「あの……、クタニドさん……?」
「いや、私ではなく鳳翔にだな……」
「あれって、神話生物ですよね……?」
「む……?」
翔が引きつった表情を浮かべながら、先程発見した岩壁に突き刺さる巨大神話生物の方を指差して、クタニドに確認を取る様に話し掛ける。そんな翔の様子を怪訝に思ったクタニドが、翔が指差す方向に視線を向けると……
「ぬぁっ!?ありゃガタノトーアじゃないかっ!?あいつ何であんなところに突き刺さってるんだっ!?!」
この様に叫ぶなり、慌てた様子で件の神話生物……、クタニドがガタノトーアと呼ぶ神話生物のところへと駆け出すのであった
翔と鳳翔は急に走り出したクタニドに困惑しながらも、彼女の後を追って走り出すのだが、クタニドが尋常ではない速さで走っている為、とてもではないが追いつくことが出来ず、結局2人がクタニドに追いつく頃には、クタニドは別空間にある自身の両腕を呼び寄せ、それを用いてガタノトーアの身体を岩壁から引き抜き終えていたのだった
「いきなりどうしたんですか……?それにさっきガタノトーアって言ってましたけど……?」
クタニドと合流した翔が、息を切らせながらクタニドに尋ねると
「ああ、置いて行ってしまってすまんな、あのままだとこいつが窒息死してしまうところだったからつい……な……。で、こいつは私にとっては従甥になるクトゥルフのとこの長男坊……、ゾス三神の内の1柱であるガタノトーアだ。しっかしこいつは何であんな事になっていたんだ……?」
クタニドは1度苦笑いを浮かべながら顔の前で両手を合わせて見せ、その後姿勢を正してからこの様に答えるのだった
「それを私達に聞かれても……っと、どうしたんですか妖精さん?……ってあれは……?」
クタニドが口にする疑問に対して、鳳翔が分からないと返答しようとしたその時だ、鳳翔の肩に乗っていた給糧妖精が、何かを発見したのか鳳翔の着物の衿をクイクイと引っ張って、ガタノトーアの顔と思わしき部分を指差す。それに従い鳳翔が給糧妖精さんが指差す方へ視線を向けると、ある物を発見して思わず声を上げる
その声に反応した翔とクタニドが怪訝そうにそちらへ視線を向かると、そこにはとても人の物とは思えない程巨大な握り拳の痕が、それはそれはクッキリハッキリと気絶するガタノトーアの顔面に刻まれていたのであった……
「これって……、まさか……」
拳痕を見た翔が思わずそう呟いた直後、突如ガタノトーアが両の眼を見開き……
「実の息子に全力で殴りかかる父上もっ!!!イソグサもゾス・オムモグも酷過ぎるのだあああぁぁぁーーーっ!!!」
この様な事を叫びながら、蛸の様なその目から滝の様な涙を流し始めるのであった……。唐突に泣きじゃくり始める巨大な邪神の姿を見て、翔と鳳翔が困惑しながらお互いの顔を見合わせていると、クタニドが事情を聞く為にガタノトーアに向かって話し掛ける
「落ち着けガタノトーア、一体何があったんだ?」
「ぬ……?おぉっ!?クタニド殿ではないかっ!!?やはり父上の件でこちらに来てくれたのだなっ!??」
「あぁ……、そうなんだが……、その前にお前の身に一体何があったのかを教えてもらいたいんだが……?」
クタニドとガタノトーアはこの様なやり取りを交わした後、ガタノトーアが何故自身がこうなっていたのかについて話し始める
「我は父上が人間と深海棲艦に戦争を仕掛けようとしている事を知ると、イソグサ達に協力を要請して父上の説得を行おうとしたのだ。しかし我らがいざ説得を開始すると、父上は我らが歯向かったと思ってすぐさま逆上し、我らに殴りかかって来たのだ……。それで我はこうなっては仕方ないと、父上を迎え撃とうとしたのだが……、イソグサ達は怒り狂う父上の姿を見るなり、有ろう事か我だけ残して脱兎の如く逃げ出しおったのだっ!!!」
「なるほど……、それでお前だけクトゥルフに殴り飛ばされて、あの岩壁に突き刺さっていたのだな……」
ガタノトーアの話を聞いたクタニドが、ルルイエの中央にあるクトゥルフの居城の方へ視線を向けると、その壁のある一点に大きな穴が開いている事を確認する事が出来た。恐らくガタノトーアがクトゥルフに殴り飛ばされた際に、ガタノトーアの身体が壁を突き破ってしまった為出来た穴なのだろう……
「うむっ!最初は何とかあの岩壁から脱出しようと頑張っていたのだが、思った以上に深く突き刺さってしまっていた様で中々抜け出す事が出来ず、時間が経つに連れて疲労と空腹から全身の力が抜けて行き……、最後の辺りには段々と息苦しくなってきてな……」
「冗談抜きで窒息死寸前だったのか……、翔が見つけていなかったら大変な事になっていたな……」
「ぬ?翔?クタニド殿、その翔と言うのは誰の事なのだ?」
ガタノトーアとクタニドがこの様な会話を交わし、クタニドがガタノトーアの質問に答える様に翔の方へと視線を向け、それに倣ってガタノトーアが翔へ視線を向けると……
「……この紛い物が、クタニド殿が言う翔と言う者なのか?」
ガタノトーアまでもが、翔の事を紛い物扱いするのであった……。それに対して翔が意見しようとしたその時である、突然ガタノトーアのそれはそれは大きな腹の虫が辺りに鳴り響き、翔は先程湧き上がった怒りも忘れて、鳳翔と共に呆気にとられるのであった
「そう言えばあそこに埋まってから3日ほどか……、我はその間何も食べていなかったぞ……」
「あの状態なら仕方が無い事だな……、流石に岩石を食う訳にもいかんからな……。しかしどうしたものか……、生憎今私は食べ物の類は持っていないんだ……」
ガタノトーアの言葉を聞いたクタニドが、この様に返答した後困った様な表情を浮かべながら考え込む様な仕種をする
「ガタノトーアさんがお腹を空かせていると言う事なら、何か食べさせてあげたいところなのですが……、食材が無い事にはどうしようもないですね……」
2柱の話を聞いていた鳳翔がそう呟き、給糧妖精さんが同意する様に頷く中、翔はと言うと……
「……艤装の中の食材はこっちに来る前のままか……、しかしあの体の大きさだから、きっと相当食べるんだろうな~……。う~ん……、これだけじゃ絶対足りないだろうな~……」
自身の艤装の中の食材があるかどうかを確認した後、この様な事を呟いていたのであった……
「ん?翔の方は何かアテがあるのか?」
するとどうやら翔の呟きが聞こえていたのか、クタニドが考え込む仕種を止め翔の方へと視線を向けながらこの様に尋ねて来る
「食材はあったんですが、ガタノトーアさんが満足出来そうなほどの量が無さそうなんですよ……。もうちょっとこう……、サイズが小さかったらどうにかなりそうなのですが……」
「ふむ……、こいつの図体のデカさが問題になっているのか……。よし分かった、ならば……」
翔の言葉を聞いたクタニドは、そう言うと翔の目の前に立って翔の頭に手をかざして目を閉じる。そしてそれからしばらくすると……
「よし、これがいいな!」
クタニドが目を開きながらそう叫び、ガタノトーアの方へ向き直ると指を鳴らして、ガタノトーアに何かの魔法をかける。するとガタノトーアの身体は次第に闇の様なものに包まれていき、やがてその姿は翔達には見えなくなってしまうのだった
「クタニドさん……、これは一体……?」
クタニドの一連の行動に対して疑問を浮かべる翔が、不思議そうにクタニドに尋ねると、クタニドはやや得意げな顔をしながらこの様に答える
「翔の記憶の中から、あいつに似ていて身体が小さい生物を探して、今の魔法でガタノトーアをその姿に変えたんだ。そうしたらサイズ問題は解消するだろう?」
クタニドがそう答えた直後、ガタノトーアの身体を包んでいた闇は消え去り、その中からポケモンのオムナイトが姿を現すのであった……
本来のガタノトーアの全高は、大体30m前後くらいで考えています
……ガタノゾーア状態になったら4倍くらい大きくなっちゃうけど、気にしない方向でいきましょう!!!