※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

3 / 655
提督の名前

漣の暴走から1時間後、改めて着任の挨拶が行われていた

 

漣が提督を砲撃した件に関しては、本来ならば営倉まっしぐら待った無し、最悪艤装解体と艤装を使用する権利の剥奪すらも有り得るものであったが、提督の

 

「俺がこんなナリしてるからな、普通だったら漣みたいに攻撃するもんだろうよ。それにここで漣を営倉にブチ込んだら鎮守府の稼働が遅れっちまうからな」

 

といった感じで、漣がやらかした事に関しては特に気にしてはいないがやった事に対しての落とし前はつけてもらわないと示しが付かないという事で、懲罰の内容は大和と大淀によるお説教1時間コースという事で落ち着いたのだった

 

その関係か、漣はゲンナリとした表情で挨拶をするハメになり、他の4人も苦笑いと共に同情の視線を送っていた

 

漣達着任する側の挨拶が一通り終わり、今度は鎮守府側の自己紹介が始まる

 

「大本営との連絡のやり取り及び事務作業、任務関係の手続きなどを担当している大淀です、どうぞよろしくお願いします」

 

事務的な挨拶を終えて下がる大淀、やはりそういった仕事を担当してるんだなと思いながら気になっている人物の方へと視線を向ける

 

「大和型戦艦1番艦大和です、この鎮守府の秘書艦をやっていますので、この鎮守府で生活していく中で何かありましたら気軽に声をかけて下さいね」

 

やはり秘書艦だったか……、説教されてるときにも感じたが大和の立ち振る舞いやその雰囲気から秘書艦という仕事をやり慣れている感じがしたのできっと過去に秘書艦業務をやっていたんだろうなぁなどと思っていた

 

だが、それ以上にこの人はとんでもなく強い、生物としての本能がそう告げていた

 

ある程度落ち着きを取り戻した後で説教をされたわけなのだが、説教される前は軍学校の教官に抜擢されるくらいの実力があるようなので強いんだろうな~程度に思っていたのだが、いざ説教を開始した途端に殺気にも似た何かをぶつけてきたのである、正直それだけで死ぬんじゃないかと思うほどに恐ろしかった

 

初期艦として華々しく秘書艦デビューを果たせると期待していたが、こんな人がいるんじゃ秘書艦なんてまずやらせてもらえないだろうと内心ガッカリしているところに

 

「トリは俺だな」

 

漣にとって今最も謎の多い人物、提督が自己紹介を始めようとしていた

 

この人(?)の存在は本当に謎だらけなのだ

 

何故深海棲艦が提督になっているのか、自分の事を俺と言っているのはどういう事なのか、自分以外の艦娘はあのとき攻撃しようとする素振りも見せていなかったが怖くないのだろうか、自分は今は落ち着いてはいるがそれでもやっぱり怖いのだが……

 

この人の事を知る為にもこの自己紹介は聞き漏らす事は出来ない、漣はそう思い集中して話を聞く

 

「この『長門屋鎮守府』の提督をやる事になった長門 戦治郎(ながと せんじろう)つぅモンだ! 階級は少佐、今年軍学校出たばっかの新米提督だから提督業務に関しては完全にド素人だがお前らが苦労しないよう頑張って仕事覚えていく、そして何よりも!俺の鎮守府にいる奴は皆俺が守り徹してみせる!誰一人として轟沈なんかさせねぇからな!っというわけでどうかよろしくなっ!」

 

長門 戦治郎と名乗った戦艦水鬼、額の左側のみに生えた長い角や眉間のところでクロスするといった特徴的な前髪(漣はこれで戦艦水鬼と判断した)こそそのままだがその他の部分が大きく異なっていた

 

服装に関しては、本来の戦艦水鬼は膝裏まで届きそうな長い黒髪に黒いドレスを身に纏い、ロンググローブを付けた腕の手首に棘の付いた金属製の腕輪、脚は黒いタイツにヒールの高い靴を履いているはずなのだが、この人(?)は提督だからだろうか軍服を着てはいるがボタンを留めず前は全開、袖まくりをしているがために見える腕には腕輪こそあるもののロンググローブは無し、二の腕にはタトゥーを入れているようで、右腕に『一鬼当千』左腕に『大和魂』の文字が大きく書かれており、靴も軍用ブーツの爪先部分にを鉄板で覆ったようなものを履いている、そして長い黒髪はセミロングと言えるほどに短く切り、後ろで一本結びにしているのだ

