太郎丸達がスティーラーズを相手にしている頃、駆は研究所の敷地内にある資源保管庫である仕掛けを作っていた
研究所の資源保管庫には、提督達には馴染み深い4大資源の他にも、天然ガスやニトログリセリンなどの爆薬も保管されており、駆は戦治郎達が研究所の職員に気を取られている間に、ここを盛大に爆破する事で研究所を内部と外部の両方から火を放ち、エリカに頼まれていた通りにこの研究所を『燃え上がる祭壇』に作り替える為の装置を作っているのである
本当は死霊兵を使って爆破するのが最も手っ取り早いのだが、それでは自分が安全な場所に避難するより早く施設を爆破してしまう可能性が非常に高かった為、駆はわざわざ起爆装置を作って安全な場所に退避してから起爆しようと考えたのだ。そして……
「これで準備は整いましたぞ……、後はこの島から脱出してエリカ殿と合流してから起爆するだけですなぁ……」
起爆装置を完成させた駆はそう呟きながら立ち上がると、起爆スイッチを片手に誰にも悟られぬ様細心の注意を払いながらオアフ島を脱出し、沖の方でエリカ達の到着を静かに待つ事にするのであった
さて、視点を戦治郎の方へ向けてみよう
先程太郎丸達に双子の事を任せた戦治郎は、既視感を覚える女性の後を追いながら考え事をしていた
まず最初に考えたのは、進めば進むほど逃走速度を上げていく女性の事である
(あの女……、眼鏡かけてるけどどっからどう見てもアイオワだよな……?)
そう、戦治郎は彼女を初めて見た時から、彼女にアメリカの戦艦艦娘であるアイオワの姿を重ねていたのである
もしこれまでの経験からくる自分の勘が正しければ、あの女性にはアイオワの適性があるだろう、だが何故彼女は艦娘にならず研究者なんかやってるのだろうか……?戦治郎は一瞬そんな事を考えるのだが、ドイツにいた時にアクセルから聞いた艦娘の配備状況の事を思い出す
艦娘が日本で誕生した頃には既にアメリカは音信不通となっていたそうだから、アメリカには艦娘に関する知識や技術が行き渡っていない、アメリカは艦娘と言う存在を知らない可能性まであるだろう、戦治郎はそう考える事にしたのである
アイオワっぽい女性の事に関する推測が終わったところで、戦治郎は次の疑問について考え始める。それはこの通路の状況である
今戦治郎達が走っている通路だが、先に進めば進むほど凄惨な状態になっているのである。至る所に研究員と変態達の亡骸が転がり、綺麗に全身が残っているものもあれば、上半身や下半身だけしか残っていないもの、最も酷いものは壁や床に人型の真っ赤な染みとなってしまっているのである
他にも天井、床、壁など通路の至る所に、巨大な刀傷の様なものが幾つも付けられいる事も、この通路の異常さを強調してしまっているのである
アイオワの様な女性が、さっきから加速に加速を重ね続けているのは、この通路の異様さに恐怖心を煽られ、生存本能が働いて彼女の身体にかかるリミッターが次々と外れていっているからではないかと、戦治郎はその背中を見失わないように、彼女の加速に合わせて自身も加速しながら結論付けるのであった
それから2人はしばらくの間追いかけっこを展開するのだが、女性がある角を曲がったところで姿を消してしまうのだった
女性を見失った戦治郎は内心で舌打ちした後、彼女が姿を消した通路にある部屋を片っ端から調べて回る。その間にも何度も扉の開閉音が聞こえ、彼女が自分の様子を窺いながら移動している事に気付いた戦治郎は、部屋を調べる順番などを工夫し、彼女に話を聞いてもらう為に、取り合ず何処かの部屋に追い詰めようと考え即実行に移す
その後、彼女がとある部屋に入った事を確認した戦治郎は、その部屋に入る為に扉の前に立つのだが……
