司の能力のおかげで後方に流れて来た敵は一掃され、前衛として戦っていた木曾達も増援を始末し終えたところで後方に下がって光太郎達と合流する
その際司が前衛組に、今しがた使える様になった能力を自慢げに披露し
「俺様の新しい魅力に溺れないよう注意しなよ☆」
などとほざきながらウインクすると、前衛組は司に一斉に白い目を向けるのであった
その後、光太郎の提案で皆で戦治郎達のところに向かおうとしたその時だ
「……っ!?」
何かの気配を感じ取ったのか、神通が急に立ち止まって後ろを振り返り、辺りをキョロキョロと見回し出すのであった
「神通さん、どうしました?」
急に停止した神通に対し、通が不思議そうに声を掛ける。その際他のメンバーも神通の行動を不審に思って立ち止まり、怪訝そうな表情で彼女の事を見つめる
「いえ……、今、向こうから悍ましい気配がした様な気がして……」
神通の言葉を聞いたメンバーが、その目つきを変えて神通が視線を送る方角をジッと眺める。すると……
「な、なンだありゃっ!?」
何かを見つけた江風が、その方角を指差しながら叫び声を上げる。江風は一体何を見つけたのか?そう思いながら他のメンバーが江風が指差す方角を目を凝らしてよく見ると、そこには真っ白な肌をした艦娘と深海棲艦の混成部隊24隻の姿が映り込むのであった
「んげっ!?あいつらはあの時のっ!!!」
「まさか戦治郎さんが闇城とか言ってた奴が、この近くにいるのかっ!?」
迫り来る艦隊を見た摩耶と木曾が思わず声を上げる、それを聞いた他のメンバーは驚愕の表情を浮かべながら動揺し始める。何故なら先程の戦闘のせいで、このメンバーの燃料とメイン武器の弾薬、光太郎のエネルギーと予備のバッテリーの残量も底を尽きてしまっているからである
相手は24隻しかいないが、それらは全てまだまだ詳細が分かっていない得体の知れない相手である。どんな攻撃をしてくるのか、どう対処したらいいのかが全く分からない未知の相手に、光太郎達はただただ動揺し警戒する事しか出来なかったのである……
そんな彼らの事を、遠くから眺めながら溜息を吐く存在がいた
「やれやれですなぁ……、防人もそうですがアルバート殿も我が儘過ぎるのではないかと思うのですぞ……」
そう、光太郎達に接近している死霊艦隊を生み出した張本人である、アビス・コンダクターの山城 駆である
彼は今、自身の兵隊を増やす為の死体集めと、暴走しがちな自身の下僕と逆恨みでブチギレている同僚の頼みの為にこっそりと行動しているのである
彼はアルバートとエリカの会話を偶然聞き、スティーラーズを追い詰める程の実力を持った海賊団を相手にして、訓練部隊は生き残る事は出来ないだろうと、戦治郎達と僅かではあるが対峙した駆がそう思ったところで、駆はウェーク島で自身の能力を使う際使用する骨粉を消費した事を思い出し、これは消費した骨粉を補充するいい機会だと考え、駆は訓練部隊の死体を回収しに行く事を決定したのである
駆は急いで自室に戻り、現場に行く為の準備を進めているところで、自身の下僕である防人にある頼み事をされたのだ。その内容は以下の通り……
「俺に戦闘の手伝いをさせたかったら俺の武器を持ってこい、武器は武人の魂だからな、丸腰の武人など笑いものでしかない。ああ、出来れば薙刀で頼むぞ」
防人は駆に向かって一方的にそう言うと、駆が防人用の玩具として作った死霊兵をその拳で一撃必殺の下にバラバラに破砕したのであった。この光景を見た駆は、お前は武器が無くても十分戦えるだろうと、内心でツッコミを入れるのだった
因みに、防人が何故この様な事をしているのかに関してだが、この防人は何と2時間以内に戦闘行動をしないと禁断症状を発症し、2時間の間自我を失って大暴れしてしまうのである。この状態になると魂を直接攻撃しても怯む様な事は無くなり、駆は初めて防人が禁断症状を起こした時、2時間の間ずっと彼の暴力の嵐から逃げ惑っていたのであった
防人を戦力に加えたいと考えている駆は、防人の頼みを渋々ながら了承し、準備が完了したところで部屋から出て、こっそり出撃しようとしたのだが、そこをアルバートに目撃されてしまったのである。この時駆はアルバートから八つ当たりされるかと思ったのだが、現実ではそんな事は無くアルバートは頼みを聞いてくれたら、この事は見逃してやるとかなり上から目線で言ってきたのである。その内容は……
