「皆、まずはこいつを見てくれ」
戦治郎が死霊兵の身体を形成していた砂の分析結果の報告を開始すると同時に、自身の手元にあるタブレットを操作してプロジェクターを起動すると、会議室に設置してあるスクリーンには戦治郎達が調べた砂の拡大写真が映し出された
「これは春雨を助けた時、あの闇城が呼び出した……でいいのか?まあいいや、闇城が呼び出して双子の盾にした兵隊の残骸から回収した砂の拡大写真だ。お前ら……、こいつを見てどう思う……?」
「ただの……、砂ッスね……」
「アニキ、それがどうしたんです?」
画像の解説を入れた後感想を尋ねて来る戦治郎に対して、護とシゲが怪訝そうな表情を浮かべながらこの様に返答する。戦治郎が2人の言葉を聞いた後、周りを見回して皆の表情を確認すると、やはりと言うべきか皆も護達と似た様な表情をしていたのだった
「まあ普通だったらこんなもんだわな、って事で今度はこいつを……、ドンッ!!」
そう言って戦治郎がタブレットを操作すると、スクリーンの画像に数ヵ所ほど赤丸が付いた
「その赤丸の中をよく見てくれ」
会議室に集まった皆が、戦治郎に言われた通りスクリーンの赤丸の中を凝視していると……
「あれ……?」
「……何これ?」
不意に阿武隈と天津風が何かに気付いて声を上げる、するとそれを皮切りに皆が赤丸の中に存在するある物に気付き、口々に疑問を口にする
この赤丸の中にある異様に白い物体は何なのか……?と……
「皆気付いたな、他の砂よりやたら白い粒がある事に……。んでその白い粒の正体なんだが……、何とこれ、人間及び深海棲艦の骨の欠片なんだ。砂と一緒に回収した小袋の中にも、この骨粉がビッシリと付着してたわ」
戦治郎がそう言うと、会議室にいるメンバーは全員一斉にその顔色を悪くしながらその表情を引き攣らせる
「んで、これは俺と悟が話し合って推測したもんなんだが……、あの闇城はこの骨粉を使ってあの兵達を生み出す能力を持っているんじゃないか……、ってな」
戦治郎のその発言を聞いた皆の表情が、とても渋いものに変わった。それもそうだろう、あれだけ苦戦させられた相手を、骨粉がある限り生み出し続ける事が出来る奴が敵にいると分かれば、誰だって嫌な顔をしてしまうものだろう……。皆が憂鬱になり始めたところで、戦治郎が更なる追い撃ちをかける
「もしこの推測が正しかったら、今度会う時あの闇城は非常に厄介なものを連れて来る可能性が出て来るんだわ。あの双子が抜き取って持って行っちまった春雨と大五郎の骨を使って生み出した、春雨ゾンビと大五郎ゾンビの大群なんて言う、ホント厄介極まりねぇ代物をなぁ……」
戦治郎のこの言葉を聞いた皆がある光景を想像する、この海域を埋め尽くす大五郎ゾンビの群れと、その肩に乗った春雨ゾンビの群れがこちらに襲い掛かって来るという、悪夢の様な光景を……、想像したくもないのに、想像してしまった……
その直後、皆が一斉に呻き声を上げたところで、剛が挙手して戦治郎に尋ねる
「それが実現してしまったら、アタシ達はどうしたらいいの?あの時あいつらを沈める事が出来たのは、光ちゃん、シゲちゃん、護ちゃんの3人だけだったと思うんだけど……?まさかあのゾンビみたいなのは全部3人に任せちゃうの?」
「その辺については今から話します、って事でドンッ!!」
剛の質問に対して戦治郎はそう答えるなり、またもやスクリーンの画像を変更する。そこに映し出されていたのは、物理の教科書なんかに載っていそうな、分子や原子や原子核、更には中性子に陽子に電子と言った素粒子のモデル画像なのであった
「さあ、物理の勉強の時間だ!この画像、中学や高校出てる奴は見覚えあるな?原子とか素粒子とかのイメージ画像な。あ、全く分からないって奴いたら、後でおっちゃんが詳しく教えてやるからそれまでいい子して待っててな?って事でいくぞー!」
