「緊急会議ぃーーーっ!!!」
シゲが伊吹から譲ってもらった閃光迎撃神話の設計図を基に、戦治郎が拠点防衛用に閃光迎撃神話を大量に量産していたところで、戻って来た光太郎達の報告を聞いた戦治郎が全員に緊急招集をかけ、海賊団は会議室に集合するのであった
「まずは皆正面スクリーンに注目っ!」
戦治郎がそう言って会議室の照明を落とすと、スクリーンには時雨が撮影した例の儀式跡の写真がプロジェクターを通して映し出されていた
その映像を見た数人が短い悲鳴を上げたりしていたが、戦治郎はそれらを無視して話を進めるのであった
「これは今日、周辺の調査を担当していた光太郎達が見つけたものを時雨が撮影したものだ。詳細は時雨、頼めるか?」
戦治郎が時雨にそう尋ねると、時雨は1度頷いてその時の状況などを皆に細かく説明する
首だけになってしまった転生個体の表情が異様であった事、魔法陣をいくら消そうとしても消えなかった事、それらを事細かく時雨が話すと、主に拠点に残っていた者達が怪訝な顔をするのであった
そして時雨が話し終えた直後に、今度は空がウェーク島の森の中で同じ様なものを発見したと報告するのだが……
「俺達のところの生贄の数は転生個体が3人、艦娘が2人だったがな……」
空は細かい違いだけを述べて、すぐに着席するのであった。恐らく空達もそれを発見してから周辺を調べてみたが、結局光太郎達と同じくらいの情報しか出なかったのであろう
その後、皆でこれは何なのか、誰が何の目的で行ったのかについて話し合ったのだが、あまりにも情報が少な過ぎた為、話し合いは難航するのだった。そんな中、空がふと戦治郎の方を見ると、戦治郎は1人眉間に皺を寄せて何か考えていた
「どうしたんだ戦治郎?」
「いやな、この写真見た時ふとリチャードさんの顔が浮かんでな、それで何か教えてもらった様な、そうでない様な~ってなっててな……」
何気無しに空が尋ねると、戦治郎は難しい顔をしたままこの様に返すのであった。と、その時
「謎の儀式ねぇ……、まるでカルト宗教ね……」
「カルト……、宗教……、それだあああぁぁぁーーーっ!!!」
陽炎がさり気無くそう言うと、戦治郎は何かを思い出したのか目を見開き陽炎の方を指差しながらそう叫ぶ。突然大声を上げた戦治郎に驚きながらも皆が戦治郎を注目する、戦治郎は皆に注目されている事などお構いなしと言った様子で、思い出した事を言葉にし始めるのであった
「そうだそうだ!リチャードさんが言ってた転生個体の組織の中に、『信奉派』って言われてる連中がいたんだったっ!!!」
戦治郎はしばらく1人で思い出せた事を喜んだ後、皆に注目されている事に気付くなり咳払いをして『信奉派』とやらについて話し始める
転生個体個体組織の1つに『
「何でそんな事しようと思ったのかについては、リチャードさんも全く分からんそうだ。ただアビス・コンダクターの連中が人類を本気で滅ぼそうとしてるのは間違いないんだとさ」
戦治郎の言葉を聞いた全員が、唖然としたまま固まってしまっている。だが戦治郎はそんな事気にも留めずに話を続ける
アビス・コンダクターは先程述べた通り、深海棲艦を神の使いとして崇めている組織である。故にアビス・コンダクターの連中は深海棲艦と艦娘の戦いに乱入して艦娘を攻撃したり、深海棲艦に供物として物資や資金を無償で提供したり、人類側の重要拠点を襲撃したりして深海棲艦を支援していると戦治郎は言うのであった
「戦治郎……、まさかとは思うのだが……」
「うん、空の予想通りなんじゃね?多分今回の件にそいつらが関わっていると思うわ」
空が引きつった表情で戦治郎に尋ねようとすると、戦治郎は先回りして空が戦治郎に問い掛けようとしていた質問に答えるのであった
「待って、そうなるとそのアビス・コンダクターって組織は強硬派深海棲艦と手を組んでるって事なの?」
