※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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絶望が希望に変わる時

「ん~?」

 

儀式の最終段階へと移行したエリカ達を止めるべく、戦治郎は海上を猛スピードで駆けていたのだが、不意に悲鳴の様な声が聞こえた様な気がして、思わずその足を止めて辺りを見回してみるのだが、悲鳴の発生源を見つける事は出来なかった。おかしいな……、戦治郎がそんな事を考えながら怪訝そうな顔をして小首を傾げていると……

 

「……………ぉぉぉおおお!!!」

 

今度はハッキリと、自身の頭上から悲鳴が聞こえて来る。戦治郎は悲鳴が聞き間違いでなかった事に安堵したところでふと思う、どうして頭上から悲鳴が聞こえるのだ?と……。そんな疑問が頭を過ったところで、戦治郎が急いで上を見上げると、そこには空から戦治郎目掛けて凄い速さで落下して来る北端上陸姫の姿が目に映るのであった

 

「わっしょいっ!?」

 

思わず戦治郎が声を上げながらバックステップで落下して来る北端上陸姫を回避すると……

 

「ノブオッ!!!」

 

北端上陸姫は見事な顔面着水を決めた後、ゆっくりと身体を傾けていき海面に倒れ込んでしまった

 

その一部始終を見守っていた戦治郎が、北端上陸姫に声を掛けるべきかどうかで悩んでいると、不意に北端上陸姫がのっそりと起き上がり……

 

「おのれ……、長門 戦治郎……っ!何時の日か必ず、目にもの見せてやる……っ!!」

 

忌々し気な表情を浮かべながら、戦治郎に対して恨みの言葉を呟く。北端上陸姫の呟きを耳にした戦治郎は、何故何もしていない自分が、目の前にいるこの深海棲艦にこの様な事を言われなければいけないのか?と疑問に思ったところである事を思い出す

 

そう、通達が生贄を救出しようとした際戦ったと言う、アルバート=ザハウィーを名乗る北端上陸姫の事である。その事を思い出した戦治郎は、通の報告内容と先程自分の目の前で起こった出来事を照らし合わせる事で、目の前にいる北端上陸姫がアルバートであると確信し、顔から滝の様な汗を流しながら、アルバートに対してどう対応すべきかで頭を悩ませるのであった……

 

迂闊に会話をして自分の正体がバレれば、間違いなく戦闘になってしまい、儀式の阻止が出来なくなってしまう可能性が高くなってしまう……。ならば気配を殺して足音を消して、アルバートに気付かれない内に逃げればいいっ!そう思った戦治郎が早速行動を起こそうとしたのだが……

 

「ちょっといいだろうか?」

 

「ひゅいっ?!」

 

戦治郎が行動を起こす前にアルバートに気付かれ、あちらから声を掛けられてしまったのである。戦治郎は驚きのあまり思わず奇声を発し、そんな戦治郎の事を訝しみながら、アルバートは戦治郎に質問をする

 

「済まないが、ここが何処なのか教えてもらえないだろうか?ちょっとした事情があって、自分が今いる場所が何処なのか分からなくなってしまったのだよ……」

 

困り顔で自分達が今いる場所を尋ねて来るアルバートに対して、戦治郎はと言うと……

 

「ここですか?ここはウェーク島付近ですね~」

 

素知らぬ顔で、呼吸をする様に平然と嘘を付くのであった

 

「何っ!?僕はそんな所まで吹き飛ばされたと言うのかっ?!不味いな……、急がなければ長門 戦治郎の仲間に儀式の邪魔をされかねない……。度々済まないが、ホノルルは何方に向かえば辿り着けるだろうか?」

 

今度はその表情に焦りを浮かべるアルバートに、戦治郎はエリカ達がいるであろう方角と逆の方角を指差しながら、アルバートの質問に答えようとするのだが……

 

ここで戦治郎の通信機に通信が入る、相手は空の様だがその声にはちょっとした焦りが含まれている様な気がしたが……。そして通信の内容を聞いたところで、戦治郎は真顔になって思わず硬直してしまうのであった……

 

『すまん戦治郎っ!!突如姿を現した戦艦水鬼改を通してしまったっ!!!気迫あふれる笑顔を浮かべてお前の名前を叫びながら薙刀を振り回して、仲間のはずである変態共と死霊兵達を蹴散らす姿を見て敵味方問わず全員が愕然としている内に、そいつは海に飛び出しお前が向かった方へ一直線に進んでいる!!!十分気を付けてくれっ!!!』

 

戦治郎はこの通信を聞いた直後、先程自分が真っ二つに斬り捨てた男の顔を思い浮かべる……

 

(どうしてさっき真っ二つにして、左右をそれぞれ別の方角に蹴り飛ばしておいたあいつが復活して、そんな元気一杯に暴れ回ってんだよっ!!?つかこっち来てるとかヤバ過ぎじゃねぇかYO!!!)

