空達がアグを仲間に加えた日の翌日、戦治郎と輝と大五郎は拠点の至る所に閃光迎撃神話を設置していた
「「ヒーコラヒーコラバヒンバヒンッ!ヒーコラヒーコラバヒンバヒンッ!!」」
戦治郎と輝がこの様な掛け声を発しながら、戦治郎は巨大なケーブルロールをいくつも担いで、輝は1つあたり22tを超える閃光迎撃神話を大量に詰め込んだせいで自力で動けなくなった自身の艤装を担いで、そして大五郎が地面に溝を掘りながら2人の後を追う様にして、2人と1匹はひたすらウェーク島内を駆け回る
昨晩、護から自身のレーダーがこの海域に来てから碌に仕事しなくなったと聞いた戦治郎が
「だったらこの海域でも仕事するレーダーを、今から作ればいいだろうっ!!!」
そう言って空とシゲまで集めて徹夜で作業を行い、遂にこの海域でも仕事をする拠点用、艦載用、艦載機用の3種類のレーダーを完成させたのである。まあ、そのせいで就寝時間直前までこの海域を調べていた空と護が、疲労の為ダウンしてしまったのだが……。因みにシゲは意地と根性で何とか耐えたそうだ
それは兎も角、これにより護とトムのミサイルによる攻撃も復活し、1人と1匹はこの海域で荷物化してしまう事態を無事回避する事に成功したのであった
因みに、ミサイル攻撃が復活したところでトムは単独でアグに再戦を挑み、見事勝利を収めるのであった。この戦いで負けてしまったアグは
「あのすばしっこいの、何かまだカードを持ってると思っていたが……、それがミサイル攻撃だったのは流石に想定外だニ"ャ、いくら逃げてもとんでもない速度で追っかけて来やがるし、撃ち落とせば撃ち落とすほど自身の視界が爆煙のせいで狭くなっていくとか……、インチキ兵器もいい加減にするニ"ャッ!!!まあ……、どんな手を使ったとしても勝ちは勝ちニ"ャ、そこだけは認めてやるニ"ャ……」
そう言ってアグは素直にトムの勝利を認めるのであった
話を戦治郎達に戻そう、現在戦治郎達が運んでいる巨大なケーブルロールは、先程話に出て来た拠点用レーダーと閃光迎撃神話を接続する為のケーブルなのである。まずは輝が閃光迎撃神話を設置し、それに戦治郎がケーブルを接続、その後大五郎が掘った溝にケーブルを埋めながら拠点に戻ってそのケーブルを今度はレーダーと接続、戦治郎達はこれらの作業を、今日だけで少なくとも150回は繰り返しているのである
「輝ぅっ!後いくつぅっ!?」
「まだまだぁっ!後100基はあるぞぉっ!!!」
「おっしゃっ!ガンガン取り付けてこの拠点ガッチガチにしてやろうぜっ!!!」
「「おおおぉぉぉーーーっ!!!」」
戦治郎と輝は走りながらこの様な会話を交わすと、2人揃って気合の雄叫びを上げながら作業を続けるのであった
「ご主人達は楽しそうだぁね~、まあそんなご主人達を見てたらおらも楽しくなってきただぁよ」
そんな2人の背中を見守りながら、大五郎はそう呟くのであった
そんな事を繰り返している内に、設置すべき閃光迎撃神話は残すところ後20基と言うところまで来た。230基目の閃光迎撃神話を接続し終えた戦治郎が、次の設置ポイントに向かおうと立ち上がったところで……
「戦治郎さ~ん!!大変ですぅ~っ!!!」
今日の予定は休息となっている阿武隈と天津風が、大慌てで戦治郎に駆け寄って来るのであった。よく見ると阿武隈が何かを背負っている様に見えるが……、あれは一体何なのだろうか……?戦治郎はそう思いながら2人に話しかける
「どしたよお前ら、そんなに慌てて……」
「それが……、私達と摩耶さん、木曾さんの4人で近くを散策してたら、大怪我を負った駆逐棲姫を見つけて……」
「その駆逐棲姫、神通さんと扶桑さんと同じみたいで、元艦娘の深海棲艦みたいなんですっ!」
慌てふためく2人を落ち着かせてから、戦治郎が何があったかを2人に尋ねると、2人はとんでもない事を言い出すのであった。それを聞いた戦治郎と輝に緊張感が走り、2人はその表情を引き締める
