ホノルル兵器開発研究所の所長を務める女性が、他の研究員達に指示を出して彼女達がいる部屋に侵入して来た空母棲姫に対して、この研究所で開発された対深海棲艦用の特殊な弾丸を装填したアサルトライフルで、集中砲火を実行する
彼女達は生き延びたい一心で、ただただ空母棲姫が倒れる事を祈りながら、フルオート射撃モードになっているアサルトライフルの引き金を、マガジンが空になるその時まで引き続けるのだった
やがて彼女達が手にするアサルトライフルが、弾切れを起こしたのか弾丸を発射しなくなってしまう。そこで彼女達はようやく引き金から指を外し、特殊弾丸の集中砲火を浴びせた空母棲姫の様子を窺うのだが……
「やはり独歩の様にはいかんか……」
件の空母棲姫はこの様な事を呟きながら、何事も無かったかの様に、平然とした様子でその場に立っていたのであった……
これには彼女達も度肝を抜かれ、ただただ呆然と空母棲姫を眺める事しか出来なくなってしまうのであった……
いや、呆然としているのは何も彼女達だけでは無かった、空母棲姫の傍に控える駆逐棲姫もまた、彼女達同様相当驚いたのか目を見開いて固まってしまっている……
さて、この空母棲姫、石川 空が何故嵐の様な一斉射撃を受けていながらピンピンしているのか、何故駆逐棲姫の春雨 望が驚いて固まってしまっているのか、その原因について話そうと思う
先ずは空が無事な理由だが、彼は己に向かって飛んで来るあの凄まじい数の弾丸の9割7分以上を、バキシリーズに登場した愚地 独歩の真似をして空手の廻し受けで捌いて見せたのである
ここで残り3分はどうしたのかとなるのだが、これが望が驚いている理由に繋がっていたりする
空が捌き損ねた3分の弾丸は、現在全て空の背後にある壁に突き刺さっている。そう、空は廻し受けで捌き損ねた全体の3分の弾丸を、自身に当たる直前、正に紙一重のところで回避していたのである
廻し受けを使い素手で弾丸を弾きながら、要所要所で身体をほんの少し動かして捌き損ないを直前で回避すると言う、常人にはとても真似出来ない様な事を、目の前で当たり前の様に繰り広げる空の姿を目の当たりにした為、望は驚愕し立ち尽くしてしまったのである
と、ここでようやく我に返った女所長が、空に再び攻撃を仕掛けようと、大慌てでアサルトライフルのマガジンを交換しようとするのだが……
『あっ!』
彼女は焦り過ぎたあまり、手を滑らせて交換用のマガジンを床に落としてしまったのである。彼女が慌ててマガジンを拾い上げようとしたその時
『落としたぞ?幸い落下の衝撃によるマガジンの変形は見当たらないが……、次からは気を付けた方がいいぞ?』
いつの間にか彼女の目の前まで接近していた空が、彼女が落としたマガジンを拾い上げて変形が無いかを確認した後、流暢な英語でこの様に言いながらマガジンを彼女に手渡したのである。他の研究員達が驚愕の表情をより一層色濃いものに変えながら硬直する中、空からマガジンを受け取った彼女は……
『キャアアアァァァーーーッ!??』
恐怖と混乱のあまり、その目に涙を浮かべながら悲鳴染みた声を上げるのであった
「ぬうぅぅんっ?!」
彼女の声量に空が驚き、思わず仰け反ってしまう。そして空は内心でただただ困惑する、深海棲艦の姿をしている自分が怖いのはまぁ分かる、だがそれにしたってこれは怖がり過ぎではなかろうか?