「恐らくそうでしょうね、ただリコリスの命令とかではなく、飛行場姫の独断で手を組んでるんじゃないかと思います」
剛の質問に対して、戦治郎は自分の予想を織り交ぜてこの様に答える
「アビス・コンダクター……、深淵の案内人、若しくは地獄の指揮者ッスか……、どっちにしろ物騒な名前ッスね~……」
「地球人類の皆様を奈落の底へご案内致しま~す、そして私の指揮で滅びの歌を共に歌いましょ~うってか?冗談でも笑えねぇな……」
組織名を直訳した護が苦い表情を浮かべ、それを聞いたシゲが最初こそ冗談めかして言うものの、最後の一言だけは顔を顰めながら呟くのであった
「もしかしたら、飛行場姫がアビス・コンダクターの連中をこっちに差し向けて来る可能性もありそうだな……」
「十分有り得るな……、戦治郎、さっきお前が作った奴話し合い終わった後で早速設置して回るぞっ!!!」
摩耶が何となく言った言葉に輝が反応し、大声で戦治郎に話しかける
「んだな、相手がどんな攻撃手段持ってるか分かんねぇけど、設置しないよりはマシだわな」
「戦治郎、少々試したい事があるからこの後護……と夕立を連れて出てもいいか?」
「ん、許可。結果は後で報告してくれ」
戦治郎が輝の発言に答えた直後、今度は空が外出許可が欲しいと言って来たので、それもついでに了承する。因みに空が言葉を詰まらせていたのは、空が外出しようとしている気配を感じ取った夕立が、熱い視線を空に向けていたからである
その後、戦治郎は今後も情報と食糧集めを頑張ろうと皆に言って話し合いを終わらせ、海賊団のメンバーは食事の後、就寝時間まで思い思いに行動を起こすのであった
因みに、この日の夕食では空達が狩って来た野豚が振舞われた。恐らくこの野豚は深海棲艦に支配されるまでこの島に住んでいた者達が飼育していた豚が、深海棲艦の襲撃のどさくさに紛れて脱走して野生化したものだと思われる
それからしばらく時間が経ち、就寝時間が迫って来た頃に外出していた空達が帰還した
それを知った戦治郎はすぐに空の下に向かい、空が何を試したのか、その結果はどうなったのかについて尋ねる。すると空は驚くべき事を口にするのであった
「今しがた、この奇妙な海域から出れるかどうかを試しに行ってみたんだが……、戦治郎……、どうやら俺達はこの海域に閉じ込められてしまったようだ……」
「……マジ?」
空の言葉を聞いた戦治郎が尋ねると、空は1度だけ頷いて返すのであった
空は食事の後、護と夕立を連れて西の方へと真っ直ぐ進み、ある地点から護達に観測者になるよう頼んでから、ライトニングⅡを展開してそのまま真っ直ぐ西に向かったそうだ
それからしばらくすると、護達から見て12時の方角に飛んで行ったはずの空が、3時の方角から飛んで来たと言うではないか。それを聞いた空はもう1度12時の方角に飛んで行ったのだが、今度は9時の方角から戻って来たそうだ……
「俺はひたすら真っ直ぐに飛んでいたはずなんだがな……」
「3回目の時は6時方向から戻って来たッスよ?もう頭がおかしくなりそうだったッス……」
「夕立もすっごくびっくりしたっぽい!何度目か忘れたけど、空さんが飛んで行ったと思ったら急に消えて、それから少ししたらすぐそこから現れた事もあったっぽい!」
「何それ怖い……」
空が、護が、寝息を立てる傷だらけの猫艦載機を抱っこした夕立が話す言葉を聞いた戦治郎は、ただただ戦慄する事しか出来なかった……
「……待った、その猫艦載機はなんぞ?」
「こいつか、こいつはアグ、帰りに偶々こいつを見つけてな。交渉の末俺の新しい艦載機になってもらった」
「はいぃ?」
ふと思い出した様に戦治郎が夕立が抱っこする猫艦載機について尋ねると、空は胸を張って自慢げにそう返し、戦治郎はつい間抜けな声を上げてしまうのであった