「それで、その駆逐棲姫は?」
戦治郎が真剣な面持ちで阿武隈達に尋ねると、阿武隈が自分の背を戦治郎達の方へ向ける。そこには苦痛に耐える様にその表情を歪める駆逐棲姫の姿があった……、と、よく見るとこの駆逐棲姫、何と右腕の骨が丸ごと抜き取られた様になっているではないか……っ!?それを目撃した戦治郎は、思わず目を見開いて驚愕するのであった
「それでその子に応急処置を施そうと近付いたところで、今まで見た事も無い深海棲艦が姿を現して、急に私達に襲い掛かって来たのよ……っ!」
「今、木曾さん達がその深海棲艦の足止めをしてくれてます!だから戦治郎さん!!急いで木曾さん達のところへっ!!!」
「分かったっ!お前らはすぐ悟のとこ行ってその子を診てもらえっ!!行くぞ輝っ!!大五郎っ!!!」
「合点承知の助っ!!!」
「承知しただぁよ、ご主人~!!!」
戦治郎達はこの様なやり取りを交わし、戦治郎、輝、大五郎はかすかに残る阿武隈達の足跡を辿って現場へ急行し、阿武隈達は悟の下へと走り出すのであった
その道中、戦治郎は先程見た駆逐棲姫の腕の事を思い出すと、急に胸騒ぎを覚える……。この戦い、何事も無ければいいんだが……、戦治郎は1人内心でそう呟きながら木曾達の下へと急ぐのであった……
「お前ら大丈夫かっ?!って、あれは……っ!?」
現場に駆け付けた戦治郎が、木曾達と対峙する深海棲艦を見て思わずその目を見開いてしまう
今木曾達が対峙している深海棲艦、それは異様な雰囲気を纏った深海双子棲姫だったのである
「なんだありゃっ!?1つの艤装に人型2つ?!おい戦治郎、あいつら一体何モンだっ!??」
「ありゃ深海双子棲姫って言う2人で1つの深海棲艦だ……、気を付けろよ輝……、あいつらタダモンじゃねぇぞ……」
「そりゃ見りゃ分かる……、あいつら、どっか何か変だわ……」
深海双子棲姫の事をしっかりと見据えながら、輝と戦治郎がこの様な会話をしていると、戦治郎達の存在に気付いた木曾達が後方に勢いよく飛び退いて来て、戦治郎達と合流するのであった
「来てくれたか旦那っ!」
「これで何とかなりそうだな……」
摩耶が嬉しそうに戦治郎達に話しかけ、木曾はそう言って安堵の息を吐くのであった
「遅くなってすまん、んで、状況は?」
「正直、攻めあぐねいてる……」
「下手にあいつらに手を出すなって、あたし達の直感が言ってんだ……」
戦治郎が2人に状況を尋ねると、2人は苦い顔をしながらこの様に返すのであった
それについては戦治郎も、そして隣にいる輝も恐らく思っている事だろう……。あいつらに不用意に近づくな、あいつらは非常に危険だ……、戦治郎の直感もその様な感じで警鐘を鳴らしていた……。と、その時である
「「キキーッ!!!」」
深海双子棲姫がまるで猿の様な声を上げながら、2匹同時に飛び掛かって来たのである。それに反応した4人は急いで散開し、深海双子棲姫の攻撃を躱そうとするのだが……
「うっそっ!?マジかよっ?!」
戦治郎が黒い方の攻撃を避けた直後、白い方が時間差で戦治郎の頭にその手を伸ばす。この姿勢のままでは回避出来ないっ!戦治郎がそう思った瞬間、戦治郎と双子の白い方の間に巨大な何かが割って入って来る。そう、大五郎の腕である
「させねぇぞぉっ!!!」
大五郎が叫んだところで、白い方の手が大五郎の腕に触れる。すると……
「ごお"お"お"ぉ"ぉ"ぉ"---っ!!!」
大五郎が悲痛の叫びを上げる、何とこの深海双子棲姫の白い方、大五郎の腕に触れた瞬間大五郎の腕の肘から先の骨をそれはそれは綺麗に、鮮やかに抜き取ってしまったのである
「大五郎おおおぉぉぉーーーっ!!?」
その光景を目の当たりにした戦治郎の絶叫が、大五郎の悲鳴と共に辺りに響き渡るのであった……