一体どれだけの時間戦っただろうか?一体どれだけの深海棲艦を沈めただろうか?そして……、一体何時になったらこの深海棲艦達の増援は終わるのだろうか……?
長門達はそんな事を考えながらも、ミッドウェーの拠点から続々と姿を現す深海棲艦達に対して、果敢に攻撃を行い次々と沈めていくのであった
「この拠点の深海棲艦達は、一体どれだけいると言うの……っ!?」
「今のところ全く増援が途切れる気配がしないわね……」
「本当に……、私達はこの戦いに勝てるのでしょうか……?」
終わりが見えない戦いのせいで、心身共に疲弊しきった大鳳、矢矧、初霜が思わずこの様な弱音を吐く。無理もない事だろう、彼女達はこれまでこの様な絶望的な戦いに参加した事が無いのである、海域攻略の時の様にスムーズに事が進まない事から生じる焦りと、圧倒的な数の暴力に押し潰されてしまうのではないかと言う恐怖が、ジワジワと彼女達の心を蝕んでいくのである、彼女達が弱気になってしまうのは仕方が無い事なのだ……
彼女達の様子を見てそんな事を思った長門が、彼女達を何とか奮い立たせようと声を掛けようとしたその時だ
「皆さん、気を強く持ってください。終わりが無いなどと言う事は絶対に有り得ません、奴らを倒し続けていれば、いつかきっと好機は来るはずなんです。ですから今は、奴らを倒す事だけを考えましょう」
彼女達と同じ泊地に所属する大和が、彼女達に向かって叱咤激励する様にそう言うと
「そうね……、大和さんの言う通りですね……っ!」
「こんなところでへこたれていたら、あっちの連中に笑われてしまうものね……っ!」
大鳳はそう言って己を奮い立たせ、矢矧はチラリとある方角で視線を向ける。矢矧の視線の先では……
「なぁ摩耶、この戦い、フェロー諸島での決戦を思い出すなっ!!!」
剛達と合流を果たした木曾が、敵陣の中で四方八方に魚雷を撒き散らしながら、昔を懐かしむ様に摩耶に話し掛け
「ああっ!あん時もこんな感じだったなっ!!!あのでけぇ艦艇のお守りしながら、大暴れしてたっけなっ!!!」
摩耶は木曾の言葉にそう返しながら、機銃と高角砲で艦載機と砲弾を撃ち落としながら、合間合間に主砲で器用に深海棲艦の眉間を撃ち抜いていく
「やはり皆さんは、トラック泊地防衛戦以外にも大きな戦に参加していたのですね」
そんな2人のやり取りを聞いて話に加わって来たのは、自分に向かって飛んで来た砲弾を、手にした長ドスで叩き斬るなり相手の懐に飛び込み、相手の前歯をへし折りながら強引に口にねじ込んだ拳銃の引き金を3回引いて、相手の頭部を吹き飛ばした瑞穂だ
「あの戦いからまだ大して時間が経っていないはずなのですが……、どうしてでしょう?何処か懐かしく感じてしまいます……」
ここで自身が味方である事を周囲に伝える為に、仮面を額のところまで上げた軽巡棲姫、神通が瑞穂を背後から攻撃しようとしていた深海棲艦を斬り捨てながら、そんな事を呟く
「改めて思うと、私達って本当に濃い戦いばかりしてるわね~」
そう言いながら神通のフォローに入る陽炎、彼女は砲撃で相手を上手い具合に牽制して、焦った相手が隙を見せたところで容赦なく魚雷をぶつけ、堅実に、そして確実に相手を仕留めていく
「その分、不知火達は他の艦娘が経験しない様な事を経験し、それをしっかりと力に変えられていると思うのです」
そんな陽炎に対して、不知火はそう言いながらこの場にいる者達の射程外にいる、戦艦や空母をこの間手に入れたパイアを使って狙撃して、着実に相手の数を減らしていく
「ホ~ント、皆余裕あるわね~……」
「他人事みたいに言ってますけど、そう言う阿武隈さんも大概だと思うわよ?」
「えっ!?ウソッ?!」
木曾達の会話を聞いていた阿武隈がそう言うと、傍で戦っている天津風がこの様な事を言い、それを聞いた阿武隈は信じられないとばかりに驚きを露わにする。そんな彼女達も、他のメンバー同様主砲と魚雷を駆使して次々と深海棲艦達を沈めていたのである
「……何故あの人達は、あれだけの数の敵を前にして、平然としていられるのでしょう……?」
矢矧が見つめる方角を見ていた初霜が、そんな疑問を口にする。すると
「あいつらは普段の鍛え方と踏んで来た修羅場の数が、私達とは比べ物にならないからな……。そう言った経験があいつらを強くして、今やるべき事を冷静に判断出来る様にしているのだろう」
初霜の問いに長門が答え、不意に聞こえて来た声に対して、初霜は思わず驚いてしまうのであった
「さて、こんなところでのんびりとお喋りしていると、本当にあいつらから笑われてしまうぞ?そうならない為にも、私達も頑張ろうじゃないか!」
長門が続けてそう言うと、先程まで弱音を吐いていたのがまるで嘘だったかの様に、大鳳達は凛々しい顔立ちになり、元気よく返事を返して前へ駆け出すなり攻撃を再開するのであった
「ありがとうございます、流石は【抜山蓋世の長門】と呼ばれるだけはありますね」
長門が立ち直った彼女達に続こうとしたところで、不意に大和からこの様な事を言われ、長門は思わず足を止めて大和の方へと向き直り
「いや、私はただ便乗しただけさ。最初に彼女達を奮い立たせたのは貴女のはずだ、そうだろう?【国士無双の大和】」
大和に向かってそう言うと、大和は長門の言葉を聞くなりその表情を曇らせる。そんな大和の様子を怪訝に思った長門が、彼女に話し掛けようとしたその時である
『ガタノトーアエクスプレスのご利用、誠にありがとうございま~す。次は終点、ミッドウェー沖~、ミッドウェー沖です~。ご搭乗の皆様~、着水時の衝撃にご注意下さい~、着水の際の衝撃にご注意下さい~。そしてお足元の皆様~、全員まとめて御往生下さい~、とっととくたばれ馬鹿野郎ーっ!!!』
『戦治郎さん、落下してるのに余裕ありますね~。それ電車の車内アナウンスの真似ですか?』
『翔も大概だろうがあああぁぁぁーーーっ!!!これ大丈夫なのっ!?マジで大丈夫なのっ?!!』
『ぶっしゃっしゃっしゃっしゃっしゃっ!!!光太郎よぉ、いくら何でもビビり過ぎだろうよぉ、おめぇそれでも空も飛べるヒーロー様なのかぁ~?』
『鍛え方が足りんな、今度ライトニングⅡで垂直急降下の練習でもするか?』
『こ、光太郎さん落ち着いて下さいっ!ゾアちゃんが最初に言ってたじゃないですかっ!!ゾアちゃんの念動力で身体を押さえてあるから転落の心配はないってっ!!』
『うっひょー!まるでテレビで見たジェットコースターみてぇだなぁこれっ!!!』
『わ~!すっご~い!これた~のし~!!ねぇねぇゾアッ!後でまたやってっ!!!』
『お、おらは流石に怖いだぁよぉ……』
突然通信機から騒がしい声が聞こえたかと思えば、急に空から大量の悲鳴が聞こえて来たのである。悲鳴に反応して長門と大和が空を見上げれば、そこには巨大な何かが敵陣のど真ん中目掛けて落下して来ていたのだった
そしてそれが豪快に海上に着水すると、かなりの数の深海棲艦がその巨体に押し潰されて絶命し、その衝撃で発生した巨大な津波が次々と周囲の深海棲艦達を飲み込んでいく
「な、何ですかあの怪物はっ!??」
「いや、流石にこれは私にも分からん……。だが、あの怪物の方から聞き覚えがある声が聞こえた様な気がするが……」
突然空から降って来た巨大な怪物を目にした長門と大和は、激しく動揺しながらこの様な会話を交わす。そして長門が先程聞こえた聞き覚えのある声が、誰のものだったかを思い出そうと記憶を辿ろうとしたその時だ
「聞けえええぇぇぇーーーっ!!!」
突然怪物が凄まじい音量で咆哮し、その声量に長門と大和は思わず飛び上がって驚いた後、2人は動揺しながらも怪物を警戒しながら身構える。そんな2人の事などお構いなしと言った様子で、怪物は大声でその続きを叫び始める
「我の為翔の為っ!!敵の野望を打ち砕く邪神ガタノトーアッ!!!この赤き海賊旗を恐れぬと言うのならっ!!!かかってこいぃっ!!!!!」
そう言って邪神ガタノトーアと名乗る怪物は、触手で巨大な長門屋海賊団の海賊旗を広げながら、何処か満足気にその場に佇むと……
「あちょっ!?ゾアァッ!!!おめぇいつの間にそんなでかい海賊旗作ったんだYO!!?」
「跳躍して移動している間に、魔法のちょっとした応用で作ってみたのだっ!!流石に質はクタニド殿の手作りの物には劣るがなっ!!!」
「また戦治郎さんの頭の中から、変なセリフ覚えてきて~……」
「すまぬ翔っ!!カッコ良かったのでつい言いたくなったのだっ!!!」
その頭に乗せた戦治郎と翔の2人とこの様なやり取りを交わし、長門と大和を呆然とさせるのであった……