「まさかこの海域に閉じ込められてしまうとはな……」
「通信も駄目、脱出も不可能……、こりゃこの現象を引き起こした奴を何とかするしかないみたいッスね~……」
「夕立、この海域にはあまり長くいたくないっぽい~……、空も海も変な色してて気持ち悪くて頭がおかしくなりそうっぽい~……」
食事の後拠点を出て、この海域から出る事が出来るかを試しに行った空達3人が、この様な会話を交わしながら重い足取りで拠点へと帰還していた
実験の結果、自分達はこの海域に閉じ込められてしまった事が判明し、それを報告した際戦治郎達がどの様なリアクションをするかは想像に難くない。故に空達はこの結果を戦治郎達に報告しなければいけないと思うと、気が重くて仕方が無くなっているのである
「しかしこの現象……、一体どうやって引き起こしているのだろうか……?」
「あの魔法陣が関係してるのか、はたまた誰かの能力なのか……、まあどっちにしろやった奴をボコにするのは変わらないッスね。こんな気色悪い空間に自分達を閉じ込めた訳ッスからね、その落とし前はキッチリつけさせてもらわないとッスね」
空が顎に手を当てて考え込む様な仕種をしながらそう呟くと、それを聞いた護がそう言いながらニヤリと笑う
と、その時だった
「ぬ?」「ぽい?」
空と夕立の直感が、自分達の方へと飛んで来る何かを感知する
「2人共どうしたんッスか?」
いつもならこういった類のものに真っ先に反応するはずの護が、不思議そうな顔をして2人に尋ねる。まあこの海域では護自慢のレーダーもポンコツと化しているので仕方ない事である
「護、HMDの望遠機能はまだ生きているんだったな?「ウィッス」ならそれで向こうの方を見てもらえないか?」
「合点承知ッスよ~っと……、どれどれ~……」
護は空に言われた通りにHMDを起動させ、望遠機能で空が指し示す方角を見てみると、そこには身体のあちこちに傷がついた猫艦載機が1機だけ、フラフラと蛇行しながらこちらに向かって飛んで来ていたのであった
「何ッスかあの猫ヤキは……、全身ボロボロで如何にも修羅場くぐって来ましたよ~って感じなんッスけど……」
「猫艦載機だったか……、周囲に持ち主と思われる空母の影はないか?」
「無いッスね……、あれだけ単騎でフラフラしながら……、ってウェッ?!」
護と空がこの様な会話をしていると、護が突然そんな声を上げながら身体をビクリと跳ね上げる
「護さん、どうしたの?何かあったっぽい?」
夕立が不思議そうに尋ねると、護は慌てた様子で空達に今自分が見た事をありのままに話す
「あの艦載機と目が合ったッス!そしたらあの艦載機いきなりこっちに猛スピードで……、ってキターーーッ!!?」
護が思わずそう叫ぶと、2人はすぐに護が見ている方角へ顔を向ける。するとそこには先程護が言っていたものだと思われる、傷だらけの猫艦載機が物凄い速度を出しながら、真っ直ぐこちらに向かって来ていたのであった
「護っ!奴は蛇行してると言っていなかったかっ!?」
「自分と目が合うなり、急にああなったんッスよっ!!」
「あの艦載機……、夕立達と戦うつもりっぽいっ!!!」
3人が傷猫を見据えながらこの様なやり取りを交わしている間に、傷猫は高度を落とし海面スレスレを飛行し……
「……っ!?2人共ここから離れろっ!!奴の魚雷が来るぞっ!!!」
空が切羽詰まった声で2人に指示を飛ばし、それを聞いた2人はすぐさまその場を飛び退く。するとそれまで2人が立っていた場所を魚雷が通過していき、2人は辛くも難を逃れたのであった
「危なかったっぽい~……、空さんナイスっぽい!」
「油断するな、奴はまだ健在……、次は何をしてくるか分からんぞ……」
空の指示で魚雷を回避する事に成功した夕立が、空に向かって感謝の言葉を述べるのだが、空はそれを手で制し問題の傷猫を警戒する様に険しい顔で見据える
「魚雷って事は艦攻ッスか……、こりゃ当たるとヤバそうッスね~」
と、護がそう言った直後の事である、真っ直ぐ自分達の方へと飛んで来ていた傷猫は急に緩やかなカーブを描いて方向転換し……
