さて、防人が此処にいる理由なのだが、それはスティーラーズと同様侵入者の排除の為である。但し駆はスティーラーズにはメインターゲットやらこの作戦の目的やら、詳細情報まで伝えていたのに対して、防人に出した指示は「行ってこい」の一言だけ、扱いに圧倒的格差があったりするが……
まあそれも仕方が無い事だろう、いくら駆が頑張って防人に細かい指示を出したところで、知らん、どうでもいいで片付けられた挙句、戦場に出るなり勝手に暴走するのが目に見えているのだから……。実際、防人は指示を出された後、研究員だろうと味方の変態達だろうと、目に付いたものはどんなものだろうとお構いなしに襲い掛かり、片っ端から対象をその薙刀の錆や床や壁の頑固な染みに変えてしまっているのである……
それに駆は、この戦いで防人の事を切り捨てようと考えているのである。確かに戦闘力は尋常ではない防人だが、常に暴走状態で制御が非常に難しいとなると、流石に考え物なのである……。そういう訳で駆は防人を時間になるまでここで適当に暴れさせておいて、エリカが儀式に成功させ邪神を呼び出し戦闘を始めたら、防人を唆して邪神に突撃させ始末しようと考えているのだ
そんな事とは露知らず、防人は今……
「はっはっはっはっはっ!!!もっとだっ!!!もっと俺に生を実感させてくれっ!!!この世界にっ!!!俺が存在していると言う証を刻ませてくれっ!!!なぁっ!!?いいだろうっ?!!長門 戦治郎おおおぉぉぉーーーっ!!!!!」
気分を最高にハイにしながら、戦治郎とお互いの得物を何度も何度も、飽きる事無く打ち付け合っていた
「だっからさっきからうるっせぇよヘモジーッ!!!つかおめぇマジで頭おかしいんじゃねぇかっ?!?生の実感とか存在の証が戦いとかっ!!!正気の人間が言う言葉じゃねぇってのっ!!!」
「そんな些末な事はどうでもいいっ!!!さぁっ!!!さぁさぁさぁっ!!!もっと俺と戦えっ!!!もっと俺と打ち合えええぇぇぇーーーっ!!!!!」
「あぁもうやだこいつっ!!!マジで誰かこいつを何とかしてくれえええぇぇぇーーーっ!!!」
戦治郎は防人とこの様な会話を交わしつつも、防人の余りにも重過ぎる一撃一撃を何とか捌きながら、救いを求める悲鳴染みた魂の叫びを上げる。しかし残念ながら、戦治郎の叫びを聞きそれに応えようとする者は、現在この場所には誰一人としていなかった……。そう、応えようとする者は……
『もう……、いい加減にしてえええぇぇぇーーーっ!!!』
戦治郎が必死になって防人の攻撃を捌く中、不意に誰かの叫び声が聞こえる。戦治郎は何事かと思いはするのだが、生憎今は防人の攻撃を捌くので精一杯だった為、声の方へと視線を送る事は叶わなかった
『何で私がこんな目に遭わなきゃいけないのっ!?いきなり訳が分からない深海棲艦に襲われてっ!!目の前で同僚を沢山殺されてっ!!!そして今度は深海棲艦同士の戦いに巻き込まれるとかっ!!!ホント意味分かんないっ!!!私が一体何したって言うのよっ!??』
嗚咽混じりに叫ぶ女性の声を聞いて、戦治郎はここでようやくこの部屋には防人以外にも、アイオワに似た彼女がいた事を思い出す。そして彼女の叫びと同時に聞こえて来たガシャリと言う金属音が聞こえると、戦治郎は防人と戦いながらも怪訝な表情を浮かべると……
『こんな訳分かんない状況を作り出している貴方達何か……、死んでしまえばいいのよっ!!!』
彼女がそう叫んだ直後、戦治郎にとっては聞き慣れた感じのバシュゥッ!!!と言う音が聞こえると同時に、戦治郎と防人のすぐ横を一筋の光が通って行く。それを目の当たりにした戦治郎と防人は同時に彼女の方へと視線を向けると、そこには光太郎のレーザー砲と何処か似ているライフルの様な物を構えた、アイオワそっくりな女性が立っていたのであった
(何ださっきのはっ!?まさかここで開発された兵器の類かっ?!)
戦治郎が彼女が構えるライフルっぽい物を見て、そんな事を考えていると……
「成程な……、貴様も俺達と戦いたかったのだなっ!!!よかろうっ!!!ならば俺が相手をしてやろうではないかっ!!!いくぞおおおぉぉぉーーーっ!!!」
突然防人がそう叫ぶや否や、薙刀を構えて彼女の方へと突進して行くではないかっ!?
「やっべぇっ!!!」
戦治郎はそう叫ぶと、自身の腰にマウントしていた本来対潜用に作っておいたクローアンカーを手にするなり、彼女に向かって突撃する防人目掛けて発射、射出した爪で防人を捕まえると……
「ふんぬらばあああぁぁぁーーーっ!!!」
気合いの雄叫びと共に、ハンマー投げの要領でアンカークローを振り回して豪快に防人を投げ飛ばすのであった
「あっぶねぇ……」
間一髪のところで彼女を助けた戦治郎がそう呟き、彼女の方へと視線を向けると……
『いやあああぁぁぁーーーっ!!!』
恐怖のあまり目を閉じてしまっていた彼女が、混乱したままライフルの様な物の引き金を引き……
「あ"があ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ーーーっ!!?」
ライフルっぽい物から発射された光線が、戦治郎の顔の左側を掠めるなり、戦治郎の顔の左半分と左肩から首筋までの間に、皮膚がグチャグチャに爛れる程の大火傷を負わせたのである。戦治郎は光線が顔を掠めた直後から発生した激痛に耐え切れず、上半身を勢いよく仰け反らせ、顔の左側に手を当てながら思わず絶叫するのであった
そんな戦治郎の様子を見た彼女は、しばらくの間呆然とした後……
『やった……、やってやったわっ!!!これは私達の、アメリカの勝利よっ!!!』
まだ若干混乱しているのか、そう叫びながらその場でピョンピョンと飛び跳ねて大喜びするのであった。と、その直後である
「飛び道具にも中々面白い物があるものだなあああぁぁぁーーーっ!!!!!」
突然姿を現した防人がそう叫びながら、またもや彼女に襲い掛かったのである。そして防人の叫びで我に返った彼女が、防人の方へ首を向けると先程までの笑顔は一瞬の内に消滅し、彼女の表情は絶望の色で染め上げられてしまう
そして彼女が心の中で油断した事を後悔していると、突如凄まじい爆音が連続して辺りに鳴り響くなり、防人が物凄い勢いで真横に吹き飛ばされて行くのであった。突然の出来事に驚いた彼女が、音の発生源へと視線を向けると……
「どうだヘモジー……、俺の自慢の飛び道具が放つ榴弾の雨のお味はよぉ……?」
そこには先程彼女が倒したと思っていた戦治郎が、それはそれは巨大なガトリング砲を片手で構えて立っていた。そして……
『おい姉ちゃん……、今のはめっちゃ効いたぞ……』
戦治郎は彼女の方へ焼き爛れた顔を向けながら、流暢な英語で彼女に向かってそういい放つ。それを聞いた彼女は、恐怖で表情を引き攣らせながらライフルっぽい物を再び戦治郎に向けるが……
『ごめんマジでそれ止めて?冗談抜きで効いたから、後俺はあいつみたいにお前に危害を加えようなんて更々思ってねぇから、寧ろ救援要請聞いて助けに来たクチだから、そこんとこ理解してもらえる?』
戦治郎のそんな言葉を聞いて、アイオワの様な女性はライフルの銃口を戦治郎から外す。その様子を見た戦治郎は内心で安堵の息を吐いた後、幽鬼の様に立ち上がる防人へと視線を向け……
「まだ立つかよ……、マジでしつけぇなおめぇはよぉ……。だがいい加減俺はおめぇの顔見飽きたんだわ……、次で決めさせてもらうぜ……?」
戦治郎に攻撃を仕掛けようと構えを取る防人に対して、戦治郎は獰猛な笑みを浮かべながらそう呟く
するとどうだ、その直後に突如戦治郎の左目から血の様に赤い炎が激しく噴き出し、燦然と輝き始めたではないか。そしてその真っ赤な炎の中には、炎の色より更に濃い赤色で『帝』の文字が浮かび上がっていた
「覚悟しろやヘモジイイイィィィーーーッ!!!」
戦治郎はそう叫ぶなり、ヨイチさんで砲弾を撒き散らしながら防人との間合いを一気に詰め、防人が間合いに入るなりすぐさま大妖丸を振るって斬りかかるのであった