※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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ヘモジー

空が中間棲姫から聞いた話をまとめている頃、戦治郎はと言うと……

 

「えぇいちょこまかとっ!!!貴様それでも武人かっ!?!」

 

「武術の心得はあるが、俺は基本技術者だよこんちくしょうっ!!!つかいちいち叫ぶなっ!煩くて仕方ねぇんだよばっきゃろうっ!!!」

 

戦艦水鬼っぽいの改め戦艦水鬼改が振るう鉄パイプを、ひょいひょいと躱しながら反撃の機会を窺っていた

 

戦治郎は戦闘が始まってからは、兎に角回避に徹して相手の様子を観察して、頭の中でこの戦艦水鬼改の攻略方法を考えていたのである

 

まず最初に分かった事は、こいつの戦闘スタイルが我流の薙刀術である事だった。戦治郎は生前薙刀部のエースであった義姉の練習に付き合わされていた為、薙刀術の使い手の動きを熟知していたのである。故にこいつの動きから、それが我流のものであると判断したのだ

 

尤も、こいつが振るう鉄パイプの変形具合や、血の付き方からこいつは薙刀使いだろうと予測はしていたりするのだが……

 

次にこいつに関して分かった事と言えば……

 

「つかっ!俺の仲間が病気か何かになってて大変だって言ってんのにっ!それを知らん分からんどうでもいいとかっ!ふざけてんのかてめぇっ!!!他人の命を何だと思ってやがるっ!??」

 

「仲間っ!?仲間だとっ!!?ふざけているのはそちらではないかっ!!!」

 

戦治郎が戦艦水鬼改の攻撃を回避しながらそう叫ぶと、戦艦水鬼改は鬼の形相になるや否や、怒声と共に鉄パイプを戦治郎目掛けて振り下ろす。戦治郎はそれを大きく後方に飛び退いて躱して、戦艦水鬼改との間合いをとる

 

「友人!?恋人?!家族?!!それらは全て斬り捨てるべきものであろうっ!!?」

 

自身と間合いをとった戦治郎に向かって、戦艦水鬼改は怒りを露わにしながらとんでもない事を口にする

 

「そんなものが生きる上で何になるっ!?斬り捨てるべきものに情けをかける事が生きる事にどう繋がるっ?!答えろっ!!!」

 

「……は?あ~……、あぁ?」

 

戦艦水鬼改の言葉の意味が全く理解出来ず、戦治郎は思わず間の抜けた声を出す

 

「どうしたっ!答えられぬのかっ?!答えられぬにも関わらずっ!貴様は愛だ絆だとほざくのかっ!!?馬鹿にするのも大概にしろっ!!!」

 

完全に激昂した戦艦水鬼改が驚くべき速度で突進を仕掛け、あっという間に戦治郎との間合いを詰めるとすぐさま鉄パイプで戦治郎に斬りかかる。我に返った戦治郎は、急いで回避しようと一瞬だけ思ったのだが、戦艦水鬼改の鉄パイプが迫る速度が尋常ではなく、とても今から回避行動に移っても間に合わない事を悟ると、その手に握った大妖丸で戦艦水鬼改の薙刀を受けるのであった

 

「ようやくその刀を使ったかっ!さあっ!武人の魂である己の武器の力を、その刀の力を俺に示してみせろっ!!!」

 

そう言って鉄パイプを力任せに押し込んで来る戦艦水鬼改、戦治郎は何とかこの状態から抜け出そうと抵抗するのだが、最初に受けた一撃が余りにも重すぎた為腕が若干痺れてしまい、思う様に腕を動かす事が出来なくなってしまっていた

 

「武人の魂とか言っておきながら、自分の武器はどっかから適当に拾って来た様な鉄パイプか……、てめぇの魂ってのはその程度って事か?」

 

「抜かせっ!!人生というものを全く理解しておらんクセに愛だの絆だのほざく輩がっ!!!身の程を弁えろっ!!!」

 

戦艦水鬼改の言葉を聞いた戦治郎が皮肉ると、戦艦水鬼改はそう言って鉄パイプに更に力を加えて来る。戦治郎は戦艦水鬼改のその力に押し潰されそうになるものの、気合と根性で何とかそれに耐え切ってみせる

 

「だったらおめぇの言う人生って奴を、この恥知らずに教えてもらえませんかねぇ?」

 

「人に聞かねば分からぬとは……、誠情けないものだ……。まあいい……、本来なら自身で感じ取るものだが、特別に教えてやろう……っ!」

 

2人は鍔迫り合いの最中にこの様な会話を交わし、戦艦水鬼改は1度大きく息を吸い、海面を揺るがすほどの大声で己の人生について語る

 

「人生とは戦い也っ!!!人は戦う為に生まれっ!戦いの中で育ちっ!!戦いに殉ずるべき存在なのだっ!!!己が持つ力を全力で振るいっ!!!その目に映る森羅万象全てと戦うっ!!!それこそが人生と言うものなのだっ!!!分かったかっ!!!」

