「き~たぞ~きたぞせ~んじろう~ってかぁ?皆の者、掃除ご苦労~!」
拠点の掃除を終え、拠点内に転がっていた強硬派深海棲艦の亡骸をまとめて海に流そうとしていた空達の前に、戦治郎が替え歌を口ずさみつつ労いの言葉を空達にかけながら姿を現す
「思ったより時間かかったみたいだが、やっぱそれだけの相手だったのか?」
「ああ~、我流だったから動きは荒かったが、一撃必殺を地で行くって感じだったな。もし一発でも貰ってたら俺でも即轟沈だろうな、ありゃ……」
戦治郎の姿を見た木曾が、思った事をそのまま戦治郎に尋ねると、戦治郎はヘモジーとの戦いを振り返ると苦い顔をしながら答えるのであった
「動きが荒い、ねぇ……、そう言う奴が相手だったら、動きがしっかりしている戦治郎さんの方が有利なんじゃない?」
戦治郎の言葉を聞いた陽炎が、何となしにそう言うと……
「「「そんな事はないぞ、陽炎」」」「「「そんな事はありませんよ、陽炎さん」」」「そんな事はないわよ、陽炎ちゃん」
戦治郎、空、シゲ、通、神通、扶桑、剛の7人が一斉に、異口同音で陽炎の言葉を否定する。そう、今声を上げたのは全員多少なれど武術の心得がある者達なのである
「相手が先輩の大妖丸と同じリーチの武器を使っていたならば、陽炎さんの言う通り動きが精練されている先輩の方に分があるのですが……」
「戦治郎さんが戦った戦艦水鬼改は「戦艦水鬼改 is 誰?」「俺が説明してやる」……コホン、戦艦水鬼改は一目見ただけで、戦治郎さんの大妖丸より長大だと分かる程の長さの鉄パイプを手にしていました。恐らくあの鉄パイプこそが、あの戦艦水鬼改の武器なのだと思われます」
まずは通が使用する武器の長さが同じだった場合の話をし、続けて神通が戦艦水鬼改の武器があの長大な鉄パイプだと予想して話を進める。その最中、戦治郎が戦艦水鬼改と言う単語に反応した為、空がその事を戦治郎に説明する為に1度この場から離れて戦艦水鬼改とは何かについて戦治郎に説明を開始するのであった
「んであの鉄パイプ、目測だが多分ありゃ全長が400cm近くあるはずだわ」
「対して戦治郎さんの大妖丸は全長210cm、柄の長さが80cmだと聞いています。これだけ長さに差があれば、それぞれの武器の有効打突範囲もかなり違ってくるんです」
続いてシゲが戦艦水鬼改の鉄パイプの長さの話をしてから、扶桑が間合いについて話をする
「間合いの差は技量の差を簡単に埋めちゃうのよね~、ほら聞いた事ない?剣道三倍段とか剣術三倍段って言葉。こんな言葉があるくらいだから、間合いの違いってかなり戦いに影響を及ぼすのよ~?」
「まあそんな訳で、攻撃のチャンスが中々巡って来なかったから、ちょっち時間かかっちまったってところだな」
扶桑に続いて剛が発言した後、戦艦水鬼改の説明を受けた戦治郎が、戻って来るなりこう言ってこの話を締めくくるのであった
その後、空達が中間棲姫から聞き出した情報を戦治郎に伝えると、戦治郎は大慌てで通信機を操作してこの事を長門に伝えようとするのだが……
「……駄目だっ!ノイズばっかで繋がる気配がしねぇっ!!!」
「俺達もお前が戻って来る前に試したのだが……、恐らく空と海に起こっているこの現象の影響だと俺は思っている」
戦治郎は通信機から吐き出されるノイズに苛立ちながら叫び、空はそう言って忌々し気に海を睨みつける
「何とかしてこの事を長門達に伝えねぇとだな……、もしかしたら飛行場姫の奴が罠張ってるかもしれねぇからな……。あ~……、長門達が作戦開始前に北マリアナに来てくれたらいいんだが……」
「戦治郎……、その事だが……」
「ぬん?」
「いいか、心して聞いてくれ……、ここは北マリアナ諸島じゃない、ここはウェーク島なんだ……」
「……またまた御冗談を~」
