?」
「構わないよ、きっとよく馴染むと思うよ?」
戸惑う剛に対して、リチャードはニコニコしながらこの様に答えるのであった
先程リチャードが剛に渡した物、それは黄金色の輝きを放つトランペットだったのである
「そう?そう言われるとちょっと試したくなるわね……」
剛はそう言うと、早くこのトランペットを試してみたいのか、ソワソワしながら辺りをキョロキョロと見回し、トランペットを演奏するのに丁度良さそうな場所を探し始める。そんな剛を見たリチャードは……
「だったらさ、久しぶりに……」
そう言って自身が背負っている物を剛に見せながら、ステージの方へ親指を向け……
「
たった一言、そう言い放ったのである
「ウホッ♪」
リチャードのその言葉を聞いた戦治郎が、思わずこの様な言葉を口にする
「……いつの間にそこにいたんだい?」
「いや~、アルトサックスのケース背負ったリチャードさんが、トランペットのケース片手に剛さんの事探しているのを知ってですね~……、何か面白そうな事やりそうだな~っと思いまして~……、つい後付けちゃいました♪」
「あら、戦ちゃんは知ってたの?アタシの趣味がトランペットの演奏だって事」
「貴方、履歴書の趣味の欄に達筆な字で書いてたじゃありませんか~……」
「それで戦治郎、君は何がしたいんだい?」
「お邪魔じゃなかったら、俺も混ぜてもらえません?これでもピアノの演奏出来るんで」
「ピアノか……、確かグランドピアノが何処かに運び込まれてたはずだね……」
「OK、翔に聞いて持ってきますわ」
「アルトサックスにトランペット……それにピアノだったらジャズがいいかしら?」
「だったら、俊彦にも声を掛けようか。彼はコントラバスの演奏が出来たはずだからね」
リチャード、剛、戦治郎の3人は、この様なやり取りを交わした後、リチャードは俊彦に声を掛け、戦治郎はちゃんぽん要塞の管理人だった翔にグランドピアノの在り処を尋ねると同時に、ドラマーとしての参加をお願いし、剛はステージの使用許可を取りに行くのであった
こうして5人の男達がステージに集まり、この面子で演奏可能なジャズ楽曲をそれはそれは数多く演奏し、聞く者を次々と魅了していくのであった
尚、演奏前の事だが、戦治郎がグランドピアノを肩に担いでステージの上に運ぶ姿を見た者の殆どが、口の中に含んでいたものを思わず吹き出しむせ返ってしまったそうだ