 

そして何よりも特徴的なのは、顔の左半分を覆うようについた大きな火傷跡、戦艦水鬼である事と腕のタトゥーも相まってとてつもなく怖い、こんな格好した深海棲艦いたら攻撃しちゃっても仕方ないのではないかと漣は思う

 

「さて、これで自己紹介は終わりだけど何か質問あっか~?」

 

質問タイムキタコレ!このチャンスは逃してはいけない!ここでしっかりと質問して謎を解いておかなくては絶対後で後悔する!主に精神衛生的な意味で! そう思い挙手しようとした矢先

 

「ハイハイハーイ! 軍学校いた頃に鈴谷が右腕に書いた奴が何か違うのになっちゃってるんだけど!?」

 

「そりゃおめぇ、マジックで『鈴谷命』とか書かれてても箔がつかねぇだろ! 何べんも上からなぞってたせいで中々消えなかったんだぞっ!」

 

「それ酷くない! 折角書いたのに~!」

 

「俺はおめぇの所有物じゃねぇからな、つか人の腕に落書きするのも大概だと思うぞ?」

 

会心の出来だったのに~などと言いながらぶぅたれる鈴谷、完全に出鼻をくじかれてしまった、気を取り直して再度挙手しようとして

 

「提督さん、制服とか物凄く着崩してるけど大丈夫なの? 抜き打ちで偉い人達が来たりしたときまずいんじゃない?」

 

「そこらへんは抜かりねぇよ、太郎丸や翔が艦載機でかなり広い範囲を偵察してくれてっからな、俺自身も鷲四郎(しゅうしろう)飛ばしてるし電探もあっから感知してから急いで着替えりゃ何とかなるっしょ」

 

「ホントにそれで大丈夫なの……? それと、演習で相手の提督さんがこっちに来る事になったときはどうするの? やっぱりあの時みたいに変装するの?」

 

「お偉いさんは皆俺達の事は知ってるだろうけど、末端の連中とかはまず知らんだろうからな、そのときゃ軍学の時みたいに変装するしかねぇわな~……」

 

瑞鶴がどうでもよさそうな事を聞いていた、いや、一部重要そうな事言ってるようだけどそこらへんは説教のときに聞いたような……、つか、この人は確か元帥から直々にスカウトされたと言われていたんだった、お偉いさんが皆知ってて当然か……、それにしても、太郎丸?翔?鷲四郎? 一体誰なのだろう……?

 

「あの、提督? ここには大和さんと大淀さん以外にどのくらいの艦娘さん達がいらっしゃるのでしょうか?」

 

「大淀、それと工廠にいる明石はまだ出撃出来るわけじゃねぇから除外するとして、他にいる奴らっつったら……、駆逐は六駆の4人に陽炎、不知火、天津風、時雨、夕立、江風あたりか、軽巡は川内、神通、阿武隈に天龍型の2人だな、雷巡が木曾のみで重巡が摩耶のみ、戦艦も今は航空戦艦になった扶桑だけだな、軽空母は龍驤、鳳翔、龍鳳、水母に瑞穂、装甲空母の大鳳がいるってところだな、皆いい奴らだから仲良くしてくれよ?」

 

「思っていた以上にいらっしゃるのですね・・・・・、全員ドロップ艦なのでしょうか?」

 

「いんや、訳アリの奴らも結構いるぜ、大和もそのクチ」

 

訳アリとは何ぞや? そして大和さんも訳アリの艦娘だったの? いかん、疑問が更に増えた、このままではまずい、頭がパンクしそうだ、そうなる前に聞きださなくては!そう思った瞬間

 

「あの、提督・・・・・? 工廠へは後どのくらいしたら……」

 

モジモジしながら翔鶴が尋ねる、嗚呼、なんというタイミングで・・・・・

 

「お、そろそろ我慢の限界か? そんじゃ質問タイムはこのあたりにして工廠行きますかね、建造用の装置と開発用の装置のロックを解除して念願の初建造と洒落込みますかねぇ!」

 

そう言って、提督は執務室から出ていき皆もそれに付いていく

 

結局、何も聞く事も出来ないまま質問タイムが終わってしまった……、漣はガックリと肩を落としその後を追うのであった

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。