※この作品はR-18です。

鬼の鎮守府   作:稲荷童子

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着弾は誤字に非ず……


旧神からのお呼び出し

時は戦治郎達が北マリアナを目指して移動している最中に、海と空の異変に気付いたあたりまで遡る……

 

計量カップを使って奇妙な色をした海水を掬って皆に見せた後、急に凄まじい眠気に襲われた翔が目を覚ましキョロキョロと辺りを見回したところ、翔は現在自分が真っ暗な闇の中に独り佇んでいる事に気付くのであった

 

「え……?ここは何処……?さっきまで海の上にいたはずなのに……?」

 

余りにも突然過ぎる状況の変化に、思わず翔が驚きながら疑問を口にすると……

 

「む……、どうやら紛い物の方が先に目を覚ましたか……」

 

不意に何処かから、全く聞き覚えの無い女性の声が翔の耳に届くのだった。謎の声を聞いた翔が警戒心を高めながら、声の主の位置を探る様に辺りの様子を窺うと……

 

「あぁそう警戒するな、私はお前達に危害を加えるつもりはないからな」

 

この言葉と共に翔の視界に突如、男女問わず見た者全てが惹き付けられてしまいそうなほどの、それはそれは艶麗な女性が姿を現すのだった。もしこの場に司がいたら、光の速さを超越してこの謎の女性に駆け寄り、捲し立てる様にしてナンパを開始するだろうと考えながらも……

 

「この状況でそんな事言われて、はい分かりましたと言うと思います?もし僕に警戒を解いて欲しかったら、先ずは名乗ってもらえませんか?」

 

翔は警戒心を最大にしながら、この様に返答するのであった。それを聞いた女性は、やれやれと頭を振るなり

 

「私が名乗るのはもう少し後だ、どうせならまとめて自己紹介したいところだからな」

 

そう言って翔の後方を指差す、翔は鼓翼を何時でも引き抜ける態勢のままその指先を目で追うと、その先に周囲を見回した時には発見出来なかったものを、眠る様に瞳を閉じてその場に佇む鳳翔型軽空母1番艦の鳳翔と、鳳翔の周りを眠ったまま漂う妖精さん、装備改修任務でよくお世話になる戦闘糧食(おにぎり)のイラストに描かれているあの妖精さんの姿を発見するのであった

 

現状を全く把握出来ず激しく混乱する翔の視線の先で、不意に鳳翔が声を漏らしながらゆっくりと瞼を上げ始める

 

「あ、おはようございます」

 

その様子を見ていた翔が、条件反射でつい鳳翔に向かって挨拶をすると……

 

「おはようござい……、ま……?」

 

彼女は寝ぼけ眼のまま翔に挨拶を返そうとするのだが、途中で意識がハッキリして来て翔の姿をその両目でしっかりと目にすると……

 

「き、きゃあああぁぁぁーーーっ!!!どうしてここに深海棲艦が……っ!?それよりも早く艤装を……っ!!って、此処は一体何処なんですかっ?!」

 

挨拶を言い切るより先に絹を割く様な悲鳴を上げるなり、彼女は翔を撃退する為にここには存在しないと思われる彼女の艤装を装着しようと艤装を探して辺りを見回し、そこでようやく辺りが真っ暗になっている事に気付いて、翔以上に激しく混乱し始めるのであった……

 

「ちょっ!?お、落ち着いて下さい鳳翔さんっ!!僕は貴女に攻撃するつもりはありませんからっ!!」

 

自分以上に混乱する鳳翔の姿を見て冷静になった翔が、そう言いながら彼女を落ち着かせようと不用意に近づくと……

 

「嫌っ!!来ないで下さいっ!!!」

 

鳳翔のこの言葉と共に繰り出された平手打ちが、見事としか言いようが無いほど綺麗に翔の左頬に直撃し、バシィンッ!と言う平手打ちが着弾した際の音と共に、翔の左頬には真っ赤な紅葉が出来上がるのであった……

 

尚、後に給糧妖精さんと呼ばれる様になる妖精さんは鳳翔の悲鳴で飛び起き、謎の女性は翔達のやり取りを見るなり、大声を出して笑い始めるのであった

 

 

 

 

 

「本当に申し訳ございませんっ!少々気が動転していて……」

 

「誰だってこんな状況になったら、混乱の1つや2つはするものですからね、さっきの事は本当に気にしないで下さい……」

 

それからしばらくした後、ようやく落ち着いた鳳翔が翔に本当に敵意が無い事に気付くと、心底申し訳なさそうな表情を浮かべ、何度もお辞儀をしながら翔に謝罪し、翔は己の左頬を摩りながらそう言って、鳳翔の事を許すのであった

 

そんな中謎の女性はと言うと……

 

「いや~、中々面白い物を見せてもらったぞ」

 

翔達に向けてこの様な事を言いながら拍手を送り、その声を聞いた翔は謎の女性を睨みながら鳳翔を庇う様に前に出て、先程の様に鼓翼に手をかける。そして何時でもこの女性に斬りかかれる様構えを取ったところで、翔はこの謎の女性に話し掛ける

 

「気に入って頂けて幸いですってね……、それで、ここにいる人達は皆目を覚ました様ですが……」

 

「ああ、自己紹介の件だな。安心しろ、ちゃんと守ってやるさ……」

 

翔の言葉を聞いた女性は、そう言うなりパチン!と指を鳴らして翔達を包んでいた闇を取り払い、この場所の本当の景色を翔達に見せ、翔達を驚愕させるのであった

 

翔達が現在立っている場所、それは何処からどう見ても海の底、それもかなり深いのか翔達の周りを深海魚が遊泳していたり、ボロボロになった軍艦と思わしき船が、翔達の傍でその船体を横たえていたりしていたのである

 

これにより翔達はここが海底である事を理解するのだが、どうしても腑に落ちない点がいくつかあった為、翔はその疑問をついポロリと口から零す

 

「この辺りを泳いでる魚とか、鳳翔さんの足元を闊歩している蟹とか、かなり深いところ、それも太陽の光が届かないくらい深いところにしかいないはず……。なのにどうしてこの辺りはこんなに明るいんだろう……?それにどうして鳳翔さんが海底で呼吸出来てるんだろう……?」

 

翔はそう呟いた後、鳳翔の方へと視線を向ける。するとそこには息を止めてますよと言わんばかりに、頬袋に餌をたっぷり溜め込んだハムスターの如く頬をぷっくりと膨らませ、口を両手で塞ぐ鳳翔の姿があり、そんな鳳翔の姿を見た翔は思わずガックリと肩を落として脱力してしまうのであった……。因みに、謎の女性は鳳翔のこの姿を見るなり、腹を抱えて爆笑していた

 

それから謎の女性は一頻り笑った後、鳳翔に向かって今なら問題なく呼吸出来るから、そんな事をしなくていいと言い放ち、それを聞いた鳳翔は恥ずかしさの余り、顔を真っ赤にしながら縮こまってしまう。そして女性はその様子を見た後、翔の目を見ながら自身の後方を親指で指して、翔の疑問に答え始める

 

「ここで鳳翔達が問題なく呼吸が出来るのは私の魔法のおかげで、海底であるにも関わらずこの辺り一帯が妙に明るいのは、あそこの主の魔法のおかげだな」

 

その言葉を聞いた翔達が女性の後方へ視線を向けると、そこには石造りの建物群に囲まれた、神々しさと禍々しさを併せ持つ何とも名状し難き巨大な城が聳え立っていたのである

 

「ヒッ……!」

 

それを目の当たりにした鳳翔は短い悲鳴を上げながら思わずその身を竦ませ、翔はその建物を見るなり驚きの余り目を見開き、ブルブルとその身を震わせながらこう呟くのであった……

 

「あれって……、まさかルルイエ……?」

 

怪獣ものの特撮作品を好む翔は、ウルトラマンティガのガタノゾーアの元ネタがクトゥルフ神話から来ていると聞いて、クトゥルフ神話の事をよく知ろうと思いクトゥルフ神話に手を出していた為、件の場所の正体にいち早く気付いたのである

 

そして謎の女性は翔の言葉を聞くなり、ニンマリと笑いながらこの様な言葉を口にする

 

「そうだ、あの場所こそがクトゥルフが統治する海底都市ルルイエ、私達の目的地だ」

 

「目的地……、ですか……?」

 

「ああ、私達は暴走寸前のクトゥルフを止める為に、今からルルイエに向かい奴を説得し、世界の滅亡を防ぐんだ」

 

女性の言葉を聞いた鳳翔が、戸惑いながら女性に尋ねると、女性は何かとんでもない事を言い出すのであった

 

「いやホント待って下さい!!クトゥルフが暴走?!それを止める!?僕達がっ!?!それは本当の事なんですかっ!!?いや、それ以前にそんな事本当に出来るんですかっ!??って言うかっ!!!そもそもそんな事言いだす貴女は一体何者なのですかっ??!そう言えば今更ですけどサラッと魔法とか言ってましたけどっ?!?あれってどう言う事なんですかっ?!!」

 

それを聞いた翔が、大慌てしながら女性に向かってこれでもかと言うくらい凄まじい勢いで捲し立て、それを聞いた女性は何かを思い出した様にハッとした後、翔の質問に答えるのであった

 

「そう言えば自己紹介をすると言っておきながら、まだ名乗ってすらいなかったな……。スマンスマン、スッカリ忘れてた。そういう訳で自己紹介しておこう、私の名前はクタニド、旧神の頂点にしてクトゥルフの従姉だ。今回私がルルイエに向かう事になったのは、人類と深海棲艦に対して全面戦争を仕掛けようとしているクトゥルフを説得で止める為、そしてお前達に来てもらったのは、クトゥルフの説得をスムーズに進める為の手伝いをしてもらいたいからだ」

 

クタニドを名乗る女性の言葉を聞いた翔は、ここである事に気付いてしまうのであった……。彼女から伸びる影の形が、翔が知るクタニドの姿と完全に一致していると言う恐るべき事実に……。これにより翔は、この女性が本当に旧神のリーダーと呼ばれているクタニドであると確信するのであった……

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