ロザリオもどきの複製は工廠組+司の頑張りのおかげで、午前中だけで完了し海賊団と桂島遠征部隊の胸元には各自の好みのデザインのペンダントに生まれ変わったロザリオもどきとオベロニウム製ドッグタグが、仲良く下げられる事となった
そしてその日の昼食後、ペンダントのテストも兼ねて調査出撃をした光太郎達が、遂にアビス・コンダクターの儀式の現場に鉢合わせたのだ
以前海賊団が天龍達を保護したタラワ島の近くにある、アラヌーカ島を調査しようと光太郎達が島に上陸したところ、剛と不知火が森の方に多数の人の気配がある事を感知したのである。そして2人の勘を信じて光太郎達が森の中に入ると、そこには異様な光景が広がっていたのであった
森の中の開けた空間の真ん中に禍々しい祭壇が築かれており、その祭壇には拘束されて身動きが取れなくなっている艦娘が乗せられ、その傍にはそんな彼女の首に向かって手に持った儀礼用の剣を、今にも振り下ろさんとする欧州棲姫の姿があり、欧州棲姫の傍には静かに佇む北端上陸姫と、あの忌まわしき海峡夜棲姫が不気味な笑みを浮かべながら控え、祭壇の周りにはその光景を見守る大量の深海棲艦の姿があった
この光景をアビス・コンダクターの連中に見つからない様に、木の陰に身を隠しながら見ていた光太郎達は、この状況をどうするべきかで話し合いうのだが、意見は真っ二つに割れてしまうのであった
今すぐあの集まりに攻撃を仕掛け、生贄となっている艦娘を救出すべきだと主張するのは光太郎、望、瑞穂の3人、対して剛、不知火、時雨の3人が流石に多勢に無勢過ぎるから下手な事はせず、情報を持ち帰る為にすぐにでも拠点に帰還するべきだと反論するのだった
海賊団の面々がこんな事をしている間にも儀式は進み、生贄となった艦娘は欧州棲姫にその首を刎ねられてしまい、欧州棲姫は祭壇に艦娘の血をある程度吸わせたところで次の生贄の準備を始めるのであった
欧州棲姫が先程斬り捨てた艦娘の亡骸を、汚い物でも扱う様にその手で掴むなり勢いよく地面に投げ捨てる。するとそれを狂信者達が回収して、すぐさま近くにある大きな樹に打ち付けていく。よく見るとその樹の近くには既に生贄にされたのであろう艦娘の亡骸が1つ、そして狂信者と思わしき深海棲艦の亡骸が2つ打ち付けられていた
その後、新しい生贄なのだろう拘束された艦娘が1人、狂信者達に担がれて祭壇の方へと運ばれて行く。艦娘は何とかこの状況から逃れようと必死になって踠くのだが、拘束具がガッチリと取り付けられている事と、転生個体である狂信者達の腕力が強かった事が合わさり、抵抗虚しくその艦娘は祭壇の方へと連れて行かれてしまうのであった
このままでは埒が明かない、光太郎と剛がそう思った瞬間祭壇の方から突然爆発音が鳴り響いて来た。2人が何事かと思い辺りを見回すと、2人の視線はある艦娘のところで同時に止まる。その艦娘とは光太郎達の調査出撃に、同行したいと申し出て来た天龍だった。天龍は木陰から飛び出して、その艤装の主砲から濛々と煙が立ち上らせており、それは先程の爆発音は天龍の砲撃により発生したものだと、その場にいる全員がそう思い至る為の判断材料となるのだった
その直後、儀式に参加するアビス・コンダクター全員の視線が、先程祭壇に砲撃した天龍に集中する。すると……
「誰かと思えば……、貴女は確か脱走した生贄の艦娘の1人でしたね……。報告によると海賊団に保護されたと聞いていましたが……、まさかそこからも脱走したのですか?」
欧州棲姫が天龍に向かってこの様な言葉を放つ、するとそれを合図にでもしたのか北端上陸姫と海峡夜棲姫が欧州棲姫を守る様に前に出る
「エリカ、こいつは僕がすぐに始末する。だからそのまま儀式を続けてくれ」
「折角救ってもらった命を粗末にするとは、感心出来ませんなぁ……」
北端上陸姫と海峡夜棲姫が口々にそう言って、北端上陸姫は腰に下げたエストックを引き抜き、海峡夜棲姫は懐から小袋を取り出す。と、その直後木陰から発砲音が2つ聞こえるなり、北端上陸姫と海峡夜棲姫の手に突然衝撃が走り、2人は持っていたエストックと小袋を取り落としてしまう。特に小袋の方に関しては、地面に落下するより早く木陰から飛んで来た太い光線に撃ち抜かれ、消滅してしまうのであった
「ぐぅ……っ!、何者だっ!?姿を現せっ!!!」
先程撃ち抜かれた手を押さえ、北端上陸姫が怒りの形相を浮かべながら叫ぶと、木陰から真っ赤な光を放つ目で北端上陸姫達を見据える、全身を真っ黒な機械仕掛けの甲冑の様な物で包んだ何かと、水母棲姫と桃色の髪をした駆逐艦と思われる艦娘が姿を現す
「4対3で救助する、でいいですよね?」
「こうなったら仕方ないわよ……」
「天龍さん、不知火達が援護するので、その間に生贄になっている方の確保をお願いします」
突然の乱入者達がそんな会話を交わしていると、海峡夜棲姫が両手で頭を抱えながら絶叫する
「ぎゃあああぁぁぁーーーっ!!?某の骨粉があああぁぁぁーーーっ?!!今日はさっきの1つしか持って来ていないんですぞっ?!?どうしてくれるのですぞっ!??」
「喧しいぞ駆っ!!!だったらエリカと生贄を連れて撤退したらいいだろうっ!!!そこの艦娘だけならまだしも、こいつらが出て来るとなると話は別だからなっ!!分かったらすぐに行動に移せっ!!!」
駆と呼ばれた海峡夜棲姫の叫びを、至近距離で聞く羽目になった北端上陸姫が、駆とやらが立っている方の耳を押さえ苛立ちながらそう叫び返すと、駆は北端上陸姫の言葉に渋々と言った様子で従い、狂信者から生贄を預かるとエリカと呼ばれた欧州棲姫を連れてこの場から撤退し始める
「待ちやがれっ!!!」
天龍が叫びながら海峡夜棲姫達を追おうとするのだが、狂信者達が彼女の前に立ち塞がりそれを妨害する。が、直後に天龍の後方から銃弾や砲弾に艦載機、果てはレーザー光線まで飛んで来て狂信者達をまとめて吹き飛ばしてしまう
この様な事を何度も繰り返している内に、結局天龍達は駆を見失ってしまい、生贄の救助に失敗してしまうのであった……。因みに、このどさくさに紛れていつの間にか北端上陸姫もその姿を消していた……
その後、光太郎達が現場の撮影している最中、天龍は剛から勝手に行動するなと説教され、説教の内容と自分達の代わりに生贄となってしまった艦娘を助けられなかった事で非常に落ち込み、帰り道では終始瑞穂と時雨と望の3人に慰められるのであった
そんな事がありながらも無事にウェーク島に戻った光太郎達は、拠点の様子がおかしい事に気付き、警戒しながら拠点の中へと入って行く。拠点に入ってしばらく歩みを進めたところで、光太郎が戦治郎に通信を入れると皆工廠に集まっている事を教えられ、光太郎達は工廠へ足を運ぶのであった
そして光太郎達が工廠の扉を開くと、そこには信じられない光景が広がっていたのであった
顔を真っ赤にしながらプルプルと震え、挙動不審になっている戦治郎を含む海賊団のメンバー全員が工廠の床に正座させられ、その前には不機嫌そうな表情を浮かべながら腕を組んで仁王立ちする大本営の長門、そして長門の後方には同じく大本営所属の飛龍と蒼龍、綾波に元ショートランド泊地の日向、佐世保鎮守府の所属となった加賀、長月、皐月が控えており、その光景を工廠の隅で動揺しながら見守る大和、大鳳、矢矧、初霜の姿があったのである……
「なぁにこれぇ?」
その光景を目の当たりにした光太郎が、思わず間抜けな声色でそう言うと
「光太郎達か、お前達も向こうに並んで正座だ。お前達には聞かねばならん事が山ほどあるからな……」
青筋を立てた長門が、光太郎達を睨みつけながらそう言い放つ。光太郎達は長門が放つ威圧感に圧倒され、素直に長門の言葉に従って海賊団の皆がいるところに向かい、言われた通りに正座するのであった……