 

戦治郎が頭の中でそんな事を考えていたその時だ

 

「見つけたぞっ!!!長門 戦治郎おおおぉぉぉーーーっ!!!!!」

 

もう二度と聞きたくなかった声が辺りに響き渡る……、戦治郎がその顔に絶望を張り付けながら声がした方角へ首を向けると、そこには左半身と右半身が上下方向に2cmほどズレた状態でくっ付いているヘモジーこと防人が、両眼を全開にし口の両端を限界まで吊り上げながらこちらに向かって突っ込んで来るではないか……

 

「先程は後れを取ったがっ!!!次はそうはいかんぞおおおぉぉぉーーーっ!!!!!」

 

防人はそう叫ぶなり薙刀を構えながら跳躍、飛び掛かる様にして戦治郎に斬りかかって来る。戦治郎はその攻撃にすぐに反応し、大妖丸を引き抜くと真正面から防人の薙刀を受け止めてみせるのであった

 

「ん?先程より弱体化している様な気がするが……、まあそんな些細な事はどうでもいいっ!!!さぁっ!!!先程の続きといこうではないかっ!!!!!」

 

「うぎゃあああぁぁぁーーーっ!!!キモいっ!!!ちょっとズレてるヘモジーの顔がエクストリームキモいいいぃぃぃーーーっ!!!そんでその状態で喋ってるからアルティメットキモいいいぃぃぃーーーっ!!!」

 

鍔迫り合い中に防人の顔を見た戦治郎が思わず悲鳴染みた声を上げ、防人を蹴飛ばして距離を取るなり心を落ち着かせようと深呼吸を開始する。それと同時に、防人が先程の戦治郎の悲鳴で自身の身体のズレにようやく気付き、グチャグチャと言う音を立てながらそのズレを修正して見せ、ようやく落ち着いた戦治郎の顔を引き攣らせるのであった

 

こうして戦治郎は防人のと戦闘を開始した訳だが、正直なところ戦治郎は内心ではかなり焦っていた。今のままではアルバートの時に懸念していた儀式の阻止が叶わなくなる、それだけは何としてでも避けたい戦治郎は、この戦いを今すぐにでも終わらせる何か良い手はないかと思考を巡らせ解決策を模索するのだが、焦りと防人の性格が原因で中々良い打開策を思いつけずにいた……。と、そんな時である

 

「まさか……、貴様が長門 戦治郎だったとはな……っ!」

 

突如聞こえて来た声に驚いた戦治郎が、何事かと思いながらそちらに視線を向けると、そこには両手を力一杯握り締め、プルプルとその身を震わせるアルバートの姿があったそして……

 

「ここで会ったが百年目えええぇぇぇーーーっ!!!積もり積もった貴様への恨み辛みっ!!!今ここで晴らしてやるうううぅぅぅぁぁぁーーーっ!!!!!覚悟しろおおおぉぉぉぁぁぁーーーっ!!!!!」

 

「やっぱこうなるのかよ畜生めえええぇぇぇーーーっ!!!」

 

「さあ長門 戦治郎っ!!!最高の戦いをっ!!!究極の死合いをやろうではないかあああぁぁぁーーーっ!!!」

 

アルバートはそう叫ぶなり腰に下げたエストックを抜いて戦治郎に斬りかかり、それに対して戦治郎はヤケクソになりながら叫び返し、戦治郎の声に反応して防人が戦治郎に対しての攻撃を再開、2人から同時に狙われた戦治郎はアルバートの攻撃を回避しながら防人の斬撃を受け流し、何とかその場を凌ごうと立ち回るのであった

 

こうして戦治郎、アルバート、そして防人による三つ巴の戦いが始まり、その結果何の妨害も受ける事無くエリカがガタノゾーアの様なガタノトーアを召喚、その様子を見た戦治郎は最後の儀式の阻止に失敗したと……、そう思うのであった……

 

「ああっ!!ガタノトーア様っ!!!遂に我々の声に応え、この地に来て下さったのですねっ!!!さぁ、どうか我々に力をお貸し下さいっ!!!その力を以て、この穢れ切った世界を浄化して下さいませっ!!!」

 

ここから凄まじく離れた場所にあるウェーク島付近に出現したガタノゾーアっぽいガタノトーアに向かって凄まじい声量で叫ぶエリカ、それに対してガタノゾーアみたいなガタノトーアは大気を揺るがす程の声量で、エリカの懇願への返事を返す

 

「ぅお断りだあああぁぁぁーーーっ!!!!!」

 

「「「はぁっ?」」」

 

