戦治郎達が天龍達の保護に成功した次の日、未だ眠ったままの天龍と翔、そしてその2人の様子を見る悟以外のメンバーが会議室に集まり、昨日後回しにしたこちらの事情の説明と通達の調査結果の報告、そして春雨を助けた際回収しておいた死霊兵を形成していた砂の分析結果の報告を行うのであった
この時、六駆の4人と春雨が感動の再会を果たし、春雨の今の身体の事を彼女達4人に伝えると、彼女達はそんな姿になりながらも、自分達を守ってくれた春雨の事を嫌う訳が無いと言い切り、春雨の事を受け入れる姿勢を見せてくれる。それを聞いた春雨は、今まで抱いていた不安から解放されると同時に、心の底から込み上げて来る嬉しさで思わず涙を流すのであった
それから戦治郎が自分達が何者であるかについて話そうとしたところで、ヴェルが昨日食堂でその辺りの話は龍驤達から聞いたと言ってきた為、出鼻をくじかれた戦治郎は自分達が今置かれている状況を六駆に分かり易く教える事にした
この海域では通常の電探や通信機、羅針盤やGPSなどが軒並み使用不可能になっている事、この海域から脱出しようとしても途中で変なところに飛ばされてしまう事、この海域に強硬派深海棲艦以上に非常に危険な集団がいる事を、丁寧に解説を入れながら六駆に教えてやると、彼女達はその愛くるしい顔を真っ青にしながら、愕然としてしまうのであった
「電探と羅針盤関係、それに危険な集団については知っていたけど……、まさかそんな形でこの海域に閉じ込められてしまうとは……」
「運が悪ければ海域の境目を踏んだ途端、ミッドウェーの目の前に飛ばされる可能性もあるかもしれん……」
「折角脱出したのに目の前に放り出されるとか、最悪のパターンじゃないっ!?」
戦治郎の言葉を聞いたヴェルが頭を抱えながらそう呟き、それを聞いた空が自身の実体験を基に一番考えたくない可能性を口にし、それに反応した雷が声を荒げるのであった
その後戦治郎が自分達がこの現象が如何にして発生しているのかを、現在調べている事を六駆の4人と春雨に伝えると、何と彼女達はその調査に協力したいと申し出てくれたのである
「今の状態ではこの危険な海域から脱出が出来ない、そんな中闇雲に行動を起こすのはハッキリ言って自殺行為でしかないからね」
「私達の力だけじゃ、あの変な連中を追い払う事すら出来ないものね……。だからここは戦治郎さん達に協力した方が生存率も、この海域から脱出出来る様になる可能性も上がると思うわ」
ヴェルと雷はこの様に建設的な話をし
「私達は皆戦治郎さん達に助けてもらったからここにいる……、無理だと思っていた皆との、姉さん達との再会も果たす事が出来た……。私は、私達はそんな命の恩人である戦治郎さん達の力になりたいんです、恩返しがしたいんですっ!」
「戦治郎さん達は桂島の皆の事も助けようとしていると、龍驤さん達から聞いたのです。きっとあの司令官は今も桂島の皆に酷い事をしているのです……、電はもう辛い思いをしたくないし、皆にも辛い思いをさせたくないのです……。そんな皆を助ける為には戦治郎さん達の力が必要なのです!電達を助けてくれた時の様に、皆の事も助けてあげて欲しいのです!その為だったら、電は何でもするのです!」
春雨と電は恩義を返す為に、桂島の艦娘を助けてもらう為に戦治郎達の力になりたい事を告げ
「響と雷はああ言ってるけど、本音はきっと電達と同じだと思うし、今眠っている天龍さんもきっとそうだと思うの。だから改めてお願いするわ、ここから脱出するのに私達皆が力を貸すから、桂島の皆を助ける為に、私達に力を貸して下さい、お願いします!」
暁が天龍の代理として、戦治郎に向かってそう言うと頭を下げてみせるのであった