2人がこの様な会話を交わしたところで、空が懐からファイルを取り出し戦治郎に手渡す。そのファイルの表紙には『ウェーク島航空基地管理用』と言う文字がデカデカと印刷されたシールが貼られており、中身を確認してみれば拠点周辺の地図に赤い印を付け、その傍に艦娘襲撃ポイントの文字やら修繕に使った資源資材のメモ書きが添えられていた
「中間棲姫が使っていたと言う執務室から回収して来たものだ、他にもあるが……、どうする?」
「いやいいわ……、取り敢えずここがウェーク島だって事はよ~く分かった……、おかげで長門達にこの情報提供出来る可能性が高くなったが……、な~んか約束破ったようでな~……」
空が更にここがウェーク島である証拠を出そうとするのだが、戦治郎はそれを手で制した後この様な事を言って頭を抱え始める
「そこは気にしても仕方ないんじゃないか?こっちは翔が眠ったまま起きなくなったから緊急でここいる訳だし、それにこの海と空の事も気になるし……。って言うかこの現象何処まで広がってるんだ?」
そんな戦治郎に向かって、光太郎がこの様な事を言うと
「そういやGPSも羅針盤も通信機も使い物にならなくなってたっけな……、そんな中で戦闘ってなると……、長門達ヤバくね……?」
「ちょっとばっかしこの現象について調べた方がよさそうだなぁ……、翔の方も相変わらずみてぇだしよぉ、翔が起きるまでの間この現象を調べるってのはどうだぁ?長門達への言い訳にもなるだろうしよぉ」
戦治郎がふと思い出した様に呟き、それを聞いた悟がこの現象の調査を提案する。悟の発言の後、海賊団の面々の顔を確認を取る様に見回すと、一同が一斉に頷き返す。こうして長門屋海賊団は翔が目覚めるまでの間、この怪奇現象の調査を実施する事にしたのであった
「よっし、それじゃあ……」
戦治郎が何かを話そうとしたその時である、戦治郎の腹の虫が辺りに鳴り響く。それを聞いた面々はクスクスと笑いだすのだが……
「……ん?腹の虫……、食事……、あぁっ!!!」
何かに気付いたのか、急に戦治郎が大声を上げてその顔を真っ青にしていく……。その様子を不思議そうに見守っていた皆に向かって、戦治郎は声を震わせながらある事を尋ねる……
「おめぇら、この拠点の食糧がどのくらいあるか分かるか……?」
戦治郎の言葉を聞いて、一部は未だに頭の上に疑問符を浮かべていたが、一部はハッとするなり戦治郎同様見る見るうちに顔色を悪くしていく……
「私達だけで消費する場合、大体1週間くらいの量になると思います……」
「なぁ、食べ物がどうかしたのか?」
顔色を悪くした龍鳳が戦治郎の問いに答え、その会話を聞いていた摩耶が訝しみながら尋ねる
「摩耶……、俺達の食糧の管理してるのは誰だ……?」
「は?誰ってそりゃ翔さん……、あぁっ!!!」
戦治郎と摩耶のこのやり取りを聞いた事で、事の重大性に全員が気付く……
そう、海賊団の食糧は全て翔が管理しているのである、現在眠ったままになってしまっている翔が、である……
「翔が寝たままだと食糧を保管している艤装も展開してもらえねぇ!俺達の手持ちの食糧が取り出せねぇっ!!!」
「そうなると……、不知火達はここにいる間はその1週間分の食糧だけで生きて行かなくてはいけない、っと言う事でしょうか……?」
叫びながら頭を抱える戦治郎に向かって、不知火がおずおずとそう尋ねる
「いや、一応釣りや拠点周辺で食べられそうなものを採取したり、野生動物を狩猟したりする事で、多少はマシになると思うのだが……」
「まさかマジでサバイバル技能が役に立つ時が来るとはなぁ……」
不知火の問いに空が答え、続くようにして戦治郎がそう言うと溜息を吐く
こうして、戦治郎達は拠点にいながらサバイバル生活を余儀なくされるのであった