そう言って戦治郎は、先ず原子の画像を拡大して見せる
「まず、シゲが奴らを倒せた理由な。シゲの場合、この原子核の周りを回ってる電子をカイザーフェニックスの熱で放出させて、骨も砂もまとめてプラズマに変える事が出来たから倒せたんだと思う」
戦治郎がそう言ってタブレットを操作すると、画像が原子核の周りを回る電子が、カイザーフェニックスに掻っ攫われていくと言うアニメに変わるのであった
「あの闇城は骨……、もしかしたら肉片とかででも同じ事出来るかもだが……、取り敢えず今は骨で話進める、骨をコアにしてあの兵隊……、俺は死霊兵って呼ぶ事にした、その死霊兵を生み出してると思ってるのな。んでシゲのパターンだとコアになってる骨がプラズマになっちまったもんだから、コアとしての機能が無くなって死霊兵の身体が崩壊、めでたく倒せたんじゃないかって思ってるんだ」
戦治郎の話を聞いた皆の反応は、真っ二つに分かれた。納得する様に頷く者と、話が分からず首を傾げる者と言った具合にだ。戦治郎はそれを無視して画像を切り替えて話を進める
「んで次は光太郎と護のパターン、この2人の場合はシゲの時とはちょっち違って、超高出力のレーザー光線、光子ビームを原子核にぶつけて、原子核を構成する陽子や中性子を放出させて骨を構成する原子をぶっ壊したから倒せたんじゃないかって思う。んで後の流れは、シゲの時と一緒だから割愛する。あ、因みにこの現象は、光崩壊とか光壊変、光分解って呼ばれてるから覚えておくといい」
レーザー光線が原子核に直撃するなり、中性子と陽子を弾き飛ばして原子を破壊するアニメを背景に戦治郎がそう言って物理の授業を終わらせると、一部の艦娘から戦治郎に向けて拍手が送られるのであった。と、その直後
「戦治郎、つまりどう言う事だ?」
海賊団一の馬鹿を自称する輝が、首を左右に何度も傾けながら戦治郎にそう尋ねる
「ああ、俺が言いたかったのは、このコアになる骨を別の物質に変えちまえば、闇城は死霊兵を復活させられなくなるんじゃないかって、そう言いたかったんよ。あの3人の攻撃がヒントになった感じだな」
「あいつらの身体からあのクッソ小っさい骨抜き取って、石やら木やらと差し替えるって事か?」
「違う違う、その骨に薬品とかぶっかけて化学反応を起こさせて骨を溶かしたりしちまえばいいって事よ。衝撃とかで骨を更に砕いても、今以上に小さくなるだけでコアとしての機能は殺せそうにねぇからな」
それから戦治郎と輝がこの様な会話をしていると
「確かにそれなら死霊兵を倒す事は出来そうね、そうね~……、フッ化水素酸あたりを使ったグレネードランチャーの弾なんてどうかしら?ある程度弾が体内に入ったところで、時限装置で薬液の容器を炸裂させて体内に薬液を撒き散らす様にしたらいいんじゃないかしら?」
「グレポンキター!それと合わせて、骨や肉片の位置を割り出す装置とか作っておきたいッスね~。それがあれば薬液をコアに当てられる確率上がりそうッスからね」
剛が納得したとばかりに頷きながらこの様な事を提案し、それを聞いた護が便乗する形でその補助用の装置の開発を提案する
「んだな、それを全員に行き渡らせておけば、光太郎達ほどの確実性はねぇけど俺達でも死霊兵を何とか出来るかもしれねぇからな。って事で……」
戦治郎はここで1度言葉を区切ってから、改めて続きを大きな声で皆に伝える
「今日は調査は無し!工廠組は工廠に集合して対死霊兵用装備作るぞっ!んで残ったメンバーは食料の確保を頼んだっ!!人数増えたから今まで以上に集めないといけないって事留意しとけよっ!?って事で会議終了っ!!!各自行動開始だーっ!!!」
こうして海賊団の今日の会議は終了し、メンバーは各自与えられた仕事をこなす為に動き出すのであった