山城 駆は本当にどうしようもない男だった
高校生になっても伸びる気配がしない156cmという低身長、指いらずと揶揄される醜悪な顔の造形がコンプレックスとなり、彼は高校2年になると同時に引き籠り生活を始めるのであった
それから時が過ぎ、彼は30代半ばを過ぎたにも関わらず、定職どころかバイトの1つもやった事が無く、ただただ親の脛をかじって生きていき、両親もいつかきっと部屋から出てくれるだろうと彼の事を信じ、彼の事をとことんまで甘やかしていた
そんなある日、温泉旅行に行った彼の両親が事故に巻き込まれて2人揃って亡くなってしまう。普通の人間ならば両親の死を大いに悲しむところなのだが、この男は収入減が減ったと内心で舌打ちしながら、涙を流すなどと言う事は一切せず、ただ事務的に、淡々と両親の葬儀を済ませ、いつも通りの日常に戻ったのである
その後の彼は両親が遺した家に引き籠り、遺産を食い潰しながら毎日の様にオカルト関係のサイトとアダルトサイトを巡り、艦これを含む様々なゲームを貪りながら、本人にとって充実した毎日を満喫するのであった
脂質の多い食べ物を好んで食べ、風呂に入る間も寝る間も惜しんで長時間ゲームやサイト巡りに没頭していた彼の容姿は、日に日に醜悪さを増していくのであった。高カロリーなものを好んで食べていながら碌に運動もしていなかったが故にその身体は凄まじい勢いで肥え太り、それが原因で皮脂の分泌量が増えているにも関わらず、碌に風呂に入っていなかったが故に頭髪が見る見るうちに減っていき、1日中パソコンの画面ばかり見ていたせいで視力も著しく低下してしまう
その結果、彼はチビデブハゲ眼鏡の童貞キモメンキモオタヒキニートという数え役満級のろくでなしになるのであった
そんな彼の人生は、唐突に終わりを迎える。乱れに乱れた食生活、風呂にも入らなければ掃除もしないと言う不衛生的極まりない生活環境、狂い切った生活習慣などの付けが回り、彼は重い病気にかかってしまい、誰にも看取られる事無く独りで床の染みとなってしまったのである
その後、彼は気付けば海の上にいた。自分の身に一体何が起こり、どうして海の上にいるのか、それらを知る為に彼が辺りをキョロキョロと見回した時、彼はある物を発見する。そう、それは海峡夜棲姫の艤装であった
海峡夜棲姫の艤装を見た直後、彼は直感めいた何かに従ってすぐさま自身の今の姿を確認する。するとそこには、海峡夜棲姫となってしまった自分の身体があったのである
それを見た彼は、驚くより早く、歓喜の声を上げた。自身のコンプレックスが一掃され、自分が愛した深海棲艦の姿になった事、彼はそれが嬉しくて嬉しくて仕方が無かったのである
そう、彼は艦娘ではなく深海棲艦を愛した提督だったのである。深海棲艦の活躍を見たいが為に、イベントの度にイベントクリア用の艦娘とは別にイベントMAPの数と同じ数の同じ艦娘を、有り余る時間を使って揃えて各MAPで1人ずつ轟沈させるなどと言う行為を、嬉々としてやっていたのである
そんな彼が歓喜の叫びを上げていると、何処の所属かは分からないが艦娘の艦隊が彼の前に姿を現した。彼の存在に気付いた艦娘達が、彼を倒そうと攻撃準備を始めたところで、彼は艦娘達をテンションが赴くままに、一切の躊躇いも無く皆殺しにしてしまうのであった
その後、我に返った彼が自身の手に握られた艦娘の腕に頬擦りをしながら
「どうせなら、彼女達の身体をもっと満喫してから沈めればよかったですなぁ~……。ついついテンションに任せて勿体ない事をしてしまいましたぞ……」
残念そうにそう呟いた時だった、急に彼の足元にある海水が彼が頬擦りしていた腕に集まり始め、ある程度の量が集まったところで海水が形を変えていき、海水の塊はやがて先程彼が沈めた艦娘になってしまうのであった。ただ1つ、海水で出来たその艦娘の肌が、まるで死人の様に真っ白な肌になっていると言う違いがあったが……
その光景を目の当たりにした彼は、自身の知識をフル動員して思考を巡らせ、ある結論に至ったのである。それは自身が海峡夜棲姫になったと同時に、死霊使いになったと言うものである。それに気付いた彼は、先程よりも大きな声で歓喜の声を上げるのであった
