「ふんふんふ~ん、ふんふんふ~ん、ふんふんふ~ん、ふんふんふんふんふ~ん♪」
空達がホノルルで救援物資の荷下ろしをしている頃、戦治郎は某果物ライダーの挿入歌を鼻歌で口ずさみながら、上機嫌で独りミッドウェー島の浜辺を散歩していた
長門の依頼で閃光迎撃神話を単独で50基、アルゴス号の最終調整を終えたシゲが加わってから更に150基、ケンタウロスの分析を完了させた護が加わってからは一気に300基、合計500基の閃光迎撃神話を作り上げた戦治郎は、区切りがいいからと言ってここで休憩に入ったのである
因みにこの作業中、戦治郎はふと思い立って鬼神紅帝・帝之型を使用してみたところ、自身だけでなく作業を手伝っていたシゲと護にも効果があった事を知り、この能力の現時点での本当の効果を把握するのであった。故に戦治郎は今、とっても機嫌がいいのである
「これだけでもかなり強力な能力なのに、背中の奴見る限りだとまだ何かありそうなんだよな~……。残りは一体どんな感じなんかな~?おっちゃんマジで期待しちゃうっ!!!」
戦治郎はそう言いながら軽い足取りで散歩を続けていると、ふと視界に浜辺に座り込む1つの人影を発見するのであった
「う~?こんなところで独りで座り込んでるとか、何かあったんかな~?おっちゃん今機嫌いいから、何でも相談乗っちゃうぞ~♪」
戦治郎はそんな事を口走りながら、目を凝らしてその人影を注視する。そしてその人物が誰であるかに気付くと……
(おおおおおおちおちおちおちちつつけけけ……、おちおちおちけつ・・・・・、じゃなくって落ち着け俺……、まだあわてるような時間じゃない……。そう……、まだあわあわあわわわわわ……)
その人物、憂鬱そうな表情を浮かべながら浜辺に座り込んで、じっと海の方を見つめる大和に背を向け、内心で激しく動揺しまくるのであった……
それからしばらくして、ようやく落ち着いた非童貞ピュアピュアおじさんは、まだ多少の緊張を残しながらも、決死の覚悟を決めて大和に話し掛けるのであった
「よ、よう大和、こんなとこで何してんだ?」
「あ……、ど、どうも……」
戦治郎に話し掛けらてた大和は、戦治郎の方へ視線を向けるなり驚きの表情を浮かべながらも、余所余所しい感じで返事をする。大和が戦治郎に対してこの様な反応を見せたのは、恐らく初対面の時の戦治郎の様子が原因なのだろう……
それからしばらくの間、2人は無言で互いに見つめ合っていたのだが、不意に大和が視線を逸らし、 憂いに満ちた表情を浮かべながら再び海を眺めるのであった
そんな大和の表情から深い悲しみと怒り、そして絶望感を感じ取った戦治郎は、今までの緊張がまるで嘘だったかの様に落ち着いて……
「隣、いいか?」
「え?あ、はい……」
大和に向かって隣に座っていいか確認を取り、大和の返答を聞くなり大和の隣にドカリと胡座をかいて座り込むのであった
「それで、そんな時化たツラしてどうしたんだ?作戦は成功したんだから、ここは笑ったりして喜びの表情を浮かべるべきなんじゃないか?」
「それは……、その……」
それから戦治郎は大和に向かってこの様な事を言うのだが、大和は戦治郎の言葉を聞くなりその表情の理由を言い淀み、俯いてしまうのだった
「……ここには噂の糞野郎はいないんだ、安心して溜まってるモン吐き出していいんだぜ?」
「……糞野郎と言うのは、大和達の提督の事でしょうか……?」
そんな大和に対して戦治郎がそう言うと、大和は少し驚いた後戦治郎に向かってこの様に問う。そして大和の問いに戦治郎が頷き、天龍達から事情を聞いている事を話すと、大和はポツリ、ポツリと言葉を発し始めるのであった
その内容はやはりと言うべきか、桂島泊地の現状についてであった……。まるで奴隷の様にこき使われる軽巡艦娘と駆逐艦娘、そんな彼女達が集めた資源や資材は不正な横流しによって売り払われ、更には酷使され心身共に消耗し切った艦娘達も、完全に人権を無視した人身売買によって金に換えられる……
それだけでは飽き足らず、戦闘に参加する艦娘達も、まるで消耗品の様に使い捨てられている。彼女達の命は金ではなく戦果に換えられているのである……
大和はそんな現状を何とかしたい、桂島の提督の魔の手から彼女達を救いたいと、常日頃から思っている、思っているのだが……
「大和と大鳳さんは鳳翔さんを人質に取られ、もし大和達が変な事をしたら、鳳翔さんを手にかけると脅されて、大和達はあの男の言いなりになっているのです……。大和はそんな自分が情けなくて……、無力な自分が恨めしくて仕方が無いんです……」
「なるほどな……」
大和の独白に対して、戦治郎は1度相槌を打つ。そして大和の独白はまだ続くのであった
「仮に鳳翔さんの事が無かったとしても、大和は行動を起こせないと思います……。あの男は泊地の憲兵だけでなく、高官含む陸軍の兵の7割と通信士までもを、汚い方法で集めた金で買収し、いかなる時でも自分のところに情報が来る様にすると同時に、自身の悪事を隠蔽する様に工作しているんです……」
「天龍達の通報は、そいつの傘下にいる通信士に握り潰された挙句、件の通信士が天龍達が通報した事実をその糞野郎に通達していたって訳か……」
大和の言葉を聞いた戦治郎がそう呟くと、大和は戦治郎の呟きを肯定する様に1度頷いて見せる
「つか今サラッと恐ろしい事言わなかったか?陸軍の7割を買収?そいつは一体何を企んでいるんだ……?」
「それは……、あの男が大本営の現体制に対して、反乱を起こそうとしているんです……」
「はぁっ!?」
戦治郎の疑問に対しての大和の答えを聞いて、戦治郎は思わず声を荒げてしまう
「天龍さん達から話を聞いているなら知っていると思いますが、あの男はプロフェッサーと呼ばれる泊地棲姫の転生個体と取引をして、深海棲艦達の情報と戦治郎さん達がアリーズ・ウェポンと呼んでいる武器類を大量に購入し、自身が買収した陸軍の兵達に支給しているんです……」
大和の言葉を聞いた戦治郎は、思わず言葉を失ってしまう……。当然の事だろう、これはつまり剛が最も危惧していた事態を、桂島の提督は実行しようとしている事に他ならないからである……
「今回の作戦も、あの男の中では失敗に終わると思われていた様です……」
大和はそう言いながら、自身が現在身に付けているペンダントと思わしき物を戦治郎に掲げて見せた。それを見た戦治郎は、長門の話を聞いていたおかげで予想出来ていたので、大して驚きはせず、その表情を顰めるだけに留まるのであった
大和が戦治郎に見せたそれは、紛れもなくアビス・コンダクターの狂信者達が持っていた、あの禍々しいロザリオだったのである
「あの男はこれを大和だけに持たせ、戦闘が始まったらある程度被弾してから大和だけ戦線を離脱し、泊地に戻って来る様にと指示してきました……。恐らく大和を反乱の引き金にする為に……、無謀な作戦を敢行し、無駄な命を散らさせた大本営の現体制と言う国民の敵をでっち上げる為に……。あの男が強引な手法で戦果を挙げ、自身の地位を築き上げ、マスコミを味方に付けた理由は、反乱の際国民を味方に付ける為だったんです……」
「その男は、そこまでして何を得ようとしてんだよ……?」
大和の言葉を聞いた戦治郎が、ついそんな事を零すと……
「……世界です、あの男は日本制圧を足掛かりにして、深海棲艦との戦争で混乱している世界を我が物にしようとしているんです……」
「oh……、それはちょっちおっちゃん予想外だったわ……」
戦治郎の呟きに対しての大和の答えを聞くと、戦治郎は頭を抱えながらそう呟くのであった……