「是非もねぇ、俺達からしたらお前達の存在そのものが桂島の提督の悪行の重要な証拠になるんだ。お前達を全員を連れてここから脱出し、桂島の提督を裁きの場に立たせ、今までやって来た事に対しての償いをさせる為には、お前達の力がどうしても必要になるんだ。脱出については任せて欲しい、だから提督を捕まえた後の件でお前達の力を貸して欲しい。……頼めるか?」
暁の言葉を聞き、その振舞いを見た戦治郎がそう言うと
「任せなさいっ!!!」
暁は自信満々な表情を浮かべながら、己の胸を強く叩いてそう言い放つのであった
尚、それからしばらくしてから、暁は我慢の限界に達したのか涙目になりながら、強く叩き過ぎた胸をその手で摩るのだった
こうして戦治郎達は、桂島の遠征部隊と協力し合ってこの海域から脱出する事を決定した後、次の議題である通達の調査結果の報告に話を移すのだった
通達が昨日向かったジョンストンアトールにも、やはり謎の祭壇が設置されており、そこにはアビス・コンダクターの狂信者と思われる深海棲艦の亡骸が3つ、艦娘の亡骸が2つ発見されたそうだ……
そして追加情報として、この艦娘達が舞鶴鎮守府所属の艦娘である事が発覚したのである。情報提供者は川内で、彼女がショートランド泊地に所属している頃に1度だけ、演習で今回発見された艦娘の1人と戦った事があったそうだ
「演習の後に話をする機会があってね、その時に色々聞いたんだ。彼女は普段は舞鶴鎮守府の主力艦隊の旗艦で、今回は他の子達の指導役みたいな立ち位置で演習に参加した~とかね」
「舞鶴の主力の旗艦か……、恐らく長門達が言ってた作戦の為に偵察に来たところを奴らに捕まって、生贄にされちまったってとこか……、……ん?」
川内の話を聞いた戦治郎が、顎に手を当てながらそんな事を呟いて、思考を巡らせようとしたところで、ふとある事を思い出して春雨達に1つ尋ねる
「春雨、確かプロフェッサーって爺さんが生贄が6人足りないとか言ってたのを聞いたんだったな?」
戦治郎の言葉を聞いた春雨が、肯定する様に首を縦に振ってみせる。それを確認した戦治郎は少しだけ考え込み……
「舞鶴のと合わせて生贄が12人必要……?けどそうなると8つの狂信者の亡骸の意味が……、ぬ~ん……、こんな時翔がいたら……」
このような事を呟いた後、ガシガシと頭を掻き始めるのであった
「今、翔さんの名前が出たけど……、翔さんが何か知ってそうなのかい?」
「ああ、あいつ怪獣とか好きでな~……、その延長でクトゥルフとかにも詳しいんだよ。あれは生贄とか言う単語がしょっちゅう出て来るから、もしかしたら翔ならさっきので何か分かるかもって思ったんだが……」
「翔さンは今ぐっすり寝てるもンな……」
そんな戦治郎の呟きを聞いた時雨が戦治郎に尋ね、戦治郎が溜息を吐きながらこの様に答えると、話を聞いていた江風がそう言って困った顔をするのであった
「あ~~~……、考えても全っ然分っかんねぇ。取り敢えずあいつらが生贄使って良からぬ事考えてるくらいしか分からねぇな……」
「あいつらが一体何を企んでいるのか全く分からんが、兎に角警戒はしておいた方がよさそうだな」
戦治郎が椅子の背もたれに寄りかかりながらそう言うと、空が皆に向かってそう言い放ち、それを聞いた者全員がその表情を引き締めながら頷いて返すのであった
そうして戦治郎達は次の議題、死霊兵の身体を形成していた砂の分析結果の報告に話を移すのだが、これと時を同じくして、ミッドウェーの方では桂島の提督から天龍達の代わりとして、新たに売りに出された艦娘達6人の受け渡しがプロフェッサーとシスター・エリカとの間で行われていたのであった……