それからというもの、彼は自身が殺した艦娘や艦娘に沈められた深海棲艦を配下に引き込み、盗人猿が転生して生まれた深海双子棲姫を餌付けして、白い方をスカル、黒い方をボーン、2匹まとめてスティーラーズと命名してから自身のペットにし、道中で出会った同志を仲間に加えながら至る海域で暴れ始めるのであった
そんなある日、彼は彼と同じ様に多くの仲間を引き連れた欧州棲姫と出会う。そして彼は彼女が手にするとある本に強く興味を示し、それを見せてもらう事を条件に、彼は彼女の傘下に、アビス・コンダクターに加わる事にしたのである
その本の内容を確認し終えた駆は、ある呟きと共に不気味な笑いをつい漏らしてしまう……
「これが実在するなら……、きっと他の魔道書も……、デュフフフフ……、これは面白くなりましたぞ……」
その呟きの後、駆は先程読ませてもらった本を、『ルルイエ異本』を持ち主である欧州棲姫であるシスター・エリカに返却するのであった……
時間は戻り、自身に強烈なビンタをお見舞いした中間棲姫の姿が見えなくなると、駆は部屋の奥に向かってこう言い放つ
「もう出て来てもいいですぞ」
その直後、部屋の奥にあるクローゼットから人影が現れるのであった
「何故俺が隠れなければならんのだ……」
クローゼットから現れた戦艦水鬼改が不平を漏らす
「防人、貴方はあの人に何をしたか覚えておりますか……?」
「知らんっ!!!」
防人と呼ばれた戦艦水鬼改がそう答えると、駆はすぐにその右手を何かを鷲掴みするように握り始める。すると……
「ぐぬ"う"う"う"ぅ"ぅ"ぅ"---っ!!?」
突然戦艦水鬼改が胸を抑えながら蹲り始める
「貴方はあの人にとんでもない迷惑をかけているんですぞ?貴方の存在そのものが、あの人のトラウマになってるかもしれないのですぞ?そんな存在が同じ敷地内にいる、それがバレたら何が起こるか分かったものではないのですぞ?」
そう言いながら、駆は右手をグニグニと動かす。するとそれに連動しているかの様に、駆から防人と呼ばれた戦艦水鬼改は苦しみ悶えるのであった
駆が今右手に握っているもの、それは現状駆以外には見る事が出来ないが、この防人という戦艦水鬼改の魂なのである
駆はある日、自分の兵を増やそうと死体探しをしている時、ウェーク島の近くでこの
駆はそれを嬉々として持ち帰り、自身の能力で兵士に仕立て上げようとしたのだがそれが中々思う様にいかず、日を改めて今日この日、つい先程、改めて自身の能力を使用した際ようやく死体を動かす事に成功したのだが、予想外の事態が発生したのである
何とこの死体、自我を持っていたのである。そしてこの死体、防人は動き出したかと思えばすぐさま駆に襲い掛かって来るという、自分の能力で作られた兵士には絶対に出来ない事をやってみせたのである
駆は防人の攻撃を避けている最中に偶々見つけた防人の魂を捕まえ、それを人質に防人に言う事を聞かせる事に成功するのであった。その後、駆は頭を抱えながらまるで呪詛を唱える様に失敗したを連呼し、それが外に聞こえてしまったのかその直後に心配した中間棲姫が部屋を訪れたので、駆は急いで防人をクローゼットに押し込んだのである
「取り敢えず、某がいいと言うまでこの部屋で大人しくしてるんですぞ?」
駆はそう言いながら右手に力を込める、すると防人はその苦しみに耐えきれなくなったのか、気絶し倒れ込んでしまうのであった
「全く……、スティーラーズと言い、こいつといい……、もうちょっと大人しく某の言う事を聞いて欲しいものですぞ……」
駆はそう呟くと、自分達の寝床でグースカと眠っているスティーラーズと先程気絶した防人を一瞥し、溜息を吐くのであった
ネクロマンシー
山城 駆の能力で、死体や身体の一部を使用して自分の思うがままに操れる兵士を作る能力
身体の一部を使用する時は、それをコアにして土や砂、海水、肉片をコアに纏わせてコアの基となった存在を再現し、兵士として使役する事が出来る
ただ、防人の場合、身体に染みついていた戦いを渇望する闘志が新たな魂を形成してしまった為、自我を持ち、自分の意思で動けるようになっている。その魂は潰されてもまた同じ様なのが作られる様になっている