部屋の前に立った直後に、突如中から鳴り響く何処かで聞いた覚えがある大声に驚き仰け反った戦治郎は、嫌な予感を感じながらも気を取り直し、すぐさま扉を蹴破って中に突入する。その結果、戦治郎は先程感じた嫌な予感が的中した事を確認すると、頭を抱えながら舌打ちするのであった
戦治郎が部屋に突入した際見たもの、それは自分達で作ったバリケードを盾にしながらアサルトライフルで戦艦水鬼改を集中攻撃するも、アサルトライフルが弾切れを起こしたところで反撃として、戦艦水鬼改がその手に持った薙刀を振るった際に発生した衝撃波で、バリケードと彼らの後方にある部屋の壁ごと、血煙にすらなる事無く粉々に砕かれる研究員達の姿と、戦治郎の足元で尻もちをついてその光景を目の当たりにし、恐怖でその身をガタガタ震わせるアイオワみたいな女性の姿であった
「何でこいつが此処にいやがんだよ……?」
戦治郎が思わず呟くと、その声が聞こえたのか戦艦水鬼改はピクリと身を震わせた後、戦治郎の方へと向き直ると、喜色満面の笑みを浮かべながらこう叫ぶ
「おおぉっ!!!戦治郎っ!!!長門 戦治郎ではないかっ!!?俺の存在に気付いて戦いに来てくれたのだなっ!?!俺も丁度お前と再戦したいと思っていたところなのだっ!!!さぁさぁっ!!!今一度此処でっ!!!納得いくまでっ!!!死合うではないかっ!!!!!」
そう、先程研究者達を瞬く間の内に消し飛ばして見せた戦艦水鬼改は、戦治郎達がこの海域に辿り着いた時に戦治郎に勝負を仕掛けて沈んだはずのあの戦艦水鬼改の転生個体、戦治郎がヘモジーと呼んでいる陸奥守 防人だったのである
「俺としてはもう二度と会いたくはなかったんだがな……、おめぇ何で此処にいる?あの状態からどうやってそこまで回復したんだ?そしてその薙刀……、何処から仕入れて来たんだ?」
「それを知りたければっ!!!力づくで聞き出してみせろっ!!!!!」
戦治郎が防人にそう尋ねると、防人は問答無用とばかりに薙刀を構え、戦治郎目掛けて突進するのであった
戦治郎は防人が行動を起こした事を視認した直後、自身の前で尻もちをついて怯えるアイオワの様な女性の襟首を掴むと、防人との戦いに巻き込まない様にと部屋の隅の方へ彼女を投げ飛ばし、すぐに大妖丸を引き抜いて防人の攻撃をその刀身で受け止めるのであった
そうして2人が激突した直後、部屋の中に衝撃波が発生して部屋の中にある物全てを、破壊はせずとも勢いよく吹き飛ばし、アイオワっぽい女性は、部屋の隅で目に涙を浮かべ、その身体を小さく丸くしながらその衝撃に耐えるのであった
そんな彼女の事などお構いなしと言った様子で、防人は喜びにその身を震わせながら、戦治郎に向かって果敢に攻撃を仕掛ける
「そうだっ!!!これだっ!!!お互いの武器をぶつけ合った時の衝撃っ!!!闘志に燃える魂の共鳴っ!!!死霊兵相手では絶対に得られないこの感覚っ!!!これが無ければ戦いではないっ!!!そうだろうっ!??長門 戦治郎おおおぉぉぉーーーっ!!!!!」
「うるせえええぇぇぇーーーっ!!!おっまこんな至近距離で叫ぶなっ!!!つか今お前死霊兵とか言いやがったなっ!!?お前あいつらに協力してんのかよっ?!!」
「俺から話を聞きたければっ!!!見事俺を打ち倒して見せる事だなぁっ!!!」
「ああそうだったなっ!!!コンチクショウがぁっ!!!」
防人と戦治郎は、お互いに大声で叫びながら、お互いの武器を打ち付け合い激しい攻防戦を繰り広げるのであった
この時、戦治郎は気付かなかったのである、自分達の戦いで発生する衝撃波がアイオワの様な女性の下に、この研究所で研究開発されている武器を送り届けた事に……