 

「まっっったく理解出来ない上に理解しようとも思えねぇわっ!!!」

 

戦治郎は戦艦水鬼改の人生観を聞くなり、思わずそう叫びながら戦艦水鬼改の腹を勢いよく蹴りつけて、再び間合いをとるのであった

 

そう、この戦艦水鬼改は明らかに狂っている、産まれるべき世界を間違えているのである。恐らくあのエデンもこいつとは関わり合いになろうとはしないだろう……、何故ならエデンの目的は戦争を永遠に続ける事であり、この戦艦水鬼改の様にただの殺し合いをしたい訳ではないからである

 

「ここは人間道であって修羅道じゃねぇんだぞっ!!!トチ狂った事言ってんじゃねぇぞこの糞馬鹿がぁっ!!!」

 

「貴様の意見など知った事では無いっ!!!仮にこの世界が貴様が言う様に人間道だったとしたら、この俺がこの世界を修羅道に塗り替えてしまえばいいだけの事っ!!!」

 

「ふざけんなあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

戦闘狂を超越した何かの発言を聞いた戦治郎の堪忍袋が遂に限界を迎え、戦治郎は大妖丸を脇に構えると戦艦水鬼に突撃を仕掛けるのであった

 

「待っていたぞ貴様の攻撃をっ!!!さぁさぁっ!!!貴様のその渾身の一撃、この俺に喰らわせてみるがいいっ!!!」

 

戦艦水鬼改はそう言うと、戦治郎を迎え撃つべく鉄パイプを構え、戦治郎をしっかりと見据えて精神を集中させる……

 

「てめぇのクソ物騒な理屈を他人に押し付けんじゃねえええぇぇぇーーーっ!!!」

 

戦治郎はそう叫ぶと、大妖丸の切っ先を海面に擦りながら加速し、戦艦水鬼改が自分の間合いに入ったところで大妖丸を全力で振り上げようとする。それに対して戦艦水鬼改は、狙い澄ませた様に戦治郎目掛けて凄まじい速度の突きを繰り出すのだが、戦治郎は何とそれをジャンプして躱すのだった

 

と、次の瞬間、海面を擦っていた大妖丸の切っ先が勢いよく跳ね上がり、大妖丸は戦艦水鬼改が繰り出した鉄パイプを縦に真っ二つにするだけでは留まらず、戦艦水鬼改のその顔と胸に縦一文字の深い傷を負わせるのであった

 

 

 

「……見事だ」

 

「そりゃどうも……」

 

顔と胸から大量の血を流しながら、海面に大の字になって寝そべる戦艦水鬼改が戦治郎に向かってそう言うと、戦治郎は戦艦水鬼改を忌々し気に睨みながらそう返す。この時戦治郎は仕留め損ねた事に内心で舌打ちしていたが、この出血量から放っておけば勝手に死ぬだろうと考えて、トドメを刺さずに放置したのである

 

「貴様……、名を何と言う……?」

 

戦っている時とは打って変わって、消え入りそうな声で戦治郎の名前を尋ねて来る戦艦水鬼改

 

「戦治郎、長門 戦治郎だ。まあ冥途の土産だ、覚えておきな」

 

「そうか……、長門 戦治郎……、覚えたぞ……」

 

戦治郎が名乗ると、戦艦水鬼改はそう呟いて瞼を閉じ、沈黙してしまうのであった……

 

戦治郎はそれを見届けると、空達が向かった拠点に向かって移動を開始するのだが……

 

「あっ!そういやあいつの名前聞いてなかったっ!!!」

 

ふと戦艦水鬼改の名前を聞きそびれた事を思い出す

 

その後戦治郎は、戦艦水鬼改の呼称をどうしようかと1人で悩み、取り敢えず『弁慶みたいな戦艦水鬼』、略して『ベンキ』と名付けようとしたのだが、『ベンキ』は既にシゲがウィルの事を呼ぶ時に使っていた事を思い出し、被るのはよくないと考え再び呼称を考える

 

その結果、戦治郎は件の戦艦水鬼改の事を、『へのへのもへじ』からとって『ヘモジー』と呼ぶ事にし、改めて空達が向かった拠点に足を運ぶのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦治郎とヘモジーの戦いが終わってしばらく経った頃、その場に残されたヘモジーの亡骸の傍に1つの影が立っていた……

 

「デュフフ……、これはまた力強そうな死体ですな~……、これならきっと某の最強の兵になりますぞ~……、デュフフフフフ……」

 

影は不気味な笑い声を辺りに響かせながら、ヘモジーの亡骸を持ち去ってしまうのであった……




ヘモジーの元ネタは、本当はアークザラッドのモンスターからなんですけどね……
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