「死体回収に行くついでに、訓練部隊の援護をしてやって欲しい。本当は僕が行きたいところなんだが、生憎エリカに止められてしまってな……。もしこの頼みを聞いてくれれば、お前が今まで無許可で出撃していた事は全てエリカに黙っておいてやる」
こんな感じである。多分この言葉の裏には「海賊団をぶっ潰して来い」と言う言葉がある気がしたが、駆はそれを無視する事にした
この時駆は頼みの内容と報酬が釣り合わないとケチをつけ、報酬にアルバートが趣味で行っている武器コレクションの中にある薙刀を1つ追加する様に言ったのである。それを聞いたアルバートは最初は渋い顔をするのだが、止むを得ないと言った様子で駆の要求を呑んでくれたのであった
それを聞いた駆は不気味な笑い声を上げた後、訓練部隊が出撃した方角に針路を取ってミッドウェーの拠点を発ったのであった
そして彼が戦場に到着する頃には、訓練部隊は全滅しその姿は見えなくなっていた。それを確認したところで……
「部隊の援護は間に合いませんでしたが、頼まれた事はやっておきますかな?」
駆はそう言って懐から例の小袋を取り出して、骨粉を少量手のひらの上に出してから、それを力士が土俵に塩を撒くように海面に撒き、海水を利用して死霊兵を生み出してから海賊団に差し向け、自身は海賊団が撤退するまでその光景を遠くから眺めながら待つ事にするのであった
「こいつら沈めても沈めてもキリがNEEEEE!!!何度沈めても何事も無かったかの様にすぐに浮き上がってくるYO!!!」
司が先程覚えた能力を駆使して、死霊兵の相手をするのだが、司が言う様に死霊兵はいくら倒してもすぐにその身体を元の状態に戻して再び浮上し襲い掛かって来るのであった
「諦めるな司っ!!きっとこいつらを倒す方法があるはずだっ!!!それまで何とか耐えるんだっ!!!」
弱音を吐く司に向かって、変身を解いて放水砲で応戦する光太郎がそう叫ぶ。光太郎以外のメンバーも、先程の戦闘であまり使用していなかった為弾が残っていた武器や主砲を使って応戦するのだが、やはりこちらもあまり効果がない様であった
因みに近接格闘は禁止にしてある、相手の近接攻撃によってどの様な事態が引き起こされるか分からない、下手に近接格闘を仕掛けてこっちにとって都合の悪い何かが発生し、状況を悪化させる可能性がある為である。それを聞いた時木曾と夕立が舌打ちしていたが、光太郎はこの際それを無視する事にした
こうして長い時間応戦していると、1人、また1人と弾切れを起こしていき、遂には司と光太郎以外の全員が弾切れを起こし、攻撃手段を失ってしまうのであった……
絶体絶命……、光太郎の頭の中にこの四文字の言葉が浮かんだその時であった
「攻撃するからねっ!!」
「さて、やりますか・・・・・・っ!」
「逃げるなら今のうちだよ?!」
「なのです!!」
不意に後方から4つの声が聞こえると同時に、多くの砲弾と魚雷が死霊兵に殺到、直撃するなり死霊兵を沈める……、が、死霊兵は先程の攻撃など無かったかのようにすぐに浮上して来るのであった
「ちょっ!?何あれっ?!」
「まるでゾンビだね……」
「相手がゾンビだとしても、やる事は変わらないわっ!」
「ゾンビは怖いけど……、でも誰かを道連れにしようとするのはダメなのですっ!」
そう言いながら光太郎達の前に姿を現したのは、新品の様な輝きを放つ艤装を装備した暁改二、ヴェールヌイ、雷改、電改の4人であった。どうやら戦治郎達がやってくれたようだ……、光太郎がそんな事を考えた直後だった
「俺達の取り分残しててくれてサンキューなっ!これで心置きなく大和の件の八つ当たりが出来るってもんよっ!!!」
「ゾンビだろうが何だろうが、昇華させちまえばどうと言う事はねぇっ!!!いっくぜええぇぇぇーーーっ!!!」
「シャチョーの許可はGETしたッス、って事でお前らには光になってもらうッスよ~っ!!!」
戦治郎、シゲ、護の3人もこの窮地に駆け付け、戦治郎はヨイチさんを、シゲは2羽のカイザーフェニックスを、護がゼウスサンダーの照準用レーザーを一斉に発射するのであった
その結果、シゲのカイザーフェニックスと護のゼウスサンダーの直撃を受けた死霊兵は完全に消滅、戦治郎のヨイチさんの攻撃を受けた死霊兵は再び浮上して来たところを、護が持って来たバッテリーのおかげで、エネルギーが回復した光太郎の出力50%オリオールロードで狙い撃ちされ、この世界から消え失せてしまうのであった
尚、カッコつけて登場したにも関わらず、美味しいところを光太郎に持って行かれた戦治郎が、この後ほんの少しの間拗ねたのは此処だけの話である