「あだだだだっ!!」
護に向かってすれ違い様に機銃をお見舞いしたのである
「くっ!お前達っ!!!」
「「「「「ニャァイッ!!!」」」」」
護が攻撃されたところで空が舌打ちしつつワイルド達を発艦し、傷猫を撃墜する様に指示を飛ばすと、猫艦載機達は一斉に傷猫を追いかけ熾烈な航空戦を……
「ふぎゃっ!?」「ぎゃうーっ!」
開始した直後に艦攻のヘルと艦爆のタイガーがあっという間に撃墜されてしまった……
「ヘルッ!?タイガーッ!?!」
空が撃墜された2匹の下へ慌てて駆け寄り抱き上げると、2匹は声を揃えてこう言った
「「あの艦載機、化物かミャー(ニー)ッ!?」」
何でもあの傷猫、ワイルド達の存在を感知した途端、墜落する様に急降下したかと思えば身体を捻って機銃を発射し、ヘルの魚雷とタイガーの爆弾を撃ち抜いて爆破したと言うではないか
2匹の話を聞いた空が驚愕しながら上空を見上げると、そこにはワイルドとベアの機銃攻撃を躱すと同時に、速度を活かして不意打ちを仕掛けたトムの可変翼型ブレードを噛み付いて凌ぐ傷猫の姿があった
「ナ"ッ?!ナーの速度に反応するってどういう事ナーッ!?」
「雑魚相手だったらこれで終わってただろうニ"ャ……」
想定外の出来事にトムが驚き、慌てて傷猫を引き剝がそうと可変翼型ブレードを開いたり閉じたりしながら思わず声をあげると、傷猫が可変翼型ブレードをガジガジと噛みながらそう言って……
「だが俺相手だったらそうはいかねぇニ"ャッ!!!」
続け様にそう叫ぶと同時に、傷猫はトムの可変翼型ブレードをものの見事に噛み砕いてしまうのであった
「ナ"---ッ!!?」
その直後、バランスを崩したトムが悲鳴を上げながら墜落し始め……
「可変翼型ブレード、パージッ!!!」
空の声を聞いたトムが、言われた通りに可変翼型ブレードをパージすると、トムは何とかバランスを取り戻して墜落を待逃れるのであった。だがそれと同時に、トムは多くの武装が取り付けられていた可変翼型ブレードを切り離してしまった事で、丸腰に近い状態でこの傷猫と戦わなくてはいけなくなってしまうのであった……
「トムッ!ここはニャー達に任せるニャッ!!!」
「お前はご主人達のとこに戻って、新しい装備一式もらって来るミーッ!!!」
ワイルドとベアの言葉を聞いたトムは、2匹に向かって無言で頷くとすぐに空の下へと飛んでいく
「てめぇ!よっくもニャーの仲間達をやってくれたニャーッ!!」
「ぜってー許さねぇミーッ!御首頂戴するミーッ!!」
トムが空のところに飛んでいく姿を見届けた後、2匹は傷猫に向かってそう叫び……
「ひよっこがよく吠えるニ"ャ……、いいニ"ャ……、俺に向かって二度とそんな口が訊けなくなる様みっちり躾けてy……、ぐぅっ!?」
傷猫が2匹に向かって叫んでいる最中に、いきなり呻き声を上げて墜落し始めるのであった……
その様子を間近で見ていたワイルドとベアは、唖然としながら墜落する傷猫を見送った後、どちらからともなくお互いのその間抜け面を見合わせるのであった
「……一体何が起きた?」
「ちょっと夕立にも分からないっぽい……」
「あ、あいつまだあそこに浮かんでるッスね、どうせだから本人に聞いてみるッスか?」
突然墜落した傷猫に困惑する空達3人、そんな中護がこの様な提案をした為3人は何が起こったのかを確認する為に傷猫が墜落したところに向かうのであった
傷猫が墜落した地点に辿り着いた3人は、海面にプカプカと浮かぶ傷猫を警戒しながら更に近づいていくのだが、不意に聞こえて来たぐぅ~と言う音に驚いてその足を思わず止めてしまう
3人が音の出処を見つける為に、辺りをキョロキョロと見回してみると、またもぐぅ~という音が辺りに鳴り響く。それからしばらくすると、先程までとは打って変わってか細い声で呟くように傷猫が言葉を口にする
「腹ぁ……、減ったニ"ャァ……」
そう、この音は傷猫の腹の虫だったのである。それに気付いた3人は思わず呆気に取られてしまうのであった……