※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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狂信者のロザリオ

拠点の食糧問題が解決して浮かれていたのも過去の話、その2日後の朝、ようやく目を覚ました天龍を加えて会議が行われた

 

会議が始まる前、目を覚ましたばかりの天龍に悟がこちらの事情を話すと共に会議に参加する様にと言うと、天龍はその言葉に素直に従って医務室に居合わせていた望と共に会議室に向かうのだった

 

因みに、天龍は望の姿を見た瞬間目を見開いて驚き硬直してしまうのだが、望が自分は春雨とは別人であると伝えると、天龍は硬直こそ解いたもののとても複雑な表情を浮かべるのであった

 

天龍が会議室に姿を現すと、すぐさま六駆の4人が天龍の下に駆け寄り彼女の回復を涙を浮かべながら喜び、対して天龍は内心で暁と響ことヴェルの姿の変わりように戸惑いながらも、彼女達の頭を撫でながら落ち着かせようとする。その際、暁が子供扱いするなと喚いたのだが、天龍はそれを無視して彼女達の頭を撫で続ける

 

それからしばらくしたところで、天龍は自分の下に近付いて来る存在に気付き、そちらに視線を向けるなりその表情を固くする。そう、彼女に近付いて来たのは彼女の不手際が原因で、彼女の目の前で沈んでしまった春雨だったのである

 

そして春雨が天龍のすぐ傍まで来たところで、天龍は彼女に向かって土下座して、涙を流しながら何度も何度も謝罪する。沈めてしまって済まなかった、苦しい思いをさせてしまって申し訳なかった、天龍はその様な言葉を何度も繰り返しながら、春雨に許しを請う様に謝罪するのであった

 

そんな彼女に対して春雨は、彼女の肩に手を置いて、倒れてしまうほど無理をしながらも自分達を何とか助けようとしていた天龍に向かって、感謝の言葉を掛けるのであった。それを聞いた天龍は、思わず春雨に抱き着いて大声を上げて泣き始めるのであった

 

その後、天龍が落ち着いたところで会議が始まる。議題は昨日海域の調査の為に出撃した空達が持ち帰った情報と、とある品に関するものが主な議題となっている

 

先ず空達が持ち帰った情報についてだが、その日空達はマーシャル諸島の南東にあるベーカー島に向かったそうだ。そこで空達はまたも例の祭壇と生贄と思わしき深海棲艦の亡骸2つ、艦娘の亡骸3つを発見、詳細を調べたところ祭壇に付着した血液から、この祭壇を使った儀式がつい最近行われた事が判明したのである

 

そして空が戦治郎から借りたタブレットでプロジェクターを操作して、生贄となった艦娘の写真をスクリーンに映し出すと、桂島の艦娘達が驚愕の表情を浮かべるのであった。そう、生贄となったのは彼女達が所属する桂島泊地の艦娘だったからである

 

余りにも変わり果てたかつての同僚達の姿を見たところで、暁と電がショックで胃の中の物を吐き戻し、ヴェルはスクリーンを見据えたままその顔を顰め、雷と春雨は目を見開きながら口元を両手で覆って硬直する。そして……

 

「これが深海棲艦のやり方なのかよっ!?ふざけるのも大概にしやがれっ!!!」

 

天龍が怒りに身を任せ、そう叫びながら会議室の机を力一杯殴りつけるのであった

 

「これをやった奴らは純粋な深海棲艦じゃねぇ、俺達と同じで異世界で死んでこっちで深海棲艦に生まれ変わった転生個体って類の深海棲艦なんだがな……。まあ強硬派深海棲艦に手ぇ貸してる段階で、ここの海域にいる連中に限れば一緒くたにしちまってもいいな……」

 

天龍の様子を見た戦治郎がそう呟いた後、会議を進める為に天龍を何とか宥めてその怒りを鎮めてもらう

 

それからある程度情報を集め終えた空達は、ウェーク島に戻ろうとするのだが、その道中で偶々洋上で戦闘訓練をしていた狂信者達と遭遇、戦闘になったそうだ

 

この時、空達は相手の中に死霊兵がいるのではないかと警戒するのだが、どいつもこいつもシスター・エリカなる人物や深海棲艦を称えたり、人類と深海棲艦に従わない転生個体を滅ぼせなどとほざいていた為、この中には死霊兵はいないと判断し、ほんの少し安堵の息を漏らすのであった

 

それが分かったところで、空が更なる情報を手に入れようと思い立ち、他のメンバーに狂信者を1隻でもいいから鹵獲しようと提案、他のメンバー全員がその提案を聞くなり頷き返してくれた事を確認した空は、すぐさま行動を起こし狂信者を1隻捕まえ、それ以外の狂信者達は全て叩き潰すのであった

 

その後、空が鹵獲した狂信者に片手でネックハンギングツリーをかけながら、質問をしようとしたのだが……

 

「シスター・エリカッ!!!後は任せますっ!!!」

 

有ろう事か狂信者はそう叫ぶと、自身の頭部を主砲で撃ち抜き自害してしまうのであった……。空が情報を引き出せなかった事に対して内心で舌打ちしたその時、狂信者の残骸の胸元で光る何かを見つけるのであった……

 

「それがこれだ」

 

空がそう言ってスクリーンの画像を切り替えると、そこには何とも冒涜的で忌まわしい何かが映し出されていた

 

それは聖職者が持つロザリオの様なのだが、それを形作っているパーツがロザリオの神聖さを完全にぶち壊しにしてしまっているのである。具体的に言えば、瞳孔に魔法陣の様なものが浮かび上がっている目玉から、タコの足の様な触手が何本も絡まり合いながら四方に生えており、結果的に十字架の様に見える様になっているのである。それだけならいいのだが、それらのパーツは異常なほど、今にも動き出しそうなほどに精巧に作られており、そのロザリオもどきの不気味さをより一層増幅させていたのだった

 

「気持ち悪っ!!!」

 

「何それっ!?いやホント何それっ?!」

 

「ああ~、SAN値が削られる音~ッスッ!!!」

 

「あぁ!スクリーンに!!スクリーンにっ!!!」

 

その映像を見た瞬間、ウェーク島に残っていた者達が一斉に悲鳴を上げたり意味不明な発言をし始める。そんな阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される中、空はこのロザリオもどきが一体何なのかについて話し始める

 

「最初にこれを見た時、俺はこれはアビス・コンダクターの連中が使っているただの識別票のような物だと思っていたんだが……、実際はとんでもない代物であった事が分かったんだ」

 

「とんでもない代物……、ですか……?」

 

ウェーク島に残っていたメンバーの中で唯一発狂していなかった瑞穂が、空に向かって不思議そうにそう尋ねると、空は頷き返しながら懐からロザリオもどきの実物を取り出し、瑞穂に手渡す

 

「それを握ったまま外の風景を見てみろ」

 

瑞穂にロザリオもどきを渡した空がそんな事を言い、瑞穂はそれに従いロザリオもどきを手に握ったまま会議室の窓から外の風景を見てみると、何と何とも名状し難い色をしていた空と海が、瑞穂達が知るいつもの青い海と空に戻っているではないか

 

瑞穂が驚きの表情を浮かべたまま空の方に視線を送ると、空は先程の話の続きを話し出すのであった

 

「俺と共に出撃したメンバーにも試してもらったが、全員そのロザリオのような物を手にしている間は、海と空が元の状態に戻っている様に見えたそうだ」

 

空の発言を聞くなり、発狂していたメンバーが一斉に我に返って驚きを露わにする

 

「それだけではない、摩耶がそれを手にしている間、装備していた対空電探が復活したんだ」

 

「これはあたしも驚いたな、空さんに言われるまま試しで起動したら、この海域に来てからずっと狂った様な反応しかしてなかった電探が、今までの狂いっぷりが嘘だったかの様にいつも通りに動いたんだ」

 

摩耶の言葉を聞いたメンバーの驚きの表情が、より色濃いものとなる

 

「この実験の結果から、俺はある仮説を立てた。これはただの識別票ではなく、この海域で発生している異常現象から身を守る為のものなのではないかとな」

 

「アビス・コンダクターの連中がそんなモン持ってるって事は、この現象を引き起こしてるのはアビス・コンダクターの中の誰かって事だな……。んで、恐らくこの現象は能力のものと思われるから、あの闇城と猿みたいな双子はこの現象を引き起こした犯人じゃねぇだろうな……。あいつらはこれとは違う能力持ってるみてぇだしな」

 

空と戦治郎がこの様な会話をしていると、急に護が手を上げて2人の会話に割って入る様にして発言する

 

「この現象の犯人について話すのもいいッスけど、自分はそれより重要な事があると思うんッスけど」

 

「「重要な事?」」

 

護の言葉を聞いた空と戦治郎が、声をハモらせながら護に尋ねる

 

「その変な奴、量産出来るんッスかね?もし量産出来たらブイを使った移動もしなくて済む様になるし、通信機能も回復するんじゃないかって思ったんッスよ~」

 

すると護はこの様に返し、それを聞いた2人は顔を見合わせた後同時に頷き、この日の工廠組と司の活動予定を決定するのであった

 

因みにこれはこの会議の後の話だが、このロザリオもどきの量産は問題なく成功、それどころかデザインの変更にも成功し、海賊団版のロザリオもどきは持ち主の好みに合わせたデザインのオシャレなペンダントとなり、オベロニウム製のドッグタグと共に海賊団の首に下げられるのであった

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