ガタノトーアと呼ばれているガタノゾーアの返事を聞いた戦治郎、アルバート、エリカの3人は思わず間抜けな声を出し、アルバートとエリカはただただ問題のガタノゾーアの様なガタノトーアがいる方角に目を丸くしながら視線を送り、戦治郎は流石に鬱陶しくなってきたのか、大妖丸でヘモジーの薙刀を刀身も柄もまとめて細切れにしてしまうのであった

 

その直後、突如ガタノゾーアなガタノトーアが天高く跳躍、あっという間に姿を消したかと思ったら、すぐさま戦治郎達の目の前に着水する。その光景を目の当たりにした防人以外の者達が思わず驚き慄いていると……

 

「そこの『ルルイエ異本』を手にしている者が、我を召喚しようとした白痴者かっ!??」

 

ガタノゾーアなガタノトーアが触手でエリカを指し示しながら叫ぶと、その場にいた者達全員の視線がエリカに集中する。但し防人は除く

 

「貴様の歪すぎる召喚法のせいで、危うく我は暴走してしまうところだったぞっ!!!その責任、どう取るつもりだったのだっ?!!」

 

そんな中、ガタノゾーアなガタノトーアはエリカに対して説教を開始するのであった。この時、戦治郎は先程のガタノゾーアなガタノトーアの発言に引っかかりを覚え、防人はガタノゾーアなガタノトーアに突撃を仕掛けて殴りかかったところ、お返しとばかりにガタノゾーアなガタノトーアの触手で思いっきり殴り飛ばされてしまうのであった

 

「あの……、ちょっちいいですか?」

 

「この力っ!!!素晴らし過ぎるっ!!!さあ貴様っ!!!もっと俺と戦ええええぇぇぇーーーっ!!!!!」

 

戦治郎がガタノゾーアなガタノトーアに対して、オズオズとした様子で挙手して質問しようとし、驚くべき速さでこの場に戻って来た防人は、ガタノゾーアなガタノトーアの圧倒的過ぎる強さに感動しながら、腹の底から咆哮を上げてガタノゾーアなガタノトーアに襲い掛かるも、触手で叩き潰された後先程よりも遠いところへ殴り飛ばされる

 

「ぬ……?おぉっ!お主が戦治郎かっ!!話は聞いておるぞっ!!っと……、して、何を聞きたいのだ?」

 

防人を軽くあしらった後、ガタノゾーアなガタノトーアは戦治郎の方へ視線を向けるなりこの様な発言をし、戦治郎に質問の許可を下す

 

「待って、何で俺の事知ってるのん?俺と貴方は今日が初対面ですよね?っとそれよりも!先程の言い方では、貴方はこの女に召喚された訳ではない様に受け取れたのですが……、この女以外に貴方を召喚した者がいるのですか?」

 

戦治郎がガタノゾーアなガタノトーアにそう尋ねると、ガタノゾーアなガタノトーアは触手で腕組みをしている様な仕種をしながらウンウンと頷いて見せ、その後自身の見た目が逆さまになっている様に見える頭を触手で指し示しながら、この様に答えた

 

「うむっ!!!我を召喚し、お主の事を我に教えてくれたのは他でもない、ここにいる我が親愛なる友、出雲丸 翔だっ!!!」

 

「はいぃっ!??翔ぅっ!?!」

 

ガタノゾーアなガタノトーアのツッコミどころ満載な返答を聞いた戦治郎は、思わずそう叫ぶなり、武器を格納している腰のボックスから双眼鏡を取り出し、双眼鏡を使ってガタノゾーアなガタノトーアの頭部を見てみると、そこにはウェーク島で待機しているはずのお留守番組と……

 

『あ~……、その……、皆さんおはようございます~……』

 

困った様な表情を浮かべながら、通信機を使って皆に挨拶をする、今の今までずっと医務室で眠り続けていた翔の姿があったのである

 

『長い間迷惑をかけてしまって、本当に申し訳ないです……。この埋め合わせは……、今ここで、やらせてもらいますっ!!!行くよゾアッ!!!まずは空さん達のところだっ!!!』

 

翔は通信で皆に謝罪した後、ガタノゾーアなガタノトーアに指示を出し、ゾアと呼ばれたガタノゾーアなガタノトーアは翔の言葉に答える様に咆哮を上げ、サンド島の砂浜付近に群がる死霊兵の群れ目掛けて紫色の光を放つ光線を口から吐き出し、その光線に飲み込まれた死霊兵達を瞬く間に石像に変え……

 

「ぬぅんっ!」

 

掛け声と共に使用した念動力で、石像になった死霊兵達を全てまとめて粉々に破砕してしまうのであった

 

『この調子でガンガン行くよっ!!!』

 

黒いケープを羽織り、刀身から黒い液体の様な物を滴らせる様になった鼓翼を片手に、翔は通信機越しに声を張り上げ、ゾアに的確に指示を出してサンド島の敵をあっという間に殲滅してみせるのであった

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