空がそんな事を考えていると……
「空さん!空さんっ!!これっ!これ見て下さいっ!!!」
望が大慌てで空に駆け寄り、懐から可愛らしい手鏡を取り出すなり空に鏡面を向けながら見せて来る。望の行動に対して怪訝な表情を浮かべる空が、望の言う通りに鏡を覗き込むと……
そこには顔と髪……、いや、それだけではない……、腕や足……、もう全身の至る所に大量の真っ赤な血や肉片をべっとりと付着させた無表情の空母棲姫の姿が映し出され……
「ぬうぅぅぅんっ?!!」
それを見た空が目を見開いて驚愕し、思わず身体を逸らして鏡から逃げようとするのであった。そう、今の空はエリート変態殺戮ショーを終わらせた時のままの姿、つまりエリート変態の返り血と攻撃した際飛び散った肉片を全身にベッチョリと付着させていると言う、非常に悍ましく恐ろしい姿をしているのである
女所長があそこまで取り乱した理由、それはつまりこう言う事である
彼女が落としたマガジンを拾おうとしたら、目の前に突然全身血塗れ肉片塗れの空母棲姫が現れて、無表情のまま真っ赤に染まった手でマガジンを拾い上げてしばらく眺めた後、その手に付着していた肉片や血液をベットリと塗りつけたマガジンを、彼女達の母国語を流暢に話しながら彼女の手に直接手渡して来た
先程の空の一連の行動は、彼女の目にはこの様に映った為、彼女は恐怖のあまり盛大に取り乱してしまったのである
その後、空は室内にあった手洗い場で手や顔を洗い、身なりを整えると望と研究員達が頑張って落ち着かせた女所長の目の前で、土下座して先程の件を謝罪するのであった。尚、この際他の研究員達が空のそれはそれは美しい土下座を見るなり、口笛を吹いたり、思わず感嘆の声を上げたりしたそうだ
これがきっかけとなって、女所長達は空達が研究所を襲撃しに来た深海棲艦とは違う事に気付き、空達に事情を聞いたところで、彼女達は安堵の息を吐いたり、歓喜の声を上げるのであった。何せこの研究所内を跳梁跋扈する変態達を一方的に蹂躙し、自分達の攻撃をほぼ捌き切ってしまったとんでもない奴が、自分達の事を守りながら研究所からの脱出を手伝ってくれると言っているのだ、嬉しくない筈が無いのである
『そういう訳で、俺達が今からお前達を安全なところに誘導しようと思うのだが……、サラ……じゃなかった、所長、無事な研究員はここにいる者達だけなのか?』
空が女所長にこの様に尋ねたところ、女所長は口元を押さえながら驚きの表情を浮かべ……
『空……、どうして私が皆からサラと呼ばれているのを知っているんですか……?』
この様な事を聞いてくるのであった
それに対して空は、知り合いに似ていたからついそう呼んでしまったと適当な事を言って誤魔化そうとするのだが……
「空さん、その知り合いの方と言うのはこちらの世界の知り合いなんですか?それとも生前の知り合いなんですか?」
空が女所長をサラと呼んだ事を誤魔化す為に適当な事を言った直後、空は望に小声の日本語でその知り合いについて尋ねられるのであった
それに対して空は、望に耳を貸す様に指示を出して、事情を説明するのであった
「望は艦これをやった事が無いから知らないだろうが、あの女所長……、艦これに出て来るサラトガと言うアメリカの空母艦娘と瓜二つなんだ。で、その艦娘の愛称がサラなものだからついクセでそう呼んでしまったんだ」
空は望が納得したところで女所長の方へ向き直り、改めて生存者について尋ねると
『研究所が襲撃された時、私の近くにいた生存者の方々は全員ここにいるのですが……、もしかしたら他のところにも生存者がいるかもしれません……。何分ここはとても広く、研究員も沢山いますから……』
彼女はそう言ってその表情を曇らせてしまうのだが
『安心しろ、お前達を無事に脱出させた後、俺がすぐに再突入してそいつらを全員助け出して見せる、だからそんな顔をするな』
不安に押し潰されてしまいそうになっている彼女に対して、空は彼女の肩に手を置き、力強い眼差しを向けながらそう言い放つ
と、その時である、遠方から大きな爆発音と共に施設が大きく揺れ動き、その揺れのせいでバランスを崩した女所長が危うく転倒しそうになるのだが、それを空が間一髪のところで抱き止めた事で、彼女は事なきを得るのであった
「どうやら急いだ方が良さそうだな……」
女所長を抱き止めた空は、日本語でそう呟くとすぐに通信機を操作して光太郎と連絡を取り、外の状況を確認した後に自分達の状況を説明、それから少し話し合った後通信を切り……
『サr……ではなk『呼びやすいのならサラで構いませんよ?』……、なら遠慮なく……、サラ、今から脱出を試みるから俺達の後に付いて来てくれ』
女所長改めサラに向かってそう言うと、空達はサラ達を連れて研究所